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メタルアント 1

「おい、次は俺だ」

 アリアを連れ去った豹柄の男が前に出てきた。

「俺はクーロ。お前やるな。あいつはブラックパンサーのリーダーだ。ジュードって言うんだが、あいつに勝った奴を初めて見た。だが、いい気になるなよ。こっちはまだ5人いるんだ」

 少しにやついて余裕ぶっていやがる。


「あんたらランクSか?」

「あぁ。王都の冒険者なら誰でも知ってるぜ」

「俺達は王都に来たばかりなんだ。知らないよ。だけど、忠告だけはしといてやる。お前らがあのギルマスに協力するのは勝手だけど、多分ギルドから資格を剥奪されることになるよ?それに王国から追われることになる。自分たちが何をさせられているか分かってやってんのか?」

 延々殴り合って心を折るだと?それは嫌だ。

 ここは、誇張してでもこいつらの意思を翻させたい。


「はっ!はったりは止せ。難しいことは知らないが、あのジャックさんが間違ったことをするわけがねぇ」

「今してんだよ!王国の危機を騎士団に隠そうとしてる。その為に俺達の口を塞いで協力までさせようとしてるんだ。お前らは利用されてるだけだ。ランクSなら気づけよ!」

「いや、そんな筈はない!」

「じゃあどこまで事情を知ってる?何の理由で俺達を手なずけたいんだ?それをしっかり理解したらあのギルマスの魂胆位分かる筈だ」

「いや、詳しい話はまだ聞いてない」

「事情くらい聞けよ!お前ら本当に破滅するぞ?」

「・・・・」

 熊獣人と猫獣人の二人は表情に不安の色を出した。

 クーロとかいうこの豹獣人は言葉に詰まっている。

 何か言い返したくてもそれができずという感じか。


「おい、そんな子共の言葉に耳を貸すな」

 黒豹ジュードが立ち上がった。頑丈な野郎だ。

「あーくそ、痛ぇな。何があった?俺はなんでやられた?」

「なんか雷魔法みたいなのが決まって硬直したにゃ」

「そこを殴られたにゃ」

 介抱してた猫獣人達が答えた。


「雷だと?ちっ、ガキにやられたなんて知られた日にゃ恥ずかしくて外も歩けねぇ。お前ら言いふらすんじゃねぇぞ」

 そう言って俺達を睨みつける。

「嫌よ!ギルド中で言いふらしてやるわ!」

 激オコのアリアが睨み返す。

「それが嫌なら私達の話を聞きなさいよ!いきなり拉致してそれだけでも犯罪よ。騎士団にだって言いつけてやる。それに掲示板であんたらが犯罪者だってニュースにしてやる!」

「おい、やって良いことと悪いことがあるだろ」

『お前が言うな!』

 睨み合うリファとアリアとジュード。


「あなた達どうしてギルマスの言いなりなの?物凄く危ない橋を渡ってる自覚無いでしょ」

「あのギルマスは私達の恩人にゃ」

「食い詰めてどうにもならない私達に生きる術を教えてくれたにゃ。だから恩を返したいにゃ」

「おい、いらん事喋るな」

「このままだとあのギルマスも間違いなく破滅する。屍竜の時と状況がそっくりだ。そのギルマスは死罪になったよ」

 仲間とは少し会話になって来た。ここで説得するしかない。

 こいつらはどうやらギルマスへの恩義に報いることが目的らしい。

 ならばその線で説得できるかもしれない。

 話に乗って来た猫獣人のお陰で少し希望が見えた。


『どういう事にゃ!』

 猫獣人は双子姉妹か?顔立ちがそっくりでさっきから息もぴったり合っている。

「おい、詳しく話せ」クーロも気になってきたみたいだ。斑な尻尾が揺らいでる。

「止せ、聞く耳を持つな!」ジュードは相変わらず話を聞きたくないらしい。

「いや、でも気になるぜ」狼男も聞きたいってよ!

