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帰路

 帰りの馬車の中。

 当然上級精霊の事など話せるはずもなく、自然話題は昼食の事となる。

 騎士達は用意されていた食事は取らず、携帯食で済ませたらしい。

 護衛の間は知らない人間が用意した食事は口にしないそうだ。

 護衛対象を襲撃するのに一番邪魔になるのは護衛だからね。

 一番最初に狙われるのも護衛になるというわけだ。

 なので、魚料理を堪能したのは僕とアンジェリカだけだった。


「アルカイト様はあれ食べられました? 生のお魚」

「もちろん堪能しました」

「ですよねー。アルカイトはシンプルで変な料理がお好きですものね」


 アンジェリカは僕の厨房突撃にも散々付き合わせたから、僕の好みもよく知っている。

 知識がつながっていなかった頃のことなので、うまく説明ができず料理長を散々困らせたものだ。

 しかもこの世界の知識に乏しいから調味料どころか素材の名前すら『日本語』で話していたら通じるはずもないよね。

 『鰹節』で『出汁』をとってと伝えたくとも鰹節も出汁の概念もないから、説明のしようもない。

 出汁なんかはかろうじてキノコの乾物はあったので実際にやってもらったけど見事に失敗。


 この辺の水は基本的に硬水だからね。

 井戸水や川の水はもうガチガチだ。

 硬水では出汁がみんなアクになってしまいまともに出汁はとれない。

 肉なんかの煮込みでは逆に変な匂いなんかがアクとして出てくるので、アクをきちんと取り除けば臭みがなくなり美味しくなる。

 そのためキノコの乾物も肉なんかと同じように井戸水で煮込んだものだから、旨味が全部アクになってしまい、これを取り除けば旨味も取り除くことになり、なんとも微妙なものとなってしまった。


 軟水とは言わないがせめて中軟水であればそれなりのものが出来ただろうが、その当時は知識がつながっていなかったので、水の問題にはたどり着かなかったのだ。

 今はそれも思い出し魔導具で作った水を使うことで解決。

 出汁の効いたスープなども出るようにはなった。


「変なとは失礼な。アンジェリカだって喜んで食べていたじゃないですか」

「ああいうのも嫌いじゃありませんから。元々弱小領地の出身ですからね。そんなに手のこんだ料理なんて出てきません。もちろん生のお魚も美味しくいただきました」

「そりゃあ良かった。じゃあタコなんかも大丈夫だったんだね?」

「タコですか? 名前は覚えきれなかったので。どんなのですか?」

「足がいっぱいあって、ヌトヌトしているんですが……」

「足がいっぱいでヌトヌトですか? それは出ていなかったようです」


 数が足りなかったのかな?

 未熟な保存手段しかない世界だからね。

 確か今朝獲れたばかりとかおっしゃられていましたから、数が獲れなかったか客人に供せる品質でなかったか。


「それは幸運なのか不運なのか」

「判断に困るような代物なんですか?」

「まあ初めて見たら、ちょっと気持ち悪いという人が多いかもしれませんね。一度食べて美味しいいと思ったら食べ物にしか見えないんですが」

「確かに魚介類は変なというか、見慣れない形が多いですよね。私の領地も内陸側なので、せいぜい川魚か巻き貝くらいしか見る機会がなかったので、随分と奇妙には思いましたが」

「内陸だと鳥か四本足の動物くらいですからね。昆虫系ならだいぶバリエーションが多いのですが、このへんでは食べる習慣がありませんからねぇ」

「昆虫を食べるところがあるのですか?」

「僕も文献で見ただけですけどね。人間、食べ物がなければ結構なんでも口にするものですよ」


「できればそういう事態は避けたいです」

「さすがの僕もできれば昆虫は避けたい。そのためには民が飢えないようにしっかり統治する必要があります。国民あっての貴族ですから国民にそっぽを向かれたら、昆虫ですら食べられなくなりかねませんよ」

