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戦いのあと

本日2回目の投稿です。

都合により、明日9日より、時間を決めず投稿いたします。

申し訳ありません。

一日一話の投稿は継続いたします。

今後ともよろしくお願いいたします。


 レドリアの騎士団のグリンファルドはリンドベル侯爵の命を受け、ドワンゴの街へ来ていた。

今回の任務は侯爵の令孫のお二人を保護するというものだ。

情報ではロギナス子爵の追手から逃れ、数日以内にドワンゴの街へ到着されることが分かっている。


 日数的に、考えて街道上で出会うかと思ったがそれらしき方々はいなかった。

 街に入り、その足で公館へ用向きを伝えて協力を仰いだ。すぐに警備隊の各門の責任者に話を通し、一度案内されて宿に入った。

 念のため、部下を各門に派遣し、行き違いにならないように見張らせてはいたが・・

 その日の夜、警備隊長のジークという男が訪ねてきた。


「お探しの方の件で、至急お耳に入れたいことがございます」

 面会するとジークは少し焦った表情でそう切り出した。


「順にご説明します。ただ、私の見当している方々がそちらのお探しの方々と同じとは限りません。その上でお聞きください。本日夕刻、アンナという女性が大通りで何者かに刺されました。その際、二人の子供が黒い箱馬車で連れ去られるところを目撃されています。アンナにはお連れの方がいまして、名をベックと言います。ベックは彼らの護衛だと言っていました。連れ去られた子供は、キャシー9歳とビッケ6歳です。ベックはカデナの街から南の街道を通り追手を撒いてこの街に来たと言っておりました。私とベックは子供たちの手掛かりを探しました。分かったことは、黒い2頭立ての箱馬車に冒険者風の男3人、一頭の馬は四つ脚が白いという目撃情報でした。また先ほど北門の番兵に聞いたところ、日暮れ前にその馬車とよく似た馬車が北門から出て行ったという事です」


「なんだと!?」

 思わず席を立ちあがったが、ジークに制止された。

「落ち着いてください。まだ話の途中です。つい先ほどベックとキースという男児が馬車を追って街を出ました。ベックはその馬車に子供たちが乗っていると確信している様です。私からお伝えできる情報は以上ですが心当たりがおありでしたら、急ぎ後を追うべきでしょう」


「分かった。ジーク殿。情報の提供、礼を言う。間違いなく我らの探している方たちだ。すぐに追いかける。エドナ!貴様の隊はここに残りジーク殿より詳細を確認しろ。他の隊は付いて来い!今夜中にお二人を確保するんだ。行くぞ!」


 グリンファルドは先頭に立ち馬を走らせた。自分含め20人の騎馬部隊は轟音のような蹄の音をかき鳴らして進んでゆく。


 5時間近くの行軍になった。もう真夜中だ。

 そして街道の先に赤い光を何度か確認した。

「いたぞ!急げ」

 馬に鞭を入れ、速度を上げた。


 焚火の炎が見えた。一人の人影が見える。

 そして青白い光に染まり轟音が鳴り響いた。まるで落雷でも起きたかのような錯覚をしたが、天空は満天の星空。雲一つもない。


 直後にその現場に辿り着くと異様な光景だった。

 両断された死体が一つ、串刺しの死体が一つ、倒れた男が一人、子供と傍に意識のないまま突っ立つ男が一人。そして縛られむーむーと声を上げる子供が二人とその傍に穴の開いた死体が一つ。


 部下に命じ、真っ先に二人の子供を保護した。

 部下に他を任せ、グリンファルドは二人の子供の元へ向かったのだが・・

「キース!ベック!」

 二人は半狂乱だった。

 束縛から解放されると同時に二人はキースと呼ぶ子供とベックという男の元へ駆け出し、泣きじゃくってしまった。

「あなたがビッケルト様ですか?」

 問いかけてもキースに(すが)ったまま答えてもくれない。

 もう一人、キャシリア様と思われる方もベックに縋ったままこちらも泣きじゃくっている。

「ごめんなさい、ごめんなさい、僕のせいだ、僕のせいで・・」

 ビッケルト様はひたすら謝っていた。

「ベック、ベック!死なないでぇ!」

 キャシリア様も尋常と思えない声で叫んでいる。


 どうしたものか・・・


 倒れている子共はひどく痛めつけられている。死んではいないがかなりひどい状態だった。すぐに手当てが必要な状況だ。

 対して、男の方、ベックも意識はあるが麻痺状態で声も出せない様子だ。

 ひとまず、部下に二人の治療を指示した。


 そして突っ立ったままの男の元へ向かった。男は死んではいないが髪が逆立ち、白目を剥いている。

 こいつも尋常じゃない。一体なにが起きた?


