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牢獄

 狭い尋問部屋に俺は座らされている。

 別室でリファも同じく尋問されている筈だ。


 騎士団の聴取は、最初から難航した。

 まず素性確認で俺がクリフロード家の者と信じてもらえなかった。

 リファだって、バルバドールから来たと言ってもきっと信じてもらえないだろう。


 俺は父様の家紋付きの短剣を見せたけど、それでも信じてはくれない。

 次に、収納袋を確認された。

 中身はリファの薬草や種、多少のお金、着替え、アリアの野営荷物などだ。

 ただ、赤竜から引っこ抜いた黒杭を取り出した時にトラブルになった。

「何だこれは!」

「それに触れてはダメです!アンデッドの毒が回ります!」

 慌てて制止したけど、その騎士は取り合ってくれなかった。

「何を隠しもっているか知らんが、邪魔をするな!」

 巻かれていた布をとりはずして、その騎士が黒杭に触れると一瞬で手が黒く染まり首筋から(あご)付近まで変色した。

 ガラン

 杭を落として、騎士が藻掻き苦しみだした。

「だから言ったんだ!すぐに浄化します」

 俺は駆け寄って、浄化魔法をその騎士に掛けた。

 一度服を脱いでもらって、しっかり浄化されたかを確認してほっと溜息をついた。


「おい、この物騒なものは何だ?これで何をするつもりだった?目的は何だ!」

「だから、赤竜にこれが刺さっていたんだ。それは触れるだけで屍毒が回る危険な杭だ。俺は触るなと言ったのに、忠告を無視したのはそっちだ。俺に変な疑いを掛けるなよ!」

「小僧、口の利き方を間違えると牢獄にぶち込むぞ」

「・・すみません」


「この杭が危険なことは分かった。まずこの杭について知っていることを全て話せ」

「俺がこの杭を見たのはこれで4本目です・・」

 それから、バース伯爵領の大王亀、オルフェン直轄地ロゼム金山の黒ゴブリンと花のような元凶について話をした。

「そんな話はとても信じられんな。嘘をつくのもいい加減にしろ!」

 と、信じてはくれなかったけど。


 さらに、収納袋からロザリオ公爵家の家紋入りナイフが出てきた。

「何だこれは。何故お前のような子供がこんな物を持っている」

「これは、ロザリオ家のマッキャン司令がロゼム金山の問題を解決した褒美にとくれたものです。マッキャン司令に問い合わせてもらえれば分かる筈です」

「ロザリオ公がこれをお前の様な者にか?とても信じられん」

 どうせ何を言っても信じてもらえないらしい。


 そして、最後にノルドワルド伯爵の命令書とトッテムギルドからの召喚状、赤竜討伐隊の分配に関する契約書が出てきた。

「そこにある様に伯爵の命令で俺達は討伐隊に参加していたんです。ギルドに問い合わせてもらえれば分かる事です」


「おい、討伐隊は全滅したと言っていたな。俺達の騎士団からも10人が参加していた。彼らがどうなったか知っているか?」

「知りません。でも状況から考えれば死んだと考えるべきです」

「・・そうか。お前には聞くことがたくさんあるようだ。正直に喋れよ」


 その日、結局俺は牢獄に入れられた。

 鉄格子の一人部屋だ。狭く硬い木のベッドが一つと用足し用の壺が一つ。それしかない。

 リファの姿を見てないけど、リファも同じ目に遭っているのだろうか。

 ごめん、リファ。俺がもっとうまくやっていればこんな目に遭わせないで済んだのに。

 リファに申し訳なくて心が痛かった。


 翌日も聴取は行われた。

 この日は赤竜の討伐に関わることを細かく聞かれた。

「お前の言った通り、仲間は全員死んだようだ。確認に行った連中の話じゃひどい有様だったらしい。生き残りはお前達だけか?」

「さぁ。ギルドに聞いた方が早くないですか?俺達は赤竜を討伐ポイントまで誘き寄せただけですから。あとは現場を離れて遠目で見ていただけです」

 俺は、討伐隊としての役割やその日の行動を事細かにしっかりと説明をした。


 翌日の聴取時。

「お前達には、屍竜によるトッテムの街壊滅の危機を引き起こした主原因であるという嫌疑が掛かっている。実際、周辺の農村も被害が大きい。これは、赤竜討伐隊の大失態であり、お前達が引き起こした事態なのだ」

