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第十八話:採掘

「ありがとう。私、弟に飲ませてみる」


そう話してミオが街を歩きだす。おそらく弟の待つ家に帰るのだろう。俺は手を振って見送った。


メルクリウスの使いと言っていた妖精がカプセルと賽子を俺たちに渡したあと妖精は姿を消し、希求花も萎れて枯れてしまった。おそらく希求花の開花を見ることができる、願いを叶えてもらうことができるのは1パーティーのみ。しかもミオを連れて行かなければ発生しないイベントである可能性が高い。ミオの弟が完治したらこのイベント自体無くなる可能性も同じく高い。そう考えるとかなり貴重なイベントなのかもしれない。


「さて」


とりあえずもらった賽子は収納の腕輪の中に入れた。詳細は後で確認するとして俺は依頼を達成するべく、もう一度星降る大地に向かう。


「天使の剣の依頼。最前線プレイヤーが望む輝星石か」


ガチ廃人プレイヤーが生半可なものを欲しがるわけがないことを歩きながら考える。輝星石にもおそらくランクがあるはずだ。上級、できれば最上級のものを揃える必要があるが俺には鑑定スキルがある。スキルを使えば輝星石の上物を探し当てることも可能だろう。


ゴブリンやコボルトの相手をしながらドロップアイテムと討伐の証を拾い森を抜ける。


「おおーっ」


ミオを連れているときは洞窟に目がいっていたので改めて星降る大地を見ると感想も違ってくる。


満天の星空に広大な岩の大地、周りを覆う岩山、崖はコントラストも鮮やかで映える光景だ。カルデラのような大地の上でランタンが揺れているのを見ると何人かのプレイヤーがいて、輝星石の採取をしているのか岩を叩くような甲高い音が時折聞こえてくる。


どことなく幻想的な光景にしばし見惚れるも依頼を思い出した。


「よっしゃ」


収納の腕輪からつるはしを出して肩に担ぐ。狙うは最上級、あの4人を納得させるような輝星石。頼むぞ、鑑定スキル!


鑑定スキルを発動させるとカルデラの大地にいくつかの輝く点が浮かび上がった。点在しており、プレイヤーたちがいるところからは離れている。それだけで他のプレイヤーは鑑定スキルを所持していないのが分かった。フォルトゥーナが敢闘賞としてくれたスキル。所持しているプレイヤーはそれほどいないのかもしれない。


一番近くの輝点にのんびり歩いていく。まさかゲーム内で土木作業を行うことになるとは思わなかったが目的の場所に到着するとつるはしを振るう。輝点は結構深いところにある。


「お?おおー、結構いける!」


振り下ろしたつるはしは一撃でかなり深いところまで突き刺さった。STRはないけどDEXの高さからか面白いように固い岩を穿っていく。数度振り下ろしたつるはしが目的の輝点に届き、力を入れて起こすとボコっという音とともに拳大の塊が姿を現した。掘り出した岩の隙間から輝星石の表面か、透明な澄んだ色合いが見える。


「1個ゲットーっ」


思わず大声で叫んでしまったがプレイヤーから離れているせいか目線は感じなかった。この調子でガンガンいこう。


再びつるはしを肩に担いでゆっくり移動する。星降る大地の見える範囲では魔物は確認できなかった。念のため念動力を発動して鑑定をかけるが魔物の影はない。


月明りと星明り、時折聞こえる岩を打つ音を聞きながら穏やかな気持ちになる。そんなのんびりした時間の中、輝星石を採取していく。


「これで最上級品は最後か」


手の中にある掘り起こした輝星石を確認する。全部で4つ、透明な色のものが2つと赤いものが1つ、青のものが1つだった。天使の剣も4人だし丁度いいのではないだろうか。


「うわああああっ」


突然近くから叫び声が聞こえた。声の方を見ると翼をもつ人間の子供くらいの大きさの何かが見えるだけで5体、羽ばたきながら恐らくプレイヤーであるものに群がっている。


プレイヤーらしきものが倒れこみ動かなくなる。身体が崩壊しないところを見ると死んではいないようだが何が起こったんだ?


羽ばたきをやめて5体が大地に降り立った。1体がプレイヤーの身体を探っている間に他のものが周りを確認する。1体の赤く輝く目が俺を捕らえた。魔物だ。鑑定結果はガーゴイルLV20。


「ギキャキャ」


その魔物が鳴き、他の4体も俺の方を見る。1体の手には淡く輝く輝星石らしきものが握られていた。狙いは輝星石か?


