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異世界物語 僕と魔法幼女の大冒険  作者: 猿野リョウ
第3章【盗め戦え!盗賊との決戦!】
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21話【罠と罠と罠と盗賊】

ふうっ、実は盗賊との戦いはこんなに長引くはずはなかったのに……。

すいません

 屋上に降り立った僕達は、その後階段を使い、五階のフロアへとやって来た。


「誰も居ないな……」


 一本道のまっすぐに続く廊下。左側は窓だらけ、右側は一定間隔で扉がある。

 雰囲気を鑑みるに、ここは安モーテル的な建物、もしくは安アパート的な建物だったと思える。異世界的には何と言うのだろうか。


 とにかく、廊下には誰一人として、僕達以外居なかった。


「まさか、僕らの存在がばれてるってことはないよな」

「まあ、ないでしょうね。ありえないと思います」

「それならいいんだけれど……気になる」


 とは言え、進まなければ始まらないので、僕は前へと歩き出す。そして、一つ目の扉の前で足を止めた。


「まずはここを開けてみよう。ひまわり、先に行ってくれ、僕が後ろを見る」


 さりげなく、至ってナチュラルにそう告げる。だが、彼女は、


「いや、何言ってるんですか、ふざけないでくださいよ……」


 いやいやに言われた。僕的にはふざけていなかったのだけれど。

 そんな不承不承(ふしょうぶしょう)に言われると、次からそんなこと言えなくなるではないか。


「……確かにひまわりは、補助タイプって感じだもんな」


 僕はドアノブに手をかける。


「行くぞ」


 おそるおそる扉を開けると、そこには……。


「何もない……」

「どんどん開けていきましょう。こんな拍子抜けの結果だってそりゃありますって、めげずに行きますよ」

「毎度毎度気を張って突入してると、精神が疲弊してしまうよ……」


 と、次々と扉を開けるが、結局その階には何もなかった。

 何もなくて誰も居なかった。


「とんだ無駄足……というわけでもないんだけれど、ちょっと疲れたな」

「私は特にすることないから疲れることもないですけれど」

「いや、僕の後ろをちゃんと見ていてくれよ!」


 まあいい、下の階に移動しよう。

 折り返し階段へ一歩踏み出そうとしたとき。


「ちょっと待ってください!」


 そんな声が、ひまわりのそんな声が、僕を助けた。


「……なんだこれ」


 思わずこぼれる。僕は前へと出した足を戻す。


 踏み出そうとした階段の足元には、ワイヤーのようなものが張られていたのだ。赤外線のセキュリティのような、それに気付かなかった僕。

 もしかすると、ひまわりの注意の喚起が遅れていたら、何か大変なことになっていたかもしれない。


鋼糸(こうし)ですね……しかも魔法で造られてるみたいですが」

「魔法の罠か。僕達を転ばせるつもりだったのかな?」

「転ばせるなんて、そんな優しいものではないと思いますよ。多分、引っ掛かれば足が切断されるか、できるだけ良く考えても、逆さに吊られてしまうとかでしょう」

「逆さに吊られるくらいなら大丈夫そうだな」

「足の切断は当たり前ですけれど、逆さに吊られるのも案外ピンチになるものです。お兄さんの持ってるナイフくらいじゃ切れませんよ」


 冗談だろ……それはヤバいな……まともに近づけない。


「それじゃあどうする? またいで行くか」

「……それしかないんですけれど、でもそれだけで越えれる罠だけなんて、怪しいですよね」

「…………」

「またいで終わりの罠なんて、素人にしか通じないですよ」

「それ、僕が素人だってことか」

「まあ、そういう意味も込めています」

「込めるなよ!」


 じゃあ、とにかく、僕達の今やるべきことは……。


「素人さん……じゃなくて、お兄さん。私達は今から考えなくてはなりません。二重に仕掛けられているであろう罠の全貌を」

「素人って……わざとだろ……。罠が二重に仕掛けられているって言うのは、可能性としてはありうる話なんだろうけれど、だからと言って全貌を知るのは無茶だろ、時間もないし」

