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3人の騎士

「クソ!俺は何をやっているんだ!」

 自分に腹が立った。

 でも、そんな事よりもベックだ。

 急いで駆け寄ってヒールを掛けた。でもベックは動けないでいる。


「ごめん。俺のせいで・・」

「あぁ。そうだな。だが、なんで光球なんて使ったんだ?」

「そうよ。普通のミスじゃないわ。キースどうしちゃったの?」

 俺は項垂れてベックに謝罪した。ベックはすごく苦しそうで、それが事の重大さを物語っている。


 俺は昔ブラックウルフを光球で撃退できたことを打ち明けた。


「信じ難い話だがお前が言うなら本当なんだろう。だがな、普通は魔物に光球は効かない。知っているだろう?今回は明らかにお前のミスだ。二度と同じことをするなよ。こんな場所だと小さなミスが致命的な結果になりかねない」

「はい。ごめんなさい」


 俺はミスばかりだ。そのせいでどんどん状況が悪くなって、ベックがどんどん衰弱してゆく。

「もういい。自分を責めるな。それより馬を追うぞ。もう食い殺されているだろうけど、荷物は回収しないとな」


 俺達が馬の後を追っていくと、荷物はところどころに散らばって落ちていた。

 血の痕と大きな何かを引きずった痕跡が残っている。


「馬は狼共がどこかへ運んだようだな」

 散らばった荷物を回収して俺達は先に進むことにした。

 一番大事なドミークの形見の剣も無事回収できた。

 俺のせいで馬を失ったから俺が背負って持っていくことにした。ひもを通して袈裟懸けに背負った。

 重い・・


 でもベックは俺以上にふらふらして見ていてとても辛そうだ。

 悪いことに起伏も激しくなってきた。

 だから進行速度も相当に遅くなってしまった。


 このままだと今日中に追いつかれてしまう。

 すごくまずい状況だ。でもこれ以上ペースを速めることはできない。


 その後もゴブリン、オーク、二頭蛇、アイアンボアが襲ってきた。その度に足止めを食い時間を費やしてしまった。


 中でもアイアンボアの突進に肝を冷やした。

 視界に捉えたと思った時にはものすごい突進力で俺達に突っ込んできた。

 通常時ならいざしらず、今のベックに避ける術はない。


 慌てて土壁を作ったけど一瞬で粉砕された。

 そのまま突進されていればベックは危なかったけど、アイアンボアは一度後ろへ下がった。

 その隙に再び土壁を張り直し、その手前に落とし穴を作る時間が稼げた。

 アイアンボアは見事穴に嵌り動けなくなったところを火魔法で焼いて倒すことができた。


 戦闘時間は短かったけど、冷や汗ものの戦いだった。


 魔物との戦闘中、ベックはただ突っ立っている訳じゃない。邪魔にならないように、優位な位置取りをしようとベックも動き回り体力を消耗することになった。

 結果、ベックの体力は更に削られて弱ってゆく。


 そして遂にベックの足が止まってしまった。膝に手を置いて肩で息をしている。

 それに顔色が悪いし尋常でない程汗をかいている。

 先に進みたいけど休まざるを得ない。

 俺とリファは周囲の警戒をしながら、ベックの為に毛布を敷いたり火を起こして薬草汁を作ったりした。


 昨夜、ベックが言った足手まといという言葉が頭をよぎった。

 俺のせいでベックは歩く羽目になりペースが落ちている。それをベックが足手まといになっていると感じているとしたら、俺はどうしていいか分からなくなる。

 “俺を置いて行け”といつ言われるか、俺はビクビクしていた。


 

 そこに、恐れていた騎士団が現れてしまった。

 時間はまだ昼を少し回ったところだ。

 早すぎないか?と思ったけど、追い付かれたものは考えても仕方がない。

 でも、たったの3人しかいない。


「お前らこんなところにいやがったのか。散々走らせやがって。だが、やっと追いついたぜ」

 騎士の一人が言った。

 その騎士の内二人に見覚えがある。魔神の爪痕を調査した時に俺達の護衛をした騎士だ。

 残る一人は見知らぬ女性騎士だった。

「ちょっと、本当に子供じゃない。こんなガキンチョに私たちを差し向けたわけ?団長は一体何を考えているのかしら」

 もう一人の男は確か無口だった。ヌボーとして虚ろな気配のくせにやたら強い気配もある不思議な人だ。


 全員金属鎧を着込んで短槍を持ち、腰に剣を下げている。


「ち、参ったな。いよいよ詰んだか。お前達、奴ら相当腕が立つ様だ。接近戦はするなよ。ゲイドが3人いると思え」

 ベックが全然嬉しくないアドバイスをくれた。

 ゲイドはミルケットの仇。二人掛かりでやっと倒せた奴だ。

 それが3人って、どうすりゃいいんだ?


