表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/194

王令と後見人

 翌日の午後、騎士団本部を訪ねた。

 統合本部のディグリーム将軍に面会を求め案内されたのは将軍の執務室だった。

 文官や騎士たちが忙しそうに廊下を行き来している。

 そんな中、子供の俺達がいるのは不自然以外の何物でもない。

 俺達を見てぎょっとする人もチラホラいたし。


 そして通された将軍の執務室は威厳と格式に満ちた重厚感のある部屋だった。

 棚も机もソファーも年季が入っている。

 端に置かれた全身鎧はミスリル製だろうか。

 滑らかな装飾が施された白銀色が輝いていた。


「やっと戻って来たか。少しのんびりしすぎだ」

 将軍の挨拶は苦言から始まった。

「お前達のことで領地貴族達が大騒ぎをしている。そこは理解しているか?」

 将軍が厳しい眼差しで俺を見る。


「何か呼出し状の様なものをたくさんいただいております。理由には心当たりがありません」

 将軍は一つ溜息をついた。

「お前達が発見したルビー鉱山が発端だ。お前達であれば自領の山からも何かしらの鉱物を見つけ出してくれるのではと思惑が飛び交っている。故に、風の旅団を自分の領地に取り込もうと考える貴族が大勢いるのだ。その呼出しに応じれば一々面倒なことになるぞ」


「げ。それは・・困ります」

 今回はルビーだったか。

 ギュスターブ家の者しか知らない筈が何故こんなことに・・


「陛下もお前達のことに頭を悩まされておられた。風の旅団は王国の利益になる。そこらの貴族に良いように利用されては困るのだ。そこで、お前達には後見人をつけると決まった。陛下がお決めになったことだ。拒否などできんぞ」

 将軍の俺を見据える眼光が強くなった。

 思わず背筋が伸びる。

「と言ってもだ、これはお前達を保護する目的で困らせるためではない。勿論王国の利益の為に働いて貰う。しかし代わりに面倒な貴族の有象無象を排除してやるという話だ。良いな」

「・・はい」

 もう俺達に選択肢はないらしい。

 リファをちらっと見ると難しい顔をしていた。

 アリアも深刻な顔だ。


「その召喚状やらなにやらはこっちで預かる。ようはその連中がお前達を取り込もうとしている者たちだ。こちらでしっかり対処をしておく。余談だが、ギルド本部が当面、風の旅団への指名依頼を受け付けないようにと各ギルドへ通達したそうだ。良かったな」


 ギルドの通達はとてもありがたい話だ。

 貴族からの指名依頼を俺達が断ればどんな難癖を言われるか、想像しただけで胃が痛くなる。

 将軍の大きな手に催促されて、俺は召喚状の紙束を手渡した。

 どう対処するのか知らないけど、多分怖がらせるのだろう。

 将軍は悪い笑みを浮かべている。

 王国と軍に取り込まれることが今後どうなるか分からないけど、庇護してもらえるのはありがたい。

 そこは甘えるしかないし、どの道他に選択肢もない。

 俺は素直に従うべきと判断した。


「この後、謁見を予定している。代表貴族の面前で陛下より王令が出されることになっている。だが・・お前達もう少しましな服はないのか?」

 将軍は俺達の服装を見て苦々しい顔をした。

 服なら以前着たものを持ってる。でも謁見なんて話聞いてないよ。

 はぁ、すごく気が重い。


「服ならあります。ですが、それよりもまずお話ししなければならないことがあります」

 俺は、魔人族侵攻の可能性について知り得た情報を話すことにした。

 クリフロード領の魔人族一家の事。

 サイガから聞いた魔人族の王が侵攻の準備を始めた話。

 魔人族の戦闘部族の存在とキトリと戦闘した話。

 古代竜の死と瘴気の黒杭、それに伴い“屍竜の破壊に備えよ”と古代竜が国王に伝えようとしたこと。

 古代竜の魔石を献上したい事。

 などなど。


 そこにドアがノックされて懐かしのクレアが入室してきた。

「そろそろ謁見の準備を」というクレアの顔が嬉しそうに綻んでいる。

 きっとまた美味しい料理を食べられるとか思ってるんだろうな。クレアは。

 慌てて部屋を移動して、リファとアリアが着替え始めた。

 俺も別室でささっと着替えて呼び出されるのを待った。


 そして、謁見の間の扉の前で待っているとクレアが台車を運んできた。

「何か大きな魔石を献上されるとか聞きました。この上に乗せてください」

 言われた通り、1メトル大の青い魔石を台車に乗せたところで入室を促された。


 扉が開くと前回よりも大勢の人がいる。

 貴族が多い。100人はいる。

 わざわざ謁見の度に集まるのだろうか?陛下の威厳を出すため?それとも暇なのか?

