勇者センター試験
「炎の勇者になりたいんです。」
俺は予備校の先生にそう宣言した。
先生は無表情で、俺のスコアシートを眺めている。
「……先生?」
「君ね、この学力では、炎の勇者どころか、泥の勇者でも難しいよ。」
俺は絶句した。
泥でも難しい……
「君ね、悪いことは言わないから、せめて戦士センター試験に切り替えなさい。もしくは、村人センター試験もいいと思うよ。君なら、確実に村人Aになれる。」
「村人なら、AでもBでもCでも変わりません。」
「君、失礼なことを言ってはいけないよ。村人に入学し、村人を卒業して立派にやってる人もたくさんいるんだ。博士号をとって、村の長老になった人だっているんだからね。」
「とにかく、俺は炎の勇者になりたいんだ。」
「君ね、炎の勇者の倍率知ってるのかい?」
「え、今年はいくつくらい……」
「3.07倍だよ。」
「それならなんとか……」
「君ね、炎の勇者の去年の足切りは761点だよ。」
「761点!?また、上がってません?」
「人気だからね。泥の勇者でも703点なんだ。」
「703点……」
「君、654点でしょ?無理だよ。」
「でも、夢なんで頑張ります。」
「まあ、良いんだけどね。君、三浪目でしょ?大丈夫なの?」
「親が、応援してくれていますので。」
「そっか、まあ頑張れ。あと、来年から、勇者センター試験と魔王センター試験が統一されるから、倍率上がるんで、今年でダメだと厳しいからな。」
「え、そうなんですか。」
「その関係で、村人センター試験にも、優秀な人材が流れ込むだろうから、切り替えるなら今年だからな。」
先生は去っていく。
「村人にもなれなくなるのか……」
夢のない世の中になったものだ。
自販機で缶コーヒーを買って飲む。
窓の外に、魔王城が見えていた。