「責任重大ですね、アルカイト様」

「……なぜ僕を名指しなのですか?」

「五歳の時に領地改革案作ったのお忘れですか? 公爵様たちはそれをベースに領地運営しているんですよね? 失敗したらアルカイト様のせいでは?」

「僕は提案しただけです。それを使うと決定したのは父上で、それを実行しているのは陪臣たちです」

「それで済めばいいですね」


 まあ、失敗すれば一蓮托生なんだから、逃げられっこないんですけどね。


「その時はアンジェリカも巻き込まれますからね」

「もちろん存じています。なのでアルカイト様がやらかさないように見張っています」


 僕がやらかすことが前提なんですね。


「僕はちゃんと自重できますよ?」

「まさか自覚がないのですか? だいたい七歳にして、相手を論破して恥をかかせて、命を狙われるとかありえませんから」

「いやぁ、それをいわれると反論ができませんね。若気の至りでついムキになってしまいました」

「はあ…若気の至りって、若いっていうか若すぎるんですから、カッとなってやった、反省しているとかやめてくださいよ」

「前向きに善処します」

「善処する気がありませんね?」

「なぜわかった!?」

「いつもそう言って善処しないからですね」

「こんどは別の言葉を考えましょう」

「言葉を考えるのではなく、善処する方法を考えてください」

「っていうか、なんで僕は説教されているんでしょうか? 確か最初は今日の料理の話でしたよね」

「普段からの行いのせいでは?」


 これは否定しておくべきなのでしょうか?

 記憶を取り戻す前から色々やらかしている自覚がある身としては、否定しづらいのですが。


「普段の行いに問題があることは否定しませんが、これからも色々あるかと思いますので諦めてください」


 人間諦めが肝心です。

 『パソコン』作りが進めば様々な問題が起こるのは間違いないだろう。

 そのたびに説教を食らっていたらたまらない。


「つまり反省する気はないと」

「反省はしますが自重する気はありませんね。自重したからって相手が引いてくれるとは思えませんので」

「はぁ……もういいです」


 ようやく諦めたようだ。

 それとも呆れられたのかな?

 まあ、どっちでもいいや。

 自重なんてしてたらジョブスには届かないしね。

 そんな馬鹿話をしていたらいつの間にやら森の木々の密度が薄くなってきた。


「あっ、森が途切れてきましたね。もうすぐ王宮に着きますよ。道中なにかあるかと思いましたが何もなくてよかったですね」


 もうちょっと行けば畑と村などが見えてくるだろう。

 だが。


「アンジェリカ、家に着くまでが『遠足』です」

「え、えんそく?」

「旅は家に着くまで、油断するなってことです。んっ、これは……。アンジェリカ、君には一級『フラグ』建築士の称号をあげましょう」

「はい?」

「アンジェリカのせいで何かが起きそうってことです」

「私のせいってなんですか!?」

「止まれ! とまれー」


 アンジェリカの抗議にかぶさるように、馬の駆ける蹄の音と、騎士の怒号が飛ぶ。


「な、なんですか? なんですか?」


 ドン!

 答えが得られる前に天井に何かが当たる音がした。


「無礼者! 『ファイアーボール!!』」


 ヒヒーン!