魔物が足に力を入れ、翼を広げる。次の瞬間、羽を羽ばたかせて俺に向けて飛んできた。


俺は短剣を抜き、迎撃態勢に入る。せっかく掘り出した輝星石を魔物などにくれてやるつもりはない。


飛翔する魔物、ミーナ(弓兵)エマ(魔術師)のような遠距離攻撃ができるカケルたちのパーティーでもなければ対応は難しいだろう。しかも輝星石を採取中の戦闘。これが推奨ランクDの理由かもしれない。


5体の魔物、ガーゴイルが迫ってきている。俺は迷うことなく念動力の攻撃に切り替えた。俺も空を飛翔することができるが他のプレイヤーに知られないように気を配る。ファストラスでの森林火災の犯人として有名になるのは御免である。念動力の攻撃に切り替えたことで思考加速が発動、短剣を操作して5体を貫くべく放った。


「「「「「ギキュウウウッ」」」」」


俺の手元に短剣が戻ったことで思考加速が解除。ガーゴイルは地に落ち、断末魔を上げて四散する。討伐の証である爪と魔石が2つ、ガーゴイルの翼が3つ落ちた。


「おそらく輝星石を持っているプレイヤーが狙われたはず」


俺はドロップアイテムをリュックに、輝星石を収納の腕輪に入れた。収納の腕輪に入れたものも感知できるのか分からないがもし襲われても俺が取出さなければ奪われることはないだろう。俺は他の魔物が出てこないうちに星降る大地を後にした。






街に帰り、宿屋に入る。もう現実のほうでもかなり遅い時間になっているはずだ。


「セーブしてログアウト。あとは明日にするかぁ」


腕や背筋を伸ばしながら考える。寝ているとは言え、脳は動いている。つまり起きているのと同じ状態だ。本当の眠り、休息は必要だと思う。


最後に収納の腕輪のリストの輝星石を見て、天使の剣の依頼達成を確認しようとするとリストの中で光っているものがある。


選択の賽子(装備、機材)、選択の賽子(魔法)。メルクリウスの使いの妖精に貰った賽子だが確認していなかった。


選択の賽子(装備、機材):0から5までの目を持つ賽子。出目はランダム。賽子を振ることで必要に応じた装備や機材を出現させる。ランクは1(最下級)から5(最上級)の5段階。0が出た場合は振り直す。


選択の賽子(魔法):0から5までの目を持つ賽子。出目はランダム。賽子を振ることで必要に応じた魔法をプレイヤーに与える。与えられた魔法は1回のみMPを消費せずに使用でき、使用した後は消える。ランクは1(最下級)から5(最上級)の5段階。0が出た場合は振り直す。


選択の賽子(装備、機材)、(魔法)を戦闘時に同時に振り、尚且つゾロ目が出た場合、召喚獣を召喚し、使役することができる。


えーと?要は賽子を振って武器を出したり魔法を使えるということか?で、ゾロ目が出たら獣が出てくるの?


いらないと言ったから、それなら必要に応じて変化するものならという気配りだろうか?


「光ってるってことは使えって言ってるんだよな?」


使ったところで今は宿屋だし何も必要ないと思うんだが。


早く振れというように光の明滅が早くなる。振らなければ何か起こりそうな明滅に急かされているように俺はとりあえず装備、機材の賽子を宿屋の床に放り投げた。出目は5。やったー、最上級っ!ってなにが?


装備、機材の賽子が輝いたあと賽子があった場所に丸い円盤がついた四角いものが出現した。これがいま必要としているもの?鑑定スキルで確認すると宝石研磨機と表示が出る。


・・・・・研磨?


俺の持ち物の中でそれに該当するものは一つしかない。輝星石だ。輝星石を研磨しろと言ってるのか?誰が?俺が?やったことねーよ。


そもそも輝星石の納品依頼だが研磨したものという指定はなかった。


いや、そのぐらい空気読めよってことか?岩付きじゃダメだってか?気の利かない俺をメルクリウスが助けてくれるっていうイベントの続きなのか?


とりあえず光っているもう一つの賽子、魔法の賽子を振ってみる。出目はこちらも5だった。最上級ってなんの魔法?何が必要とされてるの?この状況で。


賽子が輝くと俺の頭の中に魔法が1つ浮かんでくる。


付与魔法:指定した物体に戦闘時のみSTRとAGIの値を10秒毎に20%上昇させる特殊効果を付与する。戦闘終了後この効果は消失する。


えーと?意図するところは研磨した輝星石に付与魔法をつけて天使の剣に献上しろと?そういうことなのか?そうした方がシナリオ的に望ましいということかい?メルクリウスさんよ?妖精さんよ?


「・・・・・とりあえず寝るか」


宝石の研磨なんかやったことがないし、どうやって手法を習得すればいいのかも分からない。分からないことを寝不足の頭で悩んでも答えは出てこない。とりあえず休むことにして宿屋のベッドに横になる。


明日からまたやることが増えた。

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