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電話の運用開始

 パソコンはやはりまだ数がないし、値段も高いので、まずは電話機能だけのスマホから売り出すことになった。

 とりあえず領内だけの電話に限定したので、電話サーバ一台と、スマホが二〇台ほど売れた。

 文官たちが頑張って営業したほか、離宮内でも五台のスマホが売れたからだ。

 うちで買った五台のうち一台は文官のところ。

 もう四台は騎士団長と見回りの騎士とで使うらしい。

 なので民間には一五台売れたことになる。

 まだ完全なシステムは出来ていないが、僕の提案通り、先行販売しテストに協力してくれれば僕からいくらかキャッシュバックするということで話はついたらしい。


 割引形式ではなくキャッシュバックにしたのは、まとまった現金が先に手に入るからだ。

 テスト協力だからテストが終わらない限りキャッシュバックしなくて済むからねw

 なら一生テスト中にってのは冗談だけど、テスト期間は最大三ヶ月に設定してあるから、それまでには開発とテストを終わらせたい。

 せっかく協力してくれるんだから有意義に使わないとね。

 まあ、大体の構想はあるから後は粛々と作っていくだけだ。

 まずは電話サーバとアップデートサーバ機能との統合だ。

 これがないとプログラムの更新があるたびにUSBメモリを持っていかないといけなくなる。


 次がメール機能だ。


 アップデートはいつ行なわれるかわからないし、電話がトラブった時に連絡方法がないと困る。

 しばらくはアップデートデータが更新されているか毎日確認してもらって、メール機能が追加されたら、それで確認してもらうことにしている。

 なお、キャッシュバックの金額はこのメールアプリ代だw。

 メールが必要ない人はメールアプリを使えなくしてその分キャッシュバックするから、全員がメールを使うと言ってくれればキャッシュバックは実質〇円ということになるw


 まあ、初めからメールアプリ分割り引いているとも言えるけどね。

 振り込みとかないので、お金の移動だってめんどいので、このような形にしてもらった。

 一応メールアプリやダウンロードアプリは出来ているのでインストール済みだ。

 出来ていないのはサーバ統合や基地局間のデータ交換なので、こちらができれば三つのしもべ、もとい三つのアプリが動き始めるはずだ。

 メールアプリは入れっぱなしでも認証データを削除すれば使えなくなるからね。

 電話も使えなくできるけど、さすがにこっちは消す人はいないだろうということで、メールが選ばれた。

 まあ、サーバの維持管理費として結構な金額取っているから、未払いになると認証データ消しちゃうけどね。


 サーバの維持費は年払いで今年いっぱいは無料に設定。

 来年からの支払いにしている。

 まだテスト期間中だし販促キャンペーンみたいなものだね。

 サーバの購入と維持は各領主にやってもらおうと思っている。

 こっちで他領まで維持管理するのは無理だからね。

 サーバの維持費請求も各領主の務めだ。

 まあ、このへんはインターネットと同じ仕組みだね。

 サーバを管理するプロバイダがユーザーからお金を徴収して回線を維持する。

 電話やメールはおそらく戦略ツールになるから、さすがに民間に管理は任せられない。


 そういった売り方運用の仕方をひとつひとつ決めていって、問題があれば修正していき、そうこうしているうちに、他領への販売も開始され、なかなかブラックな日々を繰り返しつつ、アプリとサーバの調整を完了させ、その日広域ネットワーク網が完成したのであった。

 いや、完成はちょっと前だけど、記念式典を各領地でやろうということになり、この日が選ばれた。

 こちらの会場は宴会場もとい舞踏会なども行われる大ホール。

 そこに領内の貴族と准貴族その家族などが集められて、盛大なパーティーを開いている。

 他の領地ではさらに大規模なパーティーとなっているはずだ。


「私はフラルークである。皆の者聞こえておるであろうか?」

「「「聞こえております」」」


 音量は大きめにしてあるのでホール内にいる皆にその声は届いた。


「本日は我ら派閥が一つに結ばれた記念日である。これまで、派閥とはいえ連携して動くことはその距離ゆえ難しかった。だがこれからは違う。どこの誰とでもどこにいようとも話し合いが行える。しかしその恩恵に与れるのはわが派閥だけである。幸いなことに周辺の中立領、トルスタント侯爵およびカッシニール伯爵、ビルドレンス伯爵が新たに我が派閥に加わり、その寄り子である領主も我が派閥に降った。数は力である。これまで数も少なく、バラバラに動いていた我が派閥に十分な数と連携が生まれたのだ」


 まだまだ他の王子たちの派閥には及ばないが、うまく連携して動けば、十分に対抗できる勢力になったはずだ。


「なにか困ったことがあれば即時相談して欲しい。皆が知恵を合わせれば必ずや良い方法が導き出せるであろう。なにか必要なものがあり、それがひとつの領では集めきれずとも、他領から少しづつ集めれば集めきれるやも知れぬ。これまで出来なかったことができるようになる。これまで出来たことでもより早くより低コストで実現できる。これがこの度完成した広域『ねっとわーく』網である!」

「「「おおおおおお――――」」」


 怒号がホールとスマホから溢れ出る。

 なにせ第三王子の派閥なんて冷や飯喰らいと言っても過言ではないからね。

 王になる可能性はほとんど無く、公爵にはなれると言っても、いい土地は第二王子に与えられ第三王子には余りがあたえられるのだから、収益が上がるのは、おじい様の弟たち、つまり現王弟の公爵たちが引退してからになる。

