第55話過去【Ⅴ】
どこかに転移させられてしまったセージ達。
未だ仲間になった獣人やエルフ(長老はいません)、騎士団長や魔術師団長は死亡していない。
神グザファンに転移させられたと思われるこの場所は、僕のオレンジ色の視界の中でも白さを際立たせていた。
地平線のように先が見えず、ここがグザファンに転移させられた場所なのだという実感を得た。
突如として禍々しい黒い影が目の前に現れた。
『私がこの世界の神グザファン、かつて邪神デモルゴンと言われた、正義の神々への反逆者です。
・・・まぁ貴方達が知っても意味は無いですがね・・・・・・
八神誠二――――神選職が勇者である君は、歴代の勇者の中でも特に強い。
君が召喚されたことで、魔王討伐に乗り気でなかった種族も魔族に敵愾心を抱き、魔物を率先して倒してくれるようになった。
魔物を倒せばその経験値の内の半分が私に入り、半分が倒した者に分けられる。
私は神特権として経験値を大量に集めた。
正義の神々から逃れた私には、これをするしか力を集める方法がなかったのだ・・・
勇者は経験値を効率的に集めることができる都合のいい相手なのだよ』
その言葉を聞いた聖女達はグザファン国勢はあまりのショックに頭を押さえ、しゃがみながら呻いていた。
『さぁ君達の命を刈り取るとしようか』
そう言ったグザファン――いや邪神デモルゴンはその大きな体に見合わない速さで勢いよく腕を振り仲間の獣人を殺し地面に血の花を咲かせた。
セージ達一向は一瞬で臨戦態勢に入った。
セージは『グロフを――よくも』と冷静さを失ったように見せながら、確実に勝利するため勇者の一撃と身体強化魔術を2つチャージし始めた。
勇者の一撃は効率が圧倒的に悪く、1分間の溜めが必要で攻撃した後の数分間はステータスが大幅に下がるといったデメリットも存在している。
5分後、邪神デモルゴンは強化された勇者の一撃も耐え、数々の魔術に攻撃されていながら。未だ衰えをみせなかった。
しかし勇者側は騎士団長は死亡、エルフは両方満身創痍、剣闘士は腕を一本奪われていた。
既にギリギリであり、聖女アリーシャの魔力が尽きた瞬間に終わる。といったような最悪な状況だった。
10分後、遂にアリーシャの魔力が尽き、立っているのは勇者セージと賢者クレイ、そして油汗まみれな聖女アリーシャだけだった。
邪神デモルゴンはまだまだだといった風に、有り余る魔力を見せつけるにして、膨大な魔力を体の周りに纏っていた。
天秤は片方に傾くように見えた。
『貴方だけは助けてみせるわ―――世界の救世主である貴方だけは・・・』
賢者クレイはそう言って、準備していた転移魔術を発動させる。
それは賢者クレイが研究していた魔術で、通常の魔術より圧倒的に難易度が高いが、一人だけならば今の魔力量でも成功すると判断したのだろう。
セージはクレイに手を伸ばす、しかしその前に魔術が発動してしまう、魔術の光に包まれたセージには聞こえなかっただろうが、僕には確かに笑った賢者クレイの姿と声が聞こえた。
『じゃあ――――ね』
クレイーー
声が聞こえたら、貴方も立派な読書家・・・のはず




