学院の生活
翌朝から、王国史と地理の授業が始まった。
興味あるかと言えば全くないから、身が入らない。
それより鍛錬したいと思いながらじっと耳を傾ける。
最後に、小テストをして最初の授業が終わった。
「はぁー。私までこんな事憶える必要あるの?故郷の歴史さえ知らないのに」
リファがボヤく。
「同感。俺もあまり興味無いんだよな。それより、リファは今後の専攻どうするか考えた?」
学院では3ケ月したら、基礎研究という授業が始まる。
そこで様々な科目の中から1つを専攻する事になる。
科目は各種実践魔法から遺跡研究に関するものまで幅広く選択できる。
学院にその科目を教えられる先生がいれば基礎研究を選択できるという仕組みだ。
貴族の子弟は大概実践魔法を選ぶ。
平民は新魔法研究や魔道具研究、薬毒学、魔物素材など将来設計を念頭に選ぶ者が多いらしい。
そこで、俺は魔道具制作が気になっている。
「うん。私はキースと同じものを専攻するって決めてるの」
「いや、リファはリファで好きな事を学ぶべきだよ」
「いいの!私はキースの手伝いがしたいんだから」
「昨日食堂で専攻についての説明聞いたろ?リファ、チームの皆にはなんて言ったんだ?」
「キース次第って言ってある。だからキース早く決めてよね!」
なんかそんな予感がしたんだよな・・
いいのか?そんなんで。
俺達は食堂の席に座った。
「で、キースは何を専攻するの?」
「俺は魔道具を作りたい。今考えてるのは空飛ぶ船。だってさ、古代竜の里にいつか行かないといけないじゃん。暴風と極寒の地だっけ。魔境を越えて海も越えてさ、そんなところに生身じゃ行けないよ。何か乗り物作らないと」
「そっか。じゃあ私もその空飛ぶ船を作る」
「いや、作る前に研究だよ。どうしたらそんなすごいものが作れるかさっぱり分からないんだ」
「分かってるって。でも私も手伝うからね!」
「うん、ありがと」
という話をしていると王女がやって来た。
午前の座学は別々だから今日は初めて顔を合わせた。
「キース、リファーヌ、ご機嫌よう」
ふわりと笑みを見せて俺の隣に座った。
それだけでリファのホッペが膨れた。
「あ、あぁ。ごきげんよう」「ごきげんよう」
「ふふ、二人は仲がいいのですね。わたくしも仲間に入れてくださらないかしら」
「いや、恐れ多いですよ」
「あら、ここではわたくしもあなた方も同じ学院の生徒ですわ。そのように余所余所しくされてしまうとわたくし困ってしまいます」
「はぁ」
なんか、調子が狂う。もっと王族的な態度で来てくれた方が俺的には相手しやすいんだけど。
「ふふ。さ、お食事に致しましょう」
そう促されて、俺達は昼飯を取りに学生たちの列に並んだ。
王女殿下ともなればその行動の一々が人目を引く。
その王女が俺の隣に座ったものだから、多くの学生から注目を集めた。
ヒソヒソとわざとらしく囁く者も多い。
そんな連中の視線を王女は気にするでもなく、堂々と受け流している。
「これしきの事をあなた方は気になさらないでしょ?実は、わたくし友人を作るのも一苦労なんです。何しろ、わたくしに取り入ろうとする者ばかりですし、仲良くしたい人がいてもその方は嫌がらせを受けることが多いですから。でも、その点あなた方はお強いですし、嫌がらせにも屈しなさそうですからちょうどいいのです」
と言って王女はリファを見る。
その目は、「仲良くしてくださいませ」とでも言っているかのようだ。
すると優しいリファは、突っぱねられないんだよな。
俺の顔を見て、王女の顔を見て、また俺の顔を見て、小さくため息をついてから「勿論気にしません」と答えた。
さっき膨れてたけど、それとこれとは別らしい。
「でも、キースは取らないでください」
王女に向かってはっきり言いやがった。さすがリファだ。
「わたくしにはそのような自由は許されておりません」
普通に応えたけど、王女たるもの恋愛もままならないらしい。
「そっか。なら問題ないね!ね、キース!」
満面の笑みでリファは俺を振り返った。
そして、席へ戻れば、俺達とリファのチームの連中が座っていた。
わざわざ別のテーブルから移動してきたみたいだ。
しっかり友達いるじゃないか!と思わないでもないけど、チームメイトは友人か?と聞かれたら俺でも違うと答える。
でも、これから昼飯はチームの皆で食べることになりそうだ。
その団体行動が面倒だとどうしても俺には思えてしまうのだった。
午後、今日は魔法訓練室ではなく外のグラウンドへ集合だった。
