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第十話:運命

フォルトゥーナのダンジョンの7日目。最終日だ。


森に向かって歩いている間も充実した7日間を思い起こす。すごい無茶振りだったような、スパルタだったような。地下のダンジョンにいたはずがいきなり水の中で溺れそうになるなんて考えられないだろ、ふつー。


「LVはすごい勢いで上がったな」


名前:カリツ

種族:人族

職業:なし

職業(副):なし

LV:99+【経験値10/1000】

ステータスポイント:980


HP(体力)216

MP(魔力)206

STR(攻撃力)196(+5)

DEF(防御力)196

INT(知能)490

DEX(器用さ)5000

AGI(素早さ)196

LUK(運)490


右手:短剣(STR+5)

左手:なし

頭:なし

身体:布の服

足:布のズボン

靴:布の靴

アクセサリー:収納の腕輪

アクセサリー:なし


ギフトスキル:念動力LV12

スキル:思考加速LV12、会心の一撃LV2


「ふふん」


プレイヤーLV99、+は何のことかわからないけどほぼ上限なのか。俺もめでたくガチ勢の仲間入りか?


DEXは圧巻の4桁。念動力は周囲3kmの直径10mくらいの岩なら動かせるようになっている。思考加速は最高60倍、なんか周りの魔物が全然動かないので速度を下げることも覚えることができた。


今は設定していないが職業も選択できるようになった。傭兵や聖戦士、戦闘系でない錬金術師もある。のちのち決めていけばいいだろう。






「きおったか」


いつもの場所でフォルトゥーナが待っていてくれた。でも違和感。ダンジョンの入口がなくなっている。


「フォルトゥーナ、今日はダンジョンに入らないのか?」


俺がそう尋ねるとフォルトゥーナが笑う。なんか今までの暖かい微笑ではなく、悪戯を仕掛けるような挑戦するような笑みに胸騒ぎがした。


「ダンジョンは手狭ゆえな。最終日の今日は外で行おうと思っての」


ダンジョンが手狭ってそんなデカい魔物が最終日の課題なのか?戦いだけがゲームの楽しみ方ではないけど6日間はいろいろな魔物と戦ってきたのも事実。もしかして空飛ぶ魔物か?ドラゴンとかかな?


「さて、仕上げじゃ。存分にかかってくるとよいぞ」


かかってくるとよいぞ?・・・・・ってなに?


「惚けておるなら一回死んでみるか?」


フォルトゥーナが右手を上げて掌に赤い球を作り出す。背筋がざわめく。マズい!


短剣を抜いて思考加速を発現。60倍の最速で設定する。これで少しは時間を稼げ「あほうが」、、、


駄目だ。フォルトゥーナは()()()()()()()()()()()()()()()()


フォルトゥーナが思考加速下ではないようなごく自然な動きで掌から球を俺に飛ばしてくる。念動力で自分の身体を滑らせるように横に移動させた。


球が木に接触すると爆炎石とは比べ物にならない爆発が起きる。俺に当たってたら間違いなく木っ端微塵になってるぞ。フォルトゥーナを見ると悪戯っぽい笑顔を浮かべている。それは俺を誘っているようにも見えた。


「フォルトゥーナ、いいのか?やられて泣くんじゃないぞ?」


俺がそう言うとわが意を得たりとばかりに笑みを深くする。


「子ども扱いするでないわ」


掌をかざして赤い球を5っ生み出した。いや、まずいでしょ、これ?


距離を開けるために空に高く飛び上がる。フォルトゥーナも難なく俺に追随するように空を駆ける。生身での空中戦、ドッグファイトなんてぶっ飛びすぎてる。


収納の腕輪のリストをスクロールする。爆炎石を6っ同時に出現させて念動力でフォルトゥーナに飛ばす。弾丸のように迫る石にフォルトゥーナが右手を上げる。身体の前に不可視の盾を作ったのか一つの石が当たって爆炎を上げた。


爆炎でフォルトゥーナの姿は見えない。が、その中心にいるのは確かだ。1つ目の石はダミー、残り5つで5方向から追撃する。5つの爆炎石を念動力で軌道を曲げて死角から飛ばすと5つの爆発がほぼ同時に起きた。さすがにやりすぎたか?


心配した俺に応えるように爆炎を切り裂き、風の渦が俺に向かって放たれる。


「うおぉぉぉぉ」


風の渦が直撃して俺はバランスを崩し、上空から錐揉み状態で落下する。溺死の次は墜落死かよ。


樹々の間を枝に身体をぶつけながら落下する。地表の上でようやく体勢を立て直して木の陰に隠れると隠れている木に雷が落ちた。上空を見ると俺をまっすぐ見て右手を上げるフォルトゥーナが見えた。すぐさま俺が移動すると今までいた場所に雷が落ちた。雷も使えるのかよ!


