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お金を稼ごう

 最小セットは粛々と作っていけばいいとして、やはり自由になるお金が欲しい。

 お金があればもっと高性能なコンピュータを作ることもできるし、高性能なコンピュータがあれば非効率なプログラムでも実用になる。

 つまり工数が節約できるというわけだ。


「知識チートの定番といえば手押しポンプ、馬車のサスペンションなどの技術系、蒸留酒、唐揚げやマヨネーズにスイーツなどの食べ物系。リバーシなどのボードゲーム系、といったところだろう」


 しかし手押しポンプは無理だろう。

 貴族の家では魔導具があるから水汲みは必要ないし、町や村の予算として計上するには高くなりすぎる。

 金属の値段は鉄や銅でもかなり高く、金属の塊とも言える手押しポンプを設置しようと思えば、とんでもないお金がかかるし、そんな物をのべつ幕なし設置したら盗まれないように兵士でも貼り付けておかなければならない。


 お宝を道に放置しているようなものだからだ。


 日本だって金属の値段が高騰したときなんか蛇口や側溝の蓋なんかが盗難にあったくらいだ。

 手押しポンプを作れるくらいの金属量とその管理を考えると、下手をすれば魔導具を設置したほうが安上がりかもしれない。

 馬車のサスペンションも同じで、金属バネやダンパーだけで馬車がもう一台買えるかもしれない。

 そして残念なことに貴族の馬車にはサスペンションぽいものがすでについている。

 金属バネではなく魔物由来の素材を使ったものらしい。


 この国は大陸の一部を占めているらしく、平地は比較的多いが山が少ない。

 特に火山となると数えるくらいらしい。

 鉱床は火山活動や造山運動に伴ってできるものが多いから、当然鉱床も少ない。

 また、石炭の利用が始まっていないため、鉄の生成には炭が使われる。

 すでに製鉄所の近くの森は禿げ上がっており、遠方より運ばないといけない事態になっていて、余計にお金がかかるような状態らしいから、当然金属の値段は上がることになる。


 ならば食事チートはどうか。


 唐揚げなどの揚げ物はちょっと難しいだろう。

 異世界は油が高いのだ。

 機械化されていない農業はとにかく効率が悪い。

 主食の穀物やイモ類、果物や生鮮野菜以外と言えば、綿や麻などの繊維類の採れるものを栽培するので精一杯なのである。


 植物油採取を目的とした植物など貴族や裕福層向けに少量栽培しているだけだし、ほとんどは塗料や石鹸など食べ物以外に消費される。

 植物油も採れてそのまま食用になる植物では、植物油を採るよりそのまま食べてしまうことが多い。

 なにしろ油を搾るということは一番おいしいところを取り除くってことだからね。

 残った部分は絞りカスとしてあまり人気はない。

 家畜の餌になるか農民向けの食事用に配布されるとかになってしまう。

 もちろん農民にも人気はない。

 獣脂などは庶民向けのロウソクや石鹸などになるから、こちらも食べる余地はない。


 そもそも家畜が少ないのだ。


 魔物の棲む領域が近いところでは、放牧などできようはずもないし、人も食べる穀物を与えれば人が飢える。

 家畜の有用性は人の食べないものを食べられるものにするところにあり、人と同じものを食べるのであれば、食料自給率が百%を大きく超えない限り大量飼育は有用とは言えない。


 かと言って狩猟で動物性蛋白や脂質を集めるのも限界がある。

 未開の地には凶暴な魔物もいて、猟師というのは命がけの仕事となる。

 当然、なり手は少なく、得られる獲物も少ない。

 ライオンより強い魔獣がうろついている場所に好き好んで行く者はそう多くない。

 ときおり騎士団や兵士が中心となって、魔物の間引きを行うくらいでは、十分な獲物を得られるはずもない。


 同じ理由でマヨネーズもだめだ。


 植物油は獣脂より割高だし、鶏を飼うには人間と同じ穀物を使うから、卵だって貴重品となる。

 卵一個作るのにその百倍とかの穀物が必要となればそうそう食えるものではない。

 鶏自体の品種改良も進んでいないから、得られる卵の数も少ない。

 それに衛生管理? なにそれ? と言わんばかりの異世界で生卵を食するのは危険がいっぱいだ。


 日本で気にせず生卵が食べられるのは、その徹底した衛生管理のおかげである。

 卵というのは外側だけでなく中にも菌がいることがあるらしい。

 海外だと細菌感染して白身がピンク色などに変色した卵が時折見られるとか。

 