 思い出されるのは雷のような現象だ。雷魔法という伝説に近い魔法があるという。

 ベックという男が発したのか?麻痺の状態で?それともこのキースという子共が?こんなひどい怪我をしているのに?


 腑に落ちない状況ながら、第三者の可能性もあるとみて部下に付近の捜索を命じた。


 キースをひとまず部下の治療師に任せ、グリンファルドは解毒ポーションを飲ませたベックの下に行った。ポーションが効けば話が聞けそうと思ったからだ。

 ベックがポーションの効果で徐々に回復するとキャシーが抱きつき、ビッケも来て二人に縋られている。

 これでは話を聞くどころではない。

「ベック、ベック。アンナが刺されちゃったの!きっと死んじゃった!アンナが死んじゃったよぅ・・うわーん」

「キースが!キースが動かないよぅ。顔があんなに腫れて腕も折れてるみたいで・・どうしよう僕のせいでアンナもキースも僕のせいで‥うわーん!」


「待・・て、アンナ、無事。キース・・助けた。キース・・生きて・・か」

 ベックがまだ呂律(ろれつ)の回らない口で何とか言葉を発した。

「キースという子供は今治療をしている。確約はできんが何とか助けよう」

 ここぞのタイミングで話に割って入った。


「あな・・たは?」

「私はレドリアの騎士グリンファルドだ。リンドベル侯爵よりキャシリア様、ビッケルト様の保護と護衛の命を受けた。こちらのお二人がリンドベル侯爵の令孫で間違いないか?」

 ベックが頷いた。

「そうか。ご無事で良かった。それで色々確認をしたいのだが、まずあそこにいる髭を生やした者はお二人を浚った賊で間違いないか?」

 ベックが頷く。キャシーも頷いた。

「では、貴殿とキースとかいう子供以外に、他に協力者はいるか?」

 今度は首を振った。

「状況が良く分からんな。ここには賊の死体3つと髭の男が一人無力化されていた。誰が倒したのか?」

「キース・・だ」「キースよ」


 キャシーが少し落ち着きを取り戻して話せる状態になった。

 そこで、グリンファルドはキャシーから事情を聞いた。



 キースの応急処置を待って、急ぎドワンゴの街へ戻りベックとキースを治療院に入院させた。

 一行がドワンゴへ戻った時にはとっくに陽は昇り、今日も大通りは日常の活気の中にあった。


 アンナの看病をしていたリファーヌの下に、キャシーとビッケが見知らぬ騎士と共に帰って来た。

 だがキースとベックの姿がない。

 目が合った時にキャシーの顔が歪んだ。目をそらされた時に嫌な予感がした。

 ビッケを見れば下を向いて、涙をこぼしている。

「ねぇ、キースとベックは?」

 無事を喜ぶ言葉も忘れて先にキース達の安否を聞く言葉が口を出た。


「二人は街の治療院にいる。ベックはもうすぐ回復する。キースは重篤だ。今は治療中だ」

「リファーヌごめん。キースが大怪我しちゃった。私達を助けようとしてキースがうぅ・・」

「街の北に聖堂がある。白い大きな建物だ。治療院はその横にある」

 騎士の人の言葉を聞いてリファーヌは外へ駆け出していった。



(お腹がむかむかする。気持ち悪い・・)

 ずっと意識の外側で感じていた不快感が鮮明になると同時に吐いた。

 ゲホゲホ

 すぐに腹の中をかき回されているような強い苦しみに襲われた。

 うぅ・・(苦しい)

 急いでお腹に治癒魔法を掛けると少し楽になった。するとまた眠くなって意識が遠のいた。


 何度か繰り返し、のどの渇きにやっと目覚めることができた。

 窓から陽が射している。

 傍にリファーヌのつむじが見えた。

 その頭を撫でようとして伸ばした腕に激痛が走り、思わず呻き声が出た。

「うっ・・」

 ぴくんと頭が動いた。

 ガバっと跳ね起きたリファーヌと目が合った。

「キースー!!」

 顔が歪んで、涙が溢れて、勢いよく抱きつかれて・・痛い痛い痛いってば!

