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第八話:強化

「これでどおだぁー!」


「キュウゥ!」


もう何度目か分からないくらい短剣をホーンラビットの毛皮に突き立て、ようやく魔物の頭の上のHPバーが0になる。ひたすら攻撃を躱し短剣を突き立てを繰り返していたので消耗が半端ない。


「ようやく倒したか」


四散するホーンラビットを見てフォルトゥーナが溜息と一緒に声をかけてくる。呆れられているようだが極振りでSTRが少ないからしょうがない。


四散したホーンラビットのあとには今まで見たこともないような大きな魔石があった。いままで10体以上のホーンラビットを倒したけど角と魔石が1個ずつしか落ちなかったが運がよかったのか?拾い上げてフォルトゥーナを見るとフォルトゥーナは俺の着けている腕輪に目を向けた。入れておけということだろう。


「何故ぬしは攻撃力を伸ばさんのだ?」


魔石を腕輪に入れているとフォルトゥーナが聞いてきた。目を上げて彼女を見る。


「俺はこの世界を楽しみたい。楽しみ方は人それぞれだろ?」


自分でこの世界に入る前につけた枷。確かにLV上げの作業は単調だけど、外そうとは思わなかった。愚痴を言うくらいは勘弁してほしい。足りないのなら手数を増やせばいいだけのこと。不足しているなら工夫すればいい。まだこの世界に来て7日だ。いろいろやってみるために、いまはLV上げとアイテムを買うために稼がなければならない。


これが答えになっていたか分からないがフォルトゥーナの目が少し暖かくなった気がする。


「ほれ、あそこに何かあるぞ」


フォルトゥーナが指さす壁の一角に箱がある。いかにもな宝箱。近寄っていき足でつついてみる。ミミックとかじゃないよな?喰いつかれたりして。


「心配は無用じゃ」


促されて開けてみる。TWO初の宝箱には何が入っているのか楽しみにしていたが無数の石が入っていた。ゴミ?外れか?思わず溜息が漏れる。ここでも運から見放されているのか。


「よう見てみぃ」


宝箱の中から直径5cmくらいの石を一つ摘み出す。鮮やかな赤色の石で腕輪に入れるとリストには魔石(最上級)の下に爆炎石(最上級)という表示が出た。マジ?


「これがあれば攻撃力不足も少しはましになるであろう?」


緑色の石は裂風石、水色は鋭水石、濃い茶色は爆裂石と表示される。すべて最上級なのだが実際どのくらいのものなのか見当がつかない。道具屋で売られているくらいだから買い取りもしてもらえると思い、すべて腕輪に収納した。


「きたぞ。試してみたらどうじゃ?」


フォルトゥーナがそう言う先には兎ではなく猪がいた。大きな岩くらいある身体に鋭い牙も見える。えーと?これって冒険者ギルドに依頼が出ていた奴じゃない?


「惚けとらんで早くせんと潰されるぞ?」


前足で地面を蹴っていた猪はフォルトゥーナがそういった途端、凄まじい勢いで突進してきた。


リストを見て一瞬迷った後、指でタッチして腕輪から爆炎石を取り出す。みるみる距離を縮める猪の巨体に向けて爆炎石を投げると当たった瞬間目の前が真っ赤な業火に包まれた。やべっ、俺も一緒に焼かれる奴か?吹き飛ばされるのを覚悟の上で業火と爆風に備えて腕を顔の前で交差させた。


「しようがないのう」


腕の隙間からフォルトゥーナが右手を上げるのを見る。何か透明な壁でもあるかのように炎が何かにぶつかったように目の前で広がった。


両手を下ろして火炎が収まるのを見ると炎の向こうには倒れている猪がいて身体が少しずつ崩壊し始めていた。


「威力は分かったじゃろ?使いどころを間違えんようにせえよ」


「フォ、フォルトゥーナ、これってどこかで採取できるのか?」


あんな小さな石でこの威力。他の石も同じようにとてつもない威力を秘めているのだろう。もしこれが採取できれば攻撃力不足も補えるはずだ。


「ああ、採取できるところはあるが余程うまくやらんと連鎖爆発するでな。技術がないうちは高純度のものには手を出さん方がよいぞ」


そう言ってフォルトゥーナはダンジョンの先を促した。






「今日はここまでじゃ」


フォルトゥーナがそう言って来た道を引き返すように言う。魔物を倒しながらダンジョンの地下一階を隈なく捜索したが下へ続く階段は見つからなかった。もしかして地下一階のみの横に広いダンジョンなのかもしれない。


