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異世界物語 僕と魔法幼女の大冒険  作者: 猿野リョウ
少年幼女のその後
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番外編『私、ハンバーガー食べたいです』

「お腹減りました」

「そんな余裕ないから」

「何か食べたいですね」

「天使なんだし別に食べなくても生きていけると思うんだけど」

「天界最強の天使でも食事はします」


 ふぅむ、困ったなぁ、そんな暇はないと言うのに。

 路地裏でのんびり休憩している僕に言えるこっちゃないけどね。


「いいじゃないですか。もう二日なんですよ? 二日間もの間、私達はなんにも食べていない」

「独房にぶちこまれるよりはましだよ」

「その独房に入れられかけたところを助けたのが私だったんですよ? お礼ぐらいあってもええじゃないかええじゃないか」

「それ戦国時代?」

「いいえ、幕末です」

「どこでそんなものを知ったのさ」

「お兄さんを助けに行くまでの一週間、てきとうに街をぶらぶらして古本屋たるショップにて色々な知識を蓄えたのです」


 なるほどね、さすが最強天使様。この現代を生き抜くために早速現代知識を頭にねじこんだわけだ。


 それにしてもだ。確かにひまわりが居なければ、僕は今頃留置所とかでお昼ご飯を頂いていたかもしれない、そのまま懲役刑でももらっていただろうか?

 まあ、一応高校生の身分だしそういうことはないと思うが。


「でもひまわり、なんの陰謀が働いているのか知らないけど、僕達いまや全国指名手配犯だよ? あのニュースからまだ少ししか経ってないとはいえ、ここはまだ都市部に近い位置だし、今の状況には深刻な顔バレを食らってるかも」

「大丈夫ですよ。弓兵の放つ矢なら楽に防げますし、刀を振るう相手にはお兄さんの神器で近づかれる前に始末すればよいのです」

「今は戦国時代じゃないから」


 主に昔のことしか勉強してなさそうな雰囲気だな。

 現代については全く調べなかったの?


「じゃあ今は何時代なんですか?」

「そう言われると……、平成時代……とか?」

「……」

「とにかく、今は幕末とかじゃないから! 2014年だから!」


 隣に座っていたひまわりが立ち上がる。


「……なんにせよ、私達なら無敵です。警察が戦車持ってきてもへっちゃらです」


 ちゃんと現代のことも調べてたのかよ。日本政府がわざわざ高校生一人に対して戦車を持ち出すなんてことは普通にありえないだろうが。

 て言うか、現代のことを調べていたにも関わらず、今を幕末とかだと勘違いしてたのか?

 幕末産ノストラダムスの予言書でも見てたのか?


「分かったよ、どうせ僕もお腹ペコペコだったし。行くよ」


 それで、


「ひまわりは何か食べたいと思うものはある?」


 と、僕は重く感じる腰を上げながらひまわりに聞いた。

 それに対する返答はどうなのか。

 ひまわりは古本屋で現代の食事の情報を蓄えた可能性がある。

 つまり、元々彼女の居た世界にはなかったものを食べてみたいとか、そういう好奇心に近い気持ちがあったりするかもしれない。

 果たして、彼女はなんと答えるか、




「私、ハンバーガーを食べたいです」




 ハンバーガーだった。

 あの異世界では『史上最強の天界兵器』と称され、核兵器より禍々しいほどの力を持つ天使──魔法幼女の欲した食物とは、意外にも、いつでもどこでも食べられるようなジャンクフードであった。

 僕も異世界に飛ぶ前は、金髪碧眼の留学生をお供に頻繁に食べに行っていた……覚えがある。



「ハンバーガー……か」




      ★★★




 そんなこんなで、僕らは都市部の中でも比較的人が少ないショッピングモールへと足を運んだ。

 人が少ないと言っても、あくまで比較的少ないというだけで、そこらの小規模店舗より人が多く集まるショッピングモールであるために、手配犯御用を回避する隠密行動は不可能だ。


