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星を追う者 ~話が長い。三行で~  作者: 鴉野 兄貴
『山賊』に出会った
7/77

『冒険者』からは へんじがない ただのしかばねのようだ

『山賊』が動かなくなった。そのまま焼いて土に還してくれといわれた。

兄弟の木は人間にはない。死。……二度と会えない。最後に『山賊ではない。冒険者だ』といわれた。

だから、彼のコトは以後冒険者と呼ぶ。そして彼の名前を忘れない。

……。

 ……。

 「おい。『山賊』。何故動かない」

私がそういって彼を揺らすと彼は呻いた。

人間達が『冬』と呼ぶ季節を10越える前。

私たちは人間達の、とある村を魔物達から護るために闘った。


 「どんな傷でも私は癒せるのだ」

そういって完全なる癒しの力を注ぐが……発動しない。


 周囲の村人は瞳から塩水を流している。

「命の精霊よ。この者を癒せ! 癒せッ! 癒せっ?! 」

何故だ? 何故だ? 命の精霊の力が、『山賊』から消えていく。


 村人達は一斉にくずれおちた。

大声をあげて嘆きの精霊を呼び出し、

瞳から、鼻から塩水を滝のように流す。


 「無駄……それよりかさ。ディーヌ」「なんだ? 」

「俺、ウインドって名前があるんだけど……」「ウインド……」

「あはは。やっと呼んでくれたか」「お前が私の名前を呼ばないからな」

「……あと、山賊じゃない。俺は、『冒険者』だ」

「ボウケンシャ……」

「俺の身体は荼毘だびしてくれや……あはは。

あと、わがままなんだが……俺の名前、ずっと覚えていてくれ。

お前って不老不死なんだろ……光栄だぜ……」


 動かなくなった。何故だ。

「おい。動かない。癒しの力も効かない……命の精霊の力が去っていく」


 「……うああああああん!!!!!!! 」

皆、瞳から塩水を流していてマトモに会話できないらしい。

「死にました……」「私達のためにっ!!!!!! 」

「いい人だったのにっ!!!! 」「冒険者のお兄ちゃんっ!!! 」


 「死ぬ? とは?

……身体が壊れたのなら。兄弟の木に作り直してもらうと良い。数百年後には会えるだろう」


 「ありません」「……?? どういうことだ? 」

「そのような木は、人間にはありません」「……何? 」

私は驚いて彼の手を握った。動かない。動け。


 「ウインド」

動け。人間はこういう相手をなんと言うのだろうか。


 「友達を私達の所為でっ……! 」

そうか、『友達』と呼ぶのか。


 私はウインドの身体を炎の精霊に預け、その村を去った。

ウインドよ。お前の名前。忘れない。


 瞳から塩水が止まらない。

村人曰く、これは『涙』と言うらしい。


瞳から流れ落ちる嘆きの精霊の祝福は、冷たく。暖かかった。

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