1-3
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
町までの街道はよく整備され、商人の馬車等とよくすれ違う。
「この辺りには、魔物や盗賊はいないから、結構安全なの」
マリアはまるでピクニックに来たような表情でつぶやく。
確かにすれ違う馬車には護衛の姿は見えない。
彼女の言う通りこの辺りは比較的安全なのであろう。
1時間ほど歩いたぐらいで、城塞が見えてきた。
「あれが目的地か?」
信也が尋ねると、マリアはうなずいた。
「ええ。あそこが城塞都市ミニアル。独立交易都市よ」
マリアが簡単に説明する。
この辺りの国家はすべて都市国家であり、王国等の国は少し離れたところにある。
戦時の際にはこの都市国家すべてが1つになり、同盟軍を結成し自衛戦争を行う。
信也も村にいた間に、村長等からある程度聞いていた。
ミニアルの正門に近づくと衛兵が数人立っていた。
「どこの村のものだ?」
衛兵の1人が穏やかな口調で信也とマリアに尋ねた。
「カリュ―村から参りました」
マリアが言った。
彼女は村長からもらった通行書を衛兵に渡した。
衛兵は通行書を受け取り、確認した。
「入っていいぞ」
衛兵は通行書を返し、道をあけた。
信也とマリアは正門をくぐり、町に入った。
「ずいぶんと簡単な対応だったな」
信也は正門に振り返り、つぶやく。
「それは、ここが交易の町だからよ」
マリアが答える。
「衛兵が、厳しい対応になるのは戦争時くらいね、普段は通行証さえもっていれば大丈夫、だって商人が来なければ困るでしょ」
「そういう事か」
信也はマリアの後を追う形で、薬草売りの店に向かった。
薬草売りの店は町のちょうど真ん中ぐらいにあった。市場や屋台が立ち並ぶ区からそんなに離れていないところだ。
「へい、いらっしゃい」
中年の男が笑みを浮かべて、言った。
「お、マリアちゃん。いつもすまんな」
中年の男はマリアの姿を見ると、頭をさげた。
「はい。村長からの薬草です」
マリアはカバンから薬草を取り出し、男に渡した。
「へい、確かに。これは報酬だ」
男は銀貨数枚を手渡した。
「はい。確かに」
マリアは銀貨数枚をカバンの中に入れた。
「そこの若い兄さん」
「?」
男は信也に声をかけた。
「しっかり、マリアちゃんを守るんだぞ」
男は何かを期待したようにニヤニヤしていた。
信也は少し苦笑した。
マリアはどういう事かわからず、首を傾げていた。
用事をすませた信也とマリアは店を出た。
「シンヤさん。まだまだ時間があるから、しばらく町の中を歩かない」
マリアはそう言って、信也の手を握り、引っ張る。
「え、え?」
信也は戸惑った。
これはつまり、世に言う、デート、というものか。
マリアに連れら、信也は町の中を歩き回った。
屋台で簡単な食事をしたり、服屋を覗いたり等。
「待ちな」
そんな時、信也たちに声をかけるごろつきらしき男が声をかける。
信也たちが足を止めると、3人のごろつきが2人を包囲する。
「嬢ちゃん。そんな男より、俺たちと遊ばねーか」
3人のリーダーらしき男が笑みを浮かべながら言う。
信也はマリアを後ろにかくまいながら、冷たく言った。
「あいにくだが、彼女には先客がいる。諦めてくれるかな」
信也の言葉にリーダーらしき男が声を上げる。
「お前の意見なんか聞いてねーよ」
「兄貴。こいつ、俺たちをなめてますぜぇー」
「身体にわからしてやる」
1人のごろつきが信也に殴りかかった。
「!」
マリアが悲鳴を上げようとしたが・・・
信也は慣れた手つきで、ごろつきの拳を受け止めると、そのまま引っ張り、ごろつきを一本背負いのように投げ飛ばした。
かかわりを持ちたくない周りの群衆はその光景を呆然と見ていた。
「なっ!?」
「て、てめぇ!!」
驚くリーダーとは別に手下のもう1人が、信也に迫る。
だが、信也は素早い動きで、もう1人のごろつきの真横にかけより、手首をつかみ取り、そのまま地面に叩きつける。
「あ、あ」
リーダーらしき男は、手下の2人が地面に転がっているのが、信じられないという様子で呆然とした。
「まだ、やる気か?」
信也は無表情で、リーダーらしき男に問いかける。
「待てよ。俺には、まだ切り札があるんだぜ!」
と、リーダーらしき男は短剣を見せつけた。
バン!
しかし、1発の銃声と共に短剣が弾き飛ばされた。
「ぎゃあああああ!腕が、腕があああ!」
リーダーらしき男は悲鳴をあげた。
信也は素早くM1911A2をホルスターから抜き、短剣を撃った。
「次からは相手をよく選ぶんだな」
信也は冷たく言うと、アイテム画面を開き、所持金を選択し、銀貨1枚を取り出した。
「おい、これで手下どもを手当てするんだな」
と、言いながら信也は銀貨を1枚リーダーらしき男に投げる。
「行こう」
信也はマリアの手を握り、その場を離れた。
「おっと、次は命がないと思え」
2、3歩進んだ後、信也はごろつきに振り返り、吐き捨てた。
「シンヤさん」
「ん?」
「そろそろ休まない?」
しばらく進んでから、マリアが声をかけた。
「そうだな」
信也はそう言って、近くのベンチに腰掛けた。
「さっきは、ありがとう。守ってくれて」
「気にするな。当然の事をしただけだ」
信也は照れたように顔を少し反対に向け、言った。
マリアはその光景をクスクスと笑った。
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誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
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