樹々を縫うようにジグザグに移動するもフォルトゥーナは適格に位置をつかんで攻撃してくる。自然破壊はやめましょう。


「また植えるので大丈夫じゃぞ」


そうですね。はい。






俺は地面に大の字に倒れている。フォルトゥーナから度重なる攻撃を受けて服はところどころ焼け焦げ、精神は擦り切れ、身体も筋肉痛で動かない。むりやり念動力で身体動かしたからな。そうしなかったらまず間違いなく爆散してたし。


「生きとるか?」


重い瞼を無理やり開けると俺の顔を覗き込んでいるフォルトゥーナが見えた。痛む身体に鞭を打ち、上半身を起こす。


「負けたな」


戦闘に負けたのに気分はスッキリしている。笑いながらそう言った俺を見て、フォルトゥーナが呆れたような顔をした。


「最高神たる儂に本気で勝とうと思うたのか?」


「戦う前から負けることは考えてないんだよ」


そう言って両手でフォルトゥーナの頬を横に引っ張った。おお~伸びる。


ひゃ()ひゃ()()()ひゅ()()()にょ()()ひゃ()()()


口では悪態をつきながらもされるがままのフォルトゥーナに考えていたことを話す。


「な、一緒に旅しないか?」


フォルトゥーナが目をぱちくりしている。頬から手を離した。


「この一週間楽しくてさ。フォルトゥーナとパーティー組んでればもっとこの世界を楽しめるかもしれないと思ったんだ」


ところどころ焼け焦げた大地に負けないような赤い夕陽が世界を照らしている。フォルトゥーナの頬が赤く見えるのは夕陽のせいだろう。


「たわけが」


少しの間を挟んでフォルトゥーナが口を開く。


「儂はこの世界の最高神、統括するもの。ぬしの前に出たのも単なる気まぐれじゃ。己惚れるでないわ」


やっぱりだめか。フォルトゥーナから提示されたのは一週間の期限付き。それ以上はない。


「そうじゃ。これをぬしに渡さんとな」


そう言ってフォルトゥーナが左手を振ると目の前に宝箱が現れた。


「敢闘賞じゃ」


宝箱を開けると巻物と布のようなもの、冠、短剣が入っていた。え?なに?村人装備第二弾?


促されるままに木の陰で着替えると詳細が表示された。


右手:儀礼の短剣

左手:なし

頭:神冠

身体:神胴衣

足:神足衣

靴:神靴

アクセサリー:収納の腕輪

アクセサリー:最高神加護のネックレス

アクセサリー:なし


儀礼の短剣(神に祈りをささげるための武具。攻撃行動の判定を受けない短剣。破壊不可)

神冠(運命神が鋳造した冠。INTを0にする代わりにLUKをMAXまで上げる。破壊不可)

神胴衣(運命神が紡いだ糸で織った胴衣。STRを0にする代わりにLUKをMAXまで上げる。破壊不可)

神足衣(運命神が紡いだ糸で織った足衣。DEFを0にする代わりにLUKをMAXまで上げる。破壊不可)

神靴(運命神が鞣した革で作った靴。AGIを0にする代わりにLUKをMAXまで上げる、破壊不可)


えーと?呪いの装備なのか?DEXとLUKを除く能力値がすべて0?LUK4回MAXになったらどうなんの?


ステータスボードのLUKはunknownになっていた。あー?


最高神加護のネックレス(神託を受けることができる。破壊不可)


これはフォルトゥーナからの通信を受け取る携帯みたいなものか?一方通行?


「ぬしの希望に則した装備じゃろ?ひゃ()ひゃ()()()ひゅ()()


鼻息荒く、どや顔をするフォルトゥーナの頬をもう一度横に伸ばす。おお~伸びる。


ちなみに巻物は鑑定スキルを取得できるものだった。






楽しい時間もいつかは終わりが来るものだ。


「ではの」


別れの言葉とともに目の前のフォルトゥーナの姿が霞んでいく。


「ありがとな。フォルトゥーナ」


湿っぽい別れは性に合わない。神様の携帯電話も受け取ったので連絡が来ることもあるだろう。


「手が空いたときは、ぬしを見ておるでな。カリツ」


なんか初めて名前呼んでもらった気がする。


「儂の世界を楽しんでくれ」


もちろんだ。

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