第二部 『星を追う者達』 プロローグ
はじめまして。我が名はディーヌスレイト。魔王と人は我を呼ぶ。
『滅びを司るモノ』を内包する存在にしてこの世界を愛するものである。
元の名を知る者は、今や少ない。
……。
……。
お初にお目にかかる。あるいは人間の感覚で言えば『久しいな』と言えばいいのだろうか。
我が名は『魔王ディーヌスレイト』。
かつてのエルフ『ほしをおうむすめ』と同一の存在であった。
他にも『伝える者』などの別名がある。
子供の童話などでは悪戯好きの小悪党で描かれ、
賢い子供や動物にやり込められて退散する役柄が多いな。
私自身は人間にどう思われようとさほど気にならないが、
どんな形であれ子供に愛される存在であることは誇らしいようなくすぐったいような気持ちになる。以前の私では考えられない矛盾した感覚だ。
『滅びを司るモノ』は消滅した。
正しくは私の中に依然として存在しているのだが。
私はこの世界を滅ぼす意志は全くない。
この世界は醜い。この世界は停滞し、悪意は依然世界を覆っている。
故に私は人々が愛しい。故に私は彼らを愛している。
人は私を『ほしをおうむすめ』とは呼ばなくなった。
また、私の本名を覚えている者も少ない。
それでも、私は良いと思っている。
こういう気持ちをミザリィに聞かれたら、
「ディーは我儘だ」と叱ってくれるのだろうか。
私は『滅びを司るモノ』にはならない。
『滅びを司るモノ』が何度も再来するというならば。
私が『滅びを司るモノ』になって生きればよいだけのことなのだ。
私は、このどうしようもなく醜く愛しい世界と共に生き、歩むことを誓った。
私は、この世界と歩む。世界から命すべてが消え去り星々すら滅んだとしても私の旅は終わらない。




