空腹を満たしたのに『身体』がフラフラする
身体と心が結びつかない。意識の混濁というものか。これも身体に慣れていない所為だな。
そう思っていると、『山賊』は時々パタンと横になり、『グーグー』と不愉快な音を出して私の相手をしてくれないことに気がついた。大したことではないが。不愉快だ。
……。
……。
「……お前、寝ないのか? 見張りとしては便利だな」
「……? 寝る? 」「ああああっ?? もうテメェを抱く気なんかないからなっ??! 」
「……? 」
「お前は、その目をしているときとウサギみたいな耳が動いていないなら、何を考えているかワカラン」
「耳など動くか。子供ではないのだぞ? 」「動いてるっ! ものすっごく動いているよっ!? 」
『山賊』はそういうと、「そーいえばお前の名前を聞いてなかったんだが」
「……♪ 」
「綺麗な歌声だったな。で、お前の名前は? 」
パチパチと手を打ち合わせる不思議な動きを見せる『山賊』。
「さっき教えたぞ」
「……まさか。さっきの唄か? 」「其の通りだが」
「長いっ?! 呼べるかっ?! 」「……私たちは普通に呼び合っているのだが」
「お前らの時間感覚に付き合えるかっ?! 1秒で呼べる名前にしろっ?! 」
「――」
「……今度はなんだ? 」「精霊の言葉だ。心にある言葉を直接伝えることが出来る」
「……人間にわかる言葉にしてくれ」「難しいな」
こうして、私は『ディーヌスレイト』と名乗ることとなった。
かつて私が飼っていた犬の名前である。父は狼と言って聞かないが。
『山賊』という下劣な種は如何な不思議か『冒険者』なる種になったという。
種が変わるとは。人間とは誠に興味深い。『風の声』に乗せ、女王に報告しておこう。
「ところで、お前が死にそうな理由が判ったぞ」「ほう」
「目を閉じて、横になると解決する」「わかった」
「凄いな。貴様は『イシャ』になれるぞ」「……」
身体が軽い。意識との接続が格段に楽になった。謝意を述べると彼はまた頭を抱える呪術を行った。