六話 ~妹達との再開~
夏休み終わったけど、更新だぜ!
それでは、どうぞ♪
「ヤッホーお兄ちゃん♪」
「おはよう、ハル兄。それと沙奈さんも」
「うっ、お、おはよ!バカ兄貴!」
「「............」」
僕と沙奈は、二人同時に言葉を失っていた。あれだね。人間、よほど驚く事が起こると、黙り込んじゃうもんなんだね......身をもって体感したよ。
―――目の前に居るのは、件の妹達。
腰ぐらいの位置まで長く、それでいて沙奈と同じような艶を出している金髪。髪の色とは離れている、典型的な日本人のような黒い瞳と、透き通った肌に整った輪郭。誰がどう見ても、まごうことなき美少女......しかしヤンデレ。
―――妹達の一人、『桐ヶ谷 千棘』。
そんな千棘とは対照的な、肩までしかない黒髪のショートカット。胸が残念だが、他は文句のつけようもないほど発育の良い体つき。その姿はどこか大人びていて、知識的な雰囲気を醸し出しているまごうことなき美少女......因みにクーデレ。
―――妹達の一人、『桐ヶ谷 瞳』。
その細く美しい四肢から何故そんな力が出るのか?と疑いたくなるほどの身体能力を秘めた発育の良い体格。その金と黒の混じっている髪は、千棘と瞳の中間ら辺の長さ。この髪色は変だと思ってしまうが、それさえも似合っているとしか言いようのない、これまたまごうことなき美少女......だがツンデレなのがキズ。
―――妹達の一人、『桐ヶ谷 三春』。
......さて、今の僕は、かなり緊張している状態だ。
だって妹達との一年ぶりの会話だよ?携帯越しで話すのとは訳が違う。
僕が妹達に何を言おうかと悩んでいると、隣に居た沙奈が先に言葉を発した。
「おはようね、千棘ちゃん、瞳ちゃん、三春ちゃん。こんな所で一体どうしたの?新入生の来る時間は、もう少し先だと思うんだけど?」
......ああ、確かに。沙奈の言葉で思い出した。
僕達はいつも通りの登校時間だけど、新入生達はその三十分ぐらい後だったハズだ。つまり、千棘達がここに来るのは早すぎる......。
そんな僕達の疑問に妹達は、さも当然といった風に言ってきた。
「そりゃあお兄ちゃんと会えるんなら、一分一秒でも早く会いたいからね♪」
「兄に会いたいと思う妹が居ても、何もおかしくなんかないでしょ?」
「べ、別に兄貴に会いたいって思った訳じゃないけど!ちょ、ちょっと顔を見たいなぁって思っただけだし!!」
「流石は僕の妹達。考えが凄いなぁ......」
凄すぎて泣けてくるよ。
一年前にも比べて結構成長してるけど、ブラコンッぷりが何よりも成長してない?お兄ちゃん妹達の成長が嬉しすぎて泣けてくるわぁ......マイナスな意味で、だけど。
「いやだなぁ、ハル兄。セクハラだよ......」
「―――え?」
そんな考えをしていると、瞳が頬を染めながらそう言ってきた。
え?別に僕、セクハラになるようなこと言ってないよね?
「そんな......『流石は僕の妹達。感度が凄いなぁ......』だなんて......きゃっ♪」
「言ってねぇよ!!」
セリフを変な方向に捏造するな!!―――ええいっ!頬に手を当てて顔を朱に染めるな!!腰をクネクネするんじゃない!!本当に僕がそんなこと言ったようじゃないか!!
「うわぁ......ハル君......」
「沙奈ぁ!?君は一番近くでさっきのセリフを聞いてたよね!?どうしてそんなゴミを見るみたいな視線を僕に向けるのさ!!」
やめて!唯一の味方にまでそんな視線を向けられたら、興h......傷付くじゃないか!!
「......ゴホンッ。それでさ、お前らに言いたいことがあるんだけど?」
気を改め直して、僕は妹達にそう言った。そう言わないと、何かに目覚めそうだからだ。
対する妹達は、全員『?』となっている。そんな三人に、僕は言いたいことを言う。
「いや、会いたいって気持ちは分かるんだけどさ。もうちょっとこう......場所を、ね?」
「?......あぁ、そう言うことだね」
「なるほど。確かにこれは......」
「流石に視線が集まりすぎだね......」
―――そう。この妹達は全員美少女だから、勝手に周りからの視線が集まってくるのだ。
今更だが、ここは学校の校門前。
校門だから、もちろん通学してくる生徒達はここを通って行く。だからこそ視線が集まってくるのだ。
......でもね、妹達を見て『おぉ、やべぇ可愛い.....』ってなるのはいい。次に沙奈を見て『おぉ、こっちもなかなか......』ってなるのも構わないけど、次に僕を見て『......あれ?』ってなるのはやめてくれないかな?すごく傷付くからね?
「ふふん。私達にそんな視線を向けるのは良いけど、私達はお兄ちゃん一筋だからね?」
「ええその通り。つまりは、貴方達なんて眼中にないってことよ」
「べ、別にバカ兄貴の事なんて好きじゃないけど、あ、兄貴のそんな視線は受けたいかなぁ......な、なんてね!!」
「おおう。周りからの視線が痛い痛い......」
妹達がそう言った瞬間、殺気のこもった視線を男子達から向けられた。
どうして妹達に向ける視線と、僕に向ける視線が全然違うのかな?妹達に向ける視線は羨望。僕に向ける視線は殺気。ダメ、サベツ、ゼッタイダメ。
とそんな感じで周りからの視線に耐えていると、千棘が沙奈を嫌そうな目で見ながら口を開いた。―――あ、嫌な予感が......。
「それでお兄ちゃん。会ったときから気になってたんだけど、お兄ちゃんの隣に居る雌豚は誰なのかな?」
ビシッ!
