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風の旅団の初仕事

 今、俺達はオルフェール直轄領のロゼムの街を出発した。

 目指す先は南西方面のロレンスク伯爵領、ソクラという街だ。

 直線距離で3000キロル。街道を通れば4000キロルと見ていいと思う。


 ジルべリア王国とノエリア王国を結ぶ魔境街道にほど近い場所になる。

 リーフボードで飛んで行けば、多く見ても2週間で行けるけど、今はアリアがいる。

 パーティーを組んだばかりで置いて行くわけにもいかないから、移動しながらリーフボードを練習中だ。


「きゃあー!」

 アリアはリファよりも体力面で優れ、俺よりも魔力操作が優れている。

 逆に言えば、俺よりも体力面で劣り、リファよりも魔力操作が下手だ。

 つまり、俺とリファを足して2で割った感じだ。要するに、バランスがいいという事かな。


「きゃー!」

 それでも、中々苦労している。

 見た感じ俺達よりも頭半分背が高いし、その分体重だって重いだろう。

 だから苦労しているのかな。

 でも、魔力量も多いし慣れさえすれば一緒に問題なく行動できるはずだ。


「ひゃあー!」

 何せ風のアリアが二つ名なのだから。

 エウロの里でも天才呼ばわりされてたみたいだし。


「ヒャア~」

 ちょっと悲鳴が大きいだけだ。うん。

 今のところ全然進まないけど。

 でも、いい線いってる。もう少しだ。

 

「おーい!大丈夫かー?」

 すっ飛んでいった先で地面にボードの先端が突き刺さった。

 そしてアリアは派手に転がって行った。


「アリア、もう少しジワジワ風量を増やすんだよ」

「う~ん、イタタタ。分かってるんだけどなかなか難しくて」

「俺達も半月近く練習してやっとできるようになったんだ。俺達に比べたらアリアは上達が早いよ」

 今は俺に気を使って移動しながらの練習だ。

 本来なら一ヵ所に留まってじっくり練習するのがいいと思うけど移動を優先させてもらっている。

 アリアの魔力が切れたら俺達は草原を走る。鍛錬だって忘れない。


 途中、狩りをして食料を確保し土小屋で野営をする。

 だから街には寄らないし、宿にも泊まらない。

 当然ギルドにも立ち寄らない。お金を稼がない代わりに使うことも無い。


 そんな感じで旅する事ひと月。

 今はロレンスク領までの中間地点の手前くらいだろうか。

 アリアはだいぶ上達した。お陰で一日に進める距離も随分と伸びた。

 とは言っても、まだ魔力のロスが大きくて長時間飛び続けられるわけではない。

 それに自由自在と言う訳でもない。見ていてまだまだ危なっかしい。

 それでも、移動できてるしちゃんと飛べるようにはなった。



 その土地は見渡す限り果樹園が広がっていた。

 遠くに湖があって南へ川が流れている。川沿い手前に山があってとても景色がいい。

 川面が光って、緑が映えて、果樹園がとても長閑で。

 心が洗われるかと思う様な美しい風景だった。


 その果樹園上空を飛んでいた時、黒い塊が空から果樹園へと散らばってゆく所を見た。

「なにあれ?」

「鳥かしら?」

 遠くてよく分からないけど、決して良いものではないことは分かる。

 暫く飛んで近づくと、体長1メトルの紺色の羽根の鳥という事が分かった。

 その紺色の鳥が、人と争っている。


「あれって果樹園を鳥から守ろうとしてるんじゃない?」

「そうね、何か農具を振り回して戦っているわね」

「ちょっと行ってみようか」


 鳥は3羽いた。

 キュエー


 それを10人程が追い回して、時に攻撃を受けて逃げ回っている人たちがいる。

 地面にはライムベリーというお酒によく使われる果実が無残に落ちていた。


「その鳥の討伐するなら手伝いましょうか?」

 俺から声を掛けた。

「あ、あんた達、危ないから逃げなさい!」

「いや、俺達冒険者なんです。その鳥殺していいなら俺達で討伐しますよ」

「できるものなら頼む!」

 

 許可を得たところで、リファが風刃を、アリアも風刃を飛ばして翼を切り裂いた。

 スパパパ!