 そう、騎士から告げられた。

「待ってください。俺達は伯爵からの命令に従っただけですよ。それに討伐隊にはそちらの騎士団も参加していたし、バリスタだって提供していたじゃないですか。伯爵家お墨付きの討伐隊だったはずです。俺達に責任を取らせるっておかしくないですか?」


「それが伯爵の意向だ」

「・・具体的にどうなるんですか?処刑ですか?」

「そこまではまだ決まっていない」

 もし処刑とか言ったらリファを連れて何としても逃げてやる。

 それからも数日、聴取は続き俺は牢獄に囚われたままだった。



 アリアは、赤竜の威圧が解けると正気を取り戻した。

 一人魔境の森の中でぽつんと座り込んでいる。

「はぁ、情けないなぁ。あの子達の足ばかり引っ張って・・」

 ひどく落ち込んでいた。


 そこにリファーヌが戻って来た。

「大丈夫?アリア」

 リファーヌから心配されると余計に情けなさが募って来る。

「うん。もう平気。それよりごめんなさい。私、年上なのに情けなくて」

「いいよ、気にしないで。だって多分私達が異常なんだよ。普通竜の威圧なんて浴びたら誰だってああなるよ。ほら、私達はエルベス越えで鍛えられてるからさ」

「あなた達って本当にすごいのね」 

「ね、アリア聞いて。キースのリーフボードが焼かれてしまったの。キースは無事だけど飛べないから私のを貸してきた。で、私にアリアのリーフボードを貸してくれない?私今すぐキースの援護に行きたいの」