「うんうん」隣で熊男も頷いてるし。


 その仲間の態度に黒豹が怒鳴った

「お前らいい加減にしろ!ジャックさんの指示だぞ!そんなガキの言う事を真に受けるな!ジャックさんのことが信用できないのか?」

「ジャックさんのことは信じてるよ。けどよ・・」

「けどよじゃねぇ!」


 グダグダ言い合いが始まる雰囲気に俺は割って入った。

「お前リーダーなんだろ?なんで仲間をないがしろにする。お前の仲間が国から追われることになるんだぞ?それで平気なのか?」


「うるせぇ!」

 いきなり顔面を殴り飛ばされた。

『キース!』

 派手に吹っ飛ばされて、唐突に第2ラウンドが始まった。


 俺はヒールを掛けつつ身構える。

 ジュードは姿が消えたかと思う程高速で動き回って急速接近、殴って離脱する。

 辛うじてシールドを張って防いだけど、この速さはかなり厳しい。

 もう黒っぽい影しか見えない。

 速さ重視の分、拳に力が加わっていないのが救いだ。

 ジュードは完全に高速移動からのヒット&アウェイで俺の雷撃対策を取ってきた。

 俺は狙いを定められないし、動きにもついて行けない。

 苦戦しそうだと思っていたら、黒豹がいきなりずっこけやがった。

 見れば、ジュードの足元に蔦が這ってそこに足を取られていた。


 リファ・・ナイスフォロー。

 一瞬とはいえ、こけた相手を見逃す俺じゃない。

 すかさず雷撃を撃ち込んで、動かなくなった所をリファが蔦でぐるぐる巻きにして決着がついた。

 第2ラウンドは30秒と掛けず俺達の完全勝利に終わった。


「リファ、ありがと」

「うん!えへへ」目を細めて照れ臭そうにリファが笑う。

 俺のフォローが出来てとても嬉しそうだ。


 ジュードとかいう黒豹は放っておいて、俺達は他のブラックパンサーに事情を説明することにした。

 ジュードが煩いから蔦で猿轡を噛ませてしまう。


「つまり、オーガの大規模集落の情報を騎士団に話さないってことが、罪だって言うのか?」

 皆、分かってない顔をしている。

「私ら頭が悪いにゃ。なんでそれだけで罪になるのか分からないにゃ」

「だから、オーガが王都を襲う可能性があるんだ。それは王国の危機だ。それを知っていて黙っていることはそれだけで罪になる」

「ふーん。なら何でジャックさんはそれを騎士団に報告しないんだ?報告すればいいだけだろう」

「討伐してギルドの手柄にしたいんじゃないか?もっと言えばギルマスが自分の手柄にしたいんだ。出世したいんだろ。自分の出世の為に王国の危機を秘匿すれば罪になるよ」

「そうゆう事か」

「さっきちょっと言ったけど、屍竜討伐を成したギルマスは死罪になった。理由は屍竜討伐で王国に対して一瞬でも危機的状況を作ったからだ。もし、あんた達の慕うギルマスがオーガ討伐に失敗して、怒ったオーガが王都に押し寄せてきたら、同じように罰せられると思うよ」