千棘からその言葉が聞こえた瞬間、僕の隣からそんな音がした。
千棘......急に何てことを......!と言うか、お前らは全員沙奈を知ってるだろ!!
僕は恐る恐ると言った感じで、沙奈の方に視線を向ける。
「......(ニッコリ)」
そこには......笑う死神が居た。
その沙奈の笑顔を見た瞬間、僕は顔を沙奈とは反対の方向に向けた。もちろん冷や汗を流しながら......であるが。
そして笑顔を未だに絶やさない死神......もとい沙奈が、千棘に向かって口を開く。
「雌豚ってもしかして......私のこと?」
ニッコニッコと、見た者全てを震え上がらせるような笑顔でそう言う沙奈。
もうやだ......心の底から帰りたい......。
見てよあれ、瞳や三春でさえ震えてるんだよ?横を通って行く生徒ですら、沙奈の笑顔を見て『―――ヒッ!?』ってなるんだもん。その笑顔を真正面から受けて笑ってられる千棘って一体......。
「雌豚に雌豚って言って何が悪いの?お兄ちゃんを付け狙う卑しい豚が......」
「実の兄のことを、異性として好きなっている危ない人に言われたくないなぁ......?」
な、なんだ!?二人の間の空間に、歪みが出て来てるぞ!?
へい瞳!この状況、お前の頭で何とか出来ないのか!?―――え?無理言うな?さいですか......。
僕と瞳が諦めかけている時、救いの手は現れた。
「千棘、よしなよしょうも無い。そんなんじゃ、兄貴に嫌われちゃうよ?沙奈さんも、ここは抑えてくれないかな?」
「むっ......しょうがない......」
「......三春ちゃんが、そう言うなら......」
おお!ありがとう三春!お前のおかげで助かったよ!!足腰が恐怖で震えてなかったら、なおカッコ良かったよ!!
僕と瞳は、同時に安堵の息を漏らした。「......それに」―――ん?
「それに兄貴は、シスコンなんだから沙奈さんに勝ち目はないんだよ!!」
前言撤回。全然助かってなかった。と言うか勝ち目って、君達は一体なんの対決をしてるんだい?
まぁもちろん、そんな三春の『兄貴シスコン疑惑』に異を唱える者が一人......。
「違うね三春ちゃん。ハル君はシスコンなんかじゃないよ!」
言わずもがな、沙奈である。
やはり幼なじみだけあって僕との付き合いが長いから、僕がシスコンじゃないと分かっているようだ。
グッジョブだよ沙奈!今回は本当に助か......。
「ハル君は、幼なじみ系が好きなんだよ!!」
ってなかった......。
もしかして沙奈、今朝のあの本のことで勘違いしてらっしゃる?
しかし、やはりここで僕の『幼なじみ好き疑惑』に異を唱える者が......まぁ、三春なんだけどね。
僕の予想は見事に当たり、三春はそんなバカなっと言った感じで沙奈に突っかかる。―――ってオイコラ、千棘と瞳。何を我関せずみたいにこっち見ながら笑ってるんだよ。
「ち、違うよ!兄貴はシスコンだってば!!」
「そんなことない!!ハル君はれっきとした幼なじみ萌えの人種だよ!!」
「あ、兄貴の本の趣味は妹物だよ!間違いないって!!」
「いや、ハル君の趣味は幼なじみ物だよ!朝確認したから、まず間違いはない!!」
「ねぇ君たち。ここが校門の前だって理解してるかな?」
もうやだ......泣きたい......。
だってさっきから歩いてる生徒達からの奇怪な目線がツライんだよ。しかも僕の名前があがってるから、知り合いが僕の方を向いてくるしさぁ。
しかも話の内容が内容だ。
どうして僕のコレクションの趣味を周りに大声で言ってるの?え、なに?これって公開処刑?まだ僕は死にたくないよ......?
「と、とにかく落ち着こうよ二人とも。ね?」
そうしないと、主に僕に危害が及んじゃうから。そう思い、必死に二人を宥めようとする僕。
しかし、二人の争いは止まるどころか、さらにヒートアップをしてきたようだ。
「そ、それに兄貴ってば、ギャルゲーをする時は絶対妹から先に攻略するんだよ!?これはもうシスコンでしょ!!」
「待つんだ三春!僕のしているゲームのプレイ内容をどうして君が知っているの!?」
「いいや違うよ三春ちゃん!何でハル君が妹キャラを先に攻略してたのかと言うと、その妹キャラ達が、全員ハル君の趣味嗜好であるメガネっ子で巨乳なドジっ子だったからだよ!!」
「沙奈!君も君で、どうしてそんなに事細かく知ってるの!?」
「「ひとえに、愛だよ!!」」
「そんな愛はどうかしてると思う!!」
そして君達の頭もどうかしてると思う!
結局そんなこんなの妹達とのやり取りは、予鈴のチャイムが鳴り響くまで続いたのだった......。
―――因みに、この一年ぶりのやり取りが楽しかったと僕が思ったのは、完全な余談である。余談ったら余談なの!!つ、ツンデレじゃねーし!!
千棘と沙奈は仲が昔っから悪いです。あと、千棘や三春の髪が何故金色かと言うと......まぁ、本編で後々説明します。
それでは、次回で会いましょう!