「あ、うんいいよ。でも、そうすると私が・・」

「アリアはここから歩いて宿に戻って。あとはキースが何とかしてくれるから」

「分かった。今の私じゃ手伝えることも無いか。ねぇ、二人とも死なないでよ。必ず生きて戻って」

「うん。キースがいるから大丈夫!じゃあ借りるね」

 リファーヌはすぐに飛び立っていった。


 アリアは一人魔境を抜けてトッテムの街へ足を向けた。

 翌朝、街へ戻ったアリアは馬車馬亭に戻った。

 でも、そこにキースとリファーヌは帰ってきていなかった。

 アリアの心に不安が過った。

 もしかして二人共死んじゃった?でも、街は無事だし。一体どういう状況なんだろ。


 ギルドに向かうと、中は騒めいている。そしてアリアを見ると職員が詰め寄って来た。

「アリア!あなた無事だったの?討伐隊はどうなったの?教えて!」

 周りに他の冒険者たちも集まって来て取り囲まれてしまった。

 口々にどうなったとか聞いてくるから煩くてかなわない。

 アリアは基本人が苦手なのだ。


「えーっと。私は途中で脱落したから最後までは分からないけど・・」

「静かに!静かに!」

「ごめん、アリア、それで討伐隊はどうなったの?」

「多分全滅したかと・・」

 その一言で大騒ぎになった。

「嘘だろ!」「もっと詳しく話せ!」「何でお前だけ生き残ってるんだ!」とか。

「ちょっと静かに!静かに!」

 職員が大声を張り上げるけど、騒ぎは収まらない。

 そこでやっと別室へ連れて行かれた。


 ギルマス、サブマス、他数人の職員が集まって来て、事情を聞かれた。

「では、状況から考えて、討伐隊は全滅と見て間違いないという事だな」

 オールバックのインテリギルマスが一言。冷めた目に感情が見えない。

「いや、まだそうと決まったわけでは。しかし、生存者のいる可能性かなり低いですな」

 サブマスは悔しそうに顔をしかめた。

「しかし、赤竜が屍竜になったとは。これであの白骨竜の謎は解けた。なるほど、そう言う事か」

「あの、キースとリファーヌは無事なんですか?」

「ん?あぁ。生きてるらしいぞ。今は伯爵の騎士団に事情を聞かれている」


 キースは無事に屍竜を討伐できたらしい。そして二人とも無事だと分かってほっとした。

 長い聞き取りを終え、夜遅くにアリアは解放された。

 そして、帰り道。

「少し話を聞かせてくれないか」

 声を掛けてきたのはいつぞやの王国領地軍の騎士だった。

 確かロンバードという騎士。


 またしても高級宿屋の食堂の個室へ連れて行かれて改めて事情聴取が始まった。

「お腹減ったわ・・」

「好きなものを頼みなさい。さて、次にその黒い杭の件だが・・」

 食事を摂りながら朝までロンバードの聴取は続いた。


 その頃、現地に状況確認に行っていた者たちがギルドへ帰って来た。

「ひどい有様だった。あの巨岩が熱で溶けてガラスみたいになっていた」

「遺品は数点見つかったけど、遺体は殆ど確認できなかった。皆燃やされたんだと思う」

「あれは人族の戦いの痕じゃない。あの惨状を見たら竜の討伐など無謀だったと分かる。討伐隊は為すすべなく全滅したのだろう」

 現場の状況が他の冒険者に伝わると、ギルドへの不信感が一気に高まった。

 持ち帰られた遺品が酷い状態なのだ。熱で溶けて剣と言えど原形を留めていない。

 それだけでどれほどの力量差であったかは察しが付く。


「なぜ竜討伐なんて強行したんだ!魔境の奥で大人しくしていたじゃないか!わざわざつついて暴れさせて、大勢殺されたのはギルドの判断が間違っていたからだ!」

 と、ギルドとギルマスを非難する声は高まった。

 元々、ギルド内で赤竜討伐に反対の意見はあったのだ。

 竜を怒らせて手の付けられない状況になる事を危惧する者達が少なからずいた。

 しかし、ギルマスはその声を黙殺し、時にはギルド追放をちらつかせて黙らせてきた。

 さらに、冒険者ギルドは王国権力から独立した組織なのだが、ギルマスは伯爵の命令を強調してきた。

 その不満と不信感がここに来て爆発した形だ。

 実際に、100人近い冒険者が死んでいる。

 これはギルドの差配ミス、判断ミスと言われても仕方のない事だった。


 しかし、当のギルマス、ウィリアス・ビフリートは王都ギルド本部の調査員を前に鼻で嗤っていた。

「ふん。竜を討伐するのにどうやったら犠牲を出さずに成し遂げられるのだ?方法があるならぜひ教えて欲しいものだ。それに、彼らもリスクは重々承知していた。その上で栄誉と報酬とこの地域の安全の為に命を賭けたのだ。私は彼らの意思を尊重しただけだよ。赤竜討伐の必要の是非についても、当然討伐は必要だったさ。では聞くが、君の家の庭にゴブリンが現れたとして、何もしないからと見過ごすのか?普通は被害の出る前に討伐するだろ。いいかい、多少強引だったことは認めよう。だが、実際に討伐は成功し、脅威は去ったのだ。犠牲は出たがそれは必要な犠牲だった。私は何一つ間違ってはいない」