訓練実技では訓練着に着替えることになっている。
「あー、魔法師、魔術師たる者は魔法さえ使えればいいと言う訳ではない。体も鍛えねばならん。理由は、騎士団にしろ魔術師団にしろ野外での活動は多々ある。何日も野山を歩き回るし、魔物との戦闘もある。その時に体力がなければ置いて行かれるし、場合によっては命さえ落とす。という事で、今から全員走ってもらうぞ。このグラウンドを10周だ!時間内に周り切れなかった者は更に1周追加だ。ではスタート!」
ハーニッシュは突然スタートを切った。
『え~!』
と皆から文句が出る中、俺はさっさと走り始めた。
久しぶりに走ると気分がいい。
後ろから軽快な足音が聞こえて振り向けばリファだった。
二人並んで仲良く走る。
因みに身体強化は使っていない。
「ね、キース。こうやって走っているとエウロの里の練武場を思い出すね」
「うん、リファはよく走らされていたな」
「えへへ。でね、残り5週になったら私と勝負しよ!負けたら勝った方の言う事なんでも聞くの」
「げ。また無茶言われそうで怖いんだけど」
「私、無茶な事言ったことないじゃん!」
「じゃあ、先に何をして欲しいか教えて」
「何でそんなに警戒するかなぁ。私の鍛錬に付き合ってほしいって思ったの。草魔法をもっと鍛えたいんだけどさ、土がえぐれてひどいことになるでしょ?だから、キースの土魔法で最後に均して欲しいなって思うの」
「そんな事ならOKだよ。いつでも付き合う」
「ありがと。じゃあ他のにする」
「う・・なに?」
「今度のお休みに、王都でデートしたいかな」
「いいけどアリア放置すると怒るよ?」
「あ。じゃあアリアも一緒で」
「いいよ」
「ちょっと!それじゃ賭けにならないよ。じゃあいつものあれで!」
「あれって?もしかしてあのあれの事?」
「うん。いつものあのあれだよ!」
結局いつものホッペにチューすることになってしまった。
俺は、恥ずかしいんだけどなぁ。
でも、そうなるとリファは手加減無しの本気になる。
俺も負けない様に頑張らねば・・
そして5週目。
ヨーイドン!
俺とリファが全力で走る。
周回遅れは邪魔だけど、それを次々と追い越しているわけだが、リファも早い。
多分リファは風魔法で背中を後押ししている。
ずるい。けど俺は基礎体力のみで走る。それで負けても構わないし。
残り、3周、2周、1周となってまだ俺の方が少しリードしている。
最後、100メトルの直線を残すのみとなった。
残り50メトルでリファが横に並んだ。そして勢いよく俺を抜いていった。
これは絶対に身体強化を使っている。
マジずるい!
クソ!負けるとなるとやっぱ悔しい。
リファの背中に俺も限界まで食らいついたけど、さすがに敢え無く負けてしまった・・。
「やったー!じゃ、あとでご褒美頂戴ね!」
無邪気に喜ぶリファを見てると、まぁいっかと思えてしまう。
「お前達、凄まじい体力だな」.あきれ顔のハーニッシュが来た。
ゼーハーゼーハーゼーハー
さすがに息が切れて物も言えない。
「えへへ。だって私達鍛えてますから」
リファは平気そうだ。そりゃ身体強化使ってりゃ余裕だろうよ。
「鍛えてるとかそんなレベルじゃないと思うんだがな」
「え?でももっとすごい人達知ってますよ。ランクSの豹人族とか。ね?キース」
ハァハァハァハァ
頷くことしかできない。
「お前達の比較対象はランクSなのか。信じられん・・」
その後、疲れることは嫌いだ!とハーニッシュに食って掛かる生徒がいたり、ぐったりして王族らしからぬ様子の王女に水を飲ませて上げたりしてグダグダの内に授業は終了した。
そんな一幕もあり、夕方俺達は図書館へ来た。
閉館時間までまだ4時間ある。
そこで俺は風魔法に関する魔法陣を探した。
風魔法は風の旅団を名乗るだけに精通している。
でも、風魔法の魔法陣となるとエウロの里でドルド師匠から教わったものが全てだ。
けど、それだけでは足らない。
チラホラといる上級生らしき生徒に混じって、俺達は魔法陣の書物を探す。
「キースはどんな魔道具をイメージしてるの?」
「2人か3人乗りで空を飛べる感じ」
「もっと具体的に言ってよ」
「まだ何にも考えてないよ。でも、そうだな・・座席があって大きな窓がある感じ。形は丸でも四角でも何でもいい。でも早く飛べた方がいいかな。だから風の抵抗を受けにくい形かな」
「うーん、キースってあまりセンスないからなぁ・・」
リファが何気に酷いことを呟いた。
なんてことを言うんだ?と思っている俺の視線を感じて言い訳をしてきた。