 俺は・・見ているだけだった。

 まるで獲物の取りあいだよ。リファなんてまだ話している最中に風刃を飛ばしていたからね。

 たった3羽じゃ、俺の出る幕はなかった。


 でも、ここは一人一羽でしょ!そんなことを思う俺は心が狭いのだろうか。


「いやぁ、あんた達小さいのにすごいな。本当に助かったよ」

 そう言って小太りのおじさんが笑顔で話しかけてきた。

 額に大粒の汗が浮かんでいる。手には干し草の束を突き刺す農具を持っている。


「わしはモゼフ。この果樹園のオーナーだ。あれは紺紺鳥(こんこんどり)とわしらは呼んでるが、ライムベリーを食い散らかす害獣だよ。あの山に住んどって毎日数えきれんほど果実を喰い漁るんだ。本当に困っている」

 そう言って山を恨めし気に見上げた。


「コンコン鳥?魔物じゃないんだ」

「あぁ、だから魔石はない。肉は固くてまずいし討伐しても取れる素材がない。だから冒険者には旨みが無さすぎて見向きもされないんだ。まったく頭が痛いよ」


「ふーん、何匹くらいいるの?」

「わからん。とにかく多い。千どころではないな」

「領主様は動いてくれないの?果樹園はこの領の大事な産業でしょ?」

「何度も討伐隊を出しているさ。だが上手くいってない。空を飛んで逃げちまうんだ」

 リファが同情的な目でおじさんを見ている。

「ねぇ、キース。何とかしてあげられない?」

 やっぱりか。困った人には手を差し伸べるのがリファだ。


「うーん、アリアはどう思う?」

「ギルドに依頼は出してるの?」

「この領は田舎過ぎてギルドはないんだ。一番近いギルドは隣の領でとても遠い」

「じゃ直接依頼されるとしてその金額しだいかしら」

「金か・・ここまで食い荒らされると今年も赤字確定でな。大した額を出してやれない」

「じゃあ諦めるしかないじゃない」

「酒でよければいいのだが、君たちは酒を飲む齢でもないしな」

「お酒?ベリー酒?キース、私は大樽でならいいわよ!」

「おいおい。俺達飲めないし」

「あら、可哀想に。あんな美味しいもの飲めないなんて」

「じゃあ、賛成多数で討伐するってことでいいのね!おじさん私たちに任せて」


 アリアがやる気を出したことで討伐が決まった。

 ていうか、酒が報酬じゃ俺達は納得できない。そこはしっかり話を付けた。

 俺的には早く先に進みたいところだけど、リファが見過ごせないと思った時点で俺も賛成だ。


 それにしてもアリアは酒に目がないらしい。またアリアを一つ理解した。

 お金にしっかりしていて、無作法で遠慮が無くて権力を恐れない。あと、努力家だ。

 それが俺のアリアの人物像だ。


 その日、モゼフおじさんの家に泊まることになった。

 凄く大きな屋敷が何軒もあって、そこに100人以上が住んでいるらしい。

 豚小屋、鳥小屋、山羊小屋とあって、更に酒造所と果実水を作る作業所がある。

 更に厩舎、農具小屋、肥料小屋といくつも建物があってまるで一つの村だった。

 ここはモゼフ農園というそうだ。


 モゼフおじさんにコンコン鳥を退治してくれる冒険者と紹介されたからなのか、それはそれはとても歓待されてしまった。

 まるで、エウロの里の宴みたいな感じで。ここまでされては後に引けない。

 見ればリファの隣でアリアがベリー酒を大杯で呷っている。木杯の3つ分は大きい。

 それは水じゃないんだよ!ガブガブと飲むものでもないよ!遠慮がないなぁ、まったく。

 これは頑張るしかないな・・


 翌日、二日酔いのアリアを置いて俺とリファは下見に出かけた。

 山のどの辺に営巣しているのか。討伐地点をどこにするか。その方法はどうするか。

 色々と見て考えなければならない。

 昼に一度戻って復活したアリアを連れてアリアの意見を聞いた。

「うーん、それでいいんじゃない。空中戦のことは私分からないから任せるわ」

 他人事のように丸投げされてしまった。

 アリアは深く考えない人なのかもしれない。一応頭の片隅にメモッとく。


 それから、モゼフおじさんに計画を話して付近の農園の人手も借りることになった。

 これで準備は整った。

 翌日、夜が明けて営巣地が騒がしくなる時間帯に3人で山へ向かった。

 ドゴーン!

