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ミスリルの鉄槌

「よう、お前達が風の旅団か。空を飛べると聞いたが本当なのか?」

 それがミスリルの鉄槌(てっつい)の挨拶だった。

 先に名乗れよ!常識だろ!


 ここはギルド隣接の酒場。

 俺達を待っていたミスリルの鉄槌という連中は8人もいた。

 男6人、女2人。皆20~30歳くらいだ。


「俺はキース。風の旅団のリーダーだ。こっちがリファーヌとアリア」

 ヒュー!

 アリアを紹介したら連中から口笛を吹かれた。

「なぁ、俺達のパーティーに入らないか?美人エルフなんて中々出会わないからな。そんなガキよりも俺達ランクAと組んだ方が絶対稼げるし楽しいよ!どうアリアちゃん」

 リーダーらしき奴の発言だ。

 いきなり引き抜きとは何を考えている?こいつはロクデナシだな。


「はい?気安く私の名前を呼ばないでくれない?あんた達なんかと組むわけないでしょ。馬鹿なの?」

 プイっと横を向いて露骨な態度を取るアリア。

 アリアって気に入らない相手にはとことん口が悪くなるらしい。

 また一つアリアを理解した。


「ぎゃははは、秒で振られてやんの!」

 仲間に笑われてそのリーダーらしき男が切れた。

「ふざけんなよ!お前、こっちは優しく話しかけてやってるんだろうが!」

「おい、俺の前でうちのメンバー勧誘すんなよ!ふざけてんのはどっちだよ!」

 俺も切れた。リファも眉毛が吊り上がっている。


「あ?小僧舐めてんのか?先輩冒険者に対する口の利き方を教えてやろうか?」

「お前みたいな礼儀知らずから教わる事なんて何もないよ。相応の対応してるだろうが」

「なんだと、この野郎!その糞生意気な態度は許せねぇ。ちょっと来い!俺が冒険者の礼儀を教えてやる!」


 いきなり物凄い険悪な雰囲気になってしまった。

 まだあっちは名前すら名乗ってないのに。

「あぁ。俺が相応の態度を取っていると分からせてやるよ!」

 こんな奴許せない。懲らしめてやる!


「ちょっと待て!」

 そう言われて振り返れば、酒場にはそこそこ客がいた。注目を浴びている。

 その中に見た顔があった。ジムだ。

 ジムはフォッセの街で俺達がEランク昇格の査定をしてくれたBランク冒険者だ。

 そのジムがなぜかこんなところにいた。ジムが俺達に待ったをかけたようだ。


「キース、リファーヌ久しぶりだな。おい、アロンソ。話を聞いていたが今のはお前が悪い。誰だって目の前でメンバー引き抜きの話なんてされたら怒るだろ」

「あ?ランクBが出しゃばるな!こいつの態度は許せないんだよ!」

「なら、どうすんだ?まさかランクAがランクE相手にガチの喧嘩をするのか?良い笑い者になるぞ」

「ガチじゃねぇ。撫でるだけだ」

「ははは。お前には無理だな。止めとけ。キースはな、沈黙の盾の連中が手古摺ったヘルグリズリーを瞬殺したらしいぞ。そんな実力者相手に撫でるだけって無理だろ」

「そんな与太話が何だというんだ?もういい。ジム、お前んとこはこの討伐隊から外れてもらう。俺のやり方に一々ケチつけるバカは要らねぇんだよ!キース。ギルドの鍛錬場に来い。誰が偉いか教えてやる」