「だって、リーフボードの時は葉っぱの上に乗ったところからだったじゃん。あの発想はないよ」
口答えできない。でもあれが空を飛ぶ結果に繋がったんだからいいじゃないか。
ひとまず、俺達は世に知られている風の魔法陣を集めてみた。
使えそうな物は浮かせる、吹かせる、飛ばす、温風、冷風。
他にも風刃とか風弾とかを打ち出す魔法陣があって、魔道具にも使われているらしい。
でもそんなものはとっくに知っている。
でも、重いものを浮かせて飛ばすような魔道具は存在しないし、それを可能にする魔法陣も見あたらない。
強弱は別の魔法陣で、加えて言うと魔石の質に大きく左右される。
規格外な魔法陣は何かないかと探し回ったけど、結局みつけられずに閉館時間となってしまった。
「苦労しそうだね」
ぽつりと言ったリファが溜息をついた。
と、まぁそんな感じでスタートした学院生活だが、初めての休日が来た。
この世界の1年は12カ月で360日。
1ケ月は4週から成って1週間は7日間だ。
火・風・水・土・聖・闇・光の日が7日間。
プラス毎月末は感謝の日と祝福の日が2日間ある。
世間はともかく、学院では週末の闇と光の日、それに月末の感謝と祝福の日が休校日になる。
だから週休2日、月末4連休が約束されている。
そして今は1月の3週目の月末だから休みは2日間。
俺とリファは闇の日の朝早く寮に外泊届を出して、肉球亭へと向かった。
ほんの数日間アリアの顔を見てないだけだったけど、ちょっと懐かしくて浮き浮きしていた。
今日の予定はギルドの依頼を受けるつもりだ。
「アリアただいま!」
朝からリファが元気いっぱいにドアを開けた。
「ちょっと!二人共知ってる?」
戸口でアリアが待ち構えていた。
「いきなりだな。知らないよ」
「なになに?」
「あの白エビと赤毛蟹の卵が凄い話題になってるの!もう、大反響って奴よ!どこで獲ってきたのかとか、もっと売ってくれとかってギルドに依頼が殺到してるらしいわ」
「へぇそうなんだ。なんでだろ」
「何でも味が全然違うんだって。その料理を食べたお貴族様が騒いで有名になってすぐに売り切れちゃったんだって。ただでさえ高級食材だったけど、今はあの時の3倍の依頼料になってるわ!キースまだいっぱい持っていたわよね?あれ売るわよ!」
「あぁ。そう言う事か。ブリオン商会の息子が専属になれって脅してきたよ」
「なにそれ!そんな奴の言う事聞いちゃだめよ!」
「大丈夫。ちゃんと断ったから」
きっちりあの時の会話の内容を伝えて、一応貴族やら商会やらの嫌がらせがあるかもしれないと注意をしておいた。
そして、ギルドに入ってすぐにランクAの依頼表を見に行く。
ベルシア湖 高級品限定 赤毛蟹の卵5キロル 金貨10枚/キロル
ベルシア湖 高級品限定 ベルシア白エビ10匹 金貨8枚/匹
「あ、白エビの依頼料がまた上がってる!」
アリアが嬉しそうに指さした。
確か前回は、蟹卵が金貨3枚でエビが2枚だった。
すげぇ・・
早速その2枚を引っぺがして受付へと向かおうとしたら、見知らぬ冒険者たちに取り囲まれた。
このギルドはどうも俺達に絡んでくる奴が多い。
「なに?邪魔なんだけど」
アリアが睨んだ。
「俺達はよ、蟹とエビの専門で稼いでるんだ。それをお前らの持ち込んだ素材のせいで相場が崩れて困ってるんだよ」
「お前らがどこで獲って来たのか教えろ。お前らばかり美味しい思いしてんじゃねぇぞ!」
「お前らの獲って来たものをこっちで全て引き取らせてもらう。俺達の雇い主がそう言ってるんだ。素直に売らないと痛い目にあうぜ」
他の冒険者と揉めたくはないけど、理不尽な要求には応えられない。
俺達は何も間違ったことしてないし。
どうやら俺達の採集した場所は他の冒険者の採集地と違うらしいと今気づいた。
だから特別美味いのか。なるほど。
考えてみれば、わざわざ湖を越えたりしないよな。普通は手前側の岸辺で採集するに決まっている。
でも、それで絡まれても困る。
「そんな事を文句言われても困る。場所なら教えるけど多分あんたらじゃ取りに行けないよ?」
「どこだ、場所を言えよ!」
「ベルシア湖よ!」
「そんなことは分かってんだよ!そのどこかを聞いてるんだ!」
「ここから北西にまっすぐ行くだけだ。湖を渡ると大きな島がある。そこにウジャウジャいるよ」
「島だと?そこまでどうやって渡るんだ」
「私達は空を飛んでいったわ」
「いや、俺達は飛べないんだよ!」