 キュエー!!

 雷撃を放つと一斉に山からコンコン鳥が飛びだしてきた。

 キュエーキュエーと鳴き声がうるさい。

 確かに数えきれないほどいる。3千?5千?その位はいると思う。

 それを、派手な火魔法を使ってあらかじめ決めた討伐ポイントへと誘い込む。


 そこは広い草原になっているところで、辺りには何もない場所だ。

 散らばろうとするコンコン鳥を外周から3人で追い込んで密集させたらいよいよ討伐開始だ。


 風刃を放つと次々地面に落ちて行く。

 狙う必要はない。撃てば必ず当たる。

「おおぉー!」とどよめく。

 下ではモゼフ始め農園の人達が(くわ)(すき)木槌(こづち)やらと様々な農具、工具を持って待ち構えていた。

 落下してもまだ息のあるコンコン鳥に止めを刺して行く。

 そして散らばる死骸をひとまとめに積み上げて行く。

 かなりの重労働の筈だけど、皆張り切っていた。

「これは凄いな。コンコン鳥が雨のように降って来るぞ!」

「最近の冒険者ってのは空を飛ぶんだな。すごいのー」


 さすがに俺達3人では囲み切れない。逃げて行くコンコン鳥の数も多い。それでも、その日は大量に討伐できた。


 そして、翌朝もまた雷撃魔法の音で驚かせてからの討伐を行った。

 それを3日も続けるとさすがにコンコン鳥は巣を離れどこかへ飛んで行ってしまった。

 4日目には一羽もいなくなったところで討伐は終了。

 代わりに草原には大量の死骸の山がいくつも積み上がっている。

 それを焼いて穴に埋めて無事に依頼を完了した。


「あんた達のおかげでもう苦しまないで済む。本当にありがとう」

 モゼフ他農園の人達から涙ながらに感謝をされて、俺達は報酬を受け取った。

 俺とリファの二人で金貨1枚。精一杯の報酬なのだそうだ。

 そして、アリアには約束通りベリー酒の大樽1つだ。


 ベリー酒というのは果実酒の中の一つで、最も大衆的なものらしい。

 それを大樽で受け取ったアリアはご機嫌だった。

 一人でそんなに飲んだら病気になりそうな気がするんだけど大丈夫だろうか。

 太って飛べなくなっても知らんぞと心の中で忠告だけはしておいた。


 果樹園を後にして気づいたけど、コンコン鳥討伐が風の旅団の初仕事だった。

 ギルド依頼でもなく、討伐内容に比して報酬は少なかった。

 でも、モゼフおじさん達の嬉しそうな笑顔を見れたし、俺的には満足だったかな。

 リファも満足気だし、アリアは言うまでもない。

 みんな満足の初仕事だった。


 そして旅は続く。コンコン鳥の住んでいた山を越え、川を越えて隣の領に入った。

 そこにも果樹園が広がっている。

 ここは高級マスカット農園だから高級ワインを特産にしているのかもしれない。


 その先に広い街道があった。その街道と並行して俺達は草原を飛んだ。

 進むこと2日。

 ギュスターブ侯爵領ギュエスタの街に到着した。

 ここは王国南西部の交通の要所となる街らしい。

 かなりの人と荷物で(にぎ)わっている。


 この街に寄った理由はギルドで大王亀素材の結果を確認するためだ。

 どうやらすべての大領地にギルドがあるわけではなく、大きな街だから必ずあると言う訳でもないらしい。

 この辺で冒険者ギルドが確実にあると分かっているのはギュエスタだったから寄ることにしたわけだが・・


「風の旅団です。ロゼムギルドから俺達に何か連絡が入っていないか確認に来ました」

「風の旅団ですね。あーロゼム支部からは特にないですよ。ただ、ノルドワルド伯爵から伝言が一つ、それにトッテムのギルド支部からキースとリファーヌに召喚状が来ています」