「・・・・」


「いずれにしても、俺達から騎士団へ報告は入れる。あんた達が妨害するならギルマスと同罪だ。死罪か良くて国外に追放されるだろうな」

 実際どうなるか分からないけど、ここははったりをかましておく。

 頭悪いって言ってるから信じてくれるだろ。

「それは困るにゃ」

「死にたくないにゃ」

「なら、ギルマスには協力しないことだ」


 俺達は、倉庫を後にした。

 ブラックパンサーのメンバーは微妙に情けない顔で俺達を見送っていた。

 去り際、アリアが豹柄クーロの腹にグーパンチを二発入れてた。

 ギルドで叩かれた分をやり返したらしい。

 でも、非力過ぎて少しも痛がっていなかった。ただ、クーロは困ったような苦い顔をしていた。


「リファーヌはあの黒い奴にやり返さなくて良かったの?」

「私は・・キースが代わりにやり返してくれたから」

「へぇー、キースはリファーヌの分はしっかりやり返して私の分はしてくれないんだ」

「えぇ!?いや、そんなわけじゃないよ。ただ、話の流れというか、なんというか・・」

「なによ?どんなわけよ?どんな流れよ?何なのよっ!!」

 今日はアリアの機嫌が過去一番に悪かった。

 せっかく話し合いに応じてるのに、殴り合い始める訳に行かなかったじゃないか。

 リファに助けを求めて視線を送ると、余所見をしてるし・・


 ブラックパンサーの連中は、単純で実は気の良い奴等なのだと思う。

 それだけに、信頼するギルマスの言いなりになって疑う事もしなかったのだろう。

 しっかりパーティー内で考えてみて欲しいものだ。

 道を違えない様に。


 俺達はそのままディグリーム将軍を訪ねることにした。

 報告しさえすれば、口止めもへったくれもないはずだ。


 緊急の報告がありますと伝言を頼むと、将軍はすぐに面会の場を設けてくれた。

 以前来た執務室でオーガの大規模集落の報告をした。

 ついでに、ギルマスの魂胆も耳にいれておく。


「分かった、その件については王国軍の中で対応を決めよう」

 将軍の言葉に俺達は頷いた。

「ところで、お前達に頼みがある。先日、北の魔境でメタルアントが発見された。こちらの方が遥かに対応を急がねばならん」

 頭が痛いと言わんばかりに将軍は苦い顔をした。


 メタルアントとは、文字通り金属の身体を持つ蟻だ。

 身体が硬く、尻から出る強酸溶解液は剣をも腐食させる。

 弱点は熱に弱い。

 働き蟻が単体でランクC、女王蟻は不明、群れはランクSとなっている。


 厄介なのはその大規模な巣と女王蟻の繁殖力、それに狂暴性と旺盛な食欲にある。

 一つの巣が見つかれば、その地下には数キロルから数十キロルの巣が広がり、更にその数十倍の土地から魔物や動物が根こそぎ消え失せる。

 かつて国すらも食い荒らしたと記録の残るヤバすぎる魔物だ。

 女王を殺せば群れは短期間で消滅すると言われているが、それも定かではない。


 そんな魔物が王都そばの魔境に現れたというのだ。

 ある意味、竜よりよっぽど厄介だ。


「私達に何をしろと?」

「まず、巣の場所を特定したい。その規模もだ。君達なら可能だろう。急ぎ調べてくれ」

「分かりました。発見場所は具体的にどこでしょう」


 王都から北に広がる草原地帯にはいくつもの街や村がある。

 そしてその先に北の魔境が広がる。

 王都から魔境までは300キロル。境界線から180キロル地点の奥地でそのメタルアントは見つかった。

 数は働き蟻が一匹。後日、更にもう一匹。


「確実にどこかに巣がある。これを放置すれば20年以内に王都は喰い尽くされると予想している。今、騎士団が現地に拠点を設置している。同時に巣穴の捜索もさせているがまだ発見には至っておらん。山が深いらしく、きわめて難航していると報告が届いたのだ。ちょうどお前達に遣いを出そうとしていたところだった」


 将軍は、書簡を一通認めた。

「それを持ってセレントの街へ行きなさい。北の街道を真っ直ぐ行った魔境の手前にある街だ。そこに私の副官がいる。サルファスというメタルアント討伐指令官だ。これをその者に渡しなさい」

 封蝋をしてから渡された。


「あの、将軍。一つ伺いたいことがあるんですが」

 将軍の要件がひと段落した所で、俺はずっと気になっていることを相談することにした。


「実は、バートンという騎士を探してします。クリフロード領の騎士でスタンピードの際、母の護衛をしてテリーヌ大河川を渡ってこちらに来ているんです。母はその後亡くなったと判明したのですが、妹がその騎士と一緒にいる筈なんです。そのバートンという騎士は王都を目指すと言っていたそうなんです。何とかしてバートンを探し出したいんですが、何かいい方法はありませんか?」


「うむ、バートンとやらの家名は?」

「分かりません」

「王国騎士団に入ると言っていたのか?」

「いえ、王都に向かうと言い残したそうです」

「それでは探せない。王都に住む王国騎士だけで万を超える。騎士だけで言えば大領地騎士団、小領地貴族の護衛騎士もいる。王都で雇われて領地に行かされたかもしれん。王国騎士でさえ王領地へ派遣されるのだ。さらに言えば今も騎士をしているかさえ分からぬではないか。私の力でも探すのは無理だ」