 馬の悲鳴と共に何かが地面を転がる音。

 先ほどのぬるい雰囲気から、一気に緊迫した場面に。


「馬車を止めろー」

「きゃー」


 馬車が急停車。

 心構えができていなかったアンジェリカが前のめりになる。

 僕はアンジェリカがフラグを立てた時点で覚悟ができていたので、すでに手すりにつかまり踏ん張って耐えた。


「アルカイト様! すぐにこの場をお離れください」


 騎士団の副団長が馬車が止まりきらないうちにドアを開けて叫ぶ。


「アンジェリカも急いで降りて!」


 僕は副団長に飛びつきながらアンジェリカに下車を促す。


「は、はい!」


 さすが訓練された侍女見習いだ。

 素早く反対側のドアを開けると外に飛び出した。


「副団長、何があったのですか?」


 馬車から離れ木の陰に隠れたところで僕は尋ねる。


「何者かが急接近して、何かを馬車に投げつけたのです」


 説明を受けているうちにアンジェリカと、別の馬車に乗っていたメイドや従者たちが僕たちが隠れている木の陰にやってきた。


「アルカイト様! ご無事ですか?」

「僕は大丈夫。みんなは?」

「私達も問題ありません。一体何があったのですか?」

「何者かが馬車の上に何かを投げつけたらしいです」

「いま、部下たちが確認していますので、しばらくここで隠れていてください、『シールド』」


 木の陰に隠れた僕たちを更に魔法の『シールド』が囲う。

 馬車は大木の影だから、騎士たちが何をしているかはわからない。


「ふくだんちょー」


 しばらくして若い騎士がこちらに駆けてくる。


「どうした、ジャック!」

「これ見てください」


 そう言って麻袋を目の前に差し出し、その口を広げる。


「これは!?」


 身長が低いので僕からは中身が見えない。

 だがその麻袋の下が赤く染まっていて、中で何かがうごめいているのがわかった。


 くーん……


 弱々しく聞こえる鳴き声。


「……いぬ?」


 アンジェリカがそうつぶやくが、そんなものを馬車に投げつけるなんてありえない。


「副団長、もしかして狼ですか?」


 副団長がなんとも言えない顔でこちらを見る。


「おそらく灰色狼(グレイウルフ )の子供かと。しかも怪我をしています」

「グレイウルフですか。魔物事典で見たことがあります。確か群れを作り、家族を大切にする習性があるとか。基本そのメスは上位種のハーレムの一員となるとか」

「魔物なんですか!?」

「はい。アルカイト様のおっしゃるとおり、魔獣に分類され、群れの仲間、特に子狼が害されると地の果てまで追いかけてくると言われています」


 これ、あれだ。


「まさか『MPK』をリアルで食らうとか」

「『えむぴーけー』?」

「まあ、魔物を引っ張ってきて人を殺す方法ですね。犬系の魔物は鼻がいいですからね。もうそこまで来ているんじゃないですかね。狼の群れとその上位種が……」

「っ!」


 皆が息を呑む。


「アルカイト様。すぐここを離れましょう」


 いち早く副団長が、行動に移す。


「ジャック! 貴様はアルカイト様を乗せて王都の詰め所に急げ。アルカイト様の保護と応援を頼むんだ」

「は、はい! 副団長は?」

「俺たちはここで狼どもを引きつける……」


 副団長はそこで苦しげに顔を歪める。


「それから途中でこれを手近な農村に放り込め」

「そ、それは……」


 差し出される子狼。

 もしここが突破されれば次に向かうのはこの子狼が放り込まれた農村。


「ためらっている時間はない! アルカイト様、早くジャックの馬に乗ってください」


 僕が逃げる? しかも副団長やアンジェリカ、そしてなんの関係のない農民を犠牲にして?


「副団長、僕は逃げませんよ」

「! アルカイト様。聞き分けのないことはやめてください。あなたの安全が最優先なのです!」

「いいえ。貴族は叙爵されるとき、国のため、王のため、そして民のためにそのすべてを捧ぐと宣誓するはず。僕も貴族の端くれ。無辜の民を犠牲にして逃げることなどできません」


 実際のところ逃げ切れるとも限らないしね。

 騎士たちの乗る馬は基本的に長距離移動用の馬で、長距離をゆっくり移動する遠征などでは重宝するが、伝令などの短距離走にはあまり向かない品種だ。

 狼種は短距離では大抵の魔物を上回る速度で走れると魔物事典には書いてあった。

 しかも上位種がいれば騎士三人では足止めにもならない。

 逃げ切れる可能性はかなり低いと見た。

 そしてこれはまたとないチャンスでもある。


「アルカイト様! あなたは厳密に言えば貴族ではありません。守られるべき無辜の民で、その中でも更に優先度の高い子供で、我らが守るべき護衛対象でもあります。これ以上ごねるようなら無理矢理にでも馬に乗せますよ!?」