 俺達はぞろぞろと移動して鍛錬場に来た。

 鍛錬場には冒険者が数人いた。

「ここは暫く俺達が使う。お前達は邪魔だから場所をあけろ!」

 アロンソとかいう奴は横柄な態度だ。どかされた冒険者は不満そうに顔をしかめた。

 せめてお願いしろよ。

 こんな奴に死んでもアリアは渡さない。


「キース、大丈夫?私が切っ掛けだからって訳じゃないけど負ける位ならやめた方がいいわよ」

 アリアが心配してくれている。

「大丈夫よ!キース強いもん。心配なんていらないって」

 リファが軽く請け負ってくれた。


 俺は木剣を構えた。

 アロンソとかいう男も木剣を持っている。ただサイズが大きい。大剣って奴だ。

 その大剣をブンブン振り回しながら感触を確かめている。


「ルールを決めようぜ。お前が負けたらアリアは俺んとこのメンバーに貰う」

「は?まだ言ってるのか?本当にクズだな。じゃあ俺がお前に勝ったら何をしてくれるんだ?」

「何でもしてやるよ」

 余裕そうな笑みを浮かべている。完全になめられているようだ。

「なら、この赤竜討伐のメンバーから外してもらおうか。お前からギルマスにあいつらは不要だから外したと報告してもらう。それでいいな」

「いいだろう。武器は何でもありだ。勝敗は降参するか戦闘不能になるまで。だが、殺しはしないから安心しろ。大怪我しても俺達の治癒師が治してやる。ただし金はとるがな」

「いいだろう。審判はどうする?」

「必要ない。すぐに終わるからな。行くぞ!」


 アロンソのメンバーにジム、他にも男女あわせて30人くらいがこの戦いを見守っている。

 恐らく、この中で俺の勝ちを信じているのはリファとアリアとジムだけだろう。

 緊張感というよりは、公開処刑を楽しむ?野次馬的な雰囲気だ。


 アロンソが大剣を横に引いてこちらへ突っ込んできた。

 身体強化を使っているのか動きが速い。でも、デビルオーガの動きを知っている俺には脅威ではない。


 カツン!

 ブンっと振られた横薙ぎの一撃は俺の木剣に止められた。

 俺も身体強化に加えて武器にも強化の魔力を流している。

 ビオラ師匠から、木剣でも強化魔力を流すことで、鉄剣を斬れるくらいの芸当を叩きこまれている。

 こいつの大剣を受けるくらいは余裕だ。

 でも、ランクAってこんなものなのか?


 そこからアロンソは力任せでブンブンと大剣を振り回してきた。

 カツン!カツン!カツン!

 それを一歩も下がらずに、あえて片手で受け流す。

「ハッ!」

 空いてる左手で魔力弾を飛ばしてみた。

 かなり手加減したとはいえ、アロンソはまともに食らって5メトル位吹き飛んだ。


「ふ、ふ、ふっ」

 アロンソが俺を睨んで何か言っている。

「ふ?」

 何が言いたいんだ?俺は首を傾げた。

「ふっざけるなー!」

 ふざけるなの「ふ」だったらしい。それはさすがに分からなかった。


 ブチ切れたアロンソがまた大剣を振り回す。さっきよりも大振りだ。隙だらけ。

 もう一回魔力弾を放つ。今度はもう少し強めにだ。

「ハッ!」

 またしてもアロンソは吹っ飛んだ。

 でも、こんな事をしていても決着はつかない。さっさと戦闘不能にしなければ。

 どうしよっか・・

 意識を刈り取るのが手っ取り速い。

 俺は両手で木剣を構えた。魔力をしっかりと木剣へ流して行く。

 木剣が俺の魔力で青白く淡い光を放った。


 その木剣を、大振りで振り下ろしてきたアロンソの大剣の上から斬り下げた。

 つまり俺の方が剣の速度は速いってことだ。

 そして、大剣は真二つに斬れた。折れたではなく斬り裂いたのだ。


「おぉー」と低いどよめきが起こった。

 アロンソの動きがピタリと止まった。

 いや、肩がプルプル震えている。怒りか?それとも恥ずかしいのか?

 どっちでもいいけど。

 ここまで俺は一歩も動いていない。

 俺はアロンソの首筋に剣先を突き付けた。

 無駄に痛めつけるつもりはない。

 でも意識を刈り取るのはもう少し後だ。きっちりと己の言動を反省してもらわねば。


「キース!頑張れー!そんな奴ボッコボッコにしちゃえー!」

 リファの声援はどこか浮いている。

 そこに更にチグハグな空気感のアリアの声援が来た。

「ついでにギッタンギッタンにしてその下らないプライドをバッキバキにへし折ってやんなさい!うちに喧嘩売ったことを死ぬほど後悔させてやるのよ!」


「このクソガキがー!」

 アロンソは首元の剣などお構いなしに俺に殴りかかって来た。

 すごい魔力が拳に乗っているから、まともに当たれば俺は殺されるかもしれない。

 でも、ビオラ仕込みの体術を極めた俺には怖くもない。


 パシン!