「そうですか・・」

 俺は肩を落とした。

 難しいのは分かっていた。やっぱりそうなるよな。


「だが、方法が全くない訳ではない」

「え?」

「お前はいずれ貴族になり、家名と領地の復興を約束されているではないか。クリフロード家の生き残りが、領地を再興する。その噂を耳にすれば、騎士であれば必ずお前の前に姿を現すだろう。その時を待てばいい」


 なるほど・・

 そう言う事もあり得るか。

「そっか。はい、ありがとうございます」

 少し時間は掛かるけど、手堅い方法な気がする。

 うん、頑張って早く再興しよう。


 俺達は、食料やら何やらを買い込んで宿へ戻った。

 そして翌朝出発。

 北へ300キロルだ。

 昼過ぎにはセレントの街へ到着。そこに討伐軍本部が設けられている。

 サルファス司令官に面会して書簡を渡し、その日は街の宿で一泊した。

 翌日、180キロ北西に進んだ魔境の中に築かれた拠点を目指した。


 北の魔境メタルアント討伐軍野営地にて。

「なぜ、ディグリーム将軍は子供を寄こしてきたのだ?サルファス司令官は何故追い返さなかったのだ!」

 今、目の前で一人の指揮官が頭を抱えている。

「あの、私達は空を飛べますので、上空から調査が出来ます」

「あぁ。知っている。たいそうご活躍だったそうだな。だがここは、騎士団だ。冒険者が来るところではないし、まして子供を寄こすとは・・」

 着崩した騎士服。無精髭に酒臭い息。

 この人は大丈夫だろうか。気苦労が多すぎて酒に飲まれて生活が乱れてる気がする。


「まぁいい。せいぜいここでも活躍してくれ。お前達は自由に動きなさい。報告はパルマベールを付けるから彼女にするように。おぉ、私は討伐軍副司令のメルボンドだ。巣の発見は緊急事案だ。期待している。・・だが、見つけたところで、さてどうするという所なんだが。はぁ、胃が痛ぇ」

 このくたびれたおっさんが討伐軍副司令にして現地指揮官なのだそうだ。

 溜息をつきたくなる気持ちは分かる。

 巣穴を見つけたとして、どう攻略するんだ?

 女王を殺さないと全く意味がない。

 どうするんだろうと、他人事ながら心配になる。


 俺達はメルボンド副指令の幕舎を出て、野営地の端っこに石小屋を建てた。

 ここは長い滞在になりそうだ。

 お金を貯める事ばかり考えていて、ベッドやらテーブルやらを買い忘れていた・・

 せめてベッドくらい買っとけば良かったかな。


 焚き木を集めて帰ってくると女騎士が待っていた。

「君達。私はパルマベールだ。パルマと呼んでくれ。君達と軍の連絡役を務める。よろしく頼む」


 軍の連絡役と言えば、リュカにクレアだ。

 リュカは貴族らしくない横恋慕中の魔術師、クレアは固い言葉の残念美人だった。

 パルマはどんな人なんだろう。男っぽい感じはするけど。

 金色の長い髪を後ろで束ねて、簡易な金属鎧にレイピアを差している。

 化粧っ気のない顔、笑顔もない。背が高いしっかり美人だ。

 頼もしいというか、クレアと違って残念な雰囲気はなさそうだ。


「毎日夕方に報告を聞く。いない場合は戻った時にまとめて聞く。情報の共有はその時に行う。他に困りごと、不足品があれば何でも言ってくれ。以上だ」

「あの、自由にって言うけどそれでいいんですか?」

「あぁ。君たちは空を飛ぶのだろう?我々はついて行けん。部隊に同行させたいがそれでは君たちの機動力が活かせない。それに魔境については君たちの方が詳しいと将軍閣下はお考えのようだ。だから任せて問題ないと聞いている。だが、良い面ばかりではないぞ。危険な目に遭っても自分たちで対処するしかない。我々を当てにされても困る。そこを踏まえて閣下は君達を自由にさせろと仰っているのだ」