 何にせよご苦労様だ。

 などと考えつつ赤い絨毯の上をゆっくりと進んでゆく。

 後ろからクレアの押す台車がカラカラと音を立ててついてきた。

 ザワザワヒソヒソ


 貴族たちが口元を隠して何か騒めいている。

 後ろの魔石にでも驚いているのだろうか。

 そりゃ驚くだろうさ。1メトル越えは絶対に見た事なんてない筈だ。

 定位置について片膝を付いて陛下の登場を待った。


「静粛に!陛下がお見えになられました」

 前回と同じ老人の静かな、でも良く響く声で2度目の謁見が始まった。


「風の旅団、面をあげよ。まずその大きな球体について説明してもらおうか」

「キース、直答を許す」

「はい。再びお目見えの機会を頂き感謝いたします。こちらは古代竜の魔石にございます。旅先で手に入れました。陛下に献上致したく持参いたしました」

 ザワザワザワザワ

「静粛に!」


「古代竜だと?其方はそれを見たのか?」

「はい。少し話をしました。しかしひどく弱っておりすぐに命が尽きてしまいました」

「なるほど。その状況については後程詳しく聞かせてもらおう。さて、この度の謁見は其方達の処遇についてだ。ギュスターブ領でルビー原石の発見により貴族達が浮足立っておる。風の旅団を囲い込もうという動きもあると聞く。しかし、屍竜討伐を成した其方たちは王国の功労者だ。また我が王国の貴重戦力でもある。よって、貴族家や商家に利用されることは許されん。そこのところを風の旅団はしっかりと理解し行動するように」


