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反撃開始

これで百話目になりました。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

今後も宜しくお願い致します。

 宴が夜の部に突入し、僕は一足先にお開きとなった。

 夜は大人の宴だからね。

 デビューしたとはいえ半人前なので、大人の宴には出られない。

 さっきの乾杯もほとんど食前酒みたいなもので、宴の料理も食事が中心で、これからはお酒の種類も量も多くなり、料理もおつまみになるものが中心になる。

 できれば僕も参加して一杯やりたいところだけど、残念なことに僕はまだ八歳。

 飲めても体が受け付けないだろうなぁ。

 アンジェリカは成人だし今日の主役の一人なので居残りだ。

 今日の宴には二人の兄上や普段あまり話すことのない騎士たち、そしてこの領のパソコン教室に来ている貴族などそれなりに若い貴族が参加している。

 うまいこと結婚相手を見つけてくれればいいのだが。


 本人でなくとも親兄弟親類縁者などの伝でいい縁が紹介される可能性もある。

 なんたって派閥の長である公爵様肝いりの成人の儀だ。

 つながりを持ちたい貴族は少なくないはずだ。

 それもあって今回は若い貴族を中心にパソコン教室を開催していたのだ。

 なんかお見合いおばさんみたいなことをしてるな。

 まあ、その辺はアンジェリカの頑張りに期待しよう。

 父上も親代わりにしっかりと見極めてくださるだろうし。


 さて、それはともかく、一段落したら他の王子たちを追い落とす手立てを考えないといけませんね。

 今のままだとうっかり王都には入れませんから。

 僕たちの派閥はまだまだ小さいから、王都には伝が少ない。

 情報収集するにも実力行使するにも人手が足りない。

 しかもうっかりパソコンやスマホを広めてしまうと対策を取られかねないので、まだ王都貴族にはパソコンもスマホもほとんど売っていない。

 売っても自分の屋敷の中で、他の派閥が絶対に入り込まない私室以外では使わないように強くいい含めているから、効率よく使えているとはいえない状況だし。

 まあ、下手に王都で動いたら察知されるだろうから、問題ないと言えば問題ないのだけど。

 というわけで悪巧みもとい、我が派閥を発展させる方策でも考えますか。

 みんなが呑んで騒いでいる時に働く僕って健気。


 って、ちくせう。


 僕にも飲ませろってんだ。

 この悔しさを第一第二王子にぶつけてやる。


「発展の基本は経済だ」


 衣食足りて礼節を知るってね。

 様々な問題もお金があれば解決できる。

 治安の悪さがある意味経済の足を引っ張っているのだが、逆に経済が伸びれば貧しさによる犯罪というのは激減する。

 盗んだり奪ったりしなくても暮らせる。

 他人をうらやまなくてもいい。

 この二つを実現するには、富の蓄積と公平な富の分配が必要だ。

 ここで注意が必要なのは平等な分配ではなく公平な分配であるという点だ。

 僕にスパイとして放たれた王孫たちは平等を言い訳にして僕に不平等を強いようとした。

 平等を強いる者はどこかの共産主義国家みたいに、共産を謳いながらその実平等ではなく弱いものから搾取している。

 対して公平はみんな同じといいつつ誰かに理不尽を押し付けるものであってはならない。


 稼ぐのに公平な機会を与える。

 そして能力に応じて公平に分配する。


 この二つが重要な公平だ。

 階級社会でこれを完ぺきにこなすのは難しいかもしれないが、理想に近づけていくことはできるだろう。

 せっかく稼いでも搾取されたらやる気なんか起こらないよね。

 稼いだものが確実に手元に残る。

 庶民も貴族も農民さえもその実感が得られれば、自然と理想の公平は広まっていくだろう。

 まあ、時には逆行することもあるだろうけど。

 結局富を独り占めすると損になるということをみんなが理解しないと、経済は良くならない。

 金は天下の回りものとはよく言ったものだ。

 経済はどれだけ早くどれだけ多くのお金を回すかで規模が決まるのだから。


「理論はいいとして、現実にどうするかですね」


 言うは易く行うは難しとね。


「まず手を付けるのは交易」


 安いところで買って高いところで売る。

 儲ける基本中の基本だけど、何故かこれが出来ない。

 出来ていたら、株式投資で高く買って安く売るカモネギな投資家というのは存在しないはずだ。

 存在するから儲ける人がいるし、損する人もいる。

 それでも株式は他の賭け事と比べてリターン率が高いんだけどね。

 確か一を超えてたはずだ。

 つまり平均すれば投入した資金よりリターンが大きくなるというわけだ。


 まあ、株は売買利益だけでなく配当なんかも有るからね。

 売買手数料や税金なんかである程度引かれはするが、全体としてみれば資産は増加していく。


 それに対し宝くじなんか還元率五〇パーセント切るぞ。

 つまり宝くじを全部一人で買い占めると、半分以下しかリターンがないということだ。

 実のところパチンコやパチスロ、競馬なんかのほうが還元率が良かったりする。

 宝くじは少ない還元率の上、少数の人に賞金を寄せているので、めったに当たらないわけだ。


