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行き詰まり

 以前見た事のあるお姉さんのカウンターに並んだ。

「あら、あなた達。トッテムギルドに呼ばれた件はもう終わったの?」

 そう、このお姉さんこそが赤竜討伐の地へ俺達を向かわせた張本人だ。

「無事終わりましたよ。危うくギルドから追放されるところでした」

「ダメじゃない。何したか知らないけど悪い事したらばれるし罰せられるんですからね。これからはちゃんとしなさい。子供でも君たちは冒険者なんですから!」


 このお姉さんはまったく事情を知らないようだ。

 俺達を心配して叱ってくれていると分かる。

 何か肩がほぐれるというか、毒気を抜かれるというか。

 会員証を出して用件を伝えた。


「侯爵様から直接依頼を受けてグリフォンを討伐してきました。今日は一体だけ持ってきました。素材買取をお願いします。あと、犠牲者の遺体を一人。こちらで引き取ってもらえますか?」

「は?」

「グリフォンは6メトルサイズなんです。奥の素材引換所でもいいですか?大きいから解体所の方がいいですか?」

「は?」


 お姉さんに話を理解してもらうのになかなか苦労したよ。この人察しが悪すぎる。

 俺達が風の旅団だと知っても屍竜討伐を成したパーティーって気づかないんだもん。

 グリフォンの死骸を解体所に出すと、ギルド中が大騒ぎになった。

 人垣ができて、ギルマスが飛んできて。

 侯爵家にも報告に人を走らせるやら色々と。


 結局遺体も死骸も引き取ってもらって事なきを得た。

 素材換金は、おそらくオークションになるという事で入金は遅くなるらしい。


 翌日、もう一体の死骸を取りに谷へと戻って収容し終えた時。

 大きな洞穴を見つけてしまった。

 グリフォンの巣かな?何だろ。

 どうしても気になる。入りたい。冒険心がくすぐられる、そんな怪しい雰囲気の洞窟だ。

 大きな入り口を上から蔦が被さっている。絶対何かありそうだ。

「ね、入って来ていい?」

「また?私達外で待ってるからね!絶対糞尿まみれで臭いと思うよ」

 アリアが顔をしかめた。

 赤竜の洞穴はひどい匂いだったからね。


 俺は光球を出して一人奥へと踏み込んでいった。

 中々広々としている。といってもずっと奥まで続いているわけではなかった。

 それに臭くもない。

 特に何もないただの洞穴だった。

 何かあると思ったのに、肩透かしで残念だ。

 一通り見て回って、もう帰ろうとした時だった。

 壁に光るものを見つけた。

 それは、なんと!赤い鉱石だった。宝石?の原石?直径5センチメトルの大粒だ。

 そう言う目で見れば、あちこち光っている気がする。

 もう二つ小さめのものを掘り出した。

 3つ掘り出して表に出ると、アリアとリファが食いついてきた。


『頂戴!!』

「だめ!ここは侯爵領だから勝手に貰ったら泥棒になっちゃうよ」

「うー!!私達が見つけたのに泥棒になるの?」

 私達じゃなくて俺が見つけたんだよ。

「なるでしょ。人の家の庭で金貨拾っても自分の物ってことにはならないよ」

「うー!!」

 地団駄踏んでる。今日のアリアは見てるだけで面白い。

「でも、交渉はできるよ。きっとまだいっぱい埋まってる。それを教えて上げたらくれるって言うかもね!」

 リファは前向きに貪欲だった。


「リファ、前にサリフェリュジアにミルケットの形見渡しちゃったでしょ。いつか返したいと思ってたんだ。侯爵には俺から交渉してみる。もう少し待ってて」

「もう!そんなこと良いのに!でも、キース大好き!」

 勢いよく抱きつかれてしまった。

 それまでちょっと落ち込み気味のリファだったけど、急に元気になった。

 それだけで俺は嬉しくなる。


 そして、ギュエスタの街へ戻って、ギルドにグリフォンを届けて候爵家へと向かった。

 侯爵は不在だけど、執事がいる。

 俺達は持ち帰った赤い原石を見せた。


「ほっ。こ、これはまた随分と大きなルビーの原石でございますな。これが、我が領の山地に埋まっていたのでございますか?何という・・さぞ主がお喜びになる事でございましょう」

