さぁ 犯そう
『山賊』が改めて襲い掛かってきた。私は彼を撃退した。
人間の前で肌を見せると彼らは理性を失い。塩水を噴出し、植物を枯らすことを私は学んだ。
人間は恐ろしい種族だ。今後は人間の前で肌を見せないように努力しよう。
……。
……。
「お前無茶苦茶強いじゃないか」
『山賊』は大地に口付けをしている。なんらかの儀式なのだろう。
若干遡る。
「……前に確認したときは、尻の穴すらなかったんだが」
「おそらく、貴様に食事を薦められてからだろうな」「……どういう身体してるんだよ」
「? こういう身体だが? 」
「わかんねぇよっ?! 」
私は丁度よいことに革鎧を脱いでくつろいでいた。
「見え難いのなら再度確認すれば良いだろう」
春風と蜘蛛の糸で織った服を脱ぎ捨てると、彼は何故か「ごくっ」と言う音を立てた。
「其の音はなんだ? 」
「ごくっ 」????
「……この一ヶ月、女とヤッてねえんだ」
「よくわからんが、大変だな」「ああ。大変だ」
「尻の穴でいいからやらせろっ?! 」「……?? 使用目的が異なると思うのだが」
「ニア 」「 そ う か ん け い な い ね 」 「……」
私は慣れぬ身体と遠のいた精霊の声に苦労しながら、彼を撃退した。
……冒頭に戻る。
「お前無茶苦茶強いじゃないか」
「お前が弱すぎるだけだ」『本来の身体』だったら彼は死んでいる。
「そもそも、ギンカはやったし、繁殖行為は行わない約定ではなかったか? 」
「人間は、裸の女を見ると理性を失うことがあるんだよっ?! 」「……人間は大変だな」
恐ろしい種族だ人間と言うモノは。理性を失うことがあるのか。
「一応、言っておくが。排泄口は生殖行為を行う穴とは異なるものらしい。
構造上そのような用途を想定していない筈だ。大事な身体を壊されてはたまらない。気をつけてくれ」
「お前にとって大事なものでも、相手次第では違ったりするんだっ?! 」「……そうなのか」
うむ。我が種族は御互いを尊重するのだが。人間との語らいは未知ばかりで興味が尽きぬ。
「すくなくとも、私が恋をしないかぎり、生殖器は出来ないだろうな」
そう言い放つと、「俺、どういう立場なんだ」と彼は瞳から塩気のにおいのする水を出した。
人間は労せずして瞳や肌から塩を作ることが出来るらしい。やはり、人間は恐ろしい種族だ。
……今後は肌を人間の前で見せないよう努力に務めることにする。