 なので外を洗うだけでは駄目で、鶏自身の健康状態が重要になり、餌や育て方を工夫し、菌が侵入しないよう管理されているのだ。

 また、配送やスーパーなんかでの販売時にも十分注意されている。

 ここまでやっている日本だからこそ安心して食べられるけど、海外では安心して食べられる国は少数なのだ。

 海外では生で食べられる卵のことをTAMAGOと呼んでるとか聞いたことがあるし。


 元の世界でもそうなのだから、異世界ではちょっと生卵は使えない。

 酢や塩を結構な濃度で入れるため、その殺菌作用で問題ないという人もいるようだが、自家製マヨネーズで食中毒になったという話も聞く。

 ようは、濃度の調整に失敗したのだろうが、菌を検出する方法が確立していないこの世界で、安全な濃度を決めるのは難しい上、酢の品質さえ一定していないから同じ量で効果があるかわからない。


 細菌にしたって異世界では酢や塩分に強いやつがいるかもしれないし、それを確かめる術もない。

 管理する人材の育成と管理する技術の両方が揃わないと、マヨネーズを大量に製造販売することは難しいのだ。

 まあ、自分で少数の鶏を管理し、自家製のマヨネーズを少量作る程度であればなんとかなるかもしれないが、お金にはならないな。


 酒チートの定番である蒸留酒であるが、蒸留酒自体はここにもある。

 向こうでは濾過や加熱といった方法で殺菌するが、濾過で殺菌するにはそれなりの技術が必要だし、加熱殺菌でも温度管理が重要になるが温度計もなく炭や薪といった加熱源で一定の温度が保てるはずもない。

 そのためエールなどの醸造酒はほぼ殺菌されておらず、出荷後もどんどん発酵が続くため、味が変わってしまう。

 そんなまずくなってしまった酒は酒屋が買取り、蒸留して売っているのだ。

 大抵は蒸留したてをそのまま売る焼酎が主流であるが、樽詰めして何年か寝かせたウィスキーもどきも少量であるが作られているようだ。

 僕は口にしたことはないので、向こうのウィスキーと同じかわからないし、日本酒党なのでウィスキーの味はよくわからない。


 そもそも蒸留酒の歴史は地球でも起源がわからないくらい古い。

 紀元前には蒸留器があったと言われているから、異世界にだってある。

 すでに独自の文化を形成しているから今から割り込むとなるとほとんど不可能となる。


 特にウィスキーとか熟成を必要とするものだと、最低でも三年は寝かせないといけないわけだから、売れたとしても今すぐお金がほしい僕にとってはありえない選択肢となる。

 樽にするのに最適な木材だって見つけないといけない。


 スイーツはどうだろうか?

 定番なのはプリンやケーキ、クッキー。

 作品によってはチョコレートなんかも見かけるが、チョコはカカオが必要であり、存在していたとしてもおそらく入手は困難だ。


 カカオの産地は確かほぼ赤道付近の高温多湿地域だった気がする。

 ガーナはその名を冠するチョコがあるくらいだし、南米なんかでも作っていたはずだ。

 僕がいる辺りはどちらかといえば寒冷な地域なので、もちろん栽培されているはずもない。


 米ですら見かけないからね。

 米を育てるには温暖多湿な環境が必要で、その米さえないのだからカカオはなおさら無理だ。


 となるとド定番のプリンだが、こちらの原料は牛乳と卵、そして砂糖だ。

 砂糖はサトウキビから作れるが、これまた温暖な地域の作物だから、このへんでは栽培していないし、甜菜は寒冷な気候でも育つはずだが、精製が難しいと聞いたことがある。

 サトウキビの砂糖だってちゃんと精製しないと白糖にはならない。

 そんな技術があるかどうかもわからない。

 遠心分離機で精製するとかは聞いたことがあるけど、実用化するためには膨大な試行錯誤が必要だろう。


 なのでこの辺で甘みといえば、蜂蜜か果物やそれを干したもの。そして麦芽を利用した水飴だ。

 安価な甘みといえば水飴一択であるが、水飴でプリンはできるのだろうか?