『は?』

 受付のお姉さんは少々お待ちをと言って、奥へ入ってしまった。


「ノルドワルド伯爵って誰?」

「知らない。アリアは知ってる?」

「ううん。あなた達が呼ばれてるんでしょ?でもトッテムの街がどこかは知ってる。南の魔境沿いの街よ」

「何でそんなとこから・・面倒な話にならなきゃいいけど」


 待つ事数分。お姉さんが紙切れを持って戻って来た。

「読み上げますね。まずノルドワルド伯爵から。“E級冒険者 キース、リファーヌ両名にトッテムギルドの要請に応じ全面的に協力することを命ずる” とあります。次にトッテム支部のギルドマスターから、“Eランク キース、リファーヌは直ちにトッテムギルド迄まで来られたし。この要請に応じない場合はいかなる理由があろうと何らかの罰則を設けるものである。フォッセ支部GMビフリート” 以上です」


「あの、全く身に覚えもないし行ったことも無いところから突然来いとか罰則とか言われても困ります。俺達予定がありますから。断るにはどうすればいいですか?」

「うーん、断らない方がいいと思うわよ。記憶にないだけであなた達何かしたんじゃない?」

 リファが首を振った。

 俺だって何も心当たりがない。


 アリアが身を乗り出してきた。俺達よりも冒険者歴が長いから任せていいかな。

「伯爵からは、協力しろと。で、ギルマスからは呼び出し命令ってことよね。Eランク相手に呼び出しって普通しないわよね。この呼び出しって例えばどんな理由が考えられるのかしら?」

「私の推測だけど、どうしても事情を聞きたい時とかには強制的な呼び出しを掛けるわ。だからあなた達に何か聞きたいことでもあるんじゃないかしら」

「そんなことで一々遠い領地に呼び出されてたら何もできないじゃない。移動費とかそのロスした分の日当は払ってもらえるんですか?」

「普通はないわ」

「じゃあ行きません!」

「でも、そうすると罰則がつくって書いてあるわよ。その場合、ランク降格とか罰金とかが考えられるけどそれでもいいかしら?」

『良くありません!!!』


「じゃあ行きなさい」

 俺達は渋々進路を変更することにした。

 ギルドなんて寄るんじゃなかった・・

 寄らなければこんな伝言受け取ることも無かったのに。


 地図を確認したら、ノルドワルド領は今いるギュエスタの街から南南東に700キロル行ったところだ。

 ちなみに目指すロレンスク領は西南西に600キロル。

 まったく苛立たしいことにかなり大回りの寄り道になる。

 何の用かは知らないけどさっさと行ってさっさと断ってロレンスク領に向かおうと方針を立てた。


 アリアに合わせつつ大急ぎ向かう事、6日。

 ノルドワルド領、トッテムの街に着いた。ここから東に領を二つ行くと俺達が最初にジルべリアの大地を踏んだフォッセの街がある。

 こうして地図を目で追っていると随分と移動していることが分かる。


 入街税を払って中へ入ると木造の街並みが広がっていた。

 馬車馬亭という変な名前の宿に部屋をとってから、ギルドへと足を向けた。

 ちなみに、部屋割りは俺とリファで一部屋、アリアで一部屋だ。

 3人部屋が無かったことと、今までリファと一部屋で済ませていた慣習からそう決まった。

「あなた達そろそろ部屋は分けた方がいいわよ。いつまでも子供じゃないんだから」

 と、アリアから尤もな意見を頂戴した。

 確かにと俺は思ったけど、リファは「いつまでも子供でいいもん!」と聞く耳を持たなかった。


 どこのギルドも門構えは似ている。

 ギルドの紋章を掲げた扉の無い建物に入ると左側にカウンターがあった。

 そこに立っている美人なお姉さんに声を掛ける。


「風の旅団のリーダーのキースです。ここのギルマスから呼び出されて遥かギュエスタの街からわざわざやってきました。俺達に何の用か教えてくれますか」

「少々、お待ちを」

 そしてギルマスの部屋へ通された。


「お前達がキースとリファーヌか。俺はギルマスのビフリートだ。早速だが、お前達にギルマス特例で指名依頼する。依頼内容は赤竜討伐を行ってもらう。詳細はランクAパーティー “ミスリルの鉄槌”から聞く様に」


 は?今、赤竜討伐って言ったか?