 その拳を木剣の腹で叩く。拳に乗せた魔力よりも俺の剣先の魔力の方が多い。

 だから、相当痛い筈だ。

「くっ」

「どうした?あんたの実力ってこんなもの?で、その程度のあんたが俺に何を教えてくれるんだっけ?」

 ちょっと意地悪だけど煽る。

「クソ!」

 拳に蹴りも交えて振り回してきた。

 さすがに威張ってるだけはある。一発一蹴が鋭い。それにきちんと拳や足に魔力を纏わせている。

 でも、当たらない。そして俺はアロンソの軌道を追う様にして手足を剣の腹で叩く。

 パシンパシンパシンパシン

 アロンソよりも速度も魔力も俺の方が上ってことが嫌でも分かっただろう。

 というより、ランクAにしては弱すぎる気がする。普通もっと強いだろ。


「そろそろ終わりにしようか。時間の無駄だし。あ、参ったは言わなくてもいいよ。すぐ終わらせるから」

 ハアハア。と息を切らし始めたアロンソに俺は努めて冷ややかに告げた。

 俺は木剣を放り投げた。

 別に木剣で決着をつけてもいいけど、丸腰の奴に武器を使ったら卑怯者っぽい。

 それに剣を使うまでもないし。

 構えをとって、一拍。素早く懐にもぐりこんで腹に拳を叩きこんだ。そして、崩れたところを首筋に手刀を落とす。

 それでアロンソは意識を失った。


 鍛錬場はヒソヒソと騒めいている。

「はい、俺の勝ちぃ!約束通り俺達風の旅団は赤竜討伐に参加しないから。そこの礼儀知らずが起きたら約束を守る様に伝えといてよ」

 わざと場違いな明るい声で言い放った。

 アリアやリファに今後ちょっかいを掛けるバカへの牽制だ。


 そこに、タイミング悪くギルマスが現われた。

「何をしている?」

 目が俺に問いかけている。

「そこに寝てる奴が俺達に喧嘩を売って来たから買ってやっただけだ」

「お前達はこれから討伐隊を組んで仲間になるんだ。仲良くしろよ」

「それはそこに寝てる馬鹿に行ってくれ。俺のメンバーをいきなり引き抜こうとしたからな。そんな奴と仲良くできるか?」

「ちっ、馬鹿め。今後内輪で揉めた奴は報酬を下げる」

「あ、それとこの勝負で賭けをしたんだ。俺が勝ったら討伐隊から抜けていいってさ。で、俺は勝った。約束通り抜けさせてもらう」

「言った筈だ。抜ければ追放処分だ。それは変わらん」

「構わないよ。死ぬよりは余程良い。ここにいる者の中で討伐隊に参加を考えている者がいたら考え直した方がいいですよー!竜は俺達の想像以上の強さなんだ。人族ではとても倒せない。必ず死ぬことになりますよー!」

 俺は同調してくれる者はいないかと声を張り上げた。

「おい!他の者に迂闊な発言はするな!伯爵の命令に背くよう先導した罪で捕らえるぞ」


 俺とギルマスは睨み合った。

 俺はアロンソとの喧嘩で興奮気味だったのかもしれない。

 つい売り言葉に買い言葉で応じてしまった。

 追われる辛さは身に染みて知っているのに・・


「とにかくだ、アロンソを起こせ。早く計画を立てろ。それからキース。アロンソとの約束は別なものに変えろ。お前をこの計画から外すことはない」

 くそ。何とかならないのか。

 その日、アロンソの治療もあって話し合いはないという。

 ジムと話がしたかったけど、アロンソのメンバーに呼び止められていて話せなかった。

 仕方なく、俺達は馬車馬亭に戻った。


 宿での食事中。

「キース、今日のキースって人が違ったみたいに怒ってたね。なんかいつもと怒り方が違ったよ。ちょっと意地悪な感じだった。どうしたの?」

「いや、だって仲間を引き抜くってあり得ないじゃん。それにさ、赤竜討伐に加わるってことは死ぬってことだよ。あいつらは、リファもアリアも殺そうとしてるのと同じことなんだ。だから今日は怒りが抑えられなかった。あと、アロンソって奴見てるとなぜか(あお)りたくなるんだよね。変な奴だからかな」

