ピーターに捨てられた
「このバカを切るか解散するかどっちかにしてくれ」私は致命的なミスをしたようだ。
「ディーヌスレイトお姉ちゃんは大好き。……でも、無理。ごめんね」
行かないでくれ。ピーター。
……。
……。
「このバカ女と組むのか、俺たち全員と別れるのか決めてくれ。ルース」
「……解散かな」「あにきぃ。ダメっすよ。それぇ」「……馬鹿がっ?! 」
ルースと出会って星々が何度も変わった。そしてまた二人旅に戻った。
私には特に話すことが無い。ピーターもそうだと思っていたのだが。
「お姉ちゃん。気を落とさなくていいよ」
「……別に気を落としてはいない」「……」
ピーターは急に無口になった。
「……少しは気を落とそうよ」
「そうなのか」「うん」
「ルースはいいリーダーだったよ」
「……そうなのか」「うん」
どうも私は人間の機微には疎いらしい。
私は彼らの期待に沿うことが言えない。できないようだ。
他にも物理的に無理なこともある。身体を求められる事などだ。
……人間にとっての繁殖行為は他の意味もあるらしい。
しかも彼らはソレなしでは英気を養えないらしい。難しい問題だ。
「ピーター。お前は女が欲しいと思ったことはないか? 」「ぼくはまだ恋を知らないもん」
……少し、『身体』の胸の奥が痛みを訴えた。なんだこれは。
「あと、グラスランナーも一応エルフだから。……そういうのはない」
実力行使で無理やり繁殖行為を迫った挙句に相手を『殺す』など本末転倒だが、
人間はそれでも満足できる。らしい。
「私も、恋を知らない」「……そっか。仕方ないよね。人間は大変だよね」
ああ。大変だ。
「……私の身体は、まだ私のものだ」「……うん」
「どうすれば、他人に捧げられるのだ? 」「恋してみたら? 」
……。
「……」「……」
はぁ。『ため息』が漏れた。
「最近、タメイキとやらの使い方が巧くなったと思う」「……はぁ」
ピーターもタメイキをした。
「あと、忘れてるだろうけど、その『身体』を人に捧げたら追放だよ」「……」
それは、死より恐ろしい罰だ。私たちは永遠を生きる。
「ルースのことは。私も嫌いではなかった」
恋することは無かったが。
「ぼくも」
人間はなんと大変な生き物か。
「……アレの問題は大変だよねぇ」
ピーターが『苦笑い』している。
こういう笑い方をされると、私は対処に困る。
「ピーター。私は『笑う』ことができない」
「こうこう。こうやって口の端をあげて……うわああああ。怖いって?! 」
……難しいな。
また、二人で歩き続ける。相変わらず当てはない。
「ディーヌ姉ちゃんは。ぼくがいなくても大丈夫だよね」
「そうか? 私はお前が必要だ」「そーかなぁ。ぼくは時々不安になる」
『フアン』。とはなんだろう。
「お姉ちゃんの面倒を見ているけど、お姉ちゃんはそんなの気にしていないし」
「私は、お前の面倒をちゃんと見ているぞ」「……本気で言ってる? 」
当然だ。子供が喜ぶことは皆やっている。
「ぼくは、お姉ちゃんの役に立っている気がしない」
そんなことはない。
「だから、もうさようならしよう」
……ナニを言っている。ピーター。
何故。……泣いている。
「……はい、これはディーヌスレイトお姉ちゃんの荷物」
「それは、お前が持ってくれていたものだ」「……今日からは自分で持つの」
「わかった」
「永久の別れを。『ほしをおうむすめ』」
ピーターはそういうと駆け出した。
……?
「追いかけっこ? と言う遊びか。ピーター」「違う」
「まて、ピーター」「待たない」
私は彼に追いつこうとするが、追いつけない。
「まて。待ってくれ」「……ごめんね」
「泣くな。ピーター」「……」
彼は何も言わない。私は邪魔な荷物を捨て、ピーターを追いかける。
「……」
ピーターは、『本気で』走り出した。
「……! いかないでっ?! ピーター?! 」
自然と、変な言葉が漏れる。大きな声だった。
私は完全に彼を見失った。精霊に探らせても彼の所在はわからなかった。
胸の奥がズキズキと痛む。目の奥が熱い。瞳から涙という塩水が止まらない。
私はピーターが戻ってくると思ったが、
私の『身体』が食事と水を訴えて謎の音を発する頃、
彼が戻ってくることはないと悟った。
こういうとき、人間はなんというか理解した。
……『捨てられた』と言うのだ。