 一度与えられた土地から移るには上が空かないことにはどうにもならない。

 そして上が空き再び選定の儀が始まれば赤字領地を切り離せる。

 ここが一番儲かる時期だ。

 選定の儀は王家が他の貴族から金と人材をむしり取る機会とも言える。


「さて、ここでこの広域『ねっとわーく』網や『すまほ』『ぱそこん』など、これまで見たこともない魔導具の開発普及に努めた我が息子アルカイトを紹介しよう」


 えっ? 聞いてないんですけど。

 こういうのは事前に打ち合わせしてくださいよ父上。

 とはいっても絶対嫌がるとわかってたんで、有無を言わさず壇上に上げちゃえと画策したのでしょう。

 僕のことをよく理解してくださるのは嬉しいのですが、理解の方向が違う気がします。


「えー、ご紹介に預かりましたアルカイト、八歳です」

「「「な、なんだってー」」」


 なんだっていただきました。

 ブラックな日々を過ごしているうちに八歳になってましたw

 こっちじゃ毎年誕生祝なんかしないからね。

 お祝いはデビューの時と成人のときくらい。

 あとは身内で簡単におめでとうと言われるくらいだ。

 大ホールにいるみんなは僕のことは知ってても、僕が作ったことを知っているのは文官と騎士くらいで、その家族までは知らなかったりするので、この中でも結構驚きの声が上がった。


「精霊語を勉強することを許され一年とちょっと。皆様のご指導ご鞭撻ご協力のおかげでここまで来ることが出来ました。しかしこれで終わりではありません。今後もっと便利にそしてもっと利益を生むものへと進化していくことでしょう。情報は力です。情報を早く正確に正しく使えれば、それは僕たちのそして皆さんの力となるはずです。今後も僕たちの派閥のために尽力するつもりでありますので、皆様のご協力をお願いいたします」

「「「「「わぁぁああああああああああああああ」」」」」


 ぱちぱちぱち!

 拍手と歓声が響き渡ります。


「今日はアルカイトのデビュー式ともう一つの式を兼ねた式典でもある。皆大いに祝ってやってくれ」

「「「デビューおめでとう!」」」


 おいおい。

 それも聞いてないんですが。

 確かに今日は公のパーティー。

 参加するにはせめてデビューしていないといけないのはわかります。

 でも、一言いっても良かったんですよ? 父上。

 どうせ嫌がると思って内緒にしたんでしょうけど。


「アンジェリカ、壇上へ」

「はい」

「アンジェリカは、息子のアルカイトを影に日向に支えてきた侍女見習いです。その貢献は我が公爵家で知らぬものなし。本日を持って成人とし、我が公爵家で正式に後見することと相成った」

「過分なお言葉、ありがとう存じます。」

「「「「アンジェリカ、おめでとう!!」」」」

「アンジェリカ、母です」

「おかあさま!」

「デビューしてすぐ、あなたを手放ざるを得なかったこととても心苦しく思っておりました。あなたのことは一日たりとも忘れたことはありません。病気はしていないだろうか、公爵家でうまくやれているだろうか。なにか辛い目にあってはいないだろうかと思わない日はありませんでした。

 狼の群れに襲われたと伝え聞いたときには、心臓が潰れるような思いもしました。本当に無事なのか、怪我はしていないのかなど。こちらまではなかなか詳細が届かずとてもヤキモキしたものです。

 ですが今日、元気な声が聞けて嬉しく思います。また、公爵様とその御世話なさっているアルカイト様の信頼を得てこんな立派な成人式まで開いていただいて。幼くし家を出ることになってもくじけずよく頑張りました。あなたは私の自慢の娘です。愛してますよ」

「……おかあさま……おかあさま」


 アンジェリカは涙ぐみそれ以上言葉が出ないようだった。

 涙もろい人が何人ももらい泣きしている。

 うんうん。

 君は頑張ったね。

 あるときは僕の頭をハリセンでぶっ叩いて僕を諌め、またあるときは、二度も暗殺未遂にあってもめげずに侍女見習いを続け、僕の無茶な要求にもイイ笑顔で応える。

 僕からはともかく父上らからしたら立派な侍女だ。

 僕だったら切れて実家に帰ってるね。

 うん、我ながらアンジェリカにはひどいことをしてきたな。

 反省。


「さて、今日はいくつもに会場は別れているが、心はひとつ。大いに楽しもうではないか!」


「「「「「我が国に栄光あれ!!」」」」」


 定番の乾杯の合図で挨拶を締めくくった。

 僕たちの宴はこれからだ。


 ついに広域ネットワーク網が完成しました。

 まだまだユーザー数も少なく、つながっている場所も限定的ですが、これはもう文明開化と呼んでもいいでしょう。

 人の行き来さえ稀な異世界。

 そんな中で遠方と直接会話ができる。

 しかも多人数と同時となると、無線機を除けばこの世界だってごく最近になってからのことです。

 その驚きは異世界人にとっては想像の埒外の出来事だったでしょう。

 まあ、異世界の電話もほとんど無線機と変わりはないのですがw

 それでも、この情報革命により、主人公は強力な武器を手にしたのです。


 次回より反撃開始します。


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