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第十一話:尋問

「あれ?委員長と副委員長じゃん」


甚だ不本意ながらも蓮たちとの待ち合わせに向かうため玄関を出たところで2つの影を見た。私服姿は珍しいけど釣り目、長い黒髪と垂れ目、ボブヘアの二人はすぐに分かった。委員長は白いシャツに色褪せたジーンズ、白い帽子で夏らしい。副委員長も白いミニのワンピースと薄手のカーディガンらしきものを羽織っている。


顔が赤いのは夏の気候のせいか。ちゃんと水分補給しているのだろうか?


「珍しいな。委員長と副委員長の家って近くだっけ?」


いままで通学であったことがないので聞いてみる。


「「いや、えっと、あの、さ、散歩」」


見事に二人でハモっている。


「御法川くんはど、どこ行くの?」


委員長が若干震える声で聞いてくる。


「ああ、蓮たちと待ち合わせしててさ。っと、委員長と副委員長これから時間ある?」


蓮と朝陽、結人と蒼空からの尋問は苛烈を極めるかもしれない。そこに第三者、委員長と副委員長という規則を遵守する人物を入れることで少しなりとも和らげようと考えるのは必然。卑怯ということなかれ。


突然の質問に委員長と副委員長が顔をさらに赤くする。そうしてコクコクと頷いた。待ち合わせは近所のファミレスだ。この二人も水分補給したほうがいいだろう。誘うのだからドリンクバーくらいは出せる。


「じゃあファミレス行かないか?」


「「ひゅっ」」


二人が息が詰まったような音を出す。


「・・・・・で、でも、みんなと待ち合わせなんだよね?」


副委員長が尋ねてくるので頷く。


「二人にもいてほしいんだけど」


狂戦士と黒騎士、闇神官(ダークプリースト)死霊魔術師(ネクロマンサー)の暴走を止められるとすれば規律を重んじる二人しかいない。聖騎士クラスがいればいいんだけど望むべくもないからな。


っていうかなんでそんなに闇落ちしてるんだ、あの四人は?最高神に目をかけてもらっている俺との差はおそらく日頃の行いだろう。友達を尋問する、しかもユニークシナリオの可能性があるという時点でアウトだろう。恥を知れ。


「暑いからさ。水分補給もかねてどう?」


「「い、行く」」


そうして俺は最強の盾を手に入れた。






「律、謀りやがったな?」


一足先にファミレスで委員長と副委員長にドリンクバーで接待しているとぶっ飛びパーティーの闇落ち4人組が現れた。たぶん事前に4人で効率的な尋問方法を検討していたのだろう。手を上げる俺と委員長と副委員長を見て明らかに動揺している。これで非合法的な手段は封じられたぞ?


「なんのことかな?」


余裕があるのは俺のほう、なにしろ凄まじい防御力を誇る盾が二枚もあるのだ。しかも相乗効果も期待大だ。


「まぁ、いいや。委員長、副委員長は無理に話を合わせなくていいからね」


朝陽がそう言って俺に向き直る。ちっ!すでに精神的ダメージから抜け出してやがる。さすがは黒騎士。


「俺たちが聞きたいのは分かってるよな?TWOのことだ」


「「ぶぴゅっ」」


蒼空の言葉に委員長と副委員長が咽る。んん?


「委員長と副委員長が同席していたとしても関係ない。フォルトゥーナというNPC、しかも種族が神族に会ったことがあるかという問いはなぜ発せられた?律」


結人が直球を投げてくる。おそらく委員長と副委員長は話についてこれないはずだ。ゲームとは縁のない生活を送っているイメージだ。同席している女子を無視して話を進めていいのか?どうなんだ結人?


「フォ、フォルトゥーナってTWOの最高神のことだよね?」


な、なんだと?委員長、そんな情報をどこでお知りになられたんですか?


「お、もしかして委員長もTWOプレイしてるの?」


蓮が尋ねると委員長は微かに頷く。マジか?副委員長を見ると副委員長も頷いている。マジかっ?


待て、待てよ。最強の盾かと考えた二人が敵に回るかもしれない状況に俺は持って行ってしまったのか?


頬を汗がつたう。蓮と朝陽、結人と蒼空が笑う。なんて邪悪な笑みだ。フォルトゥーナとは雲泥の差。


「え、えっと御法川くんは、いま、ど、どこにいるのかな、なんて」


副委員長が情報開示を求めてくる。場所の特定から始まりユニークシナリオの開示を求めてくる作戦か?俺はなんて劇薬をこの場に呼んでしまったんだ。


「こいつさ、ファストラスで聖騎士サーラと大司教スノウの姿を見てチュートリアルの森に戻ったらしいんだよ」


「「ぶぴゅっ」」


蓮が外堀を埋めに入ってきた。蓮の言葉を聞いた委員長と副委員長が再び咽る。んん?


