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居合わせた理由

「……あ゛ー、なんとか切り抜けられたな」


「もう動くの無理ぃ〜」


 最初に設置しておいたワイヤーロープを伝い、どうにかこうにか壁の上まで辿り着いたところで、俺は倒れるように仰向けになって寝転がる。

 同様にティアも息をぜえぜえ切らしながら大の字になって倒れていた。


「今更だが……よお、久しぶりだな、ティア。まさかこっちでお前と再会できるなんてな」


「そうだねー。まあ、わたしは絶対また会えると信じてたけど。……流石にこんな状況でとは思ってなかったけど」


「俺もだよ……」


 できればもっと落ち着いた状況で会いたかったものだが、まあこれはこれで俺ららしくていいか。


 呼吸を整えてから俺も起き上がり、ティアに向けて拳を突き出す。

 ティアは俺の行動に一瞬首を傾げるも、すぐに意図を汲み取ると、にっこりと満面の笑みを浮かべて拳を突き出す。


 前はジェスチャーだけで終わってしまったが、今回はそうじゃない。

 ちゃんと互いの拳をトンと突き合わせれば、俺もティアも自然と唇が釣り上がっていた。


「……ところでさ、なんでアラヤがここにいるの?」


「それはこっちのセリフだっつーの。あと、なんであの四腕獅子に追いかけられてたんだよ?」


「んーとね……ここに来たのは金策と依頼の為で、ゴリゴリくんに追いかけられてたのは、ちょっとした事故ってやつ? 調子に乗って弾幕ばら撒いてたら、流れ弾がたまたま近くを通りかかっていたゴリゴリくんに当たっちゃってねー。それで鬼ごっこが始まったわけ」


「それは……うん、災難だったな。普通に自業自得だけど」


 一言付け足せば、ティアは唇を尖らす。


「え〜、もうちょっとは可哀想なわたしを慰めてよー」


「うるせえ。だったら俺を鬼ごっこに巻き込むんじゃねえよ。危うく俺も死にかけたじゃねえか」


「……てへっ☆」


 ………………。

 …………………………。


 無言で脳天チョップを叩き込む。


「あだっ!? ちょっと何すんのさー! 暴力はんたーい!」


「可愛い子ぶって許されようとしたのがムカついた。それと俺のおかげで生き延びたんだから後で分け前寄越せよ」


「ひどい、横暴だー!」


「俺からすれば、お前の自分勝手さの方がよっぽど横暴だっての……」


 さっき俺が死んでたらMPK扱いされてもおかしくなかったんだぞ。

 思わずため息が溢れる。


 まあ、なんだかんだ俺もティアも無事に生存したから結果オーライではあるか。


 頬を膨らませて不満を露わにしていたティアだったが、


「そういえばさ、アラヤってもうゼネくんには会ったりしてる?」


 居住まいを正して訊ねてきた。


「いや、まだだけど。そっちは?」


「わたしもまだ。そっかー、アラヤもまだゼネくんに会えてないのかあ。……ゼネくんもこのゲームやってる、よね?」


「俺とお前がやってるんだ。まず間違いなくアイツもやってるだろ」


 確証はないが、自信を持って断言できる。

 ゼネもティアと一緒で、偶然のエンカウントを重ねた末に行動を共にするようになった間柄だ。

 まず間違いなくサガノウンを始めてはいるだろう。


「……だよね! それじゃあさ、街に戻ったらゼネくんを探してみようよ!」


「手掛かり何もねえのにか?」


「うん! 大丈夫、わたしとアラヤがこんな場所で再会できたんだから、ゼネくんとも簡単に再会できるよ!」


 根拠としては薄いが、ティアの言葉には妙な説得力があった。


「……それもそうだな。そんじゃ、一度帰ってゼネ探しと行くか」


「ラジャー!!」


 まあ、その前に依頼を完了させてからだけど。






   *     *     *






「うーっす。注文の品を届けに来たぞー」


「……わお、もう持ってきたんだ」


 ティアとは一旦解散し、店の中に入れば女店主が少し目を丸くしていた。


「まあな。こんくらいありゃ足りるか?」


「へえ、六つも集めてきてくれたんだ。キミ、思っていたよりも腕利きなんだね」


「当たり前だ。一応、これでも世界救ったこともあるんだぜ」


「あはは、面白い冗談言うね。それはそうと……はいこれ、お礼の品」


 あ、小ボケ思いっきり流された。

 それとお世辞で笑ってくれた感がパない。


 内心、言わなきゃ良かったと後悔に苛まれると目の前にウィンドウが出現する。




————————————


ミッション『闇商人への魔晶納品』をクリアしました。


以下の報酬を獲得しました。

・65000ガル

・『G/hP』割引パス


————————————




 報酬うっま!!

 アンノウン六体倒しただけでこんだけもらえるとか最高かよ。


「五千ガルは、キミが買った散弾銃のお代分。残りは魔晶の分ね」


 ってことは、一個につき一万ガルで買い取ってくれたってことか。

 こんだけ貰えるのなら、これからも密猟すんのは全然アリだな。 


「というか、マジでショットガン譲ってくれるのな」


「言ったでしょ。場合によってはあげるよって。これでも約束はちゃんと守るタイプなんだよ、私は」


 言って、ふふっと微笑を浮かべる女店主。

 リアルでいたら破産するまで貢ぐ男出てきそうな妖艶さがあった。

 ……強制的に貢ぐ(ぼったくられる)奴はいたけど。


「それとウチの割引パスも付けておいたから、良かったら今後も贔屓にしてね」


「なんか悪いな。こんなにプラスαでサービスしてもらって」


「それくらいキミの働きに助けられたってことだよ」


 まあ、そういうことなら有り難く頂戴するけど……って、


「あのさ、三割引きは流石にやり過ぎじゃね? 俺が言うのもなんだけど、こんなに値引きして経営回んの」


「へえ、心配してくれるんだ。でも大丈夫、心配には及ばないよ。だって……キミに安く売った分、他の訳ありな傭兵から巻き上げればいいだけだから」


「うっわ、アンタ……今、ナチュラルにエグいこと言ったな」


 堂々とぼったくり宣言しやがったぞ。

 となると、昨日俺やジュリが見たぼったくられて身包み剥がされたプレイヤーは、何か問題を起こした奴らってことか。


「なら……ジュリは、ぼったくられてはなさそうだな」


 少し胸を撫で下ろす。


「ジュリって確かあの白い髪の子だよね。……ふうん、気になるんだ」


「当たり前だろ。まだ右も左も分からないであろう無辜の傭兵がぼったくられたら可哀想だろ。それ以外の他意はねえぞ」


 言いながら俺は踵を返す。


「そんじゃ、俺はそろそろ行くから。また魔晶を集めたら買い取ってくれよー」


「うん、また来てね」


 ひらひらと手を振る女店主に別れを告げた後、一度ログアウトして栄養補給してから中枢区に向かうことにした。

PKやら他プレイヤーへの迷惑行為などで悪評がNPCに出回ったプレイヤーは、善行を積んだりして評判を元に戻さなければその間、一部を除いた商業施設が利用できなくなります。

そういったプレイヤーをカモにしているのが、主人公が利用している武器屋だったりします。なのでここに訪れるのは、絶賛ペナルティ中のプレイヤーか、何も知らないでやって来た新人プレイヤーのどちらかとなっています。

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