 将軍から言われたことが陛下からも繰り返された。

 陛下が目配せをすると老人が一歩前に出た。

 一枚の巻紙を広げ、読み上げる。

「王令を発す!すべての王国貴族に申し渡す。冒険者パーティー風の旅団に対し階級、権力による脅迫、強要、強制を行うことを禁じる。また・・」


 要約すると、ディグリーム将軍を俺達の後見人に据えるそうだ。

 その上で、風の旅団を王国戦力として認め、要請があれば王国軍に協力せよという話だ。

 貴族や商家は俺達に直接依頼を持ちかけてはいけない。

 依頼をしたいなら、ギルドか後見人の将軍を通せと。

 更に、風の旅団を力づくで私物化しようとする行為自体を禁ずるという内容だ。


 端っこに立つ将軍を見ればおっかない顔をして並居る貴族に睨みを利かせているみたいだ。

 自分が後見人とは言わなかったところが人が悪い。

 もったいぶらずにさっき教えてくれればよかったのに。


 老人が巻紙を読み終わると陛下が俺をじっと見た。

「其方たちを権力から守るための王令だ。甘んじて受け入れなさい。王国軍の協力要請も其方たちを使い潰すような真似はせんと誓おう。良いな」

「はっ。ご配慮ありがとう存じます」


 うむ、と陛下が大きく頷いて謁見は終わりとなった。

 立ち合いの貴族がざわつく中、巨大魔石が運び出されていった。

 俺達も謁見の間から下がった。

 そのまま別室に通されると、官吏に呼び出されて長い廊下を歩かされた。

 そして辿り着いた先では、陛下と将軍がお茶を啜って俺達を待っていた。

 他に文官?らしき人も二人同席していて記録を取るようだ。


「さ、座りなさい。早速だが古代竜の件と魔人族の話を陛下にお話しするように」

 将軍に促され陛下を見れば、ものすごく興味を持っていると目が訴えている。

 まるで冒険談にときめくルイス王子の様じゃないか。


「では、お話しいたします。発端は旧クリフロード領の領主の屋敷で魔人族の家族と出会ったところから始まりました・・・」

 将軍には繰り返しになったけど、より詳細に経緯を語り魔人族の侵攻の可能性、古代竜の死と黒杭の存在、古代竜の里と魂玉の話もした。

 ついでに3千人の領民が領南部に生き残っていたことも話した。


「これがその魂玉でございます」

 俺は鞄から宝玉の輝きを見せる古代竜の魂玉を取り出した。

「おぉ、なんと美しい」

 陛下が感嘆の溜息を洩らした。


「これを北の果てにあるという古代竜の里へ運ぶのか」

「はい。そう約束をいたしました」

「無理だろ。死ぬぞ?」

 将軍は心配そうな目で俺を見る。

「そのために必要な力を与えられております」

「どのような力だ?」

 陛下の目がきらりと光った。

「一つは竜眼。もう一つは次元収納です」

 ここは隠さず話しておく。

 出来ることをざっくりと話しつつも、それがどう役立つのかは不明であることも伝えておいた。


「なるほど。すごい力だ。しかしそれだけで辿り着けるとも思えんな」

 将軍が懸念を口にして陛下も同意したように頷いた。

「はい。私もそう思います。現時点ではどうすればいいのか分かりません。しかし諦める訳にもいかないので今後時間をかけて方法を模索いたします」

「うむ。その魂玉とやらは大事に保管しておくといい。この件は其方たちだけの問題ではない。王国軍も、否、王国としても協力は惜しまん。遠慮なく我々を頼るといい」

 陛下の言葉に将軍も頷いていた。


「さて、次にその生き残りの領民についてだが・・キースよ、其方はどうしたい」

「私はいずれあの者たちと共に生きようと考えています。もう一度王国領として復帰できるよう全力で魔物を排除し、開拓を進めるつもりでおります」

「クリフロード領の統治だな。分かった。時期が来たらいずれ認めよう」

 陛下があっさりと約束してくれた。

 まさかと思い俺は耳を疑った。こうも簡単に約束を得られるとは。

 隣でリファのカップがカチャンと音を立てた。

「キース!良かったね!」

 リファの顔が上気している。


「当然の話だ。今回の魔人族に関する情報は得難き内容だった。これが軍族であれば2階級特進、貴族であれば昇爵に値する。加えてあの魔石だ。あれで王都の防衛が強固にできる。それもまた多大な貢献だ。其方達の成した功績は非常に大きいのだ。領の統治を認めたが、他にも何らかの褒美を与える故楽しみにしておると良い」


 陛下のこの言葉を今すぐ領民に伝えてやりたい。

 きっと皆喜ぶだろう。

 王国から見捨てられたわけではなかった。

 生きている者達がいると知られていなかっただけなのだ。

 また王国民として以前の様に暮らしていけるのだ。

 お爺様と父様の喜ぶ顔が目に浮かんだ。村人たちの安堵する顔も。

 そう思ったら俺の目頭は熱くなった。


 そんな俺をリファが、アリアが暖かい眼差しで見ていた。

 陛下も将軍も満足そうに頷いていた。



 王宮を出て、宿に戻ると3人の三つ子猫が食堂で遊んでいた。

 まだ夕方まで少し時間がある。

 きゃー!かわいい!

