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好きだからこそ
『氷の魔王が去った後、春風を呼ぶ精霊が隠れ家から姿を現し春が来る』そんな伝説がまことしやかに伝わるようになって久しいが。
少なくとも彼が私から逃げ切ったことは今のところ一度もない。
……。
……。
「見つけたぞッ 」私が再び彼に出会ったのは冬が去り春が訪れようとしている光曜日であった。
「や、やぁ」彼は再び黒い髪に戻っている。まぁいつも思うがこの醜悪な容姿で不老の身になったなどお笑い草だが。
「何処の女と楽しんでいたか正直に話してもらおう」「ま、魔王に喧嘩売るわけないしッ 」
そういえば永い間ゆっくりと話したことはない。
大抵彼と私は大喧嘩の末、『永劫の氷棺』に私が彼を封印して連れ戻すのが常だ。
「たまにはゆっくり話をしたいものだな」「そうですよね。いつも喧嘩してばかりですからね」
珍しく私がしおらしく話すのを見て安心した様子を見せる彼に私はすかさず『永劫の氷棺』をかけた。
人間の世界ではこの技を『こいのふぇいんと』と言うらしい。