「ふーん。でもなんかいつもと雰囲気が違ってとてもカッコ良かったよ。うふふ」

 そんなリファを呆れ交じりにアリアが見ている。


「ねぇ、私は竜なんて見たことないから分からないけどそれ程強いの?」

 あ、話を変えてきた。

 ベックとアンナで桃色的な雰囲気の傍にいる辛さは知っている。

 そりゃ無理にでも話を変えたくもなるよね。うん。分かる。


「強いなんてもんじゃないよ。ね、キース」

「うん。俺達の精いっぱいの攻撃でも全く無傷だった奴を、その竜は簡単に引き千切ったんだ。あれと同じだとしたら絶対に勝ち目はない。逃げに徹しても生き残れる気がしない」

「ふーん、強さがピンとこないけど、とにかく相当ヤバイってことね。それならそれでできることをしないと」

 それから俺達は何ができるか、どう動くかを考え話し合った。


 翌早朝、俺達は街門を出て赤竜のいるという岩山へと向かった。

 一度見ておかないと何も分からない。イメージもつかめなければ戦い方を考えることもできない。

 リスクはあるけど、絶対に一目見ておく必要があったからだ。


 魔境の森が緑の絨毯の様に広がっている。

 そこにぽつぽつと背の高い岩山が屹立している。

 そのうちの一つ。岩肌に大きな洞窟があった。中は見えない。

 慎重に洞窟の奥まで見通せる場所まで上昇すると赤い巨体が見えた。

 寝ているようだ。

 丸くなっているから分かりづらいけど、サリフェリュジアほど大きくはなさそうだ。

 体長15メトルから20メトルか。

 鱗肌で翼は皮膜のようだ。

 大きなワイバーンと考えたら何とかなるかもしれない。

 サリフェリュジアのような貫禄というか品格というか威風はなさそうだ。

 ほんの少しだけ希望が見えた。


 午後、指定時間にギルドへ行く。大会議室へ通されると30人くらい人が座っていた。

 中央のアロンソが俺に気付いて睨んできた。それを無視して空いている端の席に着くと。

「そこじゃない!お前達はこっちに座れ!」

 といきなり怒鳴られた。示された席は中々な中央だ。

 まるで会議の話題の中心になりそうな予感がする。気が重くなってしまった。


「さて、赤竜討伐隊の定例会議を行う」

 アロンソが立ち上がって進行を始めた。

「今日は初めてのパーティーが2組参加している。軽く紹介するから各自後で交流するように。それから、ランクBのドッグソルジャーだが討伐隊から外れてもらった」

 ドッグソルジャーとはジムのパーティーだ。

 ジムには死んで欲しくないから心からほっとした。


「現在検討中の作戦を伝える。質問は後にしてくれ。まず、風の旅団が赤竜の巣穴を空から襲撃する。そして怒った赤竜を25キロル離れた指定の場所まで誘導することになっている」

 はい?俺達に囮役をやれと。25キロルも背後を襲われながら逃げ続けろと?

