第84話黒騎士の秘密
黒騎士は悪い奴?それとも・・・・・・?
黒騎士が黒い大剣を振りかぶって攻撃してきた。
魔将軍最強と言われている黒騎士だが、それは対軍ではなく、対人での最強だ。簡単に言えば黒騎士は、一対一で最強の魔将軍で、1対100などの対軍隊の戦場では、体が大きく魔術が使える魔将軍の方が強いのだ。
そのため、黒騎士は魔王の玉座に至る転移魔法陣の前で、何百年もの停滞した時を過ごしていた。
『エクストリームフォールダークネス』
エクストリームフォールダークネスは闇の極端な滅びという意味で、その剣が当たれば肉体は滅び、崩壊してしまう。
エターナルフォールダークネスを避けた僕は、不可解な出来事に頭を急速に回転させていった。
そして僕のそこそこ優秀な頭脳は、直ぐに結論を出した。それは黒騎士はが魔族ではないということだ・・・・・・スキルは人間に与えられるもので、魔族や世界樹の民であるエルフなどには、スキルは全く与えられない。
さらに魔族やエルフは魔物を倒すことで、経験値を得てレベルを上げることもできない。
スキルやステータスに経験値などは脆弱な人間に与えられた、善良な神からの加護なのだ。
それが使えるということは、黒騎士は魔族ではないということになる。魔将軍である黒騎士が魔将軍ではないとなると、黒騎士はいったい誰なのか・・・・・・?
その答えが、先ほどからの既視感の正体のような気がしている・・・いや正体はほぼ分かっているも同然だった。
僕は迅速に黒騎士を追い詰めていく。
流麗な剣技を避けながら、こちらも剣技で応対する。
それは、仲間達には同じ構えで打ち合う、不思議な光景に見えただろう。
最後に黒騎士にデバフを何百個も掛けて、動けなくした所で、黒騎士が被っている兜を剥がし、ようやくその顔を拝む。
そこにはやつれてはいたが、確かにヤガミ・セージの顔があった。
僕は、映像以外では初めて見る顔を、まじまじと見つめた。
その顔には皴ができ、髪は白い。しかし2年半という長い時間、寝食を共にした先代勇者の顔を、少し老けたからといって忘れるわけがない。
「おい、自分の名前っ、わかるか?」
必死になって呼びかけをするも、その眼は閉じたままだ。
「お前には守るべきものがあったんだろう⁉アリーシャやクレイはお前を助けようとしていたんだぞっ」
ようやく開いた眼は落ちくぼんでいて、眼には精彩がない。
「う・・・・・・アリーシャ、クレイ・・・」
強制的に回復薬を口に突っ込み、ナタリーにも最大限回復させる。
「ぁあ・・・ありがとう・・・・・・ところで私は・・・くっぅぅ」
回復したセージは感謝を言葉にし、自分について考えようとしたのだろう。しかし停滞状態で数百年もいた意識野に情報が大量に流れ込んだため、強い痛みが走ったのだと思われる。
僕はセージを介抱しながら、断片的に話される情報を、一言一句聞き漏らさないようにした。
要約すればこうだ。
セージはあのメッセージを残した数年後、自分の体が抗うこともできずに強制的に魔王城に運ばれたらしい、そしてデモルゴンに勇者としての記憶を失わされ、黒騎士としての記憶を植え付けられたらしい。
黒騎士は交代制らしく、500年ごとに現れる勇者達から、昔から引き継がれていたらしい。
黒騎士にならないためには、邪神デモルゴンを倒さなければいけないので、今までの勇者は全て黒騎士になってしまったらしい。
しかし過去最高クラスに強かったセージは、記憶を消されても脳裏に雑音のように、勇者だった頃の光景が浮かんできたらしい。
セージは邪神デモルゴンを倒すために、邪神殺害剣以外にもアイテムを造っていたようで、邪神の強力な結界を剥がすための結界破壊の魔術具を一緒に持ってきていたらしい。
さらに黒騎士になってもそれを持ち続けていたらしく、僕に邪神結界破壊魔術具というのを渡し、安らかな笑みを浮かべながら、光となって虚空に消えてしまった。
僕の中では最低に落ちていた、デモルゴンの評価がさらに下に落ちていった。
セージ達、いや今までの勇者達の無念を晴らすことを誓いながら、僕は困惑している仲間達を無言で引き連れ、10階への転移魔法陣の上に乗った。
重苦しい雰囲気の中、次回から魔王戦です。




