デジャヴな初邂逅
無心に試し撃ちすることおよそ十五分。
なんとなくだが二丁撃ちでの感覚も大分掴めてきた。
とりあえずの感想として、MPの消費がマジでえげつない。
俺のMPがあまり多くないことも一つの原因なんだろうが、それを踏まえても何も考えずにバカスカ撃ってると速攻でMPが底を突いてしまう。
二丁使いをメインにするのであれば、ある程度はMPを伸ばしておかないと、リソース管理がかなりキツくなるであろうってのは、十分に理解できた。
……まあ手数が二倍になれば、消費MPもその分増えるってのは至極当たり前のことなんだけどな。
命中率に関しては知らん。
俺の場合、一丁だろうが二丁だろうが変わらないし。
前方にある端ばかりが撃ち抜かれた的を眺めながら切実に思う。
いくら適当にぶっ放していたとはいえ、この命中率はなかなかに酷い。
やはり俺には、大体二十メートルちょっとの距離ですら遠すぎるってことか。
ほんと、我ながらクソエイム過ぎて泣けてくる。
「やっぱ俺の適正距離は五メートル以内だな」
——それはそうと、アイツはいつまでやるつもりなんだ?
ちらりと一番端の射撃スペースを見遣る。
そこでは、先客の白髪少女プレイヤー——プレイヤーネームはジュリか——が無心に弾を撃ち続けていた。
(忍耐力と集中力すげえな……)
ジュリのやっていた事は、スナイパーライフルで的を吹っ飛ばして、新しい的が出現するのを待って、出てきたらまた吹っ飛ばしての繰り返しだ。
言ってしまえば、それだけの単純作業……けれど、俺がこの部屋に来る前からずっと同じ行動を取っている辺り、かなりの忍耐力と集中力があると見える。
「スナイパー、か」
そういや、ティアが一時期スナイパーライフルに持ち替えてた時期があったな。
あれはあれでかなり強かったが、性に合わないからって三日くらいでマシンガンに戻してたけど。
曰く、「単発でちまちま撃つなんてつまんないよー!」とのことだった。
「……アイツらも今頃こっちの世界にログインしてたりすんのかな」
さっきの新人訓練……俺以外にも精鋭部隊に合格したプレイヤーが二人いるって鬼軍曹言ってたし。
もし、その二人がゼネとティアだったら——流石に妄想が過ぎるか。
けれど、可能性がゼロってわけでもないはず。
何せ俺らは、多少の時間のズレはあれど、示し合わさずともログインしているタイミングがしょっちゅうダブっていた仲だ。
仮にアイツらがサガノウンを始めていたとすれば、決してあり得ない話ではない。
もしそうなら、どうせ人気ねえからって理由で北の陣営選ぶだろうしな。
そんなことをつらつらと考えていた時だった。
「——ねえ、さっきからジロジロ見てきてるけど何か用?」
さっきまで黙々と試し撃ちをしていたジュリが、胡乱げに声を掛けてきた。
大きくも鋭さのある灰色の瞳。
声音から怒っているわけではなさそうだが、睨まれてるんじゃないかと錯覚しそうになる。
——この感覚、どこかで憶えがあるような……?
……いや、考えるのは後だ。
「ああ、悪い。気に障ったんなら謝るよ」
「……別に、ただ視線を感じたから、その理由が気になっただけ」
うん、この愛想のない感じもなんかどっかで憶えがあるぞ。
それに声も聞いたことがあるような気がするし。
確か、このゲームって性別や声とかは誤魔化せなかったよな……?
まさか——いやいや、それこそガチで有り得ねえ。
ほんの一瞬だけ脳裏を過った考えを頭の隅に追いやる。
「アンタを見てたのは、ひたすらずっと的を撃ち続けてるなーって思ったからだよ。俺が来る前から試し撃ちしてるとなると、かなりの時間やってるだろ」
「……そうだね、大体一時間半くらいかな」
「うわ、がっつりやり込んでんなー。そんなにやって何も言われねえの?」
「好きなだけやっていいとは言われてる。ちゃんと店主に確認はとってあるよ」
だとしても居座り過ぎだろ。
あの女店主もここまでとは考えてはなかったと思うぞ。
「……ま、それならいいけどよ。俺はもうぼちぼち切り上げるけど、気をつけたほうがいいぜ。この店どうやらぼったくりっぽいから」
「知ってるよ。別のプレイヤーが身包み剥がされた状態で店を出てきたのを見かけたから」
「知ってたんかい。アンタ……それ見てよく入店しようと思ったな」
「ここなら人が少なそうだったから。それにお金をふんだくられたとしても、人がたくさんいるよりはマシだし」
なるほど、一人でいたいタイプか。
だからといって、ぼったくられる可能性大の店に進んで入るのは大分やってるぞ。
「……そう言うあんたもよくこの店に入る気になったね。その口振りからして、そっちもぼったくられたプレイヤーを見かけたんでしょ」
「まあ……はい、仰る通りです」
俺が入ったのは、ただの興味本位からだけど。
……なんか、俺の方がバカっぽく感じるのは気のせいだろうか。
うん、きっと気のせいだと信じたい。
自分に言い聞かせつつ、手にしたショットガン二丁を装備から外す。
自動で返却されたことを確認してから、部屋の入り口へと歩き出す。
「そんじゃ、お互いふんだくられないように気をつけようぜ」
後ろ手で振って部屋を後にしようとした時だ。
「ねえ」
再びジュリに声をかけられる。
「ん、どうした?」
「……ごめん、なんでもない」
「? お、おう」
何か言い淀む姿が気になりつつも、今度こそ部屋を後にした。
主人公が訪れている店のぼったくり被害者はそこそこいますが、一日に数人出ることは稀です。