「一日のうち一定時間、このダンジョンを開放してやる。入りたければ森へ来い。一週間もいればそれなりになるじゃろう?」


階段を上がって明るい森に出るとステータスボードを開く。何回か身体が暖かくなるのを感じたのでLVが上がっているはずだ。


名前:カリツ

種族:人族

職業:なし

職業(副):なし

LV:20【経験値20/210】

ステータスポイント:190


HP(体力)60

MP(魔力)30

STR(攻撃力)40(+5)

DEF(防御力)40

INT(知能)100

DEX(器用さ)1100

AGI(素早さ)40

LUK(運)100


右手:短剣(STR+5)

左手:なし

頭:なし

身体:布の服

足:布のズボン

靴:布の靴

アクセサリー:収納の腕輪

アクセサリー:なし


ギフトスキル:念動力LV4

スキル:思考加速LV4


「・・・・・」


すげー、すげー上がってる。ステータスもそうだけど念動力がLV4になってる。初期プレイヤーが一か月かかったLVを一日で超えた。どうなってるんだ、このダンジョン。


「どうじゃ?驚いたか?」


鼻息荒く、どや顔をしているフォルトゥーナの頭を思わず撫でてしまった。フォルトゥーナは一瞬呆けたような顔をしたあと顔を赤く染める。


「子ども扱いするでないわっ!」


ひときわ高く浮かび、右手で俺の頭を叩く。恥ずかしがってんのか?


「ありがとな、フォルトゥーナ」


むくれたように顔を背けるフォルトゥーナに声をかける。半眼の横目で俺を見て、ふうと息を吐きだしたあと向き直った。


「感謝しておるなら明日も来い。この世界を楽しむためにな」


そう言うとフォルトゥーナが微笑んだ。






「6時間くらいか」


ファストラスの宿屋でセーブし、ログアウトした。TWOのフォルトゥーナのダンジョンで過ごした時間を確認する。


「一日6時間、一週間の限定ダンジョン。地上よりプレイヤーLVもスキルLVも上昇する速度が速い」


もしかしてガチ勢はみんな入っているダンジョンなのか?でもフォルトゥーナは顕現するのは初めてと言っていた。


机の上の雑誌をとってTWOのページで手を止め、目を通すと世界観の中に見知った名前を見つけてしまった。


『運命を司る最高神フォルトゥーナ』


・・・・・マジっ?


俺は携帯を手に取り文字を打ち込む。


律:おい、おまいら 聞きたいことがある


蓮:おう、仲間を売りやがった狂戦士も顔負けの外道か?


朝陽:蓮、もういいだろ?あのあと何にもなかったんだし 律、久しぶり


律:TWOでフォルトゥーナって名前のちみっ子に会ったことある奴いるか?


結人:フォルトゥーナって最高神と同じ名前のプレイヤーか?


蒼空:いや、ネタでもつけないんじゃないの?


律:いや、プレイヤー名は無かったからNPCだと思うんだが


蓮:???


律:ちなみに種族が神族なんだが


朝陽:???


結人:???


蒼空:???


蓮:律、夏休みだから時間あるよな?


律:???


朝陽:これは尋問案件だな


結人:そのようだ


蒼空:異議なし


律:黙秘権を行使する

Tomorrow World Onlineの世界にはフォルトゥーナ以外にも神族がいますが基本人族には関心がありません。いままで種族:神族が顕現したことはなくもちろんWikiにも掲示板にも載っていません。

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