 男二人の戦いは見たことがある。

 聖結界の内側から、アンデッドの首や手足を槍の一振りで軽くあしらう様に刈っていた。

 確かに相当の腕が立つ印象だった。


(まずい。勝ち筋が見えない)

 俺とリファがベックを庇う様に立ち3人と向き合った。


「あんた達3人だけか?」

「あ?あぁ。俺達は先行部隊だ。本体はゆっくりこっちに向かっている」

「ねぇ、ウェイド。さっさと捕まえて戻りましょ。ここは魔物が多くて落ち着かないわ」

 女騎士がウェイドを急かした。


 俺は最速のストーンバレットを良く喋るウェイドとかいう騎士に向けて一発打ち込んだ。

 でも、それをそウェイドは軽く弾き落とした。


 動きだけを見るならゲイドより強いかもしれない。

「デュロス、お前は男のガキを押さえろ。リーベル、お前は女のガキだ。俺はベックを殺る」


 一斉に3人が動き始めた。身体強化を使っているのかとんでもなく速い。

 何の対処もできないまま3人に囲まれてしまった。

 俺はベックに向かったウェイドという騎士にストーンバレットを連射する。が、当たらない。

 その間にデュロスとかいう大柄なくせにぼーっとした雰囲気の騎士が俺のすぐそばに迫っていた。

 槍の柄を腹に叩きつけてきたところをバックステップで躱してバレット弾で反撃する。

 が、それも弾かれた。


 ウェイドがベックに迫り、槍を繰り出した。

 間に合わない!と思ったけど、ベックは剣で応戦してしっかり凌いでいる。

 さすがベック!

 でも、長くはもたない筈だ。

 

 リファは風刃をいくつも放って女騎士を牽制をしている。

 突破口があるとしたら、俺が手早くデュロスを倒すしかない。

 早く倒さないとベックが持たない。

 俺は粘着タイプの火球を3つ浮かべてデュロスに放った。

 予想通り、槍先や柄にまとわりついた炎の熱に耐えきれずデュロスは槍を手放した。

 そこにバレット弾をすかさず打ち込んだけど、地面を転がって躱されてしまった。

 立ち上がった時には腰の剣を抜いていた。


 もう一度火球を放ったけど、今度は半身で躱されてしまった。

 完全に体捌きだけで避けている。

 この人強い・・


「キース!リファーヌ!俺をおいて逃げろ!すぐに逃げろ!」

 ベックが叫んだ。


 思わず振り向くとベックは鍔迫り合いをしていた。

 力が入らないのだろう。片膝を付いて押されている。


 それが俺を焦らせた。

 俺はベックの援護にバレット弾を撃った。

 リファからも風刃が数枚ウェイドに向かっていく。

 それをウェイドは槍で簡単に弾いてしまった。


「馬鹿野郎!昨日の約束を忘れたか!」

 ベックが怒鳴った。あれだけ消耗しているのに凄みのある声だ。


「嫌だ!俺はベックを見捨てるなんてできない!」

 気が付いた時には怒鳴り返していた。


 きゃあっ!

 その時、リファの短い悲鳴が上がった。


 リファの懐に槍が刺さっている。

 !!!


 よく見たら、柄の方だった。

 焦った。でも一瞬俺は完全に気を取られた。

 腹に強烈な拳を叩きこまれて吹っ飛ばされてしまった。


 2回3回と地面を転がる。


「キース!」

 ベックの叫ぶ声が聞こえた。

 デュロスは余裕なのか追撃をしてこない。


 ぐうぅぅ

 うつ伏せのまま顔を上げると、リファは背中を踏まれて首筋に槍先を突き付けられている。


 ベックは?

 ・・・・・

 頭が真っ白になった。


 ベックは腹を貫かれていた。背中から突き出た刃にベックの血が滴っている。

「ベックー!!」


 俺は怒りのあまり頭が爆発するかと思った。

 うつぶせたままバレット弾を5発同時に放った、立ち上がりながらさらに5発。

 ウェイドがベックから離れたと同時に火矢に切り替えまた5発。

 そこからは火矢と風刃とバレット弾の連続射撃でハチの巣かミンチにしてやるつもりで撃ちまくった。


 けれど、どれも躱された。

「ぐぅぅ、キース逃げろ・・」

 ベックのうめき声が聞こえてきた。まだ生きてる。

 今すぐにヒールを掛ければまだ助かる!


 後ろで微かな気配がした。

 俺は振り向きもしないで足から地面に魔力を通してロックパイルを突き上げた。

 バギャーン


 ロックパイルの砕ける音がして振り返ろうとしたその前に、背後から首をホールドされた。

 そのまま膝裏を蹴られてバランスを失う。

 そして片腕を背中に掴まれて捻りあげられた。

 骨がきしんで折れそうだ。

 どが付くほど太い腕が俺の顎下で首を締め上げて来る。そのまま持ち上げられて、足が地面を離れた。

(しまった・・)


「ベック!ベック!」

 リファーヌがうつ伏せで動けないまま叫んでいる。

 俺は声を出したくても苦しくてうめき声さえ出せない。


「リーベル、デュロス、よくやった。ガキ二人に首環を嵌めてすぐに帰還だ」

 ウェイドが隷属の首環を取り出した。環の一部が外れてほどけた首環をぶらぶらさせながらリファに近づいて行く。


 このままだとリファが奴隷にされてしまう!

 ベックが死んじゃう!

