第14章、ロッドの指導⑥
もう少し先まで書こうと思っていましたが、きりが悪いのでやっぱりやめて、この時間です(すみません)。
ギアは確信を持って杖を振った。
しかし、コリンの姿が現れるどころか、光がギアの周りをクルクルと回り続けるという、新たに不思議な現象が起こった。
「はっ?!」
(これでもダメなのか?!)
そこでツーデルトが告げる。
「終了です、ギアさん。」
(くっ…。)
ギアはツーデルトに目を向けた。
「答えを教えてくれ。ツーデルトはコリンの場所が分かってるんだろ?」
「ええ。」
ツーデルトはにっこり笑った。
「ギアさん、鏡を見てください。」
(え……は??)
ギアは、要領を得ない返しを受け、頭の中に無数の仮説を立てた。だが、やはり何も確信を得られず、ツーデルトに言われた通りに鏡を覗いた。
「やっほー!楽しかったね、ギア!」
小指ほど小さくなったコリンが、ギアの肩の上に上半身を乗せて、心の底から楽しそうに笑っていた。
「っ?!!!!」
ギアは思わず己の肩を見た。確かに、いる。
「いつから、そこに…。」
ギアは驚きを隠せない声でそう訊ねながら、コリンを摘み上げ、手のひらに乗せてまじまじと観察を始めた。
見れば見るほど、喋る小さなぬいぐるみのようだ。しかし、少し絡まった毛並みも、体温の温かさも、上がった口角も、全て“生きているもの”のもので、それらによって、これが正真正銘のコリンなのだと理解できる。
「おれは最初っからギアに引っ付いていたよ。ギアが数え始めて10秒くらいには小さくなってフードの中に隠れてたんだ。」
「…。」
「あにきが透明化の魔法を使ってギアの後ろを付いて回っているのも知ってたよ。だから、ギアがクラーラを見つけた後、こっそりギアに幻惑の魔法をかけて、判断力を鈍らせていたんだ。せめてあにきと一緒に最後まで残ってやろうと思って。でも、あにきはギアの魔力探知の魔法を片っ端から解除して、存在主張が露骨だったから、見つかっちゃったな。あーあ、クラーラもあにきも、もっと本気を出せば良かったのに。そしたら、もっと遊べたのに。」
(やっぱり、あの二匹は手加減をしていたな…。)
魔獣に手加減されていたと分かり、ギアは悔しく思った。
そんなギアを見て、コリンは訊ねる。
「――…ギア、遊びでも勉強になったでしょ?」
言われてはっとした。遊びだと思っていたが、頭を使って魔法を使った。
(確かに……確かに、勉強になった。)
仲間よりもその時の自分の気持ちを優先して行動するマイペースな子、おっちょこちょいな子、見かけによらず意外と頭を使う子、ヒントを出す優しい子、思考を巡らせ挑む賢い子…。
たった二・三時間の遊びの中で、それぞれの個性がにじみ出ていた。
ギアは急速に頭が回り出すのを自覚する。
ツーデルトとコリンは顔を見合わせてにっこり笑った。
「夕飯の後、我が主と再び手合わせをすることになるでしょう。」
「それまでに作戦をツーデルトと立てておかなきゃね?ギア。」
そうして迎えた夜。
すっかり辺りは暗い時間だが、ロッドが毎夜点灯しているという木に吊るされたたくさん灯りのおかげで、ロッドの家の周りだけ異様に明るい。少し離れた、ロッドの管理する墓地にも同じ灯りが見える。
「ギア、これから毎日、夜にあたしと魔法決闘してもらうわ。あたしはイーラと毎回組むけど、あんたはあたしの魔獣と日替わりで組んでもらうわ。今日はツーデルトが補佐だったから、ツーデルトが相棒よ。」
「ああ。」
ギアはツーデルトと視線を交わし、挑戦的な目つきでロッドを見た。その顔つきに、ロッドはニヤリと笑う。
「あら、もうすでに聞いていたみたいね?作戦でもあるのかしら?」
「それは内緒でございます。」
「秘密だ。」
すぐ傍で、狼と犬がクスクスと笑った。




