2話【何だ美少女かよ】
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「うわっ!」
どうやら僕は意識を失っていたようだ。倒れていたのか。
僕の意識が戻った時、周囲の景色は元居た遺跡とは全く違っていた。
周りに広がっていたのは圧倒的に広大な大草原だったのだ。
辺り一面に広がる大草原で、他に見えるもので気になるのは数えるほどしかない。
「て言うか、ここ、どこなんだ? 辺り全体ドバーッと大草原……。地理の教科書に載っていたモンゴルの大草原みたいなところだな。辺り一面が全部緑色に染まってるじゃないか……」
すごい大自然だな……。
「こんな大自然は地球に存在してるのかな? いや、モンゴルの大草原があるから存在はしてるんだろうけれど……」
よく考えなくても、あれは写真だから……実際に見たことがあるわけではないから、本当なのかは知らない。
やはりこの目で見ないことには真実を真実として捉えにくいからね。
「んー、少し遠くに風車が一つ……後はすぐ近くに大きな湖が一つか……。それ以外に言うことがないなこの草原は」
草原に対してならば言うことはあるけれど、他の何かに言うことがあるかと言われればない。そういうことだ。
──にしても、なんだかとても心地よい。
「はー、なんだこれ、いいな。すっごい気持ちいいや。天候といい気温といい風といい、半端ないくらいに環境状況が睡眠にジャストフィットしてる……、リラックス効果が高すぎる……」
ちょうどいい暖かみを与えてくれる太陽。
光の熱をさらにいい方向へと引き立てる爽やかな風。
そして目に映るとても美しい綺麗な湖。
水が透き通っていて、心もクリアになった気分だ。
「この湖で魚釣りをしたいな……。それを刺身で食べたり、塩焼きにして食べるのもいいな…………。眠たい……」
今の状況に何かを思うことなく、僕の瞼が再び閉じられようとしていた。
だが、それを止めたのは鼻腔に僅かに引っかかる匂いだった。
微かに感じる甘い匂い。焼きたてのクッキーのような。
「クッキー?」
僕がそうやって口に出してみると、目の前に一気に影が差す。
「ん?」
同時に女の子の声が聞こえた。
「クッキーですけれど? それが?」
それが? って……。
仰向けに寝転がっている僕の顔を覗きこんできた少女は、サッと僕の横に座った。
「あなたはこの辺に住んでいる人ではないですよね?」
「え、まあ、うん」
「じゃあ冒険でもしてたんですか?」
「まあ、それに近いかな」
……女の子!? 女の子ということに気付いた僕。
「これは失礼しました、先に名乗っておくよ。僕の名前は亜美寺夏木、夏木と呼んでくれ」
僕は颯爽と立ち上がり、英国紳士のようにお辞儀をして自己紹介をした。
すると少女も立ち上がり言う。
「こちらこそ自己紹介が遅れました。私の名前はマリーです、勝手に……いきなり話しかけてすみません」
「ああ、いいんだよ別に。ちょうど良く僕は困ってたんだ。人に聞きたいことがあって」
いやー、それにしても、この子可愛いな。現代に存在するアイドルを越えに超えた美少女だよ。
……何故かアリスと不思議な国の主人公?であるアリスみたいな服装してるな。
それエプロンなのか? 何だか色んなシチュエーションを想像してしまうよ。
いや、もう想像というか創造してしまうレベルかな。
シチュエーションを妄想するのではなくもう創造により造り出してしまうんだ。
よく見ると顔から下は大人っぽくて結構いいスタイルしてるな。特にその豊満なバスト。
だけれど顔が童顔だと言うのと、服装のセンスというか幼さからすると俺より年下なのは確かだ。
恐らく十四歳。であってほしい。
童顔のロリ巨乳か。
別段、僕の好みと言うわけではないのだが、可愛い女の子である以上放っておくのもどうかと思われる。
ここは優しいイケメン紳士のように僕は振る舞っておくべきだろう。
そうすれば時間かかるとしても、着実に彼女の俺に対する好感度は上がるはずだ。
よし決めた。
最初の一言は助けを求めるような感じにしよう。
例えば、道に迷ってしまったので案内してもらえませんか? 的な感じで。
そしてあわよくばこの子の家に侵入するんだ。
そして更にあわよくばこの子とイッチャイッチャするんだな。
そして更に更にあわよくばこの子と添い遂げよう。
さあ物語の筋は決まった。
後は彼女と一緒に居るなかで優しくて紳士であって頼り甲斐のある所を見せていけば、120パーセント僕に惚れてくれるはずだ。
失敗は許されないぞ。
本能のままに動いては駄目だ。
だからといって理性だけに従っては、彼女を落とすことは無理だろう。
本能と理性の行動を使い分けるんだ。
野生の感覚で彼女が望んでやまない、理想な♂の子像というものを探し当ててみせる。
そしてアイアムパントマイマー……じゃなくて鏡に映るかのように、その理想の♂を演じきってやる。
雄として♂として漢として男として最大の物を見せつけてやる。
「──あのぉ、ジロジロ見ないでくれますか……?」
「あっ、はい」