「発見の見返りに、この小さい方の原石を二つ頂きたいのです。侯爵様に取り次いでいただけませんか」

「いいでしょう。これは私がお預かりしておきます。いずれ当家から改めてご返事させていただきます」

 で、結局その場ではもらえなかった。

 アリアが露骨にガックリしている。


 代わりにワインの大樽を一つ受け取って立ち去ろうとした時。

「お待ちになって!」

 と声を掛けられた。

 俺と同じ年くらいの女の子だった。

「わたくしは当家の娘でローゼリアと申します。この度、グリフォン討伐に次いで宝石の産出場所まで見つけていただいて感謝いたしますわ。父に代わりお礼申し上げます」

 所作が見事なまでのご令嬢様だ。

「父からの手紙で風の旅団のことは知っております。いずれキース様、リファーヌ様とは学院でお目にかかるかもしれません。その時はよろしくお願いいたしますわ」


 リリアティナ王女様もよろしくという話だったけど、何をどう宜しくすればいいのやら。

「はぁ。こちらこそよろしくお願いいたします」

 と、なんとも締まりのない返事しか返せなかった。

 隣でリファが少しむくれている。

 まさか嫉妬ってわけじゃないよな。この程度で嫉妬されても困るよ?


 次の目標は母様の埋葬地を見つけ出すことだ。

 俺達はギュスターブ領を去り、バルバリー侯爵領ケシャルへ向けて旅立った。

 ケシャルの街まで、直線で約3000キロル。

 その直線上にはあのロゼム金山の山々がある。そこは大回りをしてでも迂回する。

 飛行する俺達をあのクソ騎士団長に見かけられたくないからだ。

 万一にも見つかって、また出頭命令なんてもらった日には泣きたくなってしまう。


 凡そ20日間の旅を順調に進んで、俺達は無事ケシャル郊外までたどり着いた。



 その頃、王都では大騒ぎが起きていた。

 勿論、俺達の知る由もない話だ。

 でも、内容は俺達に大いに関係がある。

 というか、俺達のことでお貴族様方が大騒ぎをしていたらしい。


 話は20日前に遡る。

 ギュスターブ侯爵邸から一通の書簡と大粒のルビー原石を入れた小箱が伝令鳥に括りつけられて大空へと放たれた。

 向かう先は王都ギュスターブ侯爵邸。

 侯爵家の伝令鳥は長距離移動に適したライアンホークという大型鳥だ。

 王都まで約2500キロルを僅か10日で移動する。

 その書簡がギュスターブ侯爵の手に届いた時、侯爵は屋敷中に響き渡る驚喜の声をあげたという。


「なんと我が領にルビーを産出する鉱山が見つかったのだ!詳細な場所は言えぬ。だが事実だ。この大粒の原石を見よ!まるで我が領特産のワインの様な色合いではないか!何と美しい!すべて風の旅団のおかげだ。さすがは屍竜を討伐しただけのことはある。我が領はあの者たちのおかげで大いに発展するであろう」

 ギュスターブ侯爵は、サロン、茶会、夜会と出向いて行っては歓喜の自慢を繰り返した。

 それがニュースとなって王都街に設置の魔力感知掲示板にまで報じられることになった。


 ―風の旅団がギュスターブ領にてルビー原石の眠る鉱山を発見―

 ―風の旅団がギュスターブ領にてグリフォン2匹を討伐―

 

