第14章、ロッドの指導③
なんてこった…まさかの1時間オーバー。今日だけ、今日だけ許して…。
「ツーデルト、前に話した通りよ、後は頼んだわ。」
「かしこまりました。」
「イーラ、アンタはアタシと一緒に―――」
ロッドがイーラを連れて行く中、ギアはツーデルトに話しかけられる。
「それではギアさん…、わたくしの方から詳細な課題をお伝えさせて頂きます。」
ニコニコと笑う梟。いつもならその笑顔に癒されるのだが、なぜだか今日は、嫌な予感がする。
「我々の昼食を用意して頂きます!」
予想外な課題を楽しそうに声高に告げるツーデルト。
「…え?」
目を見開き、口を小さく開けたまま呆然とするギアに、ツーデルトはうきうきと話を進める。
「ギアさんには、まず、我が主・ロッド、ギアさんとイーラさん、総勢 十二名のロッドの魔獣の昼食を準備して頂きます。主を始めとして、我々は好みにうるさいものが多いので、ご苦労をかけますが…、課題のため仕方ないと思って取り組んで頂ければと思います。あ、わたくしと他の食事当番が指示を出しますので、ご心配なく。」
どこからツッコめばいいのだろうか。
「え? いや…昼食の準備?」
辛うじて聞けた言葉。ツーデルトは羽を広げる。
「そうです!今から準備しないと昼食時間が遅くなってしまいます!」
「え?課題……修行は?」
「最初の課題は、昼食づくりです!」
ギアは混乱する。
(修行のためにここに飛ばされたんだよな…?俺は。)
ロッドの行った方向を見る。もうどこかに行ってしまって、どこにも姿はない。
(修行…魔法の修行、だよな?魔法の修行で昼食づくり??)
別な意味での修行だったのだろうか。だとしたら、さっきの模擬戦闘は何だったのか。
「ほらほら!ギアさん!まずはキッチンへ!」
「ツーデルト…。これは、魔法の修行、だよね?料理に魔法を使う、とか??」
「フフフフ…。さぁて、それはどうでしょう♪」
意味深な笑み。これはツーデルト…もとい、ロッドに揶揄われているのだろうか。
「何をするんだ。」
「ですから、昼食づくりです。さぁさ、参りますよ!」
ギアの肩に飛び乗ったツーデルトは、急かすように羽をバサバサと動かす。
何も説明してくれないようだ。
(これで魔法に関係ないことをさせられていたら、“おじさん”に抗議してやる…。)
ギアは渋々、キッチンへと歩き出した。
さて、そこから昼食まで、怒涛の時間だった。
言われた通りにキッチンに行けば、そこで「何も食材がないみたいですねぇ」とツーデルトのわざとらしい発言を受けた。ギアが真顔でツーデルトに目を向けていれば、そこに一匹の熊…ルージが現れた。ルージが今日の食事当番らしい。「ギア!食材を調達しに行くよ!」と背中に乗せられ、ギアは森に入る。
キッチンでの滞在時間は、僅か四十秒ほどであった。
必死にルージにしがみついて近くの川までやって来ると、すぐさま釣りや狩り、木の実などの採集が始まった。ルージの豪快な獲物の取り方をフォローしつつ、自分もできるだけ魔法を使って集めるというのは苦労した。
かなりヘトヘトになってロッドの家に帰れば、いよいよ大量の食事づくりが始まった。ツーデルトの指示、ルージの補足説明を聞きながら、ギアは慣れた動作でご飯を作る。聞けば、毎日 二~三匹が食事当番となって、食事を準備するらしい。ロッドがいれば魔法を使って食材を調達するが、そうでなければ自力。また、魔獣が十二匹もいる上、それぞれ種族も異なるため、用意するのは大変らしい。調理はロッドも付き、魔法も使ってテキパキと準備を進める。「早く準備しないと食事の時間が遅くなる」というツーデルトの言葉は、ギアもよく分かった。
その後、食事の時間になって、再びロッドやイーラと顔を合わせた時、イーラはギアの変わりように若干引いていた。ロッドはケラケラと笑うだけで、何も言わなかった。
さて、体力も気力も魔力も使い果たすほどに力を消耗したギア。その様子を見たツーデルトは、「休憩しましょう」と言って、ハンモックへと案内した。ギアは、ふわふわな姉妹兎の魔獣、ミミとポポを抱いてぐっすり寝た。ツーデルトに羽でなでられ、優しく起こされたギアは、二時間も眠ってしまったことを謝罪したが、ツーデルトは全く気にしていない様子で、次の課題を告げた。