 昨日のアロンソじゃないが、ふ、ふ、ふざけるな!と叫びたい。


「指定場所は、ここから南南東に35キロル地点の岩石地帯だ。5メトル、10メトルの巨岩が凡そ30転がっている。岩と岩の隙間に我ら討伐隊が隠れ潜む。そこに赤竜を誘導する。風の旅団にはぎりぎりまで低空に引き付けてもらう。そして我々が下から一斉に柔らかい腹と翼を狙う。墜落した赤竜を伯爵家から借用するバリスタを以て左右から一斉に撃ち込む。動けなくなった所を我らが突撃して止めを刺す。討伐方法に関しては以上だ」


 皆、赤竜との闘いをイメージしているのだろう。

 バリスタは攻城兵器で巨大なボーガンみたいなものだ。

 俺も想像したけど、そんなやり方でとても倒せるとは思えない。

 というより、このアロンソに竜を倒せる力があるとは思えない。

 でもアロンソは自信満々な顔をしている。


「次に、各パーティーの持ち場を確認する」

 巨岩の配置図が示され、そこに何人、誰がどの武器を持って潜むのか。

 バリスタはどう配置して、カモフラージュをどうするのか。

 バリスタの扱う責任者を決めて操作方法をいつだれに教えるのか。等々。

 延々と会議は続く。


「さて、一番大事な報酬配分の話だ」

 とアロンソは言った。

 その時点で間違っている。一番大事なのは配分でなく命だ。

 俺はそう思っていたのに、周りは色めき立った。

 他の者にとっては一番の関心事だったようだ。

 まったく。だから死にに行くだけの作戦に自ら首を突っ込むんだよ。君たちは。


「討伐報酬は金貨500枚。獲得素材は5割を領主。残りは冒険者で分配と決まっている。

 読み上げるから静かに聞く様に。まずランクAの我らミスリルの鉄槌は報酬100、素材25%、同じくランクA黒い稲妻は報酬80、素材20%・・・」


 死者が金勘定してどうする?この時間に意味はあるのか?

 と考えていたら風の旅団がどうのこうのと言う声が聞こえてきた。

「たかがランクEのくせに報酬30に素材5%はずるい!」

 CランクとDランクから文句が出ているようだ。

「いや、奴らの力を借りねば作戦が成り立たない。だが、お前達はいくらでも替えが効く。文句があるならお前達が空を飛んで赤竜を誘き出せ。それができるならそいつらの報酬はお前達に呉れてやる」


「そんな無茶な!」

「ならば引っ込んでいろ。さっきも言ったようにお前達でなくてもいいんだ。文句ばっかり言ってると討伐隊から外すぞ」

 アロンソがぎろりと睨みを利かせた。

「・・・・」

 それでみんな黙ってしまった。


「俺達は報酬は要らない。討伐隊から外してくれればそれでいい」

 俺が発言をした。

「まだ言ってるのかお前は!ギルマスから絶対参加だと言われてるはずだ!いい加減にしろ!」

「ならば俺の言う通りに報酬を変えて欲しい。俺達の報酬は考えなくていい。ただ、全滅したパーティーがあったらその配分を俺達にそっくり寄こせ。もし、一人でも参加した者が生き残っていたら俺達はそのパーティーの報酬は受けとらない。そういう内容の契約書をギルマスと交わしたい」


 アロンソが何やら考え始めた。

「ってことは、風の旅団は無報酬で討伐隊に参加するという事か」

「そうじゃない。俺達以外は全滅すると言ってるんだ」

「なんだと!縁起でもない事を言うな!」

「俺達はそう確信している。だが、あんた達は頑張って生き残ればいいじゃないか。別に俺は討伐自体を止めようとは思わない。だけど俺達は参加したくない。それをどうしてもと強要するのならその位の要望は通してくれ。あ、ついでにその指定場所で俺達は戦闘に参加しないからな。おびき寄せるだけだ。それ以外は何もしない」


「ふん、ランクEに討伐に参加されても足手まといなだけだ。だが、良いだろう。それを契約書にすればいいんだな」

 昨日俺に負けたくせによく言うよ。


「あぁ。ギルマスと討伐隊に参加するパーティーリーダー全員の署名付きでな」

「ちっ、まあいいだろ」

 それから俺達が辞退した分の配分でまた揉め始めた。


 長い長い会議を終えてギルドを出ようとしたところでジムが俺達を待っていた。

 もう、外は薄暗くなっている。

「少し話をしたい」

 そう言って俺達はジムに連れられて隣接する酒場に移動した。


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