 屍竜討伐に続いての快挙だ。

 王都民は風の旅団なる冒険者パーティーの活躍に沸き返った。


 だが、王都民以上に沸いたのが貴族達だった。

 グリフォン討伐に行かせたら宝石の眠る山を見つけてきたのだと容易に察しが付く。

 であれば、我が領でも何か眠っているかもしれない。

 それを風の旅団であればいとも簡単に見つけてくれるのではないか、と。


「依頼内容など何でもよい。とにかく風の旅団に指名依頼を出すのじゃ!」

「風の旅団に召喚状を出せ。我が領へ呼び出すのだ!」

「風の旅団に我が領の山々を全て調べさせよ!きっと何か出てくるはずだ!」

 王都ギルドのギルマスの元へ主の命を受けた貴族の家臣が殺到した。

 しかし、風の旅団は既に王都を遠く離れている。

 ギルドにも寄らずどこにいるのか誰も知る者はいない。


 そして、今や王都のサロンで話題沸騰中の風の旅団を心配する者達がいた。

 国王と将軍だ。

 二人は王宮の奥の間で、風の旅団に強要されるであろう貴族たちの無理難題からいかに彼らを守り対処するべきかと頭を悩ませていた。


 そして、その頃オークションでグリフォン1匹あたり、金貨40枚で落札されたのだった。


 そんな状況とはつゆ知らず、俺達は母様の足跡の確認ができた場所に辿り着いた。

 ケシャル郊外の治療院だ。

 この周辺にある教会を探せばきっと新たな手掛かりが得られる筈。


 俺達はその治療院のある小さな村の教会の場所をまず聞いた。

 その小さな村には教会がなかった。

 村人が死ぬと村長が司祭の代わりを務めて村の共同墓地に埋葬するのだそうだ。

 俺達は村長の屋敷を訪ねた。

「この村で貴族様のご遺体を葬ったことなぞ御座いませぬ。そのビビア様という女性についても同様に御座います。管轄の司祭様は街道を南に下ったアスボンの街の教会にいらっしゃいます」


 早速アスボンという街に向かった。

 アスボンの教会を訪ね、金貨1枚を寄付すると人の良さそうな司祭様が快く応じてくれた。

 しかし、そこでも手掛かりはなかった。

 司祭の話によると、一つの街の教会がその周辺の村々を管轄して色々な祭事を行っているらしい。

 出生や死者の報告は各村から届けがあり、記録されているという。

 その記録も見せてもらったけど、母様の名前はなかった。


「もっと南へ行ったのかしら?」

 アリアが推測を口にした。

 その可能性は高い。次の街はノーザント。南へ200キロルのガザレフ峠を越えた先の街だ。

 翌日、俺達はノーザントの街へと向かった。

 そして、そのノーザントの教会でも手掛かりを得られなかった。


 ノーザントの街の食堂で、アリアが文句を言い始めた。

「ね、毎回金貨寄付するの?勿体ないわよ!」

 確かにアリアの言う通りだ。金貨1枚の魔物と言えばランクBの報酬に相当する。

 でも、記録を見せてもらうためには相応の寄付は必要だと思う。


「ケチって記録を見せてもらえなかったら見つかるものも見つからないと思うんだ」

「ちょっと!リファーヌも何か言いなさいよ。あなただって命賭けでやっともらえた報酬なのよ。苦労して手に入れたんじゃない。使い道に口出す権利があるんだから」

「うーん。私はキースのしたいようにすればいいと思う。お金なんてまた稼げばいいし。それより、お母様見つける方が100倍大事」

「まったっく・・この子達は。金貨1枚の価値を分ってるのかしら。もう!」

 ドンっとエールの杯を机に置いた。

「お代わり!」

「大丈夫だよ。まだいっぱいあるから。この辺の教会全部に1枚づつ寄付しても全然足りるよ」

「あのね、そうゆう問題じゃないんだけど」

 今使ってるお金は大王亀の素材分だから、アリアに文句言われる筋合いはない。

 けど、アリアからしたら勿体なくて見ていられないのだろう。


 ブツブツ言うアリアは置いといて、俺とリファは再び地図を覗き込んだ。

「ねぇ、何か見落としている気がする。だって、お母様は命を落とすほど病んでいらしたのよ。200キロルの峠越えってできる?魔物や野盗は出るし、道は悪いし気を抜けないし休めないし。とても峠を越えられるような状態じゃなかったと思うの」


