小さな子供
お姉ちゃん。冒険って面白い? 私にその子はそう聞いた。
「わからぬ。友人が私達はボウケンシャだと言った」その友人はもういないが。
「ふ~ん。じゃついてこっ! 」 ぴーたー が なかまに なった !
……。
……。
森を旅だってから『春』が何度きただろうか。私が歩を進めていると異様な光景に遭遇した。
主がいないのに浮遊し、大柄な男をひたすら殴りつける謎の棍棒。
「だからやめておけばよかったのに」といいながら地面にのたうってケタケタと奇声を上げる子供。
歳はエルルほどだろうか。エルル以外の『子供』はあの村以来だ。とても可愛い。
「失礼……どういった状況なのだ? 私はエルフ族の物見だ。人間の世界を見に来ている」
棍棒に殴られ続けている男に問いかけると「何でもいいから助けろっ! 」と怒鳴りつけられた。
「あ~ダメダメ。そのおっちゃん、ぼくの荷物を勝手に空けたんだ」ふむ?
「このバックは『盗賊たたき』って言って、どんな荷物でも入るんだけど、ぼく以外があけると」
そういってその子はその男に目をやる。「こーなるんだっ?! 」「ひぃぃぃっ??! 」
「ふむ。状況は理解した。では失礼する」「ちょっとマテやっ?! 助けろっ?! 」
「泥棒は良くないよ」「グラスランナーが言うなっ??!! 」……グラスランナー?
子供を見る。確かに妖精族の証がある。
「グラスランナー。この世界で生まれた我らの亜種か」「灰? 」
その子は小首をかしげている。
「気に入ったからもらっていく。では」「まてぇえええぇ?? 」
男を無視し、私はその子を抱えて歩き出す。
「あ~あ。あの棍棒は人を殺しはしないけど、結構容赦なく叩くんだよ? 」「そうか」
「おねえちゃんって、エルフ? 光り輝く人は珍しいね」「そうか? 」珍しいのか。
「ねね。お姉ちゃんは物見なんだね」「ボウケンシャでもある。友人がそういった」
「ぼくもついていっていい? ぼく、可愛いおよめさんがほしいんだ」「ほう」
少年を抱きかかえながら、私は歩を進める。
少年は私の手から逃れたかと思うと私の背に駆け上って抱きついた。
後ろから棍棒が追いかけてきて、彼の背のバックにおさまった。
「お姉ちゃん。冒険っておもしろい? 」
判らぬが、あの『友人』はそう言っていた。だから、泣かなくていいと。
「『面白い』そうだが。……わからぬ。そういった友人は私達をボウケンシャだと言った」
……その友人はもういないが。
「ふ~ん。じゃついてこっ! 」少年は「ピーター」と名乗った。
こうして、私は再び二人で旅をすることになった。