 ともかく、ニュースに僕の顔が晒されたのもあるし、ひまわりの魔法幼女コスチュームが現代ではめたくそ浮いているというのがあって──すごくじろじろ見られていた。

 通報不可避だろう。

 殺人犯が幼女を誘拐したかのような図である。

 ショッピングモールがガヤガヤとなっているのは殺人犯に対するざわめきなのか……それとも、普段と変わらぬ活気なのか。


 とりあえず、さっさとハンバーガーやポテトを食べて、トンズラこくしかあるまい。



「──というわけで、マックドナルドとモスドバーガー。どちらがいい?」


 このショッピングモールには二つのハンバーガーのチェーン店があって、それがマックドナルドとモスドバーガーだ。


「うーん、そうですねー……どうしましょう。モスドバーガーの方が美味しそうな気がしますが……お店の名前にバーガーと付いているぐらいですし」

「そこは全然関係ないと思う」

「両方食べることにします」

「本気? お腹パンパンになって動けなくなるんじゃないのかな、もし警察に追われることになったら僕はかつげないよ?」

「そんな心配はいりません。さあ早く買いに行きましょう、ほら、急いで」

「う、うん」


 ひまわりに急かされるままに、僕はまずマックドナルドへと足を運んだ。

 レジへと向かうとそこに客が居なかったので、すぐに注文に入ることができた。

 ひまわりはレジカウンターに置かれたメニューを見辛そうにぴょんぴょんと跳ねているので、簡易的なメニューが沢山積まれている山から一枚とって彼女に渡す。


「どうも、さんきゅーです」


 と言ってまじまじとメニューを見るひまわり。

 幼女が今からおもちゃを買ってもらうかのような期待、そしてワクワクとウキウキが、ひしひしと伝わってくる。


「ご注文はいかがなさいますか?」


 そんな接客用語を言う店員さんは僕の顔を凝視する。

 本当に穴が空きそうなほど見てくるのはやめてください……。

 店員さんは一瞬視線をひまわりに移して、また僕へと戻した。


 もしかすると……バレた……?