 水飴で代用できたとしても、次に入手困難なのは牛乳であろう。

 そもそも家畜が少ない上に、牛乳の鮮度を保つのがこの世界では難しい。

 プリンなら加熱するので多少はなんとかなるであろうが、完成品の流通には冷蔵庫が必要だ。

 しかし冷蔵庫は魔導具の分類で、作るには貴族の手が入るので高価だ。

 それをプリンの流通に使った場合採算割れしそうな気がする。

 食品が相対的に安価なこの世界で、高価なスイーツの需要があるだろうか?

 しかもこの田舎領地で作った場合、運搬だけで相当な手間とお金がかかるわけで、作ることができても売れる金額になるかわからない。


 となると残りはリバーシなどのゲーム系か。


 想像してみよう。

 リバーシに必要なのは裏表が判別できるコマとマス目を書いた盤面だけである。

 そんなもの作らなくたってどうにかなる。

 例えば銅貨は裏表でデザインが違う。

 これと地面に書いたマス目で、とりあえずゲームはできる。

 盤は紙に書いてもいい。

 これほど手軽に用意できるのに買う意味がない。

 買うにしてもこんな生活に必須でもないゲームなんか買えるのは上級貴族か裕福な商人だけだ。


 とにかく需要が低すぎるのだ。


 この国の一次産業従事者の比率はおそらく八〇%以上。

 一〇人に八人は農民か漁民などで労働生産性が低い。

 つまり貧乏なのだ。

 さらに農民とはほぼ農奴のことで、彼らには給与は払われないため、何かを買うという行為すら出来ないとか。

 貴族の比率は一%未満。

 陪臣やその家族などの准貴族を含めても数%くらいか。

 残りは商人か職人などの町人だ。


 現在の貴族家は五千家~六千家と言われている。

 日々叙爵やら廃爵やらがあるので、正確な貴族名鑑は作られていない。

 そのうち永代貴族は一三五〇家ほど。

 これがいわゆる上級貴族で、一代貴族の多くは下級貴族と言われる。

 上級貴族は富の蓄積があるため比較的余裕があるが、一代貴族は自分の代で貯めた富以外は、実家からの援助金や支度金でなんとかやりくりしているのが現状だ。

 つまり下級貴族が不要なものを買えるほどの余裕はない。

 平民や農民はもっと余裕がないし、この程度のゲームなら自作で済ますのが普通だ。


 日本だって道具を使った遊びといえば、昔は手作りの竹とんぼだったり竹馬だったりしたものだ。それだって贅沢品で、ほとんどは鬼ごっこなどの道具すら不要な遊びが主流であった。

 僕の子供の頃でさえ、そうそう買ってもらえるものではなかった。

 産業革命後の生産性の向上がなければゲームを買うなどといった贅沢はできなかったのだ。

 つまり自分で作るより安く手軽に入手できて初めて娯楽品を買うという発想に至るわけだ。


 そんな状況の上、上級貴族だけでは一家に一個のゲームセットを買ってもらっても二千あれば足りてしまう。

 そして単純なゲームでは、ルールが知られてしまえば自分のところで作れる。

 娯楽品というのはこのようにほぼ需要がない。


 僕が思いつく金儲けがことごとく潰されていく。

 他の知識チートといえば、農業改革であろうか。

 領地全体を富ませる方法によく挙げられているのがノーフォーク農法といった輪栽式農法だが、異世界の植物と動物で実現できるか確認するだけで何十年とかかかるだろう。

 同じような植物は異世界にもあるが、同じ性質を持つとは限らないし、連作障害も同じように出るとは限らない。

 気候や環境がおなじわけもなく、すぐに結果が出るものでもない。


 また、四年毎に違う場所で違う作物を育てるため、それぞれを同面積にする等、区画整理が必要だ。でなければある年は小麦が多く取れるがある年はカブが多く取れ小麦が少なくなるという事態に落ちいる。

