表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の話  作者: 羚羊
4/10

理想の人間

私が生き辛く感じている理由は色々あるのだけれど、自分という人間に理想を抱いているとうのも大きいと思う。面倒くさがりで、不真面目無気力人間だけれど、何故か信念的なものは強く持っている。言い換えるとプライドとかその辺に収まるのだけど、出来るだけ自分の中の理想からは外れたくないと常々思っている。




まず集団でいじめたりはしたくない。


困っている子供は助ける。出来れば大人も助ける。


迷子は助ける。


人は陥れない。


姑息な嘘はつかない。


落とし物は拾う。




正直滅茶苦茶いい子だと思う。車に轢かれそうな子供がいたら「危なーーい!」って言って突き飛ばして代わりに轢かれるくらいはする。そうなったら最近流行りの異世界転生をするかもしれないが、恐らく助ける。異世界転生先でもちゃんと頑張る。


まあそんな場面ないし、私の怠惰な筋肉じゃ間に合わないかもしれないけど、取り合えず一歩は踏み出す。


というか、困っている人いたら助けるなんて当たり前じゃん。そんなんで信念とかだっさ。と思ってるあなた。凄い好き。もう大好き。友達になってください。




意外と当たり前じゃないのですよ。というのも、少し悲しくなる実体験をご紹介したい。


私の住んでいるマンションは割と住民が多い。高校生だった頃のある夜、


「ぎゃああああああああ。」


という女の子の悲鳴がマンション中に響いた。子供の夜泣きとかでは決してない。若い女の子の叫び声だ。きゃあ、とかの余裕のある声ではない。断末魔のような、聞いてるだけで恐怖を感じるような、そんな悲鳴だった。私は急いで外に出た。そしてその時絶望した。何百人と人が住んでいるマンションで、外に出ていたのはたったの5、6人だったのだ。この前、警報機の誤作動で消防車が来たときは30人くらい外に出て様子を見に来ていた。それなのに…、それなのに、女の子の悲鳴では10人にも満たない人しか気にしないのだ。


悲鳴が響いた後、声のする部屋を探していると、女の子が階段を駆け下りてくるのが見えた。思わず追いかけた。その子は高校生で、同じ小学校に通っていたから名前程度は知っていた。大丈夫かと声を掛けると


「お母さんに殺される。」


と言った。その子は虐待に合っていた。


「誰か、先生や周りの人に相談したほうがいい。」


結局私はそんなクソみたいな事しか言えなかった。その子は友達の家に泊まりに行くと言うので、


「気を付けてね。」


と、そんな意味のないことを言って見送った。自分の家に戻る途中、数少ない心配して出てきたおじさんがうろうろしているのを見つけた。何にも出来なかった自分が嫌で、思わずそのおじさんに


「さっきの声は〇〇さんの家の娘さんでした。友達の家に避難しましたよ。」


そんなことを言っても何にも解決はしないけど、一人でも知っている人がいるほうが、いざという時に有効なのじゃないかと、十代の浅はかな考えで話した。




私のしたことは、何の解決にもなっていないし、無意味だったかもしれない。けれど、あの時、もっと多くの人が駆けつけていたら、虐待なんて出来ない環境になるんじゃないのか。


そうだ、あの時、私の中の子供の部分が傷ついたのだ。大人は助けてくれないと、女の子が思う原因は、消防車のサイレンは聞こえるのに、悲鳴は聞こえない大人たちにあるんじゃないのか。




それ以降、人一倍、困っている子供のことをほおっておけなくなった。だって、ほとんどの人は助けてくれないから。実際にそれは事実だ。迷子の子供を見かけても、皆視界にすら入っていないのかというくらい手を差し伸べない。全員ではない。時々、本当に時々、助けている人も見る。ただ、助けない人の方が多いのだ。その事実が、とてつもなく私を生き辛くする。




私が高校生の時に、このような内容を周りの大人に言っても、


「そんなの子供の戯言だ。大人になれば色々わかる。」


と言われた。私は現在26歳。そろそろ子供ではない。けれど、まだ色々わからないことばかりだ。残念ながら、子供の戯言は変わっていない。


いつかは大人になったらわかる色々が、わかる日が来るのだろうか。




来なくていいけど。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