【プロローグ】
『異世界』とはいかなるものか――。
ふと、そんな疑問がぽつりと浮かんだ。
いや、今はそんなことを考えている場合ではない。場合ではないのだがしかし、このゲームの完成にあたってそんな思考を巡らせるのは仕方のないことだろう。
マルチタスクは得意ではない。ならば先に、この疑問を解決したいと思う。
異世界とは。
これを定義付けるためには、まず『世界』の方から始める必要があるだろう。
世界とは――曰く、ビッグバンの名残。人間とは遺伝子の乗り物で、地球とはただの自然現象。偶然にも太陽から適切な距離に位置し、奇跡的に空気が充満する、陸と海が混在する理想の惑星。
つまり、世界とはただの偶然である。
そこに意味を、神や人為を見出そうとするのは人間の愚かしさが成せる業だ。
だとするのであれば。
『異世界』もまた、意図的ではない、ただ自然発生的な、しかしこの世界とは異なる何かであると言えるのではないだろうか。
……と。そう定義付けして、めでたしめでたし――とは終わらない。
これはあくまで定義であって、結論とはまた別の話。
数学の証明問題のように、演繹的に、俺が何を言いたかったかといえば。
従来のゲームは俺たち人間の『異世界』には成り得なかった、ということだ。
例えば、マップの端。
見えない壁にぶつかる有限の世界がいったいどこにあると言うのだろう。
例えば、同じセリフしか言わないNPC。
同じ表情で同じ言葉などある意味ラスボスより恐ろしい気さえする。
例えば、序盤に出てくる強敵。
どう頑張っても倒せない強さなのだが、しかし不思議なことに、主人公がゲームオーバーにされることもない。
俺はこれらに〝人間の作為〟を感じずにはいられない。ゲームの中の異世界が、人工的なハリボテに見える瞬間を否定しきれない。
何をバカなと、人間が作っているのだから当たり前ではないかというご指摘は甘んじて受け入れよう。
限られた世界で、決められたルールで楽しむのがゲームだと、そういう前提を言われればたしかにそうなのだが――……それでも。
俺はゲーマーに向かって叫びたい、問いたいのだ。
俺たちの求めた非現実は、異世界は、その程度のものなのかと。
早起きしてでもやりたくて、授業中だって頭から離れない。
チャイムと同時に教室を飛び出して、ただいまを置き去りにして電源を入れた〝俺たちの異世界〟は――その程度のものじゃないはずだろう。
――だから、作ったんだ。
2025年、第四次産業革命が到来したこの世界。
核となるのは三つの技術革新――5G、ブロックチェーン、そしてAI。
自動運転車が公道を走り、データの改ざんが存在しなくなった現代において。
オンラインゲームの『調整』を人間以外の何かが行えれば、それは真に異世界足り得るのではないか――という発想に行きついたのは、どうやら俺が初めてだったようだ。
ラグナドラシル・オンライン――世界初となる【自立拡張型ゲーム】。
AIがゲーム内の戦闘記録やプレイヤー環境、アイテムの取得状況などのビッグデータを解析する。
その結果、スキルや武器、クエストの新規生成、モンスターの行動パターン変更などを自動的に行うことで、その『異世界』が自ら拡張していくような、本当に存在しているようなリアリティが発揮される。
……つまり。
AIをゲームに導入することで、次世代の、人為の介入しない世界を創造することができる。
ゲームカテゴリーは〝Independence Expantion〟の頭文字を合わせることで――【IEx:MMORPG】と。
正式名称:〝自立拡張型〟大規模多人数同時接続参加オンラインRPG、である。
5Gの高速大容量・高信頼低遅延・多数同時接続の技術まで合わせた、
〝数万人が同時にプレイし、その全データをAIが分析し拡張させる次世代ゲーム〟
そんな噂は告知と同時、瞬く間に世界中が知るところとなった――。
「……いやいや、これ名前付けたやつバカじゃない? 漢字多すぎてお経みたいになってるよね? 数年後にはお葬式で唱えられてる説まであるよこれ」
……なんて、現実逃避のように独り言を吐くのも今日で七日目。
予め宣言していた気がするが、今はこんな下らないことを言っている暇はない。
なぜなら六徹の果ての七日目――今日こそは『ラグナドラシル・オンライン』のリリース日。
そして……俺が今なお絶賛開発中の〝スキル〟をメンテナンスで実装するまで、もうあと五分もないのだから――。
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では、次話でまたお会いしましょう。 ―梅宮むに―