「ふーん。分かったわ」

「まぁ、その方がいいかも。ね、キース?」

「うん。分かりました。期待に沿えるよう頑張ります」

「うむ。頼むぞ」

 それだけ言ってパルマは去って行った。

 キビキビサバサバしていてあっさりした印象の人だった。


 その夜、3人で作戦会議を開いた。

 第一目標、周辺地図の作成。

 第二目標、巣穴の発見。


 この野営地は、おそらく軍の土魔法師が地面を均したのだろう。

 木々がない草っぱらみたいな場所だ。

 でも、ここ以外は山と木々に覆われている。

 だから上空から地面なんて見えない。

 決して空からの探索が特別有効とは思えないんだよな。


「ここでどうしても手柄立てたいよね?だってキースが領地を復興した時に味方して助けてくれる人が増えるかもしれないし」

「そうよね。未来の奥様としては張り切り処よね」

 ニヤニヤ顔でアリアが変なことを言った。

「やー!アリアってば、そんな事まで私考えてないってば!でもでも、キースが望むなら・・」

 真っ赤に顔を染めたリファがパタパタして、もじもじして俺を上目遣いに見てきた。

 そんなリファが可愛いから、ドッキンと胸が鳴って俺まで赤くなってしまう。


「アリア!からかうなよ!」

「いいじゃない。モチベーションは大事よ?二人共やる気出たでしょ?」

 サラッという割に目元がにんまりしている。

 絶対この子俺達で楽しんでやがる。

 リファはこの手の話にチョロいからすぐに舞い上がってしまう。

 アリアに良いようにしてやられて、俺まで巻き込まれて冗談じゃない!


「ね、アリアって恋愛経験豊富なの?話して!私、聞きたい!」

 作戦会議が明後日の方向にずれてしまった・・


「あのね、リファーヌ。私はエルフよ。エルフの里の男は皆、美男子なの。顔が良くて当たり前。それにプラスで何を持っているかで男の価値は決まるのよ」

 アリアが何かとんでもないレクチャーをリファにし始めた。

 変な入れ知恵されたらリファの純真な心が失われてしまうかもしれない。


「アリア、そう言う話はまた今度にして。今は明日からの作戦を・・」

「キ-スは黙ってて!ね、アリア。それで?それで?」

「・・・・」

「男の価値は、人それぞれだけど、私の場合は頼りがいのある男性かな。でも、エルフの里に私の理想の男性はたった一人しかいなかった。それが私の父さんよ」

『え??』

「父さんはカッコよかったなぁ。でもね、私は残念なことに娘だから結婚できないの。どうしようもないほど大好きだったけど、どうにもならない現実だったわ。だから、父さんを射止めた母さんが羨ましかった。で、そんな私と同じ思いを抱えている人が身近にいたの。それが、セシル。セシルは実の兄がかっこ良すぎて何十年も悩んでた。要するに、セシルは私の大先輩だったって訳」


 なんか話が明後日から明々後日の方向へずれたような・・


「だから私はセシルから色々聞いたの。セシルは兄への愛を忘れるためにいろんな人と付き合っては幻滅してまた付き合ってを繰り返して、最後に兄以上の男は存在しないって悟ったらしいわ。でも、そのお陰で男の思考論理も女の感情の機微も分かるようになったんだって。それを私に教えてくれた。だから、私が恋愛経験豊富かって言われたら、ノーよ。でも、セシルの話からいっぱい想像して脳内恋愛だけは豊富なの。リファーヌもセシルから色々教えてもらったら?脳内恋愛で10年は軽く楽しめるわよ」


「えー!じゃ、今度セシルに聞いてみよ!」

「止めてくれ!リファがおかしくなっちゃう!」

 アリアが余計なことを!リファが目を輝かせてるじゃないか!


「でもキースはその歳にしては中々よね。リファーヌの事すごく大事にしてるし、強いし頼り甲斐もあるし、将来イケメン決定だし」

「え!アリア、キース取っちゃダメ!」

「私は年下に興味無いから安心して。それに寿命が違い過ぎて人間族って時点で対象外よ」

「良かった―。じゃアリアは私を応援してね!」

「勿論、任せて!」


 ってな会話を俺の前で堂々繰り広げるリファとアリア。

 今更、応援も何もないと思うんだけどなぁ・・

 なんか、聞いてるだけで俺はとても疲れてしまった。


 その後、碌に計画も決まらず作戦会議はお開きとなったのだった。


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