愛ってなんだ?
「恋人の川」なる星の煌きの下で私は問う。愛とは何か。恋人とは。
好きと愛と友情と恋の違いとは。ラッキィはただ微笑んでいる。
私は、愛がわからない。抱きあうことが愛なのかも。判らない。無理やりは。ダメらしい。
……。
……。
「次、どうぞ! 」ミザリィが叫ぶと、次の患者がやってくる。
「……ミザリィさん。この薬草でなにとぞ息子を」「……なんとか。します」
「ミザリィ。その子は恐らく」「黙っていて」
『癌』と人間が呼ぶ病だと言い掛けたが、
ミザリィを怒らせるのは嫌だ。泣かせるのはもっと嫌だ。
「(命の精霊を使うとどうなるの)」
ミザリィが何故か小声で問いかけてくるので、
「命の精霊の異常でなる病だ。つまり死ぬ」と返答した。
緩和は出来るが、この少年の命の精霊は異常に強まり、なおかつ狂っている。
「……うわああああああんっ?! 」「ううっ!!!! 」
突如泣き出した二人を見て、私は戸惑う。……何故泣く?
5年も60年も大差はないと思うが……。痛いっ?!
「ディー。あなた、余計なことを患者に吹き込んで……」
この『笑顔』は本当に怖い。人間は表情で怒りの精霊を押さえ込むことが出来る。
私は『叱られる』ことの恐怖をこの娘から学んだ。
恐怖の精霊の力を持って、愛の精霊の力を呼び出す高等な技術だ。やはり、人間は恐ろしい。
「ごめんなさい。このエルフは悪い子じゃないんです」
私は子供か。貴様の助手だぞ。
「ちょっとバカだけど」
人間より、私は知能が高いのだが。勿論「ハンヨウセイ」よりもだ。
「今、ディーは自分のことを馬鹿じゃないって思わなかった? 」
ああ。まただ。また心を読まれた。そして、この『笑顔』が私は怖い。
「……『完全な癒し』を使えば死ぬが、緩和は可能だ」
泣くな。少年。5年と60年どう違いがあるのだ。
「ディーはそれでいいけど、私たちにとっての5年と60年は大違い」
む……。
「では、狂った命の精霊の心に触れてみる」
やりたくはないが、出来ることをしよう。
「……」
「ディー?! ディー?! しっかりしてっ??! 」
私は起き上がる。どうやら斃れていたらしい。
少年は……穏やかな寝息を立てている。良かった。これで安心だ。
後に、少年から「お姉ちゃんの夢を見ていた」といわれた。
『夢ではなく事実』だが、人間が『くすぐったい』という感覚を覚えた。私も色々学習した。
……。
……。
身体が言うことを利かない。
胸が変な音をたて、朝のお祈りで口にしたミルクと鉄パンが逆流しそうになる。
……。
……。
「……私は、人間の娘が『犯される』恐怖を味わいかけた」
怖気がする。二度とやるものか。……あの白い馬の姿をした精霊は恐ろしい。
完全に狂い、狂った性と生を無限に生み出すそれをなんとか私はあしらい、正気に戻したが。
命と……繁栄。……生殖を司る。あれが。……あれが愛か?!
「ディー? 震えているよ……」
フルエル? ……なんだそれは?
「こうすると、あったかくて、治るの」
ミザリィは、私がかつてピーターに求められたように私を暖かく包み込んだ。
……とても。とても暖かかった。
司祭さまが説教をされている。私から見て若輩の司祭さまだが、時々参考になることを仰る。
「幸運神さまは、皆に交流を説かれました。まず、自分が幸せになること。
次に、人の幸せを祈り、手助けすること。商売もまた然り。
ゆえに我らの神は『商業神』と呼ばれ、現在の神殿の呼称となっております。
まず、あなたが嬉しいと思うことを、隣人に実行することこそ、神の御許への近道なのです」
……よくわからないが、私はミザリィに抱きしめられると嬉しい。
だから、司祭さまに抱きついてみた。
……神殿中の皆から『叱られた』。何故だ。