 それは俺も気になっていた。上空から見てもかなり上り下りの激しい峠だった。馬車移動とはいえ病人には困難な道だ。

「明日から峠を調べてみよう」

 と方針を立てて、翌日から自分たちの足で峠を登ってみることにした。


 アーシェル侯爵領からバルバリー侯爵領へと続くカザレフ峠を北へ登って行く。

 起伏は激しく曲がりくねっている。魔物も出るらしく、峠越えの為に冒険者や護衛を雇った乗り合い馬車が行き交っていた。

 予想以上に行き交う人は多い。


 途中、宿屋があった。

 そこは完全に板塀で囲われた場所に3軒の宿と領兵の駐屯所までがある。

 全ての宿に6年前に倒れた貴族女性がいなかったかと聞いて回ったけど、手掛かりはなかった。

 さらに北へ進む。

 また同じような宿屋があった。

 そうした宿場は領主により整備されていて全部で8か所も設けられているという。

 俺達は全ての宿場を訪ね、何か手掛かりがないかを探して回った。

 けれど、結局何も得られず、何も分からなかった。


 再びアスボンの街の食堂で、地図を囲んで俺達は話し合っている。

「峠を無事越えてノーザントに辿り付けたのか?だとすると、ノーザントの治療院を当たった方が早い気がする」

「でも、もしかしたら峠は越えてないかもよ。だって、峠越えが厳しいのは分かってたはずだから、峠を避けて迂回路を行ったかも」

「そうすると、西回りの王国直轄領と東回りのドックウェル伯爵領方面のどちらかよね」

「一気に範囲が広がったな・・これは時間を掛けて一つ一つじっくり探すしかないな」


 それから3か月間を掛けて、教会、治療院、宿屋を虱潰しに調べて回った。

 ケシャル郊外の治療院が最後の足取りだった。

 そこから南方面へ向かったことを前提に、複数の迂回路沿いの村や町をすべて訪ねた。

 管轄する教会で住民の死亡記録も確認した。治療院でも治療記録を見せてもらった。

 宿屋には記録なんてなかったけど、宿主の記憶を頼りに話を聞いた。

 小さな村にも寄ってしっかり聞き込みをした。

 可能性のある所は全て調べ尽くした。

 それでもまったくその後の情報は得られなかった。



「いったいどうゆう事?なんで何も分からないのよ!」

 一通りの調査が終了した日、アリアがとてもイライラしていた。

 無理もない。調べても調べても何一つ成果がなかったのだ。

 リファも疲れた顔をしている。


「うーん。ここまでして何も出てこないのは逆に不自然すぎる。まだ私達の気づいていない見落としがあるってこと?はぁ、お母様は一体どこにいるのかしら」

「うーん、あと残るとしたら・・・」

『残るとしたら?』

「どこかなぁ・・」

 アリアがカクッとずっこけた。

「もう、全然進展しないじゃない!」


 アリアは旅とか冒険がしたいから、こんな人探しばかりだとイライラするみたいだ。

 それにしても、おかしい。

 病人と幼い子供を連れてそう遠くまでは行けないはずなんだ。

 この辺りで母様は力尽きた。それなのに教会に記録が残されていないことがまずおかしい。


 完全に行き詰まってしまった。

 その夜、夢を見た。

 “キース・・早く見つけて頂戴・・ここは寂しいわ・・お願い・・はやく、はやく”