「知らないわよそんな事!練習したら?」
「何だと!」
「おい!お前達だけで話してんじゃねぇよ!こっちが全部買い取るって言ってんだろうが!」
「うるせぇよ!お前ら話をややこしくするんじゃねぇ!」
「何だと!」
早朝のただでさえ混み合う時間帯に怒鳴り声が響き、やじ馬が集まって騒然としてしまった。
結局ギルマスに呼ばれて話し合う事になった。
久々の依頼を受けたかったのに、まったく飛んだ邪魔が入ったものだ。
「またお前らか」
オーガの大集落の件でブラックパンサーを仕掛けてきたギルマスだ。
正直敵に近い。
荒れそうな予感を感じながら俺たちは席についた。
まず、ギルマスが冒険者たちの言い分を聞いた。
「はぁ。くだらない。まず、買い占めるとか言ってる馬鹿は論外だ。ギルドを敵に回したいのか?それなら受けて立つと帰って雇い主に言っとけ。次に、風の旅団が獲って来たものに不正はない。それで困るなら別の依頼に変えればいいだけだろ。だが、これまでのものも需要はある筈だ。今は貴族が騒いでいるがその内落ち着く。少し値は下がるかもしれないがな。それから、風の旅団はその美味いエビやら蟹の卵は獲り過ぎるなよ。乱獲で数が激減する可能性もあるし、その高品質な素材が当たり前だと市場に認識されるのも困る。お前らが王都から出て行った瞬間にこっちに非難が殺到するからな。そうだな。月に20~30キロル。それだけにしとけ。そう決めて宣言しとけば早く市場も落ち着く。分かったな」
言ってることはまともだと思う。
俺は特に異論はない。
いっぱい獲ったから在庫が凄いけど、いっぺんに売れば次も同じ量を求められる。
正直、あの蟹を100匹もひっくり返すのは嫌だ。
「俺はそれでいいよ。アリアもいいよね?」
「うーん、結局売れるならそれでもいいわ」
リファも頷いたから、それで話は決着した。
収まらないのは馬鹿と呼ばれた連中だけど、俺達は関係ない。
ギルドと喧嘩でも何でもすればいい。
俺達はさっさと会議室を出て、依頼表の前に戻ってきた。
赤毛蟹の卵と白エビを売るのは来月だ。
今日は、何にしようか・・
「これ!これがいい!」
リファが手にしてきた依頼は、またしても因縁のワイバーンだった。
泣かれて怒られたことが記憶に新しい。
「え、それ?」
「だって、いずれ魔人族と屍竜が攻めて来るかもしれないんだよ?空中戦の練習しといたほうが良いってば」
「それはそうだけど・・」
アリアを見ると、「いいんじゃない?私も空中戦に慣れときたいし」と言われてしまった。
多数決で俺の負け。
俺たちは、もう随分と陽が高くなった空に向けて飛び立った。
そこで気づいたことが一つ。
俺達は飛行能力が爆上がりしたみたいだった。
というのも、王都から北の魔境まで約300キロル。
前回向かった時は、朝飛び立って昼に到着という感じだった。
ところが今回はその倍以上の速度でかっ飛ばして、それこそ2時間と掛けず到着することができた。
理由は風防のシールドを前面に展開することで風圧を避け呼吸も楽になったからだ。
これまでも風防を展開はしていたけどそれなりに疲れるからと自重していた。
速度をあげれば飛行距離が落ち、距離を延ばしたかったら速度を落とす。
それが今までの俺達の飛び方だったし、それでも十分速いと思っていた。
ところが、今日の俺達は疲れを知らなかった。
何故?と自問すれば、やはりメタルアント討伐で延々12時間もぶっ続けで魔法を使い続けたからだろう。
あんな作業を何日も限界を超えて行えば疲れ知らずにもなる。
魔法を使うという事は魔力枯渇に関係なく相応の疲労を伴うものだ。
しかし、魔力枯渇と無縁になった俺達は体力はともかく、タガが外れたように全力で魔力を放出し続けられるようになったらしい。
また12時間同じことをやれば疲れもすると思うけど、この程度の距離であれば苦も無く楽勝と思えるほどになってしまった。
自分たちの飛行速度に驚きつつ、辿り着いたワイバーンの営巣地近く。
リファもアリアもワイバーン相手に奮闘した。
リファは草魔法の網に続いて、火焔旋風弾で皮膜を焼き払って単独討伐したし、アリアもブリザードアタックを滑空しながら放って見事氷漬けにしていた。
俺はというと、ただの収納係だった。
合計4匹を討伐してギルドに帰還した。
泊りがけで出かけたから、もう2日間の休みは終わってしまった。
最後に、肉球亭でジャンゴに白エビと蟹卵を調理してもらった。
確かに美味い。それもドが3つ付く位にすごく旨い。
どど、ど美味ぇ!
