第83話機械人形と黒騎士
魔王と戦うのはもう少し先です。
「あなた方の話は伝わってきています。姉妹達をまぁよくもやってくれましたね・・・・・・あなたに破壊された姉妹達は戻っては来ないというのに・・・・・・」
聡明そうな機械人形は他の個体とほとんど違いはなかったが、機械人形にはありえない表情が動き、悲しそうな表情を見せた。
「私、ベータと申します。侵入者様、お覚悟を、姉妹達を無残に破壊され、私も少々怒っております。」
そう名乗ったベータは、双剣による妙技を繰り出して来た。
ベータはパラメータ-がノーマルに設定されていて、良く言えば平均的、悪く言えばオリジナリティーが足りない。
しかし、その双剣によって繰り出される技の切れは機械姉妹の中で最も高く、それゆえにステータスが高くとも油断していれば、ベータに切り刻まれてしまうだろう。
僕はベータと戦闘もどきをしながら、機械に感情は発露するのか?という考察を巡らせていた。
しかし、結論はいつまで経っても出なそうなので、ベータをアイテムボックスに入れてしまうことにした。
壊れないように力加減をして、ベータを倒す。
倒れ伏したベータは、僕のアイテムボックスの中に消えていった。感情があったので、もしかしたら入らないかもとも考えたのだが、そちらの心配をする必要はなさそうだ。
ベータを倒した僕たちは、転移魔法陣に乗り先ほどと同じように壁を破壊していく。
黒騎士がいるかと思われたので慎重に壁を壊していたが、転移魔法陣まで来た僕たちは、拍子抜けしてしまった。
なぜならそこにはまたしても機械人形がいたのだ、今回の8階の守護者の機械人形アルファは、動き出しても喋ることはなかったため、ベータが特別なのだという結論で僕の考察は終わった。
そして随分と小さくなってしまった魔王城の迷宮で、迷宮の9階の壁も平等?に破壊していく。
9階の転移魔法陣の前には、僕の予想通り黒騎士がいた。
黒騎士は転移魔法陣の袋小路の道で剣を床に突き立て、その剣を重心にして立っていた。
何十年も突っ立っていたのなら仕方がないのかもしれないが、僕が来たのだから、少しは格好良くしてもらいたいものだ。
黒騎士はセージの時に見たときとは、背丈や肩幅などが違うように見え、しかも黒騎士を見ていると、何故かは理解できないのだが、既視感が見えてくる。
それは嫌な類の正夢と言ったところだが、そんな生易しい物ではない、頭を金属でガンガンと叩かれるような痛みを感じるのだ。
黒騎士は直ぐに僕たちに気づいたようで、剣を床から抜き取り、構えた。
全てが強烈な既視感に襲われている。
それは何故か僕の脳裏をチクチクと刺激している。黒騎士の一挙一投の動作全てに対して、僕の脳が思い出せと言っているようだった。
「私は魔王軍直族幹部の黒騎士だ、名前は・・・・・・ない。」
なぜだろう、もう少しで出てきそうで出てこないこの感じ、出てこないと大変なことになると僕の感覚や本能の全てが警報を鳴らす。
「魔王様に仇を為す敵は、一刀の下に斬り捨てる。それがたとえ勇者であっても・・・?・・・わからない・・・なぜ私は―――――いやそれは・・・・・・わからない・・・・・・」
黒騎士は自分でも困惑しているようだったが、しかし躊躇ったのも瞬きをするほどの間でしかなく、すぐに黒い大剣で斬りかかって来た。
次回黒騎士の秘密。