 それだけならともかく、牛などの家畜が食べる牧草の量が不安定になるため、ある年は飼料が少なくある年は余るということになる。

 家畜はすぐには増やせないからね。

 大量の家畜を飼えば魔物が集まってくる危険もあるし。

 ノーフォークを試す以前に、いきあたりばったりに作っている畑を整理するだけで、どれだけの時間と労働力が必要か考えるだけで気が遠くなる。


「……詰んだ」


 昔、僕がまだ転生の自覚がなかったころ、同じように金策について考えた事があるが、どれもこれもすぐにお金になるようなものでは無かったし、お金になるかどうかすらわからないものも多かった。

 この世界の知識が圧倒的に不足していたから、ほとんどが机上の空論で終わったものだ。

 とにかく短期で金にするとなると、少数でも高額で売れるものか、低価格で簡単に真似されないもので、生活に必要なものとなる。


「石鹸はすでにあるし、ゴムはそもそもゴムの木を見つけないといけないし、すでに似たようなものがあるし、服飾デザインは世間の常識の範囲を超えると普及に時間がかかるし、そもそもデザインには自信がない」


 石鹸は結構高いがさすが公爵家だけのことはあり、家では普通に使っている。

 ゴム製品は見たこと無いので多分無いだろうがゴムっぽい弾力のあるものがある。

 ゴムとは手触りが違うので別のものだろうが代替製品があるのであれば、製品化されたときのインパクトは薄い。


 服飾デザインは文化だから、いくら機能性デザイン性に優れていてもそれを変えるのは容易なことではない。

 いくら可愛くても普通の人はゴスロリを着ないし、コスプレもしない。

 着物でさえ成人式でもなければまず着ることはない。

 あとはせいぜいお祭りや旅行などのときに浴衣を着るくらいだ。

 時代や国や身分によって求められるデザインは決まっていて大きく逸脱するものは好まれないし、受け入れられないのだ。


 向こうの世界だって昔は肌を出す服装はタブーとされた。そこへ登場した胸と腰だけを覆う小さな水着は、小さいくせに破壊力抜群なところから、原爆実験に使われたビキニ環礁にちなんで命名されるくらい、原爆級の衝撃を世界に与えるものとして発表されたと聞く。

 異世界では、女性が肌を出すのがタブーとは言わないが、貴族の場合夜会だけとか暑い季節だけとかTPOが求められる。

 真冬にミニスカ生足なんて、当然NGだ。残念w。


 まてよ。


 外から見えるものならTPOが必須だが、見えないものならどうであろうか?

 例えば下着だ。

 今の下着はほぼかぼちゃパンツみたいなやつやズロースやドロワーズのようなものだ。

 ここへ現代風の下着を持ち込んでみたらどうであろうか?


「無理!」


 男物はほとんどデザインが変わらないし、女物なんかデザインできるかよ。

 恥ずかしすぎる!

 七歳の男の子が女性物のぱんつをデザインする?

 うん、立派な変態だね。

 しかも縫い方なんて知らないからブラなんてまずサンプルを作ることさえできない。

 トランクスくらいならなんとかなるかもしれないが、ブリーフやブラ、ショーツなどのピッタリした下着には伸縮性が高い布が必要だし、きっちりと採寸して形を合わせないといけない。


 これはないな。


 世界の三代発明は火薬、羅針盤、活版印刷だが、火薬は材料が入手できない。

 いや、火薬の原料である硝石は糞尿を発酵させて作ると聞いたことがあるし、乾燥した土中から採掘されるとも聞いたことがあるので、このへんでも採取可能かもしれない。

 まあ、糞尿を集めて発酵させるとかしたくないし、製造するにしろ採掘するにしろ誰かにやらせるには金がかかる。

 お金儲けのためには大抵の場合、原資が必要なのだ。


 羅針盤はすでにある上、海の魔物のせいで遠洋に出る船がほぼ皆無でほとんど使われていない。

 地図自体も不正確なものしかないので、羅針盤があっても正確な進路を決めるのは難しく、有用性が認識されていないようだ。


 活版印刷は複写の魔法があるし、開発しても元が取れるかわからない。

 活版印刷は作るのにすごくお金がかかるのだ。

 なにしろ金属活字を大量に使うからね。

 作ったとしても需要は貴族と裕福な平民のみ。

 それも一家族一冊あれば足りるわけだから、三世代同居なんて当たり前で、親戚一同が一軒の家に住んでいるのも珍しくないこの世界では、本が買える世帯数はものすごく少ないはずだ。