「律がTWOを初めて14日が経過している。14日間という短期間で俺たちや最前線のガチ廃人どもよりも進んでいるということは考えられない」


「「・・・・・ガチ廃人」」


朝陽が分析を行っている傍で委員長と副委員長が呟いている。


俺は悟った。駄目だ。状況的に1対6の状況を作ってしまった。しかも2人は自分で招き入れるという自爆行為。ここでも運に見限られた。LUK値はunknownまで行ったというに。


状況は最悪だ。ある程度の開示はやむなし。ただユニークシナリオだったとしても俺自身発生条件は分からない。


「・・・・・まず、報酬を確認させてもらおう」


俺がそう言うと4人が頷く。朝陽が鞄からクリップで束ねられた書類を手渡してくる。うん、14日間の観察記録か。これは流石に委員長と副委員長に見せることはできない。なぜかガチ廃人という言葉にショックを受けたらしい二人は見ていなかったのでよしとしよう。


「じゃあ、これから話すことはオフレコで頼む。掲示板や攻略サイトで話を出してもらいたくない」


なぜならフォルトゥーナの名前が世界観にしか出てこないところを見るとかなり重要なシナリオである可能性もあるのだ。それを衆人環視のもとに曝してほしくない。


闇落ち4人組と立ち直った委員長、副委員長も頷いてくれる。


「結論から言うと俺はフォルトゥーナに会った」


6人が息をのむ音が聞こえる。


「そして特殊なダンジョンで修練してプレイヤーLV99に達した」


6人が再度息をのむ音が聞こえる。だが、この情報はパーティー登録すればいずれは分かることだ。パーティー内ではステータスボードの共有機能があるからな。


「い、いや、待てよ。どうやったら14日でLV99まで行くんだよ。おかしいだろ?」


蓮が慌てたように聞いてくる。今現在の公表されている最も高いプレイヤーLVは63だった。三か月半遅れて入った初心者がいきなりLV.MAXになっていると知れば反応はみな同じだろう。


「たぶん、現状のLVで倒せるギリギリの魔物をフォルトゥーナが顕現させているんだと思う」


そう言ってダンジョン内で戦った首無し騎士やミノタウロス、クラーケンの話をするとみんな黙ってしまった。


「シナリオの発生条件は分からない。場所もわからない(ということにしておく)。7日間の期限付きのダンジョンだったからもう終わってしまった」


時間を与えたのが運の尽きだったが事前に一週間と決められていたことは話さない。7日たって突然終わったことにしておけば問題はない。


「俺はもう一度ファストラスに戻って旅を続けようと思う」


これもブラフだ。ファストラスに戻ると言えばファストラス近辺にいたという疑いは出ないと思う。特に狂戦士や黒騎士には。


「開示できる情報は以上だ」


俺はそう言って話を終わりにすべく黙った。ドリンクバーでとってきた飲み物に口をつける。


「・・・・・たしかファストラス近隣の森で昨日森林火災があった」


「んぐっ?」


蒼空の言葉に咽そうになるのをこらえる。


「掲示板情報では()()()()()()()()が超高速で爆炎と暴風、雷を巻き散らして森を焼き尽くしたという話があるんだが」


「へ、へ~。物騒だな」


確かにあれだけ派手に戦えば目立つのは致し方なし。


「現在確認できている飛行系のスキルは魔法、テイマーの飛行動物、竜騎士など特殊な騎士だがどのスキルでも姿が見えないほどの高速戦闘をできるものはいない」


結人も分析を始める。


「なにか新しいスキルが発現したとかそういうことじゃないのか?」


思考加速みたいに?


「LV99まで上げれば新しいスキルが発現する可能性も高いよな?律」


蓮がそう探るように問いかけてくるが答えは決まっている。


「かもしれないな。でも俺じゃない」


ここは言い切らないとアウトだ。


「かなりのイレギュラーがあったけど俺はTWOの世界を楽しむためにもう一度始めの街からやり直す。もし会ったときはよろしくな」


会わないことを願う。俺は単純にゲームを楽しみたいのだ。探り合うようなことはしたくない。


「分かったよ。俺たちもゲーム内で探り合いはしたくない。特にリア友の場合はな」


蓮が俺に向かって言う。


「この話はここまでだ」


朝陽がそう言うと笑う。俺も肩の力を抜いた。


「でも委員長と副委員長がTWOプレイしてるのは意外だったな」


蒼空が委員長と副委員長に話を振ると二人は困ったような笑いを浮かべていた。


「「え、えーと」」


二人を連れてきた手前、ここは俺の出番だろう。


「個人情報だぞ?あまり突っ込んで聞くんじゃないぞ?」


委員長と副委員長のプレイヤー名や職種を探ろうとするのはマナー違反だ。本人たちが開示する場合でもない限り追求するべきではないだろう。


「律、もうじきファストラスを出るんだよね?」


朝陽の言葉に頷く。たぶん馬車を使用して行く。飛んで行ってもいいけど旅は行程も楽しまないとね。


「セカンデイルに着いたら連絡くれよ。フレンド登録しよう」


俺はその言葉に頷いた。

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