「痛い、痛いよ、リファーヌ」

 酷いしゃがれ声だった。

「グス、ご、ごめん。でも、キースが死んじゃうかと思ったの!それ程ひどい状態だったんだから。やっと目を覚ましてくれた。良かった・・私キースがいなくなっちゃうかと思った・・」


 それから暫くリファーヌは泣き続けた。

 嗚咽を抑えることができなくて喋ることもできなかった。ただ俺の手を握りしめてひたすら泣いていた・・

(ごめんリファーヌ。ものすごく心配かけちゃったね。ほんとごめん)


 やっと落ち着いたところを見計らって、水を飲ませてもらった。

 そして、ぽつぽつと俺が運ばれてからのことを話してくれた。

 如何に心配したかが中心だったけど、キャシーもビッケも助けられたこと。ベックも無事回復したこと。アンナも目が覚めた事。レドリアから騎士団が来ていることなんかだ。


 一通り話し終わると「治療師さん呼んでくる」と言って部屋を出て行った。

 治療師の話から自分がいかに危険な状態だったかを教えられた。

 内臓が損傷し、騎士団が高級ポーションを使ってくれたらしい。それでも回復にはほど遠く、何度も吐血を繰り返したそうだ。普通ならそのまま死ぬところだけど、俺の場合は少しづつ回復した為、治療師も驚いてると言っていた。

 折れた骨は鼻、頬、あばら、両腕、右足と各所に及び、高熱と内臓損傷による衰弱でとにかく危なかったらしい。

 3日後から回復が見え始め今は5日目だそうだ。


 治療師の診断の後、ベックが現れた。

「よう、キース。生き残ったな」

 いつも通りのベックだ。なんか安心する。でも少し目が真剣だった。

「その、すまなかった。俺がドジ踏んじまった。まさか毒針飛ばす奴がいたなんてな。俺はただ寝転がされて身動きできなかった。全く使えない奴だよ、俺は。本当にすまなかったなぁ」

「いや、油断したのは俺も同じだよ。でも、よく憶えてないんだ。なんで俺達助かったの?」

「なんだよ、憶えてないのかよ。キャシーから聞いたんだが、お前ボコボコにされてよ、最後に雷撃魔法使ったらしいぜ。その直後にレドリアの騎士団が駆け付けて助けられたわけだ」

「そういえば使った気もする」

「今回はやばかった。言い訳じゃないが、あの暗がりで小さい毒針を飛ばされたら次やっても避けられる気がしない。あの時は麻痺毒なんて最悪だと思ったが、今思えば致死性の毒でなくて良かった。俺達は運が良かったな」

 

 全く同意見だ。俺が助かったのも運が良かった気がして頷いた。

「それで、奴らの情報だ。あいつらは黒夜叉と呼ばれてる有名な犯罪集団だった。特に、あの毒使いのアベルとか言ったか、奴はかつて王国軍の将軍様を殺した奴らしい。髭面はドルガム。黒夜叉のリーダーであらゆる犯罪に手を染めている大物だ。騎士団のグリンファルド殿が大喜びしていたよ。大手柄だったとな。ドルガムを尋問して分かったことだが、奴らはロギナス子爵に飼われていたらしい。キャシーとビッケ両方で金貨200枚の賞金が掛けられているそうだ」


 それから、「今後のことはまた後日にして暫く回復に専念しろ」と言ってベックは宿へ戻っていった。

 ベックは宿に戻ったけどリファーヌは治療院に残ったままだ。

 「ちゃんとしたところで寝た方がいいよ」と言っても聞かなかった。もう離れたくないのだそうだ。

 ベッドの脇の椅子に腰かけ、寝る時も椅子に座ったままだ。


 翌日、体のあちこちにヒール魔法を掛けて過ごしていると、グリンファルドという騎士が訪ねてきた。

「順調に回復しているようで何よりだ。君にはキャシリア様とビッケルト様の救出、ビアンナ殿の命を救ってもらい感謝している。いずれ侯爵家より礼状を賜るだろう。加えて黒夜叉討伐についても同様だ。明日、キャシリア様たちはレドリアの街へ出立する。ベック殿にも伝えたが、君はここで回復に専念しなさい。回復したらレドリアの侯爵家を訪ねて欲しい。それから、キャシリア様とビッケルト様が君に心から謝罪をしていると、そして心から感謝していると伝言を預かった。いずれ再会された時にお二人の口から改めて謝罪と感謝の言葉があるだろう」


 グリンファルドが去った後、リファーヌから今回の発端がビッケの我儘だったと聞いた。

 3人でこっそり出店街へ出かけて浚われたのだと。


 またビッケだったのかよ!

 少し怒れたけど、まぁ皆無事だったからいいや。

 10日ほどベッドのお世話になり、俺達はすぐにレドリアに向けて旅立つことにした。

 


ここまでお読み頂きありがとうございます。

もし宜しければ、☆評価、或いはブックマーク登録をお願いしたいと思います。


この後も新たな展開が続きます。

どうぞ、お楽しみください。

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