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新しいおともだち

 今日は開発をお休みして久々にマリエッタとお散歩。

 何しろこの所、メール関連の作業で、ほとんど休みなしだったからね。

 こんなイタイケなw 子供を休み無しで働かせるなんてなんてブラック!

 まあ、僕が経営者権管理者だから労働基準法があっても関係ないんだけどねw


「おにーたま、こっちこっち。こっちにね。おっきなお花がさいてるの!」

「そっか、おっきいのか。どんなのか楽しみだね」


 僕はマリエッタに手を引かれて花壇を引きずられていく。

 いやマジで!

 もう僕より力強いんじゃないかね? マリーさんや。

 背格好ももうなんか追いつかれそうな勢い。

 方や、ヒッキーのデスクワーク中毒。

 方やお庭を駆け回るわんぱく幼女。

 どちらが体力あるか自明の理である。


「まってまって。おにいちゃん息が切れちゃうから」


 子供って体力ありすぎ。

 って、僕も子供だった!


「おにーたま、だらしないの。おかーたまがいってたの。おにーたまはもっとうんどうがひつようですって」

「今、すでに身にしみているよ」


 マジで体力落ちてるな。

 運動の機会なんてそれこそ週一、二度の剣術の稽古くらい。

 王都に行ってたときはそれもサボってたし、暗殺未遂事件が有ってからは、ろくに外にも出られない日々。

 その行き七日帰り五日間はほぼ座りっぱなしの馬車の旅。

 メールの仮運用が始まってからは本宮の僕の執務室にも行っていないからな。

 その間元気に走り回っていたマリエッタとは、雲泥の差だ。


「おにーたま、はやくはやく」

「わかったから、そんなにひっぱらないでー」


 引きずられていった花壇のその一角。


「およ? しらない子がいるの」

「おっ、リーンシアじゃないか。僕のこと覚えているかな?」


 そこにいたのは新しい魔導子爵ライアンさんのところのリーンシアと、その母親? と侍女と思われる三人。

 大人二人は僕を見て臣下の礼で迎える。

 初見だけどここにいる子供は父上の子供以外考えられないからすぐにわかったのであろう。


「うみゅ? おねにーしゃま?」


 ガク。

 そっちできたかぁ。

 笑いをこらえるアンジェリカをひと睨みして、一応訂正しておく。


「おしい! 僕はアルカイト。アルって呼んでね」

「あるしゃま! あのねあのね、あやとりちゃんとできるようになったの!」


 リーンシアは毛糸の輪っかを取り出して僕に見せつける。


「そりゃあすごい」

「えへへ」


 はにかんで見せるリーンシアは結構かわいい。

 マリーには及ばないが。


「おにーたま、しってるひと?」

「おお、紹介しよう。彼女はリーンシアだ。昨日からこちらに来ている。リーンシア、この子はマリエッタだ。僕の妹だね」


「りーんしあ? まりーはまりえったなの!」


 元気いっぱいの挨拶。


「しあはりーんしあ。みんなはしあって呼ぶの」

「しあ! まりーはねまりーってよんで!」

「うん!」


 なんか仲良くなれそうだな。


「そうだ! あやとりってしってる?」

「あやとり?」

「これつかってするの」


 リーンシアは手に持った毛糸で、一人あやとりを見せる。


「おー、すごい! ねっねっ、マリーに教えて」

「いいよー」


 すでに仲良くなってる!

 おにーたまはほったらかしですか?

 まあいいか。

 マリーが楽しそうだし。


「そういえばマリエッタ様にはあやとりを教えていませんでしたね?」


 アンジェリカが話しかけてくる。


「ああ、あやとりは新しい子供が入ってくるような環境じゃないとすぐに飽きちゃうんだよ。あれってできるようになると失敗しないからね。知らない子に教えたり、失敗したりするのが楽しいんであって、あやとり自体を延々とやって楽しいという子はあまりいないんじゃないかな?」

「なるほど? たしかにちょっと地味ですからね」

「子供が僕しかいないところで教えても、すぐに飽きちゃうだろうし、マリーは一人遊びするというタイプでもないしね」

「そうですね。ボッチでも平気なアルカイト様とはだいぶ違いますよね」

「ぼっちいうなし」


 訓練しすぎたか。

 昔はもっと可愛げが有ったんだけどなぁ。


「まあいいや。二人が遊んでいる間に挨拶しておこうか。お初? にお目にかかります。フラルーク公爵が三男アルカイトです。ライアン魔導士爵の奥様でいらっしゃいますでしょうか?」


 子供会の時に見守っていた親達の中にいたか思い出せない。

 まあ、基本的に子供会に親は介入しないからね。

 遠巻きに見守って子供達の成長を促す会だから。

 紹介もなかったからまあ記憶に無いのは当然であろうが。


「はい、妻のリンダ・ベルナールにございます。この度は主人をお取り立ていただき感謝の言葉もございません。主人もやりがいのある仕事につけると大変喜んでおりました」

「それはよかった。無理をされているのではないかと気になってましたから。おじい様の目に止まられるほどのご活躍をなされたからこそ、こちらに紹介されたのです。ご主人のこれまでの努力が有ってこそです」

「ありがとうございます。そう言っていただけると、主人も喜びます」

「ただ、こちらは田舎ですからね。ご家族にはご不便をかけると思いますがご容赦願います。シアちゃんなんかはお友達と離ればなれになるのは嫌がりませんでしたか?」

「……ええ、まあ少し。でも妹様と仲良くできそうで少しホッとしました」

「僕もほっとしています。こちらにはマリーと同年代の身分がそれなりに釣り合う子供がいませんでしたから。これから仲良くしていただけると助かります」

「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」


 もう何人か同年代の子供のいる貴族が来てくれるといいのだけど難しいだろうなぁ。

 パソコン関連の販売が軌道に乗れば、新しい魔導士爵を派遣してもらっても問題ないだけ稼げるはずだが、信用できて、仕事のできる人で引き抜くことができて、マリエッタと同年代の子供がいるとなるとほぼ存在しないと言っていい。

 その点で言えばライアンさんはほぼ完璧だったが、そんな奇跡は二度と起きないであろう。


 信用できて、仕事のできる人ほど引き抜きは難しいからね。

 簡単に引き抜ける人は大抵どっちかに難がある。

 信用できて、仕事のできる人は僕だって手放したくはない。

 その上同年代の子供がいるって、レアどころかスーパウルトラレアだね。

 まあ、期待せずに追加の人員を待ちましょう。


 僕らは幼女二人が戯れるのを微笑ましく見守った。


 リーンシア、再びの登場。

 幼女二人が戯れる光景を見守る主人公。

 アンジェリカならジジくさい、と思っていそうです。

 ストーリー上あまりこの二人は関わらないので、登場回数は必然的に少なくなってしまいました。

 ストーリーに関わらない日常を面白く書くって結構難しいんですよねぇ。

 なにせ日常ってのは面白いことも変わったこともない、いつものことが淡々と繰り返されるってことですからねぇ。

 日常系の漫画と描かれる方ってどうやってネタ出ししているんでしょう。


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