 話がずれたが、株を安く買って高く売るというのは意外に難しい。

 多くの原因は情報の入手手段や分析力がないからだ。

 インサイダーが違法なのは、情報を入手できる人が圧倒的に有利になるからだ。

 画期的な新製品を発表するという事前情報があれば上がることが確実だし、先に決算情報を入手して倒産しそうだとなれば確実に下る。


 しかしこれからは普通の人が情報を入手するまで三日かかるとすれば、僕らはそれを三分で入手できる。


 隣の領で炭が高く売れる、こっちでは安く買える、送料いれても十分儲かるという情報を仕入れたら、他者より三日も早く売りに行けるのだから、確実に儲かるし、その後で売りに行った者はすでに高値では売れなくなっているところに持ち込むのだから損をする。

 そういったことをいくつも繰り返して、富を集め敵対派閥に損害を与える。

 敵はなぜ損が出ているか、すぐにはわからないだろう。

 そして、まるで預言者にでも導かれているように感じるかもしれない。

 なにしろ何の兆候もないうちに準備を始め、売買を成立させてしまうのだから。


「狙い目は敵対派閥と同じ特産品を持つ領地ですね」


 商品がかち合わなければ、商売に影響がない場合が多い。

 いわるゆ隙間産業なんてのはその最たるものだ。

 誰も手を出していない商売なら、邪魔できるはずもない。

 邪魔するとしたら同じ商品を開発するか、隙間に金が流れないほど金を吸い上げるほかない。

 とはいえそういう隙間産業的なものは特許で守られていたり、よほどのノウハウがなければ競争相手にもなれないような産業だったりするので、手は出しづらい。

 そういうのは大抵市場規模も小さいしね。

 狙い目は競争率の高い産業かな。

 特に値段の変動の激しいものがいい。

 株だって値段の変動が激しいほうが儲けも大きいし損失も大きくなる。


「結構難しいな」


 割とありふれている商品で、値段の上下が激しくて、敵対領地とかぶっている商品。


「まあ、自領の商品のことなら自領の人間のほうが詳しいだろうから、方向性だけ指示して丸投げでいいか」


 素人が横から口出ししてもろくなことにならない。


「敵対領地にダメージが与えられなくとも自派閥の領地が儲かればいいのだから、その辺無理に縛られなくてもいいし」


 とすればまずは自領と近隣領地の情報収集だね。

 貴族や商人で他領へ駐在員を送り込めればいいんだけど。

 派閥の領地には広域ネットワーク網を敷けたけど、その他の領地はまだだからね。

 秘密の駐在所を作ってそこに基地局とスマホやパソコンを持った駐在員を派遣してもらうか。


「すると、パソコンよりスマホの方がいいかな」


 規模も小さいだろうし、普通のスマホでもいいし、規模によっては四倍早いスマホを作ってもらって、それを基地局にしてもいい。

 まずは情報集め。

 話はそれからだ。

 基本方針が決まったところでちょうど眠気が襲ってきたので目を閉じる。

 遠くからまだ人の話し声が聞こえるので、宴の真っ最中なのであろう。

 流石に子供の体力じゃついていけないね。

 早く大人になりたいものである。

 電池が切れた僕はスマホより速やかに眠りに落ちる。

 さあ、反撃の時間だ。


 金は天下の回りものですが日本では今現在うまく回っているとは言い難いのは事実です。

 うまく回っていないからお金を貯め込む。

 お金を貯め込むから、お金が回らない。

 民間は自己防衛に走っていますから、これを打開するには政府が何とかする他ありません。

 しかし政府はそれとは逆の行動を取っています。

 まず問題なのは消費税のアップ。

 税金というのは政府を維持するお金を集めるという他、関税のように何かをさせたくないときにも使われます。

 消費税を上げるということは消費をさせたくないと言っているのと同等なのです。

 しかも消費税は上げれば上げるほど消費が落ち込むので上げた割合に比べてより低い税金しか取れないという性質があります。

 この不況下なら消費税を下げて消費を促す必要がありました。

 またデフレなんですから、どんどんお金を使えばよかったんです。

 お金の発行量を増やせばインフレになるはずなのに長年デフレになっているのは、民間がお金を使おうとしないからですね。

 デフレ下では物を買うよりお金を持っていたほうがお得ですから。

 しかも民間は不況や将来の不安から支出を押さえてきました。

 例の老後二〇〇〇万円問題もこれに拍車をかけています。

 これで将来の不安から、お金を貯め込む人も増えたのではないでしょうか?

 そこにお金を借りてって言っても誰も借りませんよ。国が借りて使うべき。

 それでお金が回り始めれば、民間も安心して使い始めるでしょう。

 回りすぎてインフレになり過ぎたら金利を上げて回収する。

 理屈はわかっているのですがなかなかそれができないのは、良くも悪くも民主主義ってことなんでしょうね。

 消費税を下げようとするとすぐに財源がーと言い出す人が。

 経済が復調すれば消費税も増えるのですから、それを待てばいいとは思うのですが皆さんはどう思いますでしょうか?


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