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はじめに
我輩にとって冒険心とは飢えや渇きと同じである。旅とは本能である。故に、我輩は旅行を生業としてはならない。そこに理性など存在しないからである。
では、その理性なき暴走を理性をもって記録せんとすれば何が生まれるだろうか。そんな思いつきから生まれたこの物語は旅行記か? 否、放浪記である。故にこの物語は、旅行記が当然備えているであろうペルソナなど存在しない。ここに存在するのは、剥き出しの欲望と独善的な自己満足の結晶である。
それでも構わない、いやむしろそういうものこそ読みたいという方のみ、この先を読み進めていただければ幸いである。