空の斧(スカイアックス)
『黒鉄鉱石』から譲られた斧は私の背中からはみ出すほど大きい。
その本体は幻であり、触ることすら出来ないものなので、安全なもののはずだ。
しかし、会う者皆が振り返るのはどういうことだろう。
……。
……。
「でーぬねーちゃん。ソレ、超目立つ」
ピーターが私の後ろを跳ねながらついてくるのだが、気になることを言う。
「『黒鉄鉱石』に譲られた幻で出来た斧か」
重さがまったくないので私自身、背中にあることを時々忘れる。
「うん……。せめて耳は隠したほうがいいよ」???
「斧ではなくて? 」「その斧、何故かねえちゃんの背中から消えないし。隠せないみたい」
ふむ。
「では、何故に耳だ? 」「目立つから」
……?
「エルフでそんな大きな斧持ってる人はいないよ。というか、人間やドワーフでも無理」
それは理解した。
「それは理解できる。何故に耳だ」
「目立つから」「何故目立つ」
「目立つ上に目立つと更にめだつよ? 」「むぅ……」
「しかし、私は特に異形なわけではないぞ? 」「そうかなあ」
「目が二つ、耳が二つ、鼻も一つだし口も一つだ。樹木ほどの違いすらない。
ましてや人間と如何な容姿の違いがあるものか」
私がそういうと、ピーターは何故か少しはなれて歩き出した。
「ピーター。背中に抱きついて良いのだぞ」
何故かそうされるととても暖かい気持ちになる。愛情の精霊の力が強まるのだ。
「……う。……遠慮しておく」
「では、肩車とかだっこというものをしようではないか」
其れは人間がピーターや自らの子供達にする謎の呪術で、愛情の精霊を呼び出す。
ピーターにせがまれてやってみたが、悪くはない。気に入った。
「いい? ディーヌねぇちゃんは、ちょっと僕から離れて歩いてね? 」
「何故だ? ……私は人間のように図らずして嘆きの精霊を呼び出してしまいそうだ」
私の抗議を他所に、ピーターは頬を赤らめて私より先を歩く。
私が歩を早めると彼はそれ以上の速さで歩く。
いつしか私たちは風の精霊のように青い青い空の下を走っていた。
このまま走り続ければ、『黒鉄鉱石』にもう一度出会えるだろうか。
そう問うと、「そうかもね」とピーターは答えた。
たまには走るのも悪くはない。『黒鉄鉱石』に再び会えるなら。




