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プログラムは内蔵式? 必要なハードは?


 さて現代コンピュータといえばプログラム内蔵式であるのはご存知のとおりであろう。

 この方式が発明されるまで、プログラムはスイッチやジャンパー線などで入力されていた。

 つまりスイッチをonoffしたりジャンパー線で回路をつないだりすることでプログラムを書いていたわけである。

 さて精霊語のコンピュータの場合どうなるのであろうか。

 宣言文を使えば精霊にいくつかのデータを覚えさせることはできるが、覚えさせるためには紙に書かなければならない。

 プログラムイコールハードでもあるため、プログラム内蔵式と言うには微妙なものがある。


「やはり何らかのメモリー装置は必要か」


 プログラムを修正するのに文字を消したり書き直したりするのは非効率的だ。

 小さなカード型の紙に書いて必要最低限を入れ替えるという方法もなくはないが、下手をすれば何百枚ものカードが必要になる。

 昔の汎用機にはカードリーダーなるものがついていて、何箱もの紙カード(パンチカード)を読み込ませたこともある。

 一度これを床にぶちまけて、涙目になって修復したのはいい思い出? だった。

 こんな目に合わないためにはやはり、メモリーやHDDのような読み書きできる記録装置が必要だろう。

 複写魔法のソース側のデータを精霊語で作ってやれば何らかの媒体に記録することは可能なはずだ。


 次に表示装置だ。

 せっかく計算させてもそれを表示できなければ意味がない。

 これも複写魔法か光魔法を使えば表示することができるはずだ。

 よって必要なハードは魔導書と記録媒体。それに表示媒体だけだ。


 いやまて。


 入力装置のことを考えていなかった。

 これがなければ結局紙に手書きで書いて読み込ませることになってしまう。

 必須なのはキーボードか? できればマウスかタッチペンなども欲しいがこちらは後でもいいだろう。


「パソコン本体は紙か板でなんとかなりそうだけど、キーボードは工作が必要かな」


 たしか安いキーボードだとたこ焼き器の底みたいな凸凹したラバードームがキーの反発力として利用されており、非常に押し心地が悪かった。

 グニャッとする押し心地が気持ち悪かったり、斜めにキーを押すと引っかかったり、とにかく使い勝手が悪い。

 できればスプリングと金属部品を使ったメカニカル式のキーボードを作りたいが、七歳の子供に自作できるはずもない。

 異世界に秋葉原はないから部品を買ってきて自分で組み立てるなんてこともできない。


 鍛冶師に頼めばつくれるのか?

 いや、流石にキーボードの構造まで覚えていない。

 鍛冶師にどういった物を作って欲しいか説明できないのでは頼みに行けても頼みようがない。


「詰んだ」


 詰みはや~。

 この間計算で詰んだばかりじゃないか。

 諦め早すぎるぞ自分。

 こんなことじゃジョブズになれるのはいつの日か。


「もう少し考えてみるか」


 ここは魔法がある世界だ。

 メカニカルがだめなら、リリカルマジカルだ。

 魔法でキーボードが作れないだろうか?

 精霊語というのは、コンピュータ言語と違って、曖昧さがある。

 精霊コンピュータを設計するにあたって、曖昧さを排除することが必須としたが、逆にこれを利用できないであろうか。


 例えば精霊語には術者という言葉がある。

 【術者が登録されている者か確認せよ】【登録者なら次の命令を実行】【登録者でなかったら起動キーワードを待て】といった命令が作れる。

 つまり術を発動している人を精霊は識別できるということだ。

 これが向こうのコンピュータなら、使用者を識別するためにとんでもない量のコードを書かなければならないであろう。

 指紋認証や顔認証など生体認証は様々な方法があるが、一行で書けるようなものではない。


 精霊語はどちらかといえば人工知能(AI)言語に近いかもしれない。

 ある程度曖昧でも融通が利く。


 反面、精霊が認識する長さ重さ時間などの計測はものすごく正確だ。

 長さはおそらくピコメートルくらいまでの正確さは確認されている。

 ある精霊語の研究者が小さな物を映し出す顕微鏡のようなものを作り、小さなつぶつぶのような物を映し出したらしい。

 それが何かはわからなかったらしいが、僕はそれが原子か分子のつぶつぶであったのではないかと思っている。

 原子まで判別できるのであれば、分解能はピコメートルの単位が必要になる。

 フェムトメートルまで行けば原子核さえ判別できるらしいが、僕も見たことはないので見てわかるかどうかは知らないが。


 長々と考えていたが結果としてはキーボードの各キーの位置が正確に識別できるのであれば、そこと指が接触しているか判別が可能なのではないだろうか。


「そういえばテーブルの上にレーザーで描いたキーボードを表示してそこに指を乗せることによりテーブルがキーボードに早変わりする装置があったな」


 認識精度があまり高くなかったし、装置自体もそれ程小さいものではなかったので、普及することはなかったが、面白いデバイスであった。


「光魔法でキーボードを表示して、結界魔法でキーボードっぽい押し心地の壁が作れないだろうか?」


 光魔法でディスプレイが作れるのであればキーボードだって表示できるはずである。

 今のタブレットだって共用だ。

 もちろん板や紙にキーボードの絵を書いてもいいだろう。

 これなら工作? しなくてもキーボードはなんとかなりそうだった。


「結局必要なのは紙と板か」


 コンピュータを紙と板だけで作る。


「なんてファンタジーな」


 異世界でなければ夏休みの工作レベルだ。

 だが幸いなことに、ここは異世界。

 魔法のある世界だ。

 紙と板だけでコンピュータが作れてしまう。


「テンション上がってきたー!」


 突然の奇声に控えていた侍女見習いがびっくりして飛び上がっていた。


「ごめんなさい、なんでもないです」


 僕は慌てて取り繕った。



 誤字でありがちな内臓と内蔵の使い分け。

 どちらも頻繁に使う漢字でありながら読み方が同じで字面が似ているため、気をつけていてもうっかり紛れてしまうのがこの言葉。

 パソコンに内臓が内蔵さているとか、クリーチャーでしかありえないんですが、ファンタジー世界ならありえないわけでもないので、そういう世界観で小説を書くときは語字の嵐になりそうですね。


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