 副団長が僕に掴みかかってくる。

 だが。


「時間切れのようですね。僕を無理やり乗せているうちに襲われますよ?」


 狼の遠吠えが聞こえる。

 まだ距離はあるようだが、ここで揉めている時間はなさそうだ。


「くっ! ここで迎撃するぞ! 馬をつなげ! アルカイト様達は馬車に」

「行きますよ、アンジェリカ、マーサ」


 僕はアンジェリカとメイドを連れて馬車に向かう。


「ほら、マーサ。先に乗って」

「私は向こうの馬車に……」

「いいから」

「は、はい」


 従者用の馬車よりは貴族用の馬車のほうが頑丈だから、恐縮するメイドのマーサを僕の馬車に押し込む。


「次はアンジェリカね」

「はい……って言うわけないないでしょう! 先にアルカイト様がお乗りください」

「ちっ!」

「ちってなんですか!? ちって。何をするつもりなんですかアルカイト様!」

「僕には騎士たちの戦いを見届ける義務があります。守られるものとして、守るものの活躍をこの目に焼き付けるのです」


 僕は至極真面目な顔でそう告げる。


「……それで本音は?」

「せっかく作った『FCS』なので、ここで試そうかと。馬車の中からじゃ狙えませんからね」


 訓練しすぎましたか。

 あっさりバレたので白状します。

 後宮では流石に試射はできなかったし、この機会を逃すと、もっとやばい状態でぶっつけ本番ってことにもなりかねない。

 ここでテストができそうなのは不幸中の幸いってところでしょうか。

 まあそれも生き残れなければ無意味なんだけど。


「そんなことだと思いましたよ。無辜の民を犠牲にして逃げることなどできませんとか言ってて、この機会を利用しましたね?」

「その気持ちは本当ですよ? このままだとアンジェリカ達も狼達にカジカジされそうだったので」

「で、その『えふしーえす』で、なんとかなる状況なんですか?」

「それはわかりません。なにしろ初体験ですからね! 狼の群れに襲われるのも、『FCS』を実戦で使うのも」

「なんの根拠もないのに残られたんですか?」

「このままだと全滅が目に見えていたので、少しでも助かる方法をとっただけですよ?」

「全滅って、すぐにアルカイト様が逃げていれば、あなただけは逃げられましたよね?」

「それは疑問ですね。獣というのは基本、弱いもの逃げるものを優先的に狙います」


 よく熊に出会ったら目をそらさずに見つめたままゆっくり後ずさるといいと言われている。

 これは目をそらしたり背を向けて逃げれば弱いと思われ、襲われやすくなるからだね。

 肉食獣とはいえできれば弱い敵と戦いたい、楽に獲物を仕留めたいと思っているから、敵意満々の戦う気のあるものにはそうそう襲いかからない。

 ライオンだって優先的に狙うのは逃げるやつそして弱い子供だ。

 子を守る母に撃退される映像など、ドキュメンタリーなどでもよく見る光景だし。

 野生動物の世界には病院はないし、ケガをしたからって、休業補償もない。

 ちょっとしたケガでも命取りになりかねないから、危険は避けるに越したことはない。

 勝てたとしてもケガをしたらそれは負けたと同義なのだ。


「あのとき逃げていたら、真っ先に狙われるのは僕で、それからアンジェリカでしょう。逃げている状態では反撃はできませんし、こちらも三人に減った騎士ではなおさら守り切るのは難しいでしょう。そして護衛対象でないアンジェリカやマーサは優先順位が低い。いざとなれば騎士だけで逃げ出すということも考えられます」

「そんな……」

「兵法の書では狼の群れと戦うには同数の騎士を用意しろと書かれているんですよ。狼の動きは素早く騎士と相性が悪い。この群れがどれだけの規模かはわかりませんが、四頭以下ってことはありえないでしょう。下級のボスでも十数頭以上、中級のボスがいればその規模は数十頭から百頭以上が普通らしいですから」