 何とかしないと!何とかしないと!


 リーベルがリファの後ろ髪を無造作に掴んで頭を無理やり持ち上げた。

 そのすぐ傍にウェイドが身を屈めてリファに首環を嵌めようとしている。


 まだだ。まだ諦めない!


 俺は体中から魔力をかき集めて自由な左手を突き出した。

 怒りと痛みで調整が全くできないから全力の一撃をウェイドに向けて放った


「雷撃!!」


 俺の魔力が雷に変化し、左腕どころか全身を駆け巡り眩い白光と凄まじい音を轟かせた。


 少し、多分数秒意識が飛んだと思う。

 ここまで大量の魔力を一度に消費したことがないから身体がびっくりしたのかもしれない。


 チカチカする目を瞬いて見ると、ウェイドは動きを止めていた。

 雷撃はヒットしたのだろう。目を見開いて硬直している。

 周りに余分なものがあると命中率がかなり下がる技だ。

 当たったのはラッキーというより奇跡だった。


 リーベルが我に返って俺を睨みつけた。

「お前、今何をした!」

 リファの首に手刀を当てるとこちらへ向かってきた。

 リファは意識を刈られてしまったみたいだ。


 女騎士が槍先を俺に向けて近づいてくる。

 俺はまだデュロスに拘束されたままで身動きができない。

 無詠唱で風刃を飛ばしたけど打ち払われた。

 この女騎士も強い。


「デュロス、そのまましっかり押さえとくんだよ。ガキ!今お前の意識を刈り取ってやるよ!」


 雷撃をもう一回・・ダメだ、まだ必要な魔力が集まらない。

 かなりご立腹の表情を隠さずリーベルは槍を振り上げ、そして振り下ろした。


 俺は無力だ。

 ベックもリファも守れなかった。

 もう、俺とリファには奴隷として公爵家に飼われる未来しか残っていない・・



 キン!

 どこからか現れた剣がリーベルの槍を防いでいた。

 あれ?


 気付けば、抑えられていた俺の腕が自由になっている。いや、首の圧もない。

「おい。お前に礼を言う。俺は味方だ。俺に任せておけ」


 低い声がすぐ頭上から聞こえた。

「デュロス、貴様ぁ!!」

 リーベルがヒステリックに叫んだ。


 何が起きているのか全く理解できない。

 でも、デュロスが俺を庇う様にしてリーベルの槍を防いでくれた。


 リーベルが繰り出す槍の刺突をデュロスは軽々いなしている。

 キンキンと俺のすぐ目の前で槍と剣が乱れ交わる。

 正直、肝が冷える光景だ。でも、そんなことに怯えてはいられない。


 俺は隙を見て二人の間から抜け出してベックの下に駆け寄った。

「ベック!しっかりして、ベック!」

 俺の呼びかけにベックが薄く目を開けた。良かった。まだ生きている。

 間に合うのか?


 俺は渾身のヒールを掛けた。

 ベックの傷口に光が吸い込まれて傷を癒していく。


 もっと早く、もっと早く!治れ!治れ!治れ!治れ!

 じれったい程ゆっくりと、でも確実に傷が消えてベックの表情から苦しみが抜けて行った。


 キャァァー!

 鋭い悲鳴が聞こえて振り向くと、リーベルが肩口を切られていた。

 直後、デュロスの一振りで首がスパンと飛んでリーベルは倒れた。


 唖然と見ている俺をよそに、デュロスはウェイドに近づいていった。

 ウェイドの髪を掴み投げ飛ばした。

 ウェイドは生きているのか死んでいるのか分からない。

 まったく動かないウェイドをデュロスは蹴り飛ばし踏みつけ、最後に剣を叩きつける様にして首を落とした。


 一体どうなってるんだ?

 俺の頭では理解が追い付かない。


 デュロスは騎士で俺と戦闘を繰り広げた敵で間違いない。

 でも、俺達の味方とも言っていたし、二人の騎士を殺してしまった。


 疑問符を大量に頭に浮かべる俺。

 その間にデュロスがリファに歩み寄っていく。


 さっと血の気が引いて俺は火矢をデュロスに向けて放った。

「リファに近づくな!」


「待て!俺は味方だと言った筈だ。信じろ。否、信じてくれ。お前達に危害は加えない。約束をする」

 スパパパと火矢を切り裂き、デュロスが俺にそう言った。


 俺は警戒心を緩めず、リファの元へ駆け寄った。

 リファは、意識はないけど息をしているし気絶しているだけのようだ。

 抱きかかえてベックの傍に連れて一緒に寝かせた。


 ベックは命を繋いだけど血を流しすぎた。熱も高いままだし息も荒い。

 俺達は前にも後にも進めない状況になってしまった。


 さて、どうしたものか・・

 悩む俺にデュロスが話しかけてきた。


「少し話をしたい。お前達に恩を返したいんだ。俺の話を聞いてくれ」


ここまでお読み頂きありがとうございます。

もし宜しければ、☆評価、或いはブックマーク登録をお願いしたいと思います。


この後も新たな展開が続きます。

どうぞ、お楽しみください。

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