 白竜・・じゃなかった、サリフェリュジアを知っている俺は血の気が引いた。

 冗談じゃない!

「そんな危険な依頼はお断りします!それに今は急ぐ旅の途中なので」

 ここはさっさと断るに限る。そう思ったのだけど、そう簡単ではなかった。


「断ればギルド会員から追放する。E級がギルマスの依頼を断るとかできる訳ないだろ?何を考えているんだ」

「いや、ギルマス特例は今まで何度か依頼を受けてますから、断れるって知ってますよ」

「それはそこのギルマスの方針だ。ここでは俺がルールだ。受けないのであれば今ここで会員証を剝奪する。好きな方を選べ」


 横暴な奴がここにもいた。

 30歳を超えたくらいのインテリ系眼鏡だ。かっちり髪をオールバックにして目つきが鋭い。

 その目を俺は睨み返す。

「では、ギルマス特例を断ったら処分にできるというルールでもあるんですか?あるならその規則を見せてください」

「これはギルマスの裁量権の範囲内だ。お前達が幾ら騒いだところで私がやれと言ったらお前達は従うしかないんだ。そんなことも分からないのか」

 上から見下す様に睨んでくる。嫌な目だ。クソ騎士団長共を思い出す。


 アリアが仕方なさそうに首を振った。

「またこのパターンか。なんか嫌になっちゃう。この国ってどうなってるの?まともな人っていないの?」

 リファがわざと大きな声で呟いた。

 ジロリとギルマスがリファを睨む。


「ギルマスは竜に遭ったことないでしょ。俺達はありますよ。だからその強さも賢さも理解してます。絶対に大勢死ぬし討伐なんてできる訳がない。それに、もしかしたら竜を怒らせて討伐隊どころか付近の村や町まで襲われる事になるかもしれません。絶対にやめるべきです」

「これ以上の被害を出さないために討伐するのだ。これは今更覆ることはない。いいか、お前達にはノルドワルド伯爵の名前でギルドに協力するよう命令があったはずだ。断れば伯爵の命令を無視したということで罪に問われるぞ。その場合、投獄は免れん。仮に逃げたとしても全ギルドにお前達の捕縛を指示する。お前達は犯罪者となるんだ。良く考えてどうするか決めるんだな」


 俺達は部屋を出て、さっきのカウンターに並んだ。

 このギルマスの横暴をギルド本部へ訴えたい。

 その不満をさっき応対してくれたお姉さんにぶつけてみた。


「・・と言う訳で無茶を言われて困ってるんです。何とかなりませんか?」

 お姉さんは凄く申し訳なさそうな、同情するような表情で話を聞いてくれた。

「ごめんなさい。私も上司の方針に逆らえないの。本当にごめんなさい」

「じゃあ、ギルド本部に訴えたいんですけど、どうしたらいいですか?手紙を書いてお姉さんに渡せば本部に送ってもらえますか?」

「上司の意向に反したら私が責めを負うことになってしまうの。だから申し訳ないけどそうしたことはできないの。ごめんなさい」


 お姉さんに謝ってもらっても事態は解決しない。

「もういいです。ではミスリルの何とかってパーティーの紹介をお願いします」


 もう、投げやりな気分だ。

 お姉さんは悪くないけど、不貞腐れた態度を取ってしまった。

「ミスリルの鉄槌は明日昼に呼んでおきます」

 お姉さんは最後まで申し訳なさそうな顔をしていた。


 それにしても、なんてことに首を突っ込まされてしまったんだ・・

 どうしよう・・

 

 竜討伐をさせられるくらいなら、ギルドから追放されようと、犯罪人として逃げ回る人生になろうとも、逃げだしたくなった俺とリファだった。


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