光の弓を射よ
「光の弓を扱えるものこそこの国の後継者。神に認められし者」
私たちは海賊の差し向けた刺客と戦いながら先代王が封印した光の弓を求めその遺跡に挑んだ。
……。
……。
海賊たちは王を廃し、それまで虐げられていた魔導士たちによる新しい国を作ると謀ってその国を乗っ取った。
国王夫妻とその娘である王女は獄中に。大臣たちも散り散りになった。
虐げられていたと主張する魔導士たちはかつて自らが貴族だったからと称し、
魔力を扱えぬ普通の人々を劣等な生き物と断じて悪政を始めて久しいそうだ。
民の願いはかつて海難事故で姿を消した王家の娘が帰還し、
悪逆非道の魔導士たちを討ち国を取り戻してくれることらしい。
まったくもって愚かな願いだ。自力でなんとかしないのか。
そう自らの思いを告げるとシーラに苦言を放たれた。
『光の弓』は弓としても強力な武器だが、
古の魔導兵たちを呼び起こす鍵でもある。
そのようなものを今の人間たちに渡すわけにはいかない。
『女王』からの指示を受けた私は『光の弓』の封印もしくは破壊を行うため、『教授』はここぞとばかりに墓暴きを行うため。
尤も本人曰く『王家公認で遺跡調査を行える機会』とのことだが。
シーラはそんな兄を諌めるため。
ファンはかつての友を名乗る男の為に。
ラッキィは私とシーナに付き合う形で今回の冒険を決定した。
私たちは魔導士たちに『光の弓』を奪われる前に先代がかの弓を封印した墓所に侵入した。
墓所は思ったよりも快適で適度に涼しく適度に湿気がある。
壁に描かれた絵の数々を見て『教授』は大喜びでシーラに記録魔法を指示していたがそのようなことをされても困る。自力でやってくれと頼むことになった。
この男は戦力としては頼りになるが私から見ても少々浮いている。
最低限の正義感もあるが信用するには少々危険な男だと思う。
そう考えれば私はウインドの事を信頼していたのだな。可也困った男ではあったが。
「頼むから以前のようにうっかり毒を顔に受けるミスをしないでくれ」致死性の猛毒であり、お人好しのカリンがいなければ彼はそのまま黄泉路に旅立っていたことを指摘すると彼はバツが悪そうな表情を見せた。
「あれは本当にミスだった」彼の持つ罠発見及び解除技術は優れたものだ。我々の中で最も盗賊の技に秀でたシーナより更に優れているほどだ。だが遺跡調査となると彼は浮足立つ。
そのシーナは魔法のランタンを手に周囲の警戒を怠らない。
墓所の内部は魔法の明かりで覆われているが墓所の設計者の意図次第では何時消えるかわからぬ光をあてにするわけにはいかない。
人間は暗闇では行動できない。人間は不便だ。
炎は空気を汚す。『空の斧』から新鮮な風を作り出し、清浄な空気を確保する。
私たちは探索を開始した。
結論だけを言えば魔導師たちに私たちは押されていた。
古の魔導兵が復活し、彼らの無限の体力と無機物で出来た装甲の前に『霧雨』もほとんど通用しない。ラッキィが叫ぶ。「ディーヌちゃん! みんな! ボクの近くにッ 」
彼の周囲に『幸せ』を象徴する香りと味。光と祝福の声が集っていく。
『祈り』。神に直接訴える力だ。しかし命を失いかねない。
光の弓は輝く光の柱に封印され、神族である私ですら手も触れることが出来ない。
ファンとシーラは長巻を手に魔導兵と激しく切り結び合い血路を開いているがそれも長くない。
『教授』は魔導士のリーダーとの戦いで力尽きて動けない。
シーナも立っているのがやっとという状態だった。
「光の弓」シーナが呟く。
「ディ。私をあの弓の元に連れて行って」どうするつもりだ?
「はやく! はやく! みんなが呼んでいるの! 」???
魔力を使い切った私は彼女の肩を抱え、光の柱の前に立つ。
シーナの優しい。ともすれば気弱に見える瞳は決意に満ちている。
彼女の指がゆっくりと弓を包む光の柱に伸びていく。
「やめろ。手が消し飛ぶぞ」「それならそれで構わない」
光は果たして彼女の指を、手を受け入れ、弓へと導いていく。
天に向けて迸る光は収縮し、雷鳴となって彼女の身体を撃つ。
「魔導王の名において、我は命ずる。我に忠誠を誓えッ 魔導兵どもッ」
彼女の掌から『矢』が飛び出した時、私はかすかに『恐怖』を覚えていた。




