一枚の写真
お題:どす黒い祖父 制限時間:15分
(必須要素なし)
「これが……お祖父ちゃん?」
僕は唸った。
いかにも古ぼけた、セピアの、角がぼろぼろの、ところどころ折れた跡がもう直しようもない、一葉の写真。
その中央に写っているのが、祖父だという。
僕が生まれる前に亡くなってしまった、その姿を見るのは、写真としても初めてだった。
「そうよ」
母は何事もないかのように頷く。
「お祖母ちゃんの遺品を整理してたら出てきたの」
祖母は先頃亡くなって、その事後処理にしばらく母は実家通いを続けていた。
さすがに疲れているのか、反応は気怠い。
「あのさ……でもさ、これ」
僕はなかなかその先が言えない。
なんとなれば、祖父だと示されたその姿は、ただの黒い影としか見えなかったからだ。
いや、影、というにはあまりにもどす黒い。
セピアの写真、その有り様自体は、なんというか非常にリアルな、「ザ・思い出の一枚」というべきもので、そこに写る風景は、何度か目にした母の実家の庭だというのに、中央の、人の形をしている(と思う。見つめるうちにわからなくなるのだけれど。)何か、はあまりにも現実離れしていた。
「擬態はうまかったんだけどねえ」
母は言う。
「人間の目には普通に見えてたはずだけど、どういうわけか、カメラは誤魔化せなかったんだわ。原始的な作りなのにね」
僕は初めて、僕のルーツが地球外にあることを知った。
即興小説トレーニングに初めて投稿した作品。
以下、自分メモ的に。
祖父は宇宙人で、祖母は地球人、故に僕はクォーター、のつもりで書いたけど、少しわかりづらいかも。
写真を祖母とのツーショットにして、祖母の方はちゃんと写っている形にすればよかったかしら。とも。
母の台詞内で「人間の」と言わせてしまったので(地球人の、ではなく)、深読みするとコズミックホラーっぽいだろうか。