 そう言い切ったギルマスの顔は満面の笑みと溢れる自信に満ちていた。

 同時に、死者への哀悼の想い、強硬策で失った信頼、一つ間違えばトッテムどころか他の街をも滅ぼしかねない事態であったことへの危機感などは微塵も見られなかった。



 数日経っても、俺は解放されなかった。

 リファも別の牢獄に囚われたままという。


 もう、聴取することはないのか、ここ5日間はただ閉じ込められているだけだった。

 その日、俺の牢獄の前に太った貴族がやって来た。見た目、口が大きくてイボ蛙を連想する顔だ。

「こちらはノルドワルド伯だ。敬意を以て応対する様に」

 牢番の騎士からそう告げられた。


「お前が風の旅団のリーダーか。今日は儂がいい知らせを持って来てやった。返答次第ではここから出してやってもいい」

 そう言ってニマニマ笑っている。

 ニコニコかもしれないけど、顔立ちがニマニマしている。なんか、笑顔が気色悪い。


「ここから出してやる条件はただ一つ。お前がギルマスと交わした契約の破棄だ。それを認めれば出してやる」

「つまり、報酬はない、素材の配分もないという事ですか?」

「そうだ。代わりと言っては何だが、我が伯爵家でお前達を雇ってやる」

「報酬と素材配分は放棄しても構いません。一緒に囚われているリファーヌも解放してください。それに俺達の荷物は全部返してください。それから、貴方に仕えることはできません」

 俺は即答した。

 腹は立つけど、こんな事で揉めても仕方がない。

 それよりも早くリファをここから出してやりたい。それに母様の実家に向かいたい。


 一緒にいた騎士が俺の返答に怒りだした。

「む。根無し草の冒険者風情の身分で何を言うか!当家に仕えることは名誉なことなのだぞ。それを分らぬとは愚か者なり!」

「よいよい。構わん。では契約破棄という事で良いな」

「はい」


 すぐに、契約書を差し出されて、そこに“風の旅団は上記契約を放棄する”と書かされた。


「良かろう」

 満面の笑みを浮かべて伯爵は去って行った。

 そして俺も牢獄から出されて別室でリファに再開した。

 実に10日ぶりのリファだった。


「キース。なんで私達急に出られたの?」

 リファは何も知らされてなかったらしい。

「俺達は受け取る筈の報酬を放棄したんだ。それが解放の条件だった」

「ふーん。キースがそれでいいなら私はいいよ」

 リファは話が分かる。

 アリアだとこうはいかなかっただろうな。


 俺達は荷物を確認して、伯爵の屋敷を出た。

 そこにアリアが待っていた。


「キース!リファーヌ!」

 アリアが飛びついてきた。

『アリア!』

「どうしてここに?私達が出てくるって知ってたの?』

「うん。だって二人を解放するように段取りしたの私だもん」

「どうゆう事?」


 アリアは、王国領地軍の騎士、ロンバードに俺達を解放する手伝いを頼んだらしい。

 ロンバードはその地位だけで伯爵を従わせるだけの力を持っているらしかった。


「アリア、ごめん。今回の赤竜討伐の報酬なくなっちゃった。王国軍が動いてるなんて知らなくて、あの契約を放棄するなら出してやるって言われて・・」

「そっか。・・でも、いいよ。お金なんてまた稼げばいい。それより二人が無事で良かった。もう心配で心配で・・」

 アリアは涙ぐんでいた。

 それほど心配かけたのなら本当に申し訳ない。

 報酬の放棄を決めた時、アリアの怒った顔がチラついていたことは内緒にしておこう。

 アリアも話の分かる大事な仲間だった。


 俺達はまず、高級宿屋へ行ってロンバードに面会した。

「伯爵に私たちを解放する様働きかけて下さりありがとうございました」

「いや、大したことではないからな。それにこっちも思惑があってのことだ。それにしても屍竜討伐、見事であった。我々も討伐隊の様子は見ていた。まったく一方的でひどい有様だった。しかし、その竜をお前達はたった二人で討伐したのだ。これは快挙だ。その様な者を何時までも不当に拘束するなど許せることではない。これは、騎士としてではなく、私個人の思いなのだが、私は君たちに感謝している。あの様に暴れる屍竜を放置していたらどれほどの被害が出た事か。それを未然に防いだ君たちに心から感謝しているのだよ」