「ですよね。だから全貌と言うよりは、作動条件を知るだけですね。罠にかからなければ、罠の内容なんてどうでもいいことなんですから」

「確かに……ね」


 と言っても、目に見える限りではワイヤーしかないんだから、それを避けて歩くくらいしかないんだよな。


「さて、どうしようかな」

「考えるまでもないでしょう。行ってきてください」

「なんで、僕が」

「何があっても基本大丈夫なようにサポートしてあげますから」

「いや、でも」


「視力強化に、身体強化、防御魔法、第六感覚醒、色々やりますからお願いします」


 そこまでしてくれるのなら……と言うわけでもなく、僕が行かなければこの状況は変わらないのだろうから。という理由で僕は偵察部隊、もとい、必要な犠牲として、階段に踏みいることとなった。


 ──数十秒もかからないうちに魔法が僕にかけられた。


「視力強化や身体強化、第六感覚醒は前にやりましたから、どんなことが起きるか分かると思いますけれど、防御魔法は初めてだと思うので説明しておきますね」


 と、チュートリアル。


「防御魔法と言うのは、その名の通り防御するための魔法なんですけれど、色々な種類があるんです。物体を硬化したり、魔力の膜を張ったり、専用のフィルターを作ったり、様々な魔法がありますが、今回は基本的な防御魔法である『硬化魔法』をかけておきました。名付けて『硬化点(ブロックポイント)』。お兄さんの衣服は今では、鉄壁の鎧ですよ」


 確かに服がべきべきになっていると言うか、凍っているみたいだった。


「お気に入りの服なんだけれど……後で戻せるの?」

「ええ、もちろん」

「て言うか、僕の皮膚を硬くするとかの方がいいんじゃないか?」


「よく考えてください。体が固まったら動けないんですよ?」


「ああ、そうか。そりゃそうだ」


 それにしても今の僕の服装は、下はジーンズなので、足を守ってくれるとは言え、上は白い半袖のTシャツ(変なロゴが付いている)に加え、羽織ものの黒シャツ(これまた変なロゴが刺繍されている)。