 印刷というのは数を作ってなんぼだから、需要が少ないと意味がないのである。

 一〇枚の印刷物を作るのであればコピーのほうが早いし安い。


 やはり今手がけていることをお金に変えるしか無いか。

 どんなにいいアイディアが有ったって、それを自分で実現出来なければ僕のお金にはならないのだ。

 基本、この世界には元の世界のような著作権やら特許やらはない。

 誰もが簡単に作れるものは真似されるし自作されるから作っても売れない。

 簡単に作れないものは僕も作れない。


 精霊コンピュータは複写の魔法があれば簡単に作れてしまう。

 これを完成させて売り物にするには、簡単に作れない機構を組み込むかお墨付きをもらうしか無い。


 この世界に著作権はないが権力はある。

 王や領主には専売権というものがあり、古くは塩であったりタバコであったりを専売して、売上を国や領地の収入としたのだ。

 物品税みたいなものか。

 つまり、権力を持つ人に専売を認めてもらうと、他の人は売ることができなくなる。


 ただこの方法も、あくまで自分で作って売ることが出来る専売特許なので、権利だけを売って、後は特許料が入ってくるのを待つだけとはいかない。

 自分が主となって、作ったり売ったりするか、誰か別の人に作らせたり売ったりさせてその売上の一部を収めさせるかしないといけないし、売上の決められた割合を国や領主に収めなければならないのだ。

 しかも最初の登録料はかなりの高額だ。

 今の僕に用意できるはずもない。


 手っ取り早くお金を得るとしたらシーケンスを売ることだ。

 これなら元手はいらないし僕でも出来る。

 しかし僕が売ることが出来るシーケンスは今作っている精霊コンピュータしか無い。

 これを売ってしまえば、コピーされたり改造されたりするであろう。

 そうなれば、僕が今後も主導権を握るのは難しくなる。

 できればこれは避けたい。

 シーケンスを売る際はお墨付きをもらい、コピー対策をした上で売らないと、僕の目標の達成は難しくなるだろう。


「著作権の考え方はこの世界にはないからね」


 手元にソースコードがあれば好き勝手に改造し発表され拡散されていく。

 元の世界だって最初の頃はそんな感じだったのだ。

 こちらでも同じことが起こるのは間違いない。

 ならばそれなりの対策が必要だ。

 有用なシーケンスであれば父上かおじい様がお墨付きを与えてくれたり、登録料を貸してくれるかもしれない。

 シーケンス、つまりソースコードを売るのではなく、パソコンとしての完成品を売るのであれば、内部に魔導書を仕込んでブラックボックス化出来るかもしれない。

 その方法を考えたほうが確実だ。


「結局は今のを早く完成させるしか無いってことか」


 精霊コンピュータを開発するのに金が必要なのに、それを得る手段が精霊コンピュータしか無いとは。

 回り回って最小セットを作ることになりましたとさ。

 お後がよろしいようで。


 著作権や特許、商標権など、比較的新しい概念なのですが、ナーロッパ世界での知識チートものではわりかしそういった権利関係が整備されていたりします。

 というのも本文にあるように、知識チートの多くは権利が保証されていないとお金にすることは難しいからでしょう。

 昔はプログラムに著作権が認められていませんでした。

 ネットで調べてみると法的に保護されるようになったのは一九八五年だそうです。

 まだ四〇年もたっていないんですよね。

 著作権自体も国際的に保護されるようになったのは、一八八七年のベルヌ条約からで、日本で効力を発揮したのは一九五六年から。

 アメリカが加入したのは一九八八年とのことなので、国際的に保護されるようになったのは長い人間の歴史からすればごく最近と言えるでしょう。

 しかし知識チート系のナーロッパ社会では国際的に知的財産が保護されていたりします。

 通常著作権や特許などで保護されないアイディアなんかも保護されるケースも有り、なかなか先進的な世界だなと思います。

 そんな世界なら主人公も楽できたのでしょうが、そんなことは許しませんw


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