 そう言って俺達の手を握って来た。

 王国騎士というだけで嫌悪感が走る俺だけど、この人は話の分かる人らしい。

 感謝していると一言言われただけで心が軽くなった気がした。

 屍竜に刺さっていた黒杭を渡して、どれほど危険な物かを説明した。

 こんな物いらないだろうけど、俺だって要らない。

 物騒なものは王国騎士団に押し付けると、すごくすっきりした気分になった。


 それからギルドへ行った。

 解放されたことと、契約を無効として報酬と素材配分の放棄を伝えに来たのだが・・

「ギルマスが呼んでます」

 とギルマスの部屋へ連れて行かれた。


「お前達、今回はご苦労だったな。ところで、これを機にこのトッテムギルドの専属にならないか?優遇してやるぞ」

「お断りします」

「なぜだ。ここは魔物も多ければ高額な依頼も多い。お前達ならいくらでも稼げるだろう」

「目的ある旅の途中なので。それにここは嫌いですから」

 本当は“ここは”ではなく、“お前が”というのが正しい。

 正直に言ったら喧嘩になるから“ここ”は嫌いという事にしておいた。


「おい、小僧。あまり調子に乗るなよ。ここをから離れることは許さん。前にも言ったがお前達冒険者はギルマスには逆らえないのだ。大人しくここでの専属契約を結べ。さもなければ後悔することになるぞ」

「どう後悔することになるのですか?」

「さてな、どうするかはこれから考える」

「では考えがまとまったら教えてください。それから俺達も考えます」


 そう言って俺達はギルマスの部屋を出た。

「あのギルマス頭はおかしいんじゃないの?」

 部屋を出るなりアリアが文句を言った。

「キース、早くこんな街出ていこ。私も気分悪い」

 リファもアリアと同様にご立腹だった。


 全員一致の多数決の結果、この日、もうすぐ夕方になるけど俺達は街を後にした。

 実は、リファのリーフボードも壊れてしまった。

 だから、走っている。

 目指すはロレンスク領、ソクラの街。

 西北西に1000キロルだ。

 でもその前にちょっと魔境へ寄り道だ。今は魔境へ向けて激走している。



 魔境に入ると、俺はポポトの樹を探した。

 そこらへんに生えているからすぐに見つかった。

 一本切り倒して削って乾燥させて、さらに削って磨いてリーフボードを作っている。

 リファも隣で製作中だ。

 アリアも初製作にチャレンジしている。


 今回は、全員分の予備も作るから少し時間が掛かってしまう。でも、必要なことだ。

 ニグモという芋虫の接着剤は市販されている物を買ってある。足の固定用の剣草はリファが種子を持っている。

 材料は揃っているから、とにかく作るだけだ。

 2日間を掛けて合計5つのリーフボードを完成させた。


「これから、一度赤竜の巣穴へ寄ってみようと思ってるけどいい?」

 竜の巣穴なんて覗き見るチャンスはそうそうないだろう。

 だから、これは男のロマンって奴だ。

「えー?なんでそんなとこ見たいのよ?わけわかんない」

 アリアは興味なしだった。

「まぁ、キースが行きたいなら行ってもいいけど」

 リファは仕方なく賛成。結果、賛成多数で行ってみることになった。


 飛行すること僅か20分。

 竜の巣穴に着いた。

 断崖絶壁の上の方。ここは空でも飛べない限り、誰もたどり着けないだろう。

 そこにでかい洞穴がぽっかり空いている。

 中へ入ると・・臭い!

 糞尿垂れ流しかよ・・

「キース!私達外で待ってるから一人で行って来て!」

「早くしてよね!」

 リファにアリアも怒ってしまった。

 はぁ。

 俺は手早く中を見てふと目に留まった物があった。

 紅い鱗だ。それも大きい。中々のものじゃないかな。

 全部で5枚。どれも0.8メトルサイズだ。

 それを収納して外へ出た。


 鱗を手に入れたと言ったら、二人共大喜びだよ。

「さすがキース!やったね!」

「まぁ、来て正解だったわね。少しでも実入りがあったから良しとしましょっか」

 口ぶりの割にアリアはニマニマしている。

 二人の変わり身の早さに呆れてしまった。

 ついでにその辺で小動物を狩って鮮肉を調達したらいよいよ出発だ。


 今回はどこにも寄らない。街もギルドも素通りしてロレンスク領を目指す。

 やっと母様の実家に向かう事ができる。


 俺は、逸る気持ちを抑えきれず、勢いよく大空へ飛び立った。


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