 肘から先が無防備なのである。長袖を着ておけば良かった。


 そう言えば、盗賊とかは軽装だけれど、街の検問の兵士は立派な鎧を装備してたな、羨ましい限りだよ。


 けれど、こういうときに重い鎧を着るのも、どうかと思うけれど。そう考えると魔法って本当に便利なんだなと僕はつくづく思う。


「じゃあ行ってくる」

「死なないでくださいね」


 フラグを立てないでくれ、と鬱屈しながらも、その領域へと踏みいる。

 こんなところでご逝去しちゃわないようにしなきゃ。


「よいしょっと────!」


 ワイヤーを越えた瞬間、それは襲いかかってきた。


「ナイフか!」


 目の前の壁から階段の範囲全てを、狙うようにして。


 ただ、視力強化された僕からしたら、野球で言うスローボールに見えるので、避けたりキャッチするのは簡単なことだった。


「ふうっ、びっくりした」

「大丈夫ですか、私のところにも数本飛んできましたけれど」

「まあ、なんとか。これなら罠破りも簡単だな」


 と、言った瞬間、次は足元に違和感を感じた。


「あっ」

「い」

「う……って、なんでやねん!」


 僕がノリツッコミをした時点で、既に足首にワイヤーが巻き付いていた。

 そして、どういう原理でどういう仕組みか知らないが、ギュオオオ、と音を立てて、僕は逆さに吊られてしまった。天井の近くに。


「嘘だろ……」


 ゆらゆらと揺れる僕。


「ひまわり、助けてー……」

「全く、油断したお兄さんが悪いんですよ!」


 プンスカ怒って、僕を詰るひまわり。


「すぐに助けますから待っててください」

「あいよ、早めによろしく」


 すぐに抜けれるだろうと、思っていたら、立て続けにマイナスな出来事が起きる。

 カランカランカラン、と大きな鈴の音。

 こ、これはまさか。


「すいません、お兄さん。これは音で仲間を呼ぶ罠のようです。後で助けにくるので──必ず!」


 そう言ってひまわりは反対方向へと走り去っていった。


「サウンドトラップめ! くそ、ワイヤーを解かないと」


 ひまわりを責めはしない、僕が彼女の立場でも一旦隠れるだろうから。

 そして、殺されずに拘束されていたら、助けに行く。そんな感じ。


 僕はナイフを使って、ワイヤーを切断しようとするが、全く切れそうもない。


「仕方ない、神器を使うしかない」


 僕はすぐに神器を取り出した。

 そして、引き金を絞り、魔弾を放つ。

 大きな極太レーザー顔負けの魔弾はワイヤーを破壊し、ついでに五階の天井、屋上の床に大穴を開けた。


 僕を吊る物がなくなり床に落下。

 背中から落ちたのだが、決して低いとは言えない高さからだったので、かなりのダメージを予想していた。

 けれど、補助魔法のお陰か痛みはなかった。


「今気付いたんだけれど、満月なんだな」


 天井の穴から見える月に僕は見とれる。

 そんなときにも敵は迫ってきているに決まっているのに。

 実質、空に向けて魔弾を撃ったには間違いなく、天に向かって大きな魔力の塊を放つのは、自分の居場所を教えているようなもの。

 それに合わせて、サウンドトラップ。

 完全に敵襲だと思われていることだろう。


「おい、動くな!」


 と、誰かの声。

 当然の如く、盗賊の声である。


 階段の折り返し地点に居る僕を見たのだろう、数人の武装した盗賊がそう言って、階段を昇ってきた。


「お前らこそ動くなよ!」


 僕はそう叫んで、天井の大穴に向けて魔弾を放つ。


「な、なんだあの武器は!」

「やべーぞ!」


 威嚇、脅しとして天井に撃ったのは理由がある。

 この神器は、屋内での戦いに全くと言っていいほど向いていない。


 何故なら、天井に大穴を開けるほどの武器。そんなものを、ボロい建物で使えば、崩れてしまう可能性がある。


 そこらじゅうに穴が開いたり、うっかり支柱を破壊したりしてしまえば、一気に崩落、僕まで瓦礫(がれき)の下敷きになってしまう。


 つまり、僕はこの神器をほとんど使用できない。


「動けば殺すぞ。後、武器を置け」


「くっ」

「お、お前ら武器を置くんだ、言う通りにしないと殺される」


 何とか脅しに成功したが、僕がこの神器を使えないことが知られたら、一気に攻め立てられる。

 背水の陣なのは相手もだろうが、僕だって同じだ。


 とにかく近付いて、ナイフでこいつらを殺す。


「うおおおおお!」


 と、突然一人の盗賊が叫びながら、僕に突進してきた。

 階段という足場の悪い場所。組み付かれると、補助魔法の恩恵を受けている僕でも辛い。

 数人に組み付かれたら尚更だ。


「今だ!」


 そして残った三人の盗賊が僕に襲いかかる。


「ヤバい……」


 すぐさま僕に組み付く一人の盗賊を襟を掴み、強烈な一本背負い。やって来る三人の盗賊に向けて、放り投げてやった。


 人間砲弾を食らったのは二人、残った一人は一瞬怯んだが、すぐにこちらへ向かってくる。


「一人だけなら楽勝だ」


 もちろん謙遜などではないし、不遜なこと言っているわけでもない。単なる事実。


 僕は、ドカッ、と蹴って、盗賊を階段から突き落とす──蹴り落としてやった。


 階段から転げ落ちたとは言え、盗賊の四人はまだ死んではいない。立ち上がろうとしていた。


「……一応、保険をかけておくか」


 ここで、殺しても良かったのだが、気絶させるだけにしておこうと、僕は思う。この保険に効果があるのか、あったとしても使われるときがあるのか。そういうことだ。


 とにかく、僕は四人の盗賊の顔面を蹴って気絶させたのである。

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