 バレているにせよバレていないにせよ、動揺しては駄目だ。普段通りの(たたず)まいで居なければ。


「ひまわり、どれにするか決まった?」

「じゃあ、ビッグマックとチキンフィレオとてりやきマックバーガー とえびフィレオとチーズバーガーとフィレオフィッシュと──」


 多っ……。


「──待って、ちょっと待って! そんなにお金ないから!」


 僕の必死の呼び掛けをひまわりはガン無視して注文を続けた。





      ★★★




 そのあとモスドバーガーにも行って、散々だった。

 色々あってお金を手に入れていた僕だが、一万円近くあった現金は瞬く間にその姿を消した。

 ハンバーガーの猛攻により財布の中身が九割九分九厘吹き飛んだのだ。



「はぁ……」

「何溜め息なんて付いているんですか?」

「お金が……ね?」


 しかも、両手にマックドナルドの袋を携えてモスドバーガーに突撃とか……どんな挑発だよ……。店員さんの目が怖かったての……。


「仕方ありません。そんな憂鬱な気分を取っ払うために、ここでハンバーガーを食べていきましょうか」

「ひまわりが食べたいだけじゃん」


 まあ、食べるけどさ。


 僕達はそこらのベンチに座り一息つく。


「チキンフィレオもらうね」

「どうぞどうぞ、私はえびフィレオを食べます」


 袋の中をガサゴソと探り、チキンフィレオとえびフィレオを取り出し、片方をひまわりに手渡す。

 紙に包まれているせいで中身が分からないので、本当に狙ったものかは分からない。



「相席いいかしら?」


 と、突然声が聞こえたので、僕は下を向いていた顔を上げた。

 そこには古ぼけたローブを着用し、フードで顔を隠し、腰に刀を提げた女の子だった。

 ベンチなので相席とかそういうのはないと思うが。


「別にいいよ、どうぞ」

「……駄目に決まってるじゃないですか。お兄さん、下がっててください」

「ちょっと待ちなさいよ生意気幼女ちゃん。私は別に戦おうと思ってここに来たわけじゃないから。落ち着きなさい、魔法発動しようとしないで」

「……数日前、いきなり襲ってきた人が何言ってるんですか」


 にしても、魔法幼女と世紀末からやってきたようなやつが挟まれると、すごく目立つよね。周りの視線が痛い。


「まあまあ、二人とも。せっかくのブレイクタイムなんだしゆっくりしようよ」

「……分かりました」

「……ふぅ」


 どうやら戦闘が勃発することはないようだ。


「思い出すわねぇ、学校帰りにマックドナルドに寄ってた日々を」


 フードの女は、僕達の買ったハンバーガーの袋の中に手を突っ込み、その中の一つを取って食べ始めた。


「そうだね。別に何十年も前って訳でもないのに……本当に何十年も前に感じるほどに懐かしく思う」

「て言うか、あなたはなんでこんなところに来てるんですか?」


 ひまわりがフードの女に問う。


「あの世界に帰る前に、思い出の場所ってものを見ておきたくってね。そしたらアンタ達が居たからこりゃ話しかけるしかないなと思って」

「なるほど、お別れのメッセージでも伝えにきたわけかい?」

「そう言うことになるのかしら?」

「さぁねー」

「にしても、警察に追われてる割には元気そうで何よりよ」


 フードの女はハンバーガーをあっという間にたいらげて、そのゴミを袋の中へと突っ込んだ。


「おい、ゴミを入れるなよ。それくらい自分で捨てていってくれよ」

「ごめんごめん、でも急がなきゃ行けないし」

「マナーがなってないんですよ」

「そこの幼女ちゃんは黙ってなさい」


 フードの女はベンチから立ち上がり、手を振って言った。


「バイバイ。また会えてよかった」

「うん」

「またね、夏木。もう会えないかもしれないけど」


 そしてフードの女は人混みに紛れて消えた。


「あの女が居なくなったことですし、ハンバーガーを食べるとしましょう……。おお、とてもおいしそうです!」

「だなー、お腹減ったし食べるか──」


 と、僕達が一口目を行こうと思ったとき。

 二人同時にその動きを止めた。


「ひまわり」

「なんですか」

「分かってるよね?」

「ハンバーガー食べていいですか」

「もう無理だ」

「……」


 ショッピングモールに大勢の客。

 僕達が目を向けた客の集まりの中に、人混みを掻き分けこちらを指差しながら走ってくる警官二名の姿が見えた。


「逃げるよ、ひまわり」


 僕はひまわりの手を握り、立ち上がる。

 そしてそのまま引っ張るように走り出す。


「ちょ、ちょっと待ってください、お兄さん! ま、まだ一口も……一口も食べてないのに!」

「そんな暇はもうない」

「せ、せめて袋だけでも持っていきましょう! 後で食べるんです!」

「荷物になるものは持ってけない。逃走の邪魔だ」

「そ、そんな! 私のえびフィレオ! チーズバーガー! ビッグマック! 嫌ですーー!!!」


 抵抗するひまわりを無理矢理引っ張って走る。本当に誘拐してるみたいだ。

 警察が来たのは、きっとあの店員さんが通報でもしたからだろう。


 こんなピンチでも僕はなんだか笑顔になれた。

 この魔法幼女とならどんな逆境でも跳ね返せる気がしたから。

 さてと、それじゃ異世界に帰って全世界を救ってくるとしよう。






「──くっ、この恨み晴らさでおくべきか」

「──さあ、ひまわり走れ。まずは逃げるよ」
















 





 

というわけで、どうもです。番外編書いちゃいました。

個人的に主人公と魔法幼女の二人のペアは好きなんですよね。


なので書きたくなってしまいました。

最終話付近を書いているときは主人公以外全滅させるか、なんて考えていたけど、殺せませんでした。

結果、こんな番外編書きたくなるほど好きになったので……。


時系列的には最終話から二日後くらい?

自分でも微妙な設定です。いつ変わるか分かんないですね。



相変わらずの低い文章力と語彙ですが楽しんでくれたでしょうか。

これからもたまーに番外編を出すので、どうぞ楽しみに待っていてくれると嬉しいです。

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