 母様が白い霧の奥で寂しいとすすり泣いていた。

 目が覚めて夢だと分かったけど、俺の心は波だった。

「ごめん母様。もう少し待ってて。必ず見つけ出すから」

 その後は、中々寝付けなくなってしまった。


 翌日も地図と睨めっこしながら見落としを考えていた。

 午後からは公館に出かけて、6年以内に廃止された教会がないかを調べた。

 それでも手掛かりは見つからなかった。


「ねぇ。キース。一旦領地の方に行ってみない?今行き詰ってるし、ここにいても進展しなさそうだよ」

 リファが音を上げてしまった。

「私もそっちに賛成」

 アリアが手を挙げた。

 多数決で俺の負け。

 母様の夢を見たばかりだからもう少し粘りたいけど、これ以上どこを探せばいいのか分からない。

 明日からクリフロード領へ向かう事になってしまった。


「ね、キース。今日はどこかの街の宿に泊まりましょ」

 アリアが突然そんなことを言い出した。

 今は節約も兼ねてケシャル郊外で野営している。

 勿論、野営小屋は風呂付だから女性陣はむしろそっちがいいというのもあった。


「今日まで頑張って探して疲れが溜まってるはずよ。私達はしっかり寝た方がいいわ。だからベッドで眠るべき。それに私もやりたいことあるから宿に泊まりたいの」

 アリアが珍しく宿泊を提案してきた。

 そんな提案初めてだ。


「宿に泊まるのは賛成だけど、アリアは何するの?」

「うー、母さんに手紙書く」

 リファがキョトンとした顔をしている。

「最近のキース見てたら私も母さんに謝りたくなったのよ。まだ、一度も連絡してないし」

 アリアがそっぽを向いてそんな事を言った。

「え″ー!あれからまだ連絡してなかったの?」

「嘘だろ?アリア!それはないよ!」

 リファがものすごく驚いてる。俺も驚いた。

 てっきり、とっくに生きているって連絡くらいはしたものだと思っていた。

「だって、今更というか、恥ずかしいというか、ねぇ。分かるでしょ?」

「全然分かんない!早く書きなさいよ!ミト凄く寂しがっていたんだから!」

 リファが珍しくアリアに怒った。リファはミトに懐いていたからな。気持ちは分かるよ。


「うぅ。ごめん。だから今晩書くから。それで今日は机のある部屋に泊まりたいのよ」

「あ、じゃあ私もミトにお手紙書くから一緒に送って」

「いいわよ。じゃあ一緒に書きましょ!」

「やったぁ!キースも書こうね!」

 もう仲直りした。あっという間だったな。早すぎるだろ。


 その日はケシャルの宿に泊まってアリアは手紙を書いた。

 手紙を書くアリアは少し涙していた。

 俺とリファもこれまでの冒険を便せん1枚に綴った。そしていつか必ずアリアを連れてくと勝手に約束をした。当然アリアには内緒だ。


 アリアは便せんを封にしまうと、魔法陣を描いた。そして魔力を込める。

 窓からそっと出すと、風に乗って南へと飛んでいった。

 何だこれ。何をした?

「これはエルフに伝わる連絡方法よ。遠い場所に風の魔力で手紙を届けるの」

「雨が降ったらどうするの?」

 うんうん。それは俺も疑問に思う。

「雨をはじく魔法陣も組み込んであるわ」

「鳥に襲われたら?」

「その時は届かないわよ」

 当り前でしょみたいな顔をしている。

「でも、大概届くわよ。よっぽど運が悪かったら届かないけど、多分問題ないわ」

 アリアがそう言うなら大丈夫なんだろう。


 俺は寂しがり屋のミトが手紙を読んで静かに泣いている姿が目に浮かんだ。

「ミトきっとすごく喜ぶよ」

 リファもそんなミトを想像しているに違いない。


 俺とリファにはもう母様はいない。

 せめてアリアにはミトを大事にして欲しいと思う。

 でないと、きっと後悔するから。アリアもミトも。


 手紙と言えば、ベックに手紙を届けたい。

 国をいくつも跨いだ手紙は届くかは分からないのだ。

 以前、ギルドに訊ねた時に止めた方がいいと言われた。

 国境越えの手紙は料金も高いけど、お金だけ奪われて届かないことが多いらしい。

 まして幾つも国を跨ぐとなると、まあ、無理だろうと言われた。

 でも、アリアのやったこの方法ならどうだろう。行けそうな気がする。


「アリア。俺手紙を届けたい人がいるんだけど、その方法教えてくれない?」

「いいけど、絶対無理だよ」

「どうして?」

「魔力を登録した特殊な魔石がエウロの里に置いてあるの。そこに飛ばしたから。でも、キースの送りたい相手はキースの魔力を登録した魔石持ってないでしょ。だから無理」

 くそ。残念。諦めるしかなかった。


 その日、俺は宿のベッドでぐっすりと眠った。

 少し時間が経って気分も落ち着いたし、ミトへの手紙が俺の悲しみを少し和らげてくれた。


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