 この他兵士が同数以上で、罠も用いよと書いてあった。

 野生の動物というのは人間と比べてとてつもなく反射神経がいい。

 それを実証するテレビ番組で猿と人間を並べて、その後ろで風船を割り、反応するさまを高速度カメラで撮影した映像を見たことがある。

 そのビデオではまず猿が反応し、人間が反応したのは随分あとからだった。

 この世界の魔物がどの程度の反射神経をしているかわからないが、ファイアーボールでは距離があればあっさり避けるそうだ。

 だから兵士に盾と槍をもたせ周囲を固めさせ、騎士たちは魔法の乱れ打ちなど数で圧倒するのが定番の戦術だ。


 なんだか弾幕薄いよという怒号が飛びそうな戦術だよね。


 まあ、これはこちらの被害を無くとの条件での定番の戦術だが。

 ある程度の損害が許容できるのであれば、半数でも行けるか。

 どんな犠牲を払ってもとなれば、四分の一の数でもなんとかなるかもしれないが、そのときはこちらも全滅している可能性もある。

 どの規模の群れにしても到底三人でどうにかなる数ではないだろう。


「さて、もう時間がありません。僕は行きますよ」

「もちろん私も同行します」

「いいのですか? 撃退できる確信などないのですよ?」

「アルカイト様が殺されるような事態になれば、私が助かるはずもないでしょう」


 まあ、そうですね。

 僕が殺されるってことは守りを突破されるってことですから、そのときには騎士たちも死んでいるだろうし、馬車の中にいたからって安全なんてことは言えない。

 魔物は普通の猛獣より力も強く、馬車の扉なんて簡単に食い破ってしまうだろう。


「では、一緒に見届けますか。ちょうどよかった。僕を後ろの簡易御者台に上げてください」

「……アルカイト様、なんか締まりませんね」

「僕にも計算外はあります」


 馬車の後ろには狭い道で馬をつなぎ直してのバック用に簡易御者台がついているだが、当然大人用なので僕が這い上がるには高すぎた。


「よっこいしょ」


 アンジェリカにお尻を押されながら御者台に乗って騎士達の戦いの準備を眺める。


「アルカイト様! 馬車の中にいてください!」


 副団長が見咎めて注意しますが、もちろん無視。


「あなた達の戦いを見届けるのが守られる僕の義務です。もし無事に帰れたらその武勇をたたえましょう。もし破れたとしても、ご先祖様にその戦いぶりを語ります。まさか王族の前で無様な姿を見せるはずはないとは思いますが、誰に語ろうとも恥ずかしくない戦いを望みます。ゆけ! 僕の騎士たちよ。かかる火の粉を無事払い除けてみせよ!!」

「はっ! イエス・ユア・ハイネス!!」


 騎士と従者は一斉に敬礼し、迎撃準備に戻っていった。


「……アルカイト様。煽るのがお上手ですね。アルカイト様と初めてお会いしたときのことを思い出しました」

「彼らの士気が高いほうが生存確率が上がりますからね。『リップサービス』でやる気を出してくれるのであれば安いものです。……別に洗脳しているわけではありませんよ?」

「ソウデスネー、コブシテイルダケデスヨネー」


 棒読みなのは気になりるが、わかってもらえたようだ。


「来ますよ。こちらも用意しますか。『FCS』起動!」


 僕は『USBパソコン』を取り出し起動コマンドを発します。


「これからが僕たちの戦いだ!」


 最終回でも打切りでもないからね。

 マジでここからが本番だ。

 敵は一体どれだけいるのか。

 『FCS』がどれだけ効果があるのか。

 わからないことだらけで、絶体絶命のピンチ。

 なんかSE時代を思い出しますねー。

 システムのカットオーバ間近のデスマーチ。

 終わったと思ったらカットオーバー後のトラブル続きの修羅場。

 必死で駆け回る騎士たちを見て懐かしさに思わず笑みがこぼれました。

 意味は違いますが、こちらは何度も修羅場をくぐり抜けてきた猛者w。

 今度も無事乗り切って見せませしょう。


 一級フラグ建築士を検索すると、ニコニコ大百科というページがヒットしました。

 内容を確認すると、甲種(主に恋愛・友情などに関する一級フラグ建築士)と乙種(主に死亡・失敗フラグに関する一級フラグ建築士)に分類されるそうですw

 今回は死亡フラグですから乙種の一級フラグ建築士ということになりますねw


 検索結果には一級フラグ建築士検定なるものや一級フラグ建築士資格試験なるものを真面目に書いているサイトなども出てきて、ネットサーフィンしてるだけで、時間があっという間に潰れます。

 元々フラグという言葉はコンピュータ用語として使われてきましたが、それがアドベンチャーゲームなどで、選択肢などの条件分岐を管理するためのフラグから、ストーリー上の分岐の意味になり、フラグを立てるフラグが立ったと言われるようになったとか。

 「立てる」が同じ読みの「建てる」に変化し、あまりにもたくさん見事にフラグを建てるので、一級がついたのか、姉歯事件で一級建築士が有名になったので変化したのか、一級フラグ建築士についての語源まではたどることができませんでした。

 誰が最初に言い出したのでしょうね。



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