 子猫達を見たアリアがすっ飛んでいってしまった。


 俺とリファは部屋に戻って学院と入寮の準備を始めた。

 色々買って来たから仕分けしたり不足がないか確認をしたり。

 ちなみに今回もリファと俺は同室だ。

 そこはリファが頑なに主張して決して譲ることはない。

 そんなリファが大きなため息をついた。


「はぁ、陛下のご褒美に学院の寮でキースと同室にしてもらうってできないのかなぁ」

「それは無理だろ」

「キースってば冷たい!」

「そう言う問題じゃないって。男女別棟で出入り禁止なんだから仕方ないよ。それにルームメイトもいるって話だよ」

「はぁ、私上手くやれるかな。すごく不安」

 言いながらリファは下着を畳んでいる。

「リファ。下着は普通、男の俺には見せないものだよ」

「今更何よ。キースなんだからいいじゃない」

 リファはこうゆう所をまったく頓着しない。

「でもね、私同年代の女の子とあまり話したことないの。アリアはミトの娘さんだから別にして、キャシーは友達って言うより依頼人だったし」

 確かに、キャシーとビッケは恩人として懐かれたけど、最初の内は会話も少なくてギクシャクしていた。

 って、アリアは子供じゃないし。


「うーん、それを言ったら俺も同じだよ」

 傭兵団の時にいたバルト兄弟とはあまり仲が良くなかった。峠を一緒に越えたジェルゴとカニカとは殆ど喋らなかった。あとはエウロの里のいじめられっ子のビート位か。

 そう考えると俺も不安になってくる。

 今更、子供ばかりの中で仲良くやって行けるのだろうか。


 どんな生活になるのか全く想像がつかない。

「普通の子達って普段どんな会話してるんだろ」

「うーん・・英雄の話とか?」

「女の子は?」

「さっぱり分からない」

「だよね・・」

 リファはまた大きな溜息をついた。


 俺達の入寮は年明けの8日。それまでまだひと月以上ある。

 その間、ギルドで依頼を受けて少しでも稼ぐことにした。

 ここは西門の傍だ。

 西門を出ると30キロルで西の魔境に着く。

 西の魔境付近にはダンジョンもあるらしい。

 王都の冒険者の活動拠点はこの西エリアのギルドが主流だと黒猫獣人のジャンゴが言っていた。


 翌日、俺達は王都西ギルドの入り口を潜った。

 あまり目立ちたくないから、俺はくたびれた愛用の皮鎧を着こんでいる。

 赤竜の鱗鎧は目立ちすぎる。

 リファは不満顔だったけど、アリアは理解してくれた。


 少し時間をずらしたけど、人はかなり多い。それにやはり広い。

 人気のギルドだけにこれでも人は少ないのかもしれない。

 早速依頼表を見に奥へ進むとランクBの掲示板の前も混雑している。

 皆、大柄な冒険者だから背中しか見えない。


 アリアがランクBというのもあって、風の旅団はパーティーランクBとなっている。

 俺達は一つ上のランクAの依頼まで受けることができる。

 裏のブラックXを使えばランクSでも受けられるけど、今はその気はない。

 ランクAのグリフォンで苦労したからまずはBレベルで慣らそうと思っているのだ。


 でも、そのBの掲示板が人垣で全く見えない。

 しかも押されて横から入られて埒が明かない。

 そんな状況にアリアがしびれを切らした。

「もういい!今日はランクAを受けましょ!」

 そっちはというと、かなり空いている。

 依頼の種類も少ないみたいだけどそれ以上に人が少ない。

 アリアはランクAの掲示板に行ってしまった。

 仕方なく俺達もアリアと一緒に掲示板を眺めた。


 ダンジョン47階層 ミノタウロスの角 金貨20枚

 ダンジョン51階層 バジリスクの毒腺 金貨28枚

 ダンジョン55階層 カイザーコングの毛皮 金貨40枚

 こう見るとダンジョン関係の依頼が多い。

 他には・・


 ベルシア湖 赤毛蟹の卵5キロル 金貨3枚/キロル 

 ベルシア湖 ベルシア白エビ10匹 金貨2枚/匹

 ライアンホークのひな鳥生体 金貨10枚など。

 他には西の魔境奥地の地図作成や、オーガ集落の調査、古代遺跡調査、希少種捕獲などなど。


 相応の報酬額が書き込まれている。

「キースどれにする?」

「なんか目移りしちゃうわね・・」

「簡単そうなのは地図作成と、オーガ集落の調査かな」

「じゃあ、手始めにそれにしよーよ」

 リファの提案でその二つに決めた。


 通常、一度に二つの依頼を受けることができる。

 ただ、この手の内容で二つ同時に受けるという事は自爆行為に等しい。

 距離も遠く難易度も高いのに、期限が決まっているからだ。

 俺達だからこそ可能であるし、ランクX保持者として信頼されているからこそ受けられるというのもある。


 アリアが依頼表を引っぺがそうと手を伸ばした時だった。

「ちょっと、君達」

 声を掛けられて振り向くと、そこに熊を思わせる大きな男が立っていた。

 太いけど、多分筋肉が詰まっている。

 体格に似合わず目元が優しくて笑ってもないのに笑顔に見える不思議な男だ。

 黒ひげがむさくるしいけど、良く似合っている。