ジャンゴが作ったのは、蟹卵の野菜サラダ、卵とソースを絡めたボアの肉巻き、白エビのスープに白エビソテー。
ジャンゴとミーアと三つ子の分の食材を提供したから、食事代はタダにしてもらえた。
ここまで美味いと貴族が騒いだのも分かる気がする。
これはまだまだ騒動が長引くかもしれない。
そんな予感を感じつつ、満腹満足なお腹を擦って寮に戻って来た。
楽しかった冒険と食事を終えて学園に戻ってきたのだが。
朝一番にリリアティナがやって来た。
「キース、リファーヌ。将軍から伝言です。次の週末にメタルアントの討伐地点へ向かって欲しいそうです。何でも獲得素材の輸送を手伝って頂きたいのだとか。十分な報酬は支払われるそうですから受けて欲しいそうです。それから、これはお願いなんですけど・・」
少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。
高貴な少女の恥じらいに似た仕草はそれだけで破壊力があった。
リファがいなかったら惚れてしまったかもしれない。
ま、リファがいるからあり得ないんだけど。
「あの、父から蟹の卵と白エビを譲り受けたいと申し出があったのですが、なんの事か分かりますか?王家がこのようなはしたないお願いをするなんて異例というか初めてでして、わたくしも戸惑っているのですが・・」
そう言って顔を赤らめたまま申し訳なさそうにちらりと見る。
「あぁ、はい。分かりました。ではどのくらいをお譲りすればよろしいですか?」
陛下の請いを受け入れない選択はできない。
「え?宜しいのですか?まぁ!ありがとうございます。では、本日の授業が終わる時間に担当官吏を呼んでおきますわ」
嬉しそうに笑みをこぼすとたったそれだけで花が咲いたかのような印象になる。
王族のオーラってすげぇ・・
ふと見ればリファが若干ふくれっ面をしていた。
放課後、受け取りに来た役人に卵一壺とエビ5匹を渡し終えて俺とリファは魔術学院のグラウンドに来ていた。
リファが草魔法の鍛錬をしたがっていたから来たのだが、こんなに広い場所に生徒が一人もいない。
皆、魔法の鍛錬は的場と衝撃結界のある魔法訓練場に行っているのだ。
この空間は勿体ない。
今後、俺達がぜひ有効的に活用しようじゃないか。
リファが早速、茨蔦を芽吹かせ一瞬でムチ状の武器に変化させる。
それを俺に叩きつけて来る。
俺は素手でそれを受ける。
手や足に防御シールドを張りつかせて受け、時に魔力弾で弾き飛ばす。
リファは全身に身体強化を使い、俺は部分的にしか使わない。
だからいい勝負になった。
勝負が始まってすぐに地面が炸裂して土砂が舞う。
凸凹になった広い地面を縦横無尽に移動しながら、弾き、避け続ける。
これは変則的な動きと速さがいい鍛錬になった。
「キース!キトリと比べてどう!?」
「まだまだだよ!キトリはもっと早くてもっと強烈だった!」
するとリファが更に魔力を込める。
それだけで威力も早さも数段跳ね上がった。
それを日没まで延々と続けた。
疲れてへたり込むリファと俺。
ヘトヘトだ。でも、久々に充実した鍛錬だった。
午前中は座学、午後は魔法実技訓練と体力強化の授業、そして放課後はリファと特訓。
今週はリファにちょっかいを掛けて来る馬鹿タレもなく、大商会のぽっちゃりも何も言ってこなかった。
落ち着いた日が一日一日と過ぎて行った。
そしてすぐに月末の4連休がやってきた。




