第14章、ロッドの指導⑦
15:00ぴったりに投稿するのが難しくなってきたので、今後は〈水曜日の午後〉というざっくりした時間帯に投稿、と変更したいと思います。申し訳ございません。
「作戦通りに。頼むよ、ツーデルト。」
「お任せください、ギアさん。」
「頑張りましょう、イーラちゃん。」
「ええ!ロッド様!」
対峙する二人の間に、ルージが立つ。
「―――始め!!」
掛け声の直後、ギアは、魔法で強風を起こした。そして、木に吊るされていた灯りを消す。ただの風では全く消えないが、魔法で起こした特殊な風ならば消えるように設定されていることをギアは知っていた。
辺り一面が暗闇に包まれる。人はもちろん、リスも昼行性のため、暗闇では上手く動けない。よく見えるのは、夜行性の梟だけだ。
「…出だしはまあまあね。」
(午前の時は、いの一番に直接攻撃しようとしてたんだもの。様子を窺うための先手攻撃だったんでしょうけど、もう少し頭をひねるべきと思っていたのよね。)
しかし、今日一日でたくさんのことを吸収できたのか、ギアは別な方法で先手を打ってきた。
きっと自分の魔獣があれこれ教え込んだに違いない、とロッドは心の中で笑う。
(じゃあ、次はどうするのかしら。)
ロッドは様子を窺うため、自分とイーラの周りに灯りを灯すだけで、ギアたちに対して何もしない。遠くにある灯りまで全てを点け戻さず、最小限の魔法を使うことで隙を見せないよう警戒する。
ロッドは、今度は何をするつもりかとギアを観察しようとしたが、開始時にいたギアの姿はそこにはない。否、見渡しても見当たらない。
(あら、透明化したわね。)
ギアは軽く感嘆する。ロッドの魔獣もギアもあっさり使いこなしているが、透明化の魔法はそれなりに難易度の高い魔法だ。
(さすが、ねえさんの弟子ね。――さて、透明化するとなると…あたしたちに近付いて攻撃したいってことでしょうね。)
ロッドは、探知魔法で気配を探ることにした。
(あら?近くにいないの? ……いえ、そっちねっ!!)
一瞬の困惑の後、ロッドは上からの気配を察し、透明化した者を暴く魔法を放った。
「っ!」
箒で空を飛んでいたギアは、透明化を解除されたことに対して苦々しい表情を浮かべながら、ロッドとイーラを見下ろしている。
「イーラちゃん。」
ロッドがイーラの名を呼ぶと、植物を操る魔法でギアを拘束し、さらに土を操って道を作り固めた。
「はーい!」
イーラはその道を駆け上り、ギアへと近付いて行く。
ギアはもがくが、腕や手を強く縛り上げられていて、杖を振れない。
「―――今だ!」
ギアの言葉を合図に、イーラは突如、謎の強風に煽られ、地面へと墜落していく。
「きゃあああああ!!」
イーラは叫び声を上げる。しかし、それは突然のことに驚いただけで、恐怖からの悲鳴ではなかった。イーラは自分で風魔法を使って空中で体勢を立て直し、ロッドが作り上げた植物ネットに落下した。怪我は一切ない。
「…。」
ロッドはイーラの安全を確認しながら、再び探知魔法を使う。
そして、凄まじい速度でギアへと近付く小さな存在を見つけた。
「ナイスだ、ツーデルト!」
その言葉と同時に、ギアの腕の拘束が風魔法で切り裂かれ、解除された。
ギアはすかさず魔法を放つ。
と、同時にロッドも魔法を放つ。
「おやまあ…。」
小さくなって姿を消していたツーデルトは、高速で飛んで魔法を避けようとしていたが、結局は暴かれて草ボールに閉じ込められ、ゆっくり落下し、ロッドの手中に収まった。
ギアもまた、再び拘束されている。
ロッドの判断と魔法はとても速かった。
ツーデルトが透明化と小型化、速度上昇の魔法を使ってギアの拘束を解いたことを悟り、ロッドは直ちにツーデルトの無力化を行ったのだ。
どちらも拘束され、もう魔法は使えない。この勝負はロッド側の勝利になる。
―――だが、ギアが魔法を使う方が一瞬だけ速かった。
それは必死さから生み出された速さだった。
また、ロッドが、自由なツーデルトの捕縛を最優先にしてしまったことも関係していた。すでに拘束してあるギアに対して、大した魔法は使えないだろうと完全無力化を後回しにしたために、ギアが魔法を使う隙を与えてしまったのだ。
―――さて、ギアが完全無力化される直前に放った魔法とは。
「…やるじゃない。」
ロッドが楽しそうに、そして嬉しそうに笑った。
その視線の先には、土で築かれたドーム。中には、イーラが閉じ込められている。
「―――終了!!」
審判のルージが声を上げた。




