二人のNAME
駒の置く音が会場全体に響き渡り、駒を置く度に観客の歓声が聞こえる。
「第十七回世界選抜チェス大会決勝。今この瞬間、新たなチャンピオンが誕生しようとしています! 公式戦ではこれまで負けなしだったライク選手。しかし、その白星の花道に初めて黒星が付こうとしています! その道を阻むのは、世界大会初出場にして決勝戦まで上り詰めた喜びのピエロの面を被った男! Rei1!」
再び大きな歓声が上がり、大いに盛り上がる。
ライクはその歓声が聞こえる度に、顔が青ざめていき体に震えがみられる。しかし、そんなライクとは裏腹にランスは足を組み、チェスの盤面をジッと見つめている。そして、Rei1が駒を置く。
「チェックメイト」
Rei1はそう言い残し、その場を離れた。残されたのは、圧倒的な盤面と敗北感。そして、観客の歓声だった。
Rei1はピエロの面をとり、スマホの画面を見つめる。スマホの画面の明るさで見えるRei1の顔は美形そのものだ。パッと見では男性か女性か区別がつかないほどだ。
「終わったから、ヴァルに連絡して迎えに来てもらおっと」
「今終わったから迎えに来てー」とスマホでメールを送った。返事はすぐに返ってきた。「大会会場近くのカジノにいるからお前が来い」と冷たく、怒りの含まれてたような返事が返ってきた。
「うわーこの感じ負けてそう。いくら負けたんだろ。後が怖いな」
Rei1は再び喜びの顔をしたピエロの面を被り、さらに黒のフード付きのロングコートを着てカジノへと向かった。
カジノには、多くの人だかりができておりSPを連れた社長と思われる人や派手なドレスを着た女性、見て感じるお金持ちの雰囲気。そんな人達がグラスを片手に賭け事を楽しんでいる。勝った者は喜び歓声の水に浸かり、負けた者は悔しさと絶望の水に浸からされる。
「こんなに賑やかで人も多いと、どこにいるのか分かんねぇーな」
ランスは辺りをキョロキョロと見わたし、その場で高くジャンプをした。ジャンプをした一瞬だけ視界に、鬼の面を被った背の高い人が視界に映った。
「あ、いたいた」
ランスは鬼の面を被った人の元へと、人混みをかき分けながら向かった。服装はRei1とほぼ同じだ。途中でウェイターからワインの入ったグラスを手に取り、椅子に座っている鬼の面を被った人の横に立った。
「勝ってる?」
「勝負には大負けしてる。試合には勝った」
「上等。で、いくら賭けてるの?」
「五」
「いつもより少ないじゃん。いつもは十万負けてるのに」
「違う。五十万」
ランスは開きかけた口がそのまま固まってしまった。
「え、五十万? もしかしてだけど、優勝賞金賭けたの?」
鬼の面を被った人は、ビクッと身体を震わせ恐る恐るランスの方を振り返る。ランスの表情は仮面で分からないが、明らかに怒っている雰囲気を醸し出していた。
「す、すんません」
「優勝賞金賭けるのはダメって言ったよね、LuNa7? まあ、話は後で聞くとして、そろそろ日本に帰るぞ。今日中に帰らないと、約束の日時に間に合わなくなる。Rani2に怒られるのは勘弁したいからな」
「飛行機のチケットは取ってるの?」
「もちろん。チケット代はRani2の財布から出てる」
「うわー。それが実の兄がすることか? あたしなら、あんなに可愛い妹がいたらそんなことしないのになー」
「じゃあ、あげる」
「ほんとにヒデー兄だな」
いざ、移動をしようとLuNa7が立ち上がると、周りにいた人達が目を大きくしてLuNa7に注目した。LuNa7は立つと身長が190近くある。海外で190だと少し高いくらいにしか思われないかもしれないが、LuNa7は女性である。
「なんか、こういう所来るといつも注目されない?」
「うん、いつも注目される。そして、お決まりが」
二人の近くにいた人たちがザワザワし始める。スマホと二人の容姿を確認したり、近くの人同士で話し確認しあったりしている。そのザワザワは徐々に、大きくなっていきちょっとした人だかりができていた。そこで、ある人が呟いた。
「やっぱりそうだ。ピエロの面を被ってるのは数々の盤上のゲームとシュミレーションゲームで世界一を取ったRei1と、シューティングゲームで常に上位ランクにいるランカーのLuNa7だ!」
その呟きにより、更に注目を集め多くの人が寄って来た。Rei1とLuNa7は「また、これか」と言わんばかりの表情で、人混みに押しつぶされかけていた。




