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異世界物語 僕と魔法幼女の大冒険  作者: 猿野リョウ
少年幼女のその後
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番外編『世界はきっと丸い』

 警察の魔の手からぬるりと抜け出して二週間。

 適当な宿を見繕い──まあ、宿というか雨宿りできる場所というか人気のない場所というか、ボロボロの廃工場で一息ついているわけだけれど。そして正確に言うなら廃工場に隣接し、隣設された小屋の中にいるわけだが。

 素晴らしく激しい暴風雨は、今にも壊れそうな工場を今壊れた工場に無理矢理作り替えてきそうで怖かった。

 ガコガコバコバコとやかましい音を立てて屋根を撃ち抜かんとする液体のミサイル。

 屋根がなんとか耐えてくれるお陰で、撃ち抜くではなく打ち抜くで済んでいるのは助かる。貫通してきたら新しく夜を明かせる寝床を見つけなければならなくなるから。


 休息を取るか、次の計画を建てるか、とりあえずはバックパックの道具の整理をしようと、僕は目の前の作業机にドンとバックパックを置くのであった。


 有用なツールは、もうほとんど残っていない。

 ポケットに突っ込んである二丁の拳銃の方がよっぽど利用価値のある武器だ。何せ、普通の武器とは違い魔力のこもった極太レーザーを放てるのだから。

 でも、バックパックの道具をけなしているわけではない。

 今まで僕の命を何度も救い、戦闘以外にもキラリと光る才を見せつけてくれた愛用のナイフ。

 消毒薬や包帯などの入った、十字マークのシールが目印の応急セット。

 八個も携帯していたが今では残り一つのスモークグレネード。

 これらに僕は少なからず感謝している。

 けれど、それも潮時だ。


 ナイフは既に刃こぼれが酷く、まともに物を切れる状態ではなく、者を──人を切るとなればなおさらだ。研げば、磨げば、まだ活躍の余地は、復活の余地は、十分にあるのだけれど、それでも限界だ。

 切れ味の問題じゃない。ところどころヒビの入ったこのナイフは、戦えば、作業を始めれば、間もなく折れること間違いなしだ。


 応急セットだって既製の薬品を限界まで詰め込んでいたけれど、今ではもうスカスカで残り一割あるかも分からない。

 スモークグレネードも不良品だった。いつだか警官に追われた時に使おうと思ってピンをはずそうとしたけれど、固すぎて無理だった。なんか詰まってるのかな。


「よく頑張った方だよね」


 僕は溜め息と共に呟く。


「何を言っているんですか。急に弱気にならないでくださいよ」


 と、隣に佇む幼女が言った。


「違うよ、今まで僕を助けてくれたサポーター達の事だよ」

「ああ、そのナイフやら応急セットやらですか」

「埋めてやろうかと思ってるんだけれど。どう思う?」

「そこまでするんですか? 随分と愛着のある道具なんですね」

「てきとうに廃棄処分してもいいんだけれど、埋めた方がいつかまた新しいナイフを使うときとか、御利益がありそうじゃないか。それに見えるところに僕らの行く先の足掛かりを残したくはないんだ」


 昨今の警察を嘗めてはいけない。

 油断すればすぐに御用だ。


「足掛かりですか」


 僕とひまわり。たった二人のパーティーの目的地。

 それはどこなのか、自分にも分かりはしない。

 現在、追っ手から逃れるためにひたすら日本を南下しているだけなのだ。


「あのとき派手にやりすぎなければ……」


 警察署から逃亡するとき、あまりにも被害を出しすぎた。

 見つからないようにしてこそこそしていればよかったものを、僕らはめんどくさいからという理由で、障害となる警官は容赦なく排除、建物も半壊させてしまった。

 つまり政府から見た僕らというのは、ものの数分で数十人の人間を惨殺し、かつ規模の大きい警察署を半壊させることのできる、人間離れした力を持つ異端者なのだ。当然そんなやつ放っていいわけがなく、指名手配され更に大量の精鋭に追われ、そして一生その追跡が止むことはない。

 僕達は他の指名手配犯とは段違いに危険なのだ。


 だから、もし何も被害を出させずに脱走していたら他の指名手配犯と同じような扱いだっただろうから、今のように激しいチェイスバトルを繰り広げなくてもよかったはずだ。


「今よりもっと楽だったろうなぁ」


 溜め息が止まらない。


「今更悔やんでも仕方ありませんよ?」


 そうだよね。後悔先に立たずと言うしね。


「それにいつかは逃げ切れるでしょう」

「そうとは限らない。どれだけ逃げても追っかけてくるかも」

「大丈夫ですよ」

「全然大丈夫じゃないって。どこに逃げても……世界は広いんだ。僕達はいつでも囲まれている」


 今だって包囲されているかも。


「いつかきっと敵を振りきれますよ」

「無理だろうね、振り切る方法は一つしかない、異世界に戻る……とかね」


 もしくは地図にない無人島に行く。


「ひまわりは知らないかもしれないけれど、世界は丸いんだよ。地球は丸いんだよ。終わりがないんだよ。逃げるだけの生活に終わりはない」


 世界は終わらないのだ。

 果てに見えない壁はないのだ。

 ひたすら同じ世界が続くだけなのだ。


「世界が丸いって……見たことあるんですか?」

「……いやないけれど、写真でしか」

「その写真って本当に事実なんでしょうか?」

「……分からない」

「世界が丸いって実感したことはあるんですか?」

「……ない」

「それじゃあ世界が丸いと断言はできませんよね」


 それならば、よくて──とひまわり。


「世界はきっと丸い」


 と、しか言えませんよ──と満面の笑みを浮かべる幼女をみて、苦笑いが滲み出てくるが、微笑ましくも思ったのだった。


「じゃあ」


 地球が──世界が本当に丸いのか確かめてみよう。

 僕はそう提案した。










 次の目的が決まった。

番外編第二弾!

ふと書きたくなったので書いてみました。

ストーリーは完全に適当です。強いて言うなら、もし続編を書こうと思ったときのストーリーの糧というか。そんなものでしょうか。

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