 一見熊獣人かと思ったけど、耳がないから人間族だ。


「それは君達が受けられる依頼じゃない。新人の掲示板はあっちだよ」

 熊髭男が入り口に近い掲示板を指した。

「私はランクBよ。子供っぽく見えるからって見かけで判断しないでよ」

 アリアはどうしても見知らぬ人に対してきつい口調になる。

 熊髭男は驚いた顔をしている。

「子供っぽい?子供じゃないのか?嘘だろ?」

「失礼ね!私こう見えてもとっくの昔に成人してるわ。用がそれだけなら向こうへ行ってくれない?」

「いや、そうか。君はエルフか。それは失礼したが、そっちの子はまだ子供だろ。子供に危険な依頼を受けさせるのは感心せんな」

「この子達は私よりも強いわ。だから心配いらない」

「それを信じろと?」

「えぇ。事実よ」

 アリアと熊髭冒険者の雰囲気が険悪だ。

「私たちが何の依頼を受けるかは私達の勝手でしょ?キースもなんか言ってやってよ」

 リファも参加した。しかも俺を巻き込もうとしてくる。


「ちょっと、バッファ!何をもめてるにゃ?」

 俺も参戦しようとした時にまた声が掛かった。見ると女性の猫獣人だ。

「おうベルか。いや、この子達が身の丈に合わない危険な依頼を受けようとしていたから止めようとしていたところだ」

「あんた達は?あ!エルフにゃ!うちらの仲間にもエルフがいるにゃ!ちょと呼んでくるにゃ!」

 そう言って猫獣人はすぐにいなくなってしまった。

「なんなんだ。別にわざわざ呼んでこなくてもいいのに・・」

 突然の登場と退場に俺達は呆気にとられた。


「とにかく、他人が俺達に干渉しないでくれ。魔境の危険性なら十分知っている」

「そうよ!私は魔境育ちよ。あなたよりも魔境には詳しいわ」

「私達、魔境の中で一年以上過ごしたわ。私達の事何も知らないのにお節介は止めてよ」

「いや、しかしだな・・」

 熊髭冒険者がたじたじになったところで「こっちにゃ!早く来るにゃ!セシルのお仲間がいるにゃ!」

 さっきの猫獣人が一人のエルフを引っ張って来た。

 顔つきは違うけど、少しアリアより年上っぽいエルフが連れて来られた。


「セシル、この子にゃ」

「え?セシル?」

「え?アリア?うそ?ほんとに?うわっ、久しぶり!なんでこんな所にいるのよ!」

「え?アリアの知り合いなの?」

 リファも驚いている。というか皆驚いている。


「と、とりあえず、ここは邪魔になるからあっちで話さないか?」

 熊髭男の提案で、俺達は隣接する酒場に移動した。

 そこには、セシルの仲間たちがいた。


「改めて紹介するにゃ!うちらはランクAのボトムスヘブンにゃ」

「ベル、俺から紹介する」

 そう言ったのは均整の取れた体つきのリーダーらしき大男だった。

「俺達はボトムスヘブン。この西ギルドをメインに活動している。俺はリーダーのロッゾ、この熊獣人みたいな奴がバッファ。んで、エルフがセシル、猫がベル、狼がボルガだ 」

 一目で全員が粒ぞろいのパーティーと分かる顔ぶれだった。


「俺達は風の旅団。俺がリーダーのキース、アリアとリファーヌだ。俺とリファーヌがランクCでアリアがB。さっきそっちのバッファに依頼を受けようとしていたところを邪魔された。それで少し揉めてたんだ」

 風の旅団と言った時に、ロッゾの眉がピクリと動いた。

 バッファは、え?っていう顔をした。


「アリア、あなた風の旅団なの?あの空を飛ぶとか、竜を倒したとか何かと話題の?」

「うん。この二人のパーティーに入れてもらったの。私も空を飛んでみたくて」

「本当に空なんて飛べるにゃ?」

「勿論。苦労したけどやっと自在に飛べるようになったわ」

 リーダーを置き去りにして女性陣で会話が弾んできた。


「ね、セシルもエウロの里出身なの?」

「そうよ。私はアリアの父親の妹で、母親の親友よ」

 リファの問いにセシルが答えた。

「え?ミトの親友?」

「にゃんと!すごい偶然にゃ。びっくりにゃ!」

「あら、あなたミトを知ってるの?」

「うん。実はね、・・・」

 完全に女性陣で話が盛り上がってしまった。


 そこにロッゾが話しかけてきた。

「どうやらあの二人は身内らしいな。うちのバッファが何やら迷惑をかけたらしいが許してやってくれ。良い奴なんだ。セシルのこともあるし、俺としては風の旅団とは仲良くやっていきたいがそっちはどうだ?」

「アリアの叔母さんもいるみたいだし、俺達はいいですよ」

「ちょっと!私の事おばさんって言わないでよ!こう見えて私まだ二桁なのよ!」

 セシルが耳聡く俺を睨んだ。

「ご、ごめんなさい」

 どこかで聞いたセリフだ。


「エルフの二桁はピチピチなんだよね!ミトが言ってた」

「そうなのよ!リファーヌあなた分かってるじゃない!」

 リファのフォローでセシルがすぐに気を取り直した。

 そしてまたぺちゃくちゃと会話が始まる。

 女子会か?


 男連中は完全に蚊帳の外というか、女性陣の勢いに飲まれてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