表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説を読もうの読みすぎで

作者: 栄子

おつかれOLのさらなるおつかれ話です。気楽に読んでください。


 医療事務とは、それこそ他の事務よりは多少給料はよいものの、都内の一人暮らしには、心もとない。


 次々にやってくる患者たちをマニュアルどおりに裁き、入力と手続きを繰り返す。毎日のたんたんとした作業をして今日もようやく帰宅してきた。


 帰宅後の唯一の楽しみと言えば、「小説を読もう」の悪徳令嬢がなんやかんやで幸せになっていく話を読みあさること。

  「これまでの行い、もはや申し開きをするまでも

   ないだろう。お前との婚約はこの場をもって破

   棄させてもらう。」

  「さて、何をおっしゃっているのやら、わたくし

   にはわかりかねます。」


 きたきたーーーこれから始まる逆転劇に期待を膨らませ、スマホをスクロールしまくる。

 ヒロインが頭がからっぽ系なのか、王子が無能なのか、または、有能な騎士の登場でざまぁとなるのか…


  「そんな、王子は貴方様のことを思っておっしゃ

   っているのに。そんなのひどいですわ!」

  「あなたの発言が、許されていたとは驚きです

   わ。それは、この場の責任者である王妃様がお

   許しになったということでしょうか。」


 はて?そういえば、そんな発言をした人が今日いたような…

 今日隣で仕事をしていた佐倉さんか…華やかな見た目に、かわいいをつめこんだ性格で、各部から注目の的の…部長にミスをとがめられ、泣きそうになっていたから、横から

 「次からは、我々みんなで気をつけていきます。」とフォローをしたつもりが、

 「部長は、わたしを思って言ってくださったんで 

 す。怒られるのは当然です。話をさえぎるなんてそ

 んなのひどいわ。」と、わけのわからぬヨイショでその場を切り抜けたのだ。部長もなんだか満更でもなさそうだ。

 弁解する気もなれずに、すみませんでした。とその場を収めたのだが、後味が悪い。


 …わけのわからないことを言うのは、どこも同じか


 それだけでない。


   「そなたを思っての発言、なんと心の冷めた女

    よ。王妃の名前を出すとは卑怯であるぞ。」

   「そんないいのです。わたしはみんなが幸せに

    なればそれで…」

   「なんと、可憐な…」



 アホらしい茶番は、まさしく今日の出来事そのものだ。いつもは好きな悪徳令嬢物も、今日こそは胸くそ悪い。


   「わたしはこれからの国のあり方を一番に考え

    ている。そなたのような自分本位の考えは、

    誠に腹立たしいものがある。彼女をみならい

    たまえ。」

   「そんな…でも、うれしい…」


 全くもって、王子を部長に、ヒロインを佐倉さんに名前を変換したら、まさにデジャブだ。


   「今日よりそなたに、婚約者として政務にかか

    わってもらう。異論はないな。」

   「わたくしには何も申し上げることは、こざい

    ません。」

   「わたしが…うれしいです。お父様も喜びま

    す。必ずお力になります!」


 そういうヒロインに限ってうまくいかずに、結局は周りのいろんなに媚びて助けてもらうのだ…


 はて…そういえば、部長お抱えの秘書らしきものになった佐倉さんも、早速テンパって結局私が替わりに仕事したんだっけ?


 安藤部長は、見た目もそこそこで若くして部長に昇進し、威張り散らして当たりが強いが、佐倉さんにはそれとわからないように、優しくしている。

 

  「アンドレ王子。このシャクラ、全身全霊で一生

   お仕えしますわ。」

  「シャクラ嬢…いや、サク…頼んだよ。」


 さて…これは…



  「これにて、この場を収めるとしよう。それでよ

   いな。ミトガレー嬢よ。」


 はい?


 薄っすらと考えていたことが、現実味を帯びてきた。

 これはこれは…



 知らないフリをすべきか…

 私「水戸川かなこ」は頭を抱えた…


 今日の悪役令嬢物語の作者は